100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第三十節 爆弾投下

「じ、ジパングというと、あの鎖国していたジパングか?貴公が、その国を治める者だと?」

 

 バーニンは、クミホの言葉を俄かに信じる事ができなかった。

 バーニンはジパングの詳細を知らず、またその国の(おさ)も知らないのだ。

 その国が鎖国なのも相まって、その国の(おさ)を騙るのは容易いだろう。

 ただ、ジパングの情報をある程度持ち得る双王や教皇、天皇の前でそのような騙りをするのは自殺行為だが。

 おまけに、クミホはエクラタント教皇の護衛と偽ってこの場に居る。

 ならば、エクラタントがバーニンを騙そうとしていない限り、クミホは本物のジパング帝王だ。

 そんな状況証拠が揃った状況でも信じられないのは、(ひとえ)に驚愕すぎる真実だったからである。

 

(われ)が保証しましょう。彼女は正真正銘、1000年以上前よりジパングを治める帝王です」

「突然のサプライズ……、衝撃展開だが、そういう事だ。パンデモニウム天皇である俺も、国の名誉をかけて保証してやるよ」

「うむ。バーニン王が訝しむのも無理はない。しかし、彼女は本物の帝王だ。1000年以上前に会ってから、何も変わっておらん」

「ええ。久々に会えて少し舞い上がってしまうわ」

 

 信じ難い真実なのだが、ここに強国の(おさ)たち4名による証言がもたらされた。

 この状態となってもその真実を疑える者は、およそこの世界に居ないだろう。

 

「そ、そうか。疑ってすまなかった。そして歓迎しよう、ジパングの帝王。余の代で其方の国と交流が持てる事、喜ばしく思う」

 

 信じ難い真実をどうにか呑み込み、バーニンは多少ぎこちなく手を差し出した。

 この場に1000年以上国を存続させている者がもう1名加わった事に、国の歴も王のそれも短いバーニンは気後れが心に芽生えている。

 そんな事を気にする長命の(おさ)たちではないが。

 むしろ短命の種族で良くも1000年に届きそうな国を築き上げたと、長命の(おさ)たちは内心感心している。

 

「ありがとな。ウチも嬉しいわ。これからはウチの国も開国して、仰山交流したい思てますんで、あんじょうよろしゅう」

 

 クミホはバーニンの差し出した手を取り、固く握手を交わした。

 そこに敵意や(たばか)りはなく、両者ともにこれが友好の第一歩となる事を願っている。

 

「開国というと、もしやこの場に紛れ込んだのは、それを周知させるためか」

「そうなんよ。エクラタントはんが周知にとっておきの場所ある言うさかい、付いてきたんやけど。お偉いさんがたくさん集まっとる怖い場所に連れて来られてもうて、さすがのウチも泣きそうやわぁ」

「どの口が言ってんだ、狐。全然怖がってねぇだろ」

 

 泣き真似までしているクミホ。

 残念ながら、そんな演技が通用するのは初見であるバーニンくらいで、ゴッホもグウィバーも、エクラタントさえ見抜いていた。

 サタンには呆れられ、演技であると言い放たれたくらいだ。

 

「親しみやすさを演出するための演技や。空気が読めへんなぁ、サタンはん」

「相手の優しさに付け込んで化かそうとする奴が居なければ、俺だって空気を読んでるよ」

 

 サタンはあくまで、クミホへの牽制とバーニンへの警告をしていた。

 同盟を組む流れとはいえ、ラビリンシアとジパングの間だけ親密になられるのは困るのだ。

 その2か国が2か国のみで事を進めだし、他の意見に耳を貸さなくなるのは避けたい。

 同盟の存在意義がなくなった後、増長されて離反されるのも同じく。

 だから、クミホの親しみやすさを演出する演技に制止をかけ、バーニンにクミホがそういう食えない奴だと見せ付けたのだ。

 

「話が逸れていないか?対魔王軍同盟について詰めるのが先決だろう」

「まず先に、正式にジパング開国を宣言させてぇな。はい、これがその正式な書状。人数分あるんで、争わんとってな?」

 

 さっさと同盟について話し合いたいゴッホだったが、クミホがそれより己の開国宣言を優先した。

 書状の文面は実に形式的で、ジパング帝王の押印もある正式な物。

 開国はそうやって正当になされる訳だが、書状を配られて終了ではなんとも締まりが悪い。

 同盟についての話が急かされているのだから、仕方ないと言えば仕方ない。

 

「対魔王同盟ですが、誰を盟主としますか?平等を重んじるべき同盟でしょうが、代表は必要ですよね?」

「ラビリンシア王、バーニン・ラビリンシア・ドラクルを、ミナ・ミヌエーラ紅竜王ゴッホが推薦する」

「ミナ・ミヌエーラ白竜王グウィバーも、バーニン王を推薦するわ」

「なっ」

 

 エクラタントによって同盟盟主を選出する流れになった瞬間、ゴッホとグウィバー2名による推薦。

 それも、お歴々を差し置いてバーニンを推薦したのだ。

 推薦された本人はまさしく、意表を突かれた形となる。

 

「おお、良いじゃねぇか。1000年近くも人類の防波堤やってた国だ。俺は文句ねぇよ」

「人類の防波堤を務めていた国に、同盟盟主という重荷を背負わせてしまう訳ですが……。ラビリンシアの王以外、適任者は居ないでしょう。ご心配なく。国を挙げて、ご支援させていただきます」

「急に出張ってきて意見できる身でもないやろけど、ウチも大賛成や。1度魔王軍を撃退した国が対魔王軍同盟の盟主になる。箔が付くし、同盟の意義に合ってるやろ」

「……」

 

 意表を突かれてる隙に、本人を差し置いて意見が満場一致していた。

 今さら抗議ができるような雰囲気でもない。

 それに、責任を押し付けられているが、同時に人類の防波堤と認められている事を、バーニンは認識した。

 しっかりと大義を全うできており、信頼を勝ち取れていると、認められているのだ。

 全てが自身の功績という訳でもないが、バーニンは誇らしさを覚える。

 

「……対魔王軍同盟盟主、このバーニン・ラビリンシア・ドラクルが請け負いましょう」

 

 故に、バーニンは真剣な面持ちでその大役を引き受けた。

 応接室には賛辞を向けるような拍手が響く。

 

「で、同盟盟主が決まったところで、また話を逸らすみたいで悪いんやけど」

「どうかしたのか、クミホ殿」

「ウチの国、助けてくれへん?魔王軍に攻められてるんやけど」

「は」「へ」「マ?」「え?」

 

 クミホが開示した事実は爆弾の如き驚愕を皆に与えた。

 その驚愕に耐えられなかったゴッホ、グウィバー、エクラタント、サタンに、それぞれ素っ頓狂な声を上げさせるのだった。

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