100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者 作:RAINY
「サコン様に続けぇ!」
サコンが大将首を落としたのに引っ張られ、精鋭たちが次々魔王軍へと切り込んでいく。
精鋭500と衛兵500の合計1000となるジパング、対するは1200の魔王軍。
数で言えば、魔王軍の方が多く、実力の水準も高い。
それでも、その戦力は拮抗する。ジパングの精鋭は、それを成し得るのだ。
実質、精鋭500が魔王軍1200を相手にしている形だが、精鋭1人が魔物4・5体に囲まれても立ち回れる。
ただ、あくまで拮抗だ。
少しずつ魔王軍の戦力を削れているが、精鋭も無傷とは行かず、ある種両者同等の被害を受けている。
この拮抗状態を崩すには至れない。
大将首を即座に
だが、それは無理なのだ。
サコンは、落としたはずの大将首を見張っていなければならない。
その理由は1つ。
「……いつまで寝てる気ですかい?大将さんや」
「なぁんだ、気付いてたんだ」
首を刎ねてなお、リョー・フーは生きているからである。
リョーは魔王軍幹部の中で、不死性を持つ1体だ。
首と胴体が別れた程度では死なず、死んだように振る舞っていたのは不意打ちを狙っての事である。
その無駄になった不意打ちに固執せず、リョーは首のない体を起こした。
それから首を拾い上げ、体の断面と首の断面を合わせれば、断面などなかったように接合される。
「どうして気付いたの?あたしたち初対面でしょ?」
「魔王軍の古参が、何を仰る」
「ああ、そういう事。あの狐が知ってたんだぁ」
そう。サコンがリョーの不死性に初見で気付けたのは、クミホからの情報があったおかげだ。
クミホは第1次魔人戦争時の魔王軍幹部を全て記憶し、その特性も把握している。
特に、その戦争で殺されていないだろう不死性を持つ幹部は詳細に、その外見まで記憶していた。
クミホからその外見情報まで聞いていたサコンは、その情報と合致するリョーを見て、すぐに不死性を持つ古参幹部と気付けたのである。
ある意味では、リョーの外見が
上半身がヒューマンの女体で、下半身が猫型魔物のそれという外見を持つ魔物は、魔物が如何に多種多様と言えど、リョー・フーしか存在しない。
「じゃあ、くだらない小細工は止めにして……。正々堂々、真っ正面から斬り合いましょう!?」
「っ!?」
リョーは言葉通り、正面から大剣を振り下ろした。
その振り下ろしの威力は尋常でなく、サコンはその振り下ろしを刀で受け止めた瞬間、刀ごと叩き斬られる未来を直感する。
故に、受け止めるのではなく、受け流す方に変更した。
大剣を直角に受け止めていた刀を斜めにし、威力を受け流す。
そうすれば、大剣は刀の腹を滑り、その刃を地面へと落とした。
そうして逃された威力は、大地の爆散によって証明される。
「おぉ、おっかねぇ。勘弁してほしいぜ、ったく」
「まだまだ、おかわりもあるからたくさん食らいなさい!」
「だから勘弁だっての!」
巻き上がった地面を切り裂くように、リョーは追撃を見舞う。
逆袈裟切りとなる振り上げ。それをサコンは横への跳躍で回避した。
そこへさらに、リョーは大剣を振り下ろす。
体全体を使った大振りだと言うのに、攻撃の切れ目がわずかだ。
猫型魔物のような下半身、四足歩行であるが故の安定性がそんな攻撃を支えている。
(かぁぁ!これが魔王軍幹部!なめちゃぁいなかったが、想像以上ですぜ!)
どうにか回避は間に合っている。視点を変えれば、回避しか間に合っていない。
回避に専念せねばならず、攻撃できない。
(なら、無理にでもやるしかねぇなぁ!)
攻撃の機会を全力で探す。
その機会に繋げる前段階として、狙ったのがリョーの横薙ぎ。
当たれば体が横から真っ二つに分かれるだろうその攻撃の時、サコンは前へと踏み出した。
あわや直撃というところで、サコンはリョーの頭に手を置く。
そこを支点として、サコンは跳んだ。回避と背後への移動を兼ねた行動である。
それだけに飽き足らず、その行動の途中に攻撃も混ぜた。
リョーの頭上に自身がある瞬間に、リョーの左肩を切り裂いたのだ。
超速再生とも呼ぶべき能力があるリョー相手では、左肩を裂いても致命傷にならない。
でも、大剣を振るう腕が肩から離れた以上、攻撃は緩む。サコンはそう考えていた。
非常に残念ながら、それは甘い考えである。
「なっ!?がっ」
着地が間に合わぬサコンへ、リョーの横薙ぎが入った。
刀での防御はできたものの、大剣を受け流す事はできず、サコンの体は吹き飛ばされる。
威力も当然受け流せず、その威力で以って地面を転がった。
幸い、何かに激突する事はなかったため、大した傷も痛みもない。
「……なんで切った傍からくっついてるんでやすかねぇ」
泥にまみれた体を起こし、サコンはリョーの状態を視認し、悪態を吐いた。
そう。首を落とした時は再生に時間がかかったはずなのに、先程の切り裂いた肩はもう再生していたのだ。
だから、リョーによる攻撃の手は緩まなかったのである。
「『なんで』って、再生速度は自由に操れて当然でしょ。あたしの体よ?これ」
「……左様ですかい」
やろうとすれば、切られた傍から再生する。
それがリョーの再生能力だった。
その事実に、サコンは冷や汗をかく。
「さぁさぁ、続けましょう!?楽しい楽しい、延々と続く戦いを!!」
リョーは恐ろしい程獰猛に微笑んだ。
牙を剥いているような、獰猛な微笑み。
(ここで負けりゃあ、『サコン』の名折れだ!命を賭けろ、俺!!)
サコンはその微笑みに恐れを感じながら、誇りを以って奮い立たせるのだった。