100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者 作:RAINY
中継地点に向かう道中、クミホらと俺たちは昼休憩という事で道端に牛車などを停車していた。
昼食の時間という事もあり、皆が地面に広げた敷物の上に座り、各々握り飯を食している。
そう。護衛も等しく皆だ。誰も警戒していない。
昼食中とはいえ、魔物に襲われる危険性はあるのだ。
そんな中で無警戒というのは少し気になる。
(暗に気を張ってるって事もねぇな。護衛たちも随分と気が緩んでるもんだぜ)
エクスカリバーの観察眼でも、臨戦態勢というか、有事の際に即座に動けるような準備をしている者は居ないようだ。
やはり、護衛たちも魔物の襲撃を警戒していない。
帝王の手前、だらしなく姿勢を崩している事はないが。
そんな様子のおかしさに辺りを見回していれば、野鳥が木々より飛び立つのを目にした。
魔物ではなく、本当にただの小鳥だ。
(凄いな。自然動物がまだ残ってるのか……)
その珍しさに、俺は小鳥たちの跳ぶ軌跡を目で追った。
魔物ではない小鳥など、ラビリンシアでは全く見ないし、ミナ・ミヌエーラでも見た記憶がない。
それもそのはず。自然動物は魔物に取って代わられ、ほとんどが絶滅してしまっているのだ。
小鳥という枠組みの動物はもちろん、猫や犬なども、もはや『コジ記』にその姿と生態が記されるのみ。
残っているのは、『始まりの六柱』が家畜として守り抜き、世に残した馬・牛・鶏・豚・羊くらいだ。
動物ではないが、絹糸の原料たる
今絹糸の原料を作っているのは、『邪神フィーネ』が生み出したテンコウサンという家畜化された魔物だ。
『邪神フィーネ』による人類へ対する貢献、数少ない内の1つがそれである。
とにかく、そうすると、ジパングとは神秘の国かもしれない。
なにせ、絶滅しているはずの小鳥がまだ存続しているのだから。
小鳥だけではない。鹿や
おそらく、もっと色々な動物が存続しているだろう。
(……なんでそんな動物が生き残ってるんだ?)
ジパングに神秘性を感じると同時に、そんな疑問を抱いた。
前述で述べた通り、ほとんどの動物は魔物にとって代わられたのだ。
その理由は単純に、生存競争で動物が魔物に負けたからである。
魔物の方が動物に比べて高い生存能力がある。
戦えば魔物が強いし、動物が死ぬような攻撃を受けても魔物なら死なない。
それに、生殖以外にも、魔力による自然発生という増え方がある。
そんなのと生存競争して存続するなんて、人類くらいしかできない。
でも、ここでは動物が存続している。
さて、それは何故だろう。
(……なんとなくだが、答えに至る材料が揃ってる気がするな)
魔物に負けるはずの動物が存続している事。
そして、護衛が警戒せずに休憩している事。
この2つから、答えは推測できると、俺は直感した。
俺は俺の直感を信じて、頭を回してみる。
(……魔物に負けるはずの動物。……魔物に警戒しなくちゃいけないはずの護衛。……共通点は、魔物か)
答えに至る材料には、どちらも魔物が関連しているのを、俺は見出した。
魔物が居るからこそ、動物の絶滅は必至だし、護衛の警戒は必須だ。
……本当にそうか?
それらが本当に必至で、必須なのか。
もしかしたらそうではないのかもしれないと、俺は違和感を覚える。
(……魔物が居るから?)
仮にそれらが必至でない場合、必須でない場合を考え、その条件に見当が付いた。
そう。魔物が居なければ、動物は魔物に絶滅まで追いやられないし、護衛は魔物の襲撃を警戒しなくて良い。
それで、俺は思い出す。
ジパングの大地を踏んでから、1度も魔物と出くわしていない事を。
「そうか、そういう事だったのか!」
答えに至った俺は疑問が解けた爽快感を抑えられず、口を突いてしまった。
当然、同じ敷物に座っていたパースやリカルドには、怪訝な視線を向けられる。
「……どうしました?テノールさん。そんな急に大声出して」
「い、いえ、自分の中で疑問を解消できたものですから、つい……」
パースからは心配され、俺は急激に恥ずかしくなって頭をかいた。
こうなれば、自分の至った解答を喧伝するしか、周りの怪訝も俺の羞恥も
「疑問?何かテノールさんが抱くような疑問って、ありましたかねぇ」
「ええ。小鳥や鹿などの動物がこの国ではなぜ存続しているのか、という疑問です」
パースが丁度払拭する機会をくれたので、俺はこれ幸いにと喧伝を始める。
「なんや、なんかおもろい事でも思い付いたん?」
さらに丁度良く、解答が正解であるか応えてくれそうな人物、クミホが寄ってきた。
面白い事を期待しているようだが、それはあっちの勝手なので、期待に応える必要はないだろう。
「クミホさん。もしかしてジパングは、極端に魔物の自然発生が少なかったりしませんか?」
「え?いやいやテノールさん。一部地域ならまだしも、島国とはいえ、国全体で魔物が少ないなんて事は……」
「せやな。ジパングは極端に魔物の自然発生が少ないなぁ」
「ほら、クミホ陛下もこのように―――……今、なんて言いました?」
クミホの返答が予想外すぎたためか、パースの頭には入らなかったようだ。
だが、予想外の返答だった事は認識できていたため、パースは再度返答を願った。
今度はしっかり頭に入るだろう。
「ウチの国は他の国に比べて、極端に魔物が自然発生せんねん」
「それも、動物が絶滅に追いやられない程、護衛が警戒しなくて良い程、でしょう?」
「さすがやわぁ、テノールはん。手掛かりも全然与えとらんのに、分こうてしもうたか」
「突飛な推測だとは自覚していましたが、そうでないと説明が付かないので」
クミホは俺の思考力に感心し、俺は解答が正解だった事を改めて喜び、お互い微笑み合った。
その横でパースは驚愕で目を見張っている。
「正解したご褒美や。どういう仕組みか教えたるわ」
奇しくもクミホの期待に応えてしまったのか、クミホは上機嫌に、国の最重要機密に当たりそうな情報の解説を始めるのだった。