100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者 作:RAINY
始まった武闘会、108名による勝ち抜き戦。
それを俺は高い位置にある特別席、バーニン王やルーフェ様も居る席から見下ろしていた。
生憎と言うべきか、バーニン王は国賓たちへ挨拶するため、席を外している。
(……第1回なのに、国賓待遇の客人が来たのか。……いや、パローナ教皇が来てたな)
忘れかけていたかなりのお偉いさんを、俺はどうにか思い出せた。
存在は忘れられない程記憶に刻み付けられているのだが、あの態度のせいで国の
だって、あんな異常な嗜好を持つ人物が国を治めていると考えると、多少頭痛がしてきてしまう。
パローナは大丈夫なのか。
ただでさえ宗教問題を抱える国だと言うのに、あの人物に治められるのだろうか。とても不安だ。
(……そういえば、パンデモニウムに何か動きがあるらしいが。もしかしたら、そこから高官が来てるかもしれないな)
頭痛から逃避すべく別の事を考えようと、俺はエクラタントの発言を記憶から引っ張り出した。
曰く、会談の準備をパンデモニウムがしているらしい。
だとすると、高官を使者として送ってきそうだが。結局、クミホがその高官だったかどうかは、謎のままである。
お忍びらしいから、おそらく違うのではないかと推測しているが。
(ま、考えてもどうしようもない事だ。今は武闘会を眺めているか)
結論の出ない思考を止め、改めて武闘会の様子に目を向ける。
進行は実に順調だ。と言うか、順調すぎている。
(原因は、あの3人か)
こんな衆人環視で戦う自信のある者たちであるから、参加者は皆悪くない腕をしている。
だが、その中で跳び抜けて強い者が居たのだ。
それが、3人。
袴を着込み、特徴的な剣、刀を振るう男。出身地不明、サコン。
司祭平服で、拳を得物とする教皇護衛。パローナ出身、コーメスタ。
そして、騒ぎを起こして逃げおおせた鎧。出身不明、エリザ。
その3人が、軽々しく対戦相手を蹴散らしており、試合の進みが早い。
特に早いのが件の鎧、エリザ。
対戦開始の合図が鳴った瞬間、気付けば対戦相手に接近しており、槍の石突で
それで軒並み決着させている。
そんな瞬殺試合を連発させているエリザについて、俺は気になった事があった。
(女性だったのか)
(そこかよ)
エクスカリバーに突っ込みを貰ったが、大事なところだろう。
兜まで被って全然顔が見えないし、声もくぐもっていて、女性だとは判別できなかったのだ。
これは失態である。女性と分かっていれば、初対面でもう少し優しく対応できたのに。
(それかよ。お前は本当、女なら誰でも構わねぇのか?)
(そんな訳あるか。美人か否か、構うに決まってるだろ)
(心底下衆だな、お前は)
美人に優しくするのは男として当然の義務だというのに、この扱いである。
これが性別の違いによる認識の差か。
一応女性であるエクスカリバーと男性である俺では、やはり分かり合えないようだ。
(下衆なお前とは分かり合えねぇし合いたくもねぇ。後、『一応女性』っての、聞き逃さなかったからな)
(ところで。あの3人の事、エクスカリバーの私見が訊きたいんだが)
(露骨に話逸らしたな。まぁ、お前の下衆さを指摘し続けるだけなのもつまんねぇし、乗ってやるよ)
露骨な話題逸らしと察してなお、エクスカリバーは3人についての話題に付き合う。
強者を目の前にして、戦闘狂の
(まず最初に言っちまうと、全員純粋な人類ではねぇな。サコンって奴もエリザって奴も、まんま魔物だ。特に、エリザはヴァンパイアだって一目瞭然だぜ。直射日光を避けるような装備してるしな)
なんと、あの鎧は直射日光を避けるための装備だったようだ。
ヴァンパイアは日光への耐性に個体差があるが、弱点である事は種族統一。
ヴァンパイアであるエリザはその弱点を補うため、常に完全武装だったという訳か。
あの瞬殺していく様も、肉体が頑強なヴァンパイアなら納得だ。
(ヴァンパイアなら、何かしらの変化魔術も持ってるはずなんだが。奥の手として隠してんのか?)
戦闘における鋭い洞察力で、エクスカリバーは手を隠している事も見抜いていた。
相変わらず、戦闘では頼りになる奴だ。
(サコンの方は……、なんだろうな……。ワーウルフみてぇな感じはするんだが、ちょっと違ぇ気もする……)
そんなエクスカリバーも見抜けない男、サコン。
エクスカリバーは潜入工作員だったフィグの偽装も通じなかったのに、彼の偽装は通じている。
そこまで入念な偽装をしているという事は、何かしらの企みがあるのか。
警戒はしておこう。
(で、コーメスタは混血だな。おそらくはオニか。あの拳で正々堂々やってる感じ、多分そうだろ)
まさか、パローナ教皇の護衛が魔物との混血だったとは。
しかもオニ。個体数が少ないが、伝説に敵役としてよく登場してくるような、種族全体が戦闘民族じみた魔物だ。
種族の特徴である真っすぐな角はなく、接触した限り理知的だったが。その辺りはヒューマンの血が濃く出ている、という事か。
(……絶対あの3人の誰かが優勝するよな)
(そうだろうな。頑張れよ、元農民)
あんな強者と戦わなければいけない事実に、俺は身震いした。
そんな俺に、エクスカリバーは小憎たらしく笑いかけるのだった。