100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第十五節 いずれ巡り合う厄介者

「まず何から話せばええやろなぁ」

 

 昼休憩の停車地点から少し場を移し、パースの馬車、その客車。

 俺とパース、クミホはその中に居た。

 ジパングでは滅多に魔物が自然発生しない理由を聞ける運びになったのだが、あまり人に聞かせるモノではないという事で、できる限りの閉鎖空間に居る訳だ。

 ちなみに、ミギチカとサコンは馬車に人を近づかせないための見張りで、リカルドは重要そうな話を聞きたくないという事で、各々馬車の外で待機している。

 

「さ、再度確認させてほしいんですが。魔物がほとんど自然発生しないというのは、本当ですか?」

 

 あまりに信じ難い事実であるため、パースはその根本から訊ね直した。

 一応だが、ラビリンシアにも魔物が滅多に自然発生しない場所はある。

 人の集う場所、都や町がその場所だ。

 魔物に襲われる危険性が低い場所に拠点を設け、そこが栄えた結果、都や町となったのだろう。

 補足すると、村も魔物が自然発生しづらいが、都や町というより栄えた場所に比べると、自然発生はしやすい。

 都、町、村の順で魔物の自然発生率が低く、また、栄えている具合もその順である。

 より安全な場所の方が栄えるという、簡単な話だ。

 まぁ、ラビリンシアはそれ以外の場所となると、強力な魔物が自然発生しやすいのだが。

 

「そうや。国全体で、魔物の発生はほとんどないなぁ。せやけど、完全に発生しない訳でもあらへん。3か月に1度くらいの周期で魔物が湧いとる」

「逆に言うと、それ以外は湧かないと?」

「せやね」

 

 クミホのその回答に、パースは面食らう。

 俺の方も驚愕はしたが、納得した。

 その程度の頻度なら、動物も存続する訳だ。

 

「湧く数も少ないんやけど、その分強ぉて厄介なんが湧くんや。仕様上、仕方ないんやけどな」

「……『仕様上』?まさか、クミホさんが施した魔術によるモノなのですか?」

 

 俺はてっきりこの国自体が特殊な土地だと考えていたが、クミホのその一言で別の可能性が浮上した。

 『仕様上』という表現には、まるで人工物を指しているように感じられる。

 

「残念。ウチかて、そこまではできへん。ウチはファーリーで手いっぱいや」

「では、誰が」

 

 誰が魔物の発生を抑えるような無理難題をやってのけたのか、俺は予想できていた。

 クミホができない事をやってのけたとなれば、クミホ以上の人物がやってのけた事になる。

 クミホ以上であり、クミホが勝手を許した人物となれば、該当者は1人、いや、1柱しかいない。

 

「『邪神フィーネ』や」

 

 予想通りの答えが、クミホの口より紡がれた。

 パースは言葉も出ない様子であるが、俺は予想通りだったためになんの感慨も抱けない。

 島まるごとに効果を及ぼす魔術を行使しているのだ。

 それくらいとんでもない人物でないと成し遂げられるはずもないだろう。

 ……『始まりの六柱』の実在に対し、個人的に懐疑的だったのだが。このところ、実在を証明するような出来事にたくさん遭遇している気がする。

 

「あの神様がやね?ファーリーを作ってる途中、なんや天啓が降りてきたっちゅうて。別の魔物作りはったん。神様が天啓貰うなんて、おもろい話やねぇ」

「……魔術じゃなくて、魔物が発生を抑制してるんですか?」

 

 魔物の仕業である事は、俺にも予想外だった。

 何をどうすれば、魔物で魔物の発生を抑制できるのか。

 

「地脈やら空気中やらから魔力を吸い上げちょる魔物や。おかげで、魔力が1か所に溜まらへんくて、魔物の発生の条件が整わへんねん」

 

 魔力を独占しているからこそ、他の魔物が湧けない、という事か。

 なんとも暴食で強欲な魔物である。

 

「それで、やっぱり生き物の意思によるモノやからな?抜け目なく島中の魔力を全て吸い上げるんは、さすがに無理やねん。満腹で食えへんって」

 

 件の魔物は暴食ではあるが、許容限界があるらしい。

 魔物の発生を封じる程の許容量は、さすがに持ち合わせていないようだ。

 

「でも、そこら中に魔物湧かれるんは避けたいねん。せやから、特定の場所だけ魔力吸わへんでもろて、そこだけに魔物が湧くようにしてるんや」

「なるほど。それが、強力な魔物だけ湧いてしまう理由なんですね」

 

 あらかじめ魔力を吸わない場所を決めておく。

 結果、1か所で溜まりに溜まった魔力が強力な魔物を発生させてしまう。

 だが、発生地点が決まっているなら対処は楽なものだ。

 その地点に戦力を集中させておけば、それで済むのである。

 『仕様上』とは表していたが、実に良く練られた仕様だ。

 

「それにしても、その魔物とは懇意にしておられるんですね」

 

 特定の場所を吸わない仕様にできたという事は、その魔物にそうするようお願いできたという事。

 懇意でもなければ、そんな強そうな魔物にお願いはできないだろう。

 

「話の分かる言うか……。まぁ、なんや……。話聞いてもらうんに、払う対価がやな……」

 

 何故だか、クミホは非常に渋い顔をした。

 どうにも、願いを聞いてもらうためのに対価が必要であり、その対価は安くないようだ。

 

「会わせられるようやったら、会わせたるわ……」

「……いや、お構いなく」

「いやいやいや、意地でも会わせたるから。なんやったら説教してやぁ」

 

 面倒そうな相手なので会いたくなかったのだが、クミホはどうしても会わせようとしていた。

 その上で、説教するよう頼み込んでくる始末。

 どれ程の面倒な相手なのか。俺は嫌な予感が止まらないのだった。

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