100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第二十節 同窓会

 大歓声の響く武闘会会場。

 その光景を高みより見下ろせる席、来賓の中でもとびっきりの来賓が座る国賓席。

 その席には、まさにお歴々が揃っていた。

 

「うむ。さすが(われ)が認めた勇者だ。様になっている」

「ええ。テノールちゃん、頑張ってるわね。頑張り過ぎて、無理してないと良いのだけど……」

 

 テノールが仕事をしっかり(こな)していた姿に、誇らしさを覚えるのが2体。

 ミナ・ミヌエーラ双王、紅竜王ゴッホと白竜王グウィバーである。

 ゴッホは満足げに頷いており、グウィバーは少し心配そうにしていた。

 交流期間はそれ程長くなかったのに、もはや父性や母性を抱いているかのようだ。

 

「はぁ……はぁ……。マジで可愛い……。あの健気に勇者してる感じ、超最高……」

 

 テノールの一生懸命な姿に、興奮を覚えているのが1体。

 パローナ教皇、エクラタントである。

 彼女は興奮が抑えきれず、涎が垂れていたり、エンジェルの羽が慌ただしく羽ばたいたりしていた。

 今にもテノールを獲りに行き、色んな意味で捕食しそうな勢いだ。

 

「突っ込み待ちか?突っ込み待ちなのか?エクラタント、俺はお前のその醜態を指摘すべきなのか?」

 

 そして、エクラタントの狂いように怪訝な視線を向けているのが1体。

 パンデモニウム天皇、サタン・アルフィーネである。

 彼はエクラタントの羽を鬱陶しそうに、6枚3対の羽であしらっていた。

 その羽は蝙蝠のそれと特徴が近い事、捻じれた角が頭より生えている事。

 その2つによって、サタンの種族がデビルであると明確に表されている。

 

「なんの事でしょうか、サタン。(われ)には身に覚えがありませんよ?」

「せめて涎を拭き取れ。身に覚えが身に刻まれてるぞ」

 

 佇まいを正しはしたが、涎にまでは気付かなかったエクラタント。

 そんな彼女にサタンは呆れた。

 元よりそういう奴だと知っているため、失望や呆然はしなかったが。

 

「ここさぁ、漫画だったらお歴々がそれぞれのコマを飾って、それぞれが勇者に意味深長な台詞(せりふ)並べるところだろ。読者になんかかっけぇって思わせる場面だろ。しかもあれだろ?これ俺の初登場シーンだろ?もっとかっこいい登場させろってんだよ、全く」

「貴方は相変わらず、見栄えばかり気にしているようですね」

「風体も気にしないお前には言われたかないんだよ、このショタコン」

 

 『漫画』や『コマ』、『読者』や『初登場シーン』と、かなり異次元的な物言いをサタンは繰り広げていた。

 エクラタントはその物言いを理解し、皮肉を返したが、サタンからはもっと的確な皮肉が返される。

 喧嘩になりかねないやり取りではあるが、お互いご同輩として軽口が叩けると、案外楽しんでいた。

 両方とも長く生きるが故、抱える事情がある故、こういうやり取りができる相手は貴重なのだ。

 

「んで、お前は何も言わんのか。全員揃った方が()えるんだが?」

 

 そんな腐れ縁じみたやり取りを一旦中断してまで、サタンはエクラタントの背後に控える者へ声をかけた。

 その者は便宜上エクラタントの護衛であるが、コーメスタではない。

 女袴を纏い、腰に毛布のような物を巻いた女性だ。

 頭巾で顔を隠しているが、サタンには、それからゴッホやグウィバーにも正体を悟られていた。

 

「人が身分隠して来とんのやから、暴くんは不躾ちゃいます?」

 

 そう。その正体とは、このお歴々に並んでも恥ずかしくない人物、ジパングの帝王、クミホである。

 エクラタントの一計で、護衛と身分を偽り、お歴々が集まるこの国賓席に忍び込んでいたのだ。

 

「どこを隠してんだ、どこを。狐の尻尾が丸見えなんだよ、ケモナー」

「ケモナーと獣娘好きはちゃうて、毎回言っとるやろ?」

「これだからオタクは。無駄なところに拘りやがる」

 

 サタンはこっちに対しても軽口を叩き、クミホもそれに応じていた。

 やはりこの組み合わせも腐れ縁。

 この国賓席は同窓会の状態となっているのだ。

 

「お前が国から出てきたって事は、完成したって事だよな」

「そうや。ウチの理想郷は出来上がった。やから、周知しに来たんや」

「馬鹿と天才はなんとやらだな。新種族をこの世界に誕生させるとはよ」

 

 腐れ縁であるからこそ、サタンはクミホの理想郷を知っていた。

 獣の耳と尾を生やした人型種族の国。それがクミホの理想郷。

 そんなモノを完成させた事に、サタンは心底感嘆している。

 新種族を生み出すという前提にして難題を、クミホは成し遂げたのである。

 そんな理想を掲げた時点で馬鹿だが、叶えてしまったのなら天才に他ならない。

 

「いやいや、大半はフィーネ様のおかげや。あの方が手ぇ貸してくれへんかったら、後何万年かかったか分からへん」

 

 クミホは協力者の功績を称えた。

 新種族ファーリーの誕生には、『邪神フィーネ』の助力が切って離せない。

 気まぐれか、新たな刺激を求めてか、クミホのファーリー新生に、フィーネは手を貸していたのだ。

 そんな魔物製造専門家の助力があったために、予想よりも早くファーリーは完成している。

 

「そうか、あの野郎のおかげでね……。で、あの野郎は元気か?」

「すんまへんが、数年前に資料だけ置いて消えはってん。今はとんと」

 

 フィーネの名を出されて、サタン・アルフィーネは見るからに機嫌を悪くしていた。

 クミホはその事を反省しながら、サタンの質問に首を振る。

 

「ま、それなら良い。どっかでくったばってりゃ、世界にとっても俺にとっても有り難い」

 

 気になる相手は行方不明という事で、サタンはその話題を打ち切った。

 そうして嫌な記憶を頭の隅に追いやり、楽しい行事の見物に意識を移すのだった。

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