100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

214 / 221
第三十五節 単純にして極悪な不死性

「サコン様に続けぇ!」

 

 サコンが大将首を落としたのに引っ張られ、精鋭たちが次々魔王軍へと切り込んでいく。

 精鋭500と衛兵500の合計1000となるジパング、対するは1200の魔王軍。

 数で言えば、魔王軍の方が多く、実力の水準も高い。

 それでも、その戦力は拮抗する。ジパングの精鋭は、それを成し得るのだ。

 実質、精鋭500が魔王軍1200を相手にしている形だが、精鋭1人が魔物4・5体に囲まれても立ち回れる。

 ただ、あくまで拮抗だ。

 少しずつ魔王軍の戦力を削れているが、精鋭も無傷とは行かず、ある種両者同等の被害を受けている。

 この拮抗状態を崩すには至れない。

 大将首を即座に()ねる実力を持つサコン。彼がその兵士揉み合う戦場に飛び込めたなら、崩せるかもしれない。

 だが、それは無理なのだ。

 サコンは、落としたはずの大将首を見張っていなければならない。

 その理由は1つ。

 

「……いつまで寝てる気ですかい?大将さんや」

「なぁんだ、気付いてたんだ」

 

 首を刎ねてなお、リョー・フーは生きているからである。

 リョーは魔王軍幹部の中で、不死性を持つ1体だ。

 首と胴体が別れた程度では死なず、死んだように振る舞っていたのは不意打ちを狙っての事である。

 その無駄になった不意打ちに固執せず、リョーは首のない体を起こした。

 それから首を拾い上げ、体の断面と首の断面を合わせれば、断面などなかったように接合される。

 

「どうして気付いたの?あたしたち初対面でしょ?」

「魔王軍の古参が、何を仰る」

「ああ、そういう事。あの狐が知ってたんだぁ」

 

 そう。サコンがリョーの不死性に初見で気付けたのは、クミホからの情報があったおかげだ。

 クミホは第1次魔人戦争時の魔王軍幹部を全て記憶し、その特性も把握している。

 特に、その戦争で殺されていないだろう不死性を持つ幹部は詳細に、その外見まで記憶していた。

 クミホからその外見情報まで聞いていたサコンは、その情報と合致するリョーを見て、すぐに不死性を持つ古参幹部と気付けたのである。

 ある意味では、リョーの外見が(あだ)になったのだろう。

 上半身がヒューマンの女体で、下半身が猫型魔物のそれという外見を持つ魔物は、魔物が如何に多種多様と言えど、リョー・フーしか存在しない。

 

「じゃあ、くだらない小細工は止めにして……。正々堂々、真っ正面から斬り合いましょう!?」

「っ!?」

 

 リョーは言葉通り、正面から大剣を振り下ろした。

 その振り下ろしの威力は尋常でなく、サコンはその振り下ろしを刀で受け止めた瞬間、刀ごと叩き斬られる未来を直感する。

 故に、受け止めるのではなく、受け流す方に変更した。

 大剣を直角に受け止めていた刀を斜めにし、威力を受け流す。

 そうすれば、大剣は刀の腹を滑り、その刃を地面へと落とした。

 そうして逃された威力は、大地の爆散によって証明される。

 

「おぉ、おっかねぇ。勘弁してほしいぜ、ったく」

「まだまだ、おかわりもあるからたくさん食らいなさい!」

「だから勘弁だっての!」

 

 巻き上がった地面を切り裂くように、リョーは追撃を見舞う。

 逆袈裟切りとなる振り上げ。それをサコンは横への跳躍で回避した。

 そこへさらに、リョーは大剣を振り下ろす。

 体全体を使った大振りだと言うのに、攻撃の切れ目がわずかだ。

 猫型魔物のような下半身、四足歩行であるが故の安定性がそんな攻撃を支えている。

 

(かぁぁ!これが魔王軍幹部!なめちゃぁいなかったが、想像以上ですぜ!)

 

 どうにか回避は間に合っている。視点を変えれば、回避しか間に合っていない。

 回避に専念せねばならず、攻撃できない。

 

(なら、無理にでもやるしかねぇなぁ!)

 

 攻撃の機会を全力で探す。

 その機会に繋げる前段階として、狙ったのがリョーの横薙ぎ。

 当たれば体が横から真っ二つに分かれるだろうその攻撃の時、サコンは前へと踏み出した。

 あわや直撃というところで、サコンはリョーの頭に手を置く。

 そこを支点として、サコンは跳んだ。回避と背後への移動を兼ねた行動である。

 それだけに飽き足らず、その行動の途中に攻撃も混ぜた。

 リョーの頭上に自身がある瞬間に、リョーの左肩を切り裂いたのだ。

 超速再生とも呼ぶべき能力があるリョー相手では、左肩を裂いても致命傷にならない。

 でも、大剣を振るう腕が肩から離れた以上、攻撃は緩む。サコンはそう考えていた。

 非常に残念ながら、それは甘い考えである。

 

「なっ!?がっ」

 

 着地が間に合わぬサコンへ、リョーの横薙ぎが入った。

 刀での防御はできたものの、大剣を受け流す事はできず、サコンの体は吹き飛ばされる。

 威力も当然受け流せず、その威力で以って地面を転がった。

 幸い、何かに激突する事はなかったため、大した傷も痛みもない。

 

「……なんで切った傍からくっついてるんでやすかねぇ」

 

 泥にまみれた体を起こし、サコンはリョーの状態を視認し、悪態を吐いた。

 そう。首を落とした時は再生に時間がかかったはずなのに、先程の切り裂いた肩はもう再生していたのだ。

 だから、リョーによる攻撃の手は緩まなかったのである。

 

「『なんで』って、再生速度は自由に操れて当然でしょ。あたしの体よ?これ」

「……左様ですかい」

 

 やろうとすれば、切られた傍から再生する。

 それがリョーの再生能力だった。

 その事実に、サコンは冷や汗をかく。

 

「さぁさぁ、続けましょう!?楽しい楽しい、延々と続く戦いを!!」

 

 リョーは恐ろしい程獰猛に微笑んだ。

 牙を剥いているような、獰猛な微笑み。

 

(ここで負けりゃあ、『サコン』の名折れだ!命を賭けろ、俺!!)

 

 サコンはその微笑みに恐れを感じながら、誇りを以って奮い立たせるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告