100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第二十三節 ダンジョン攻略達成報告

 ダンジョンを攻略してから3日後。

 道中に特筆する事はなく、俺たちは無事に王都へと辿り着いた。

 ダンジョン攻略成功の知らせを受けていた王都は、またもや勇者の帰還に多くの者が入り口で待ち伏せ、拍手喝采を俺へと送る。

 案外、王都の人間というのは暇なのかもしれない。

 

 そんな出迎えを通り抜け、馬車の積み荷とかそこら辺の後始末は4番隊に任せた後、俺はあの王と毎回しているやり取りをしていた。

 

「勇者テノールよ、よくぞ帰った。して、ダンジョン攻略は如何なるものだったか」

 

 前半部分が毎回変わっていないのは、俺の気のせいなのだろうか。

 

「ダンジョンは魔王軍幹部のレヴィが作った物であり、そのレヴィがダンジョンを操って攻撃を仕掛けてきました。俺たちも危うく死者を出すような攻撃です、多くの冒険者、未帰還者となった者はその攻撃にやられてしまったと思われます」

 

 未帰還者は肉片1つも見つからなかった訳だが、リカルドによると、攻撃にやられた者は皆床や天井に吸い込まれるように消えていったと言う。

 これでは生存はおろか、遺品回収も望めない。

 

「俺たちはレヴィの攻撃をどうにか掻い潜り、討伐に成功しました。しかし、討伐したレヴィは本体が操る人形だったようで、レヴィ本体の消滅には至っておりません。人形を討伐すると、ダンジョンの崩壊が始まりましたので、本体の所在を掴む余裕はありませんでした」

 

 結局言って、勇者本来の役目である魔王軍幹部の討伐は叶わなかった。

 だが、王命であるダンジョン攻略は果たしている。

 まさか、文句など言わないだろうな。

 

「相分かった。余が賜した命は果たされ、危険極まりない魔王軍幹部は撃退されたのだ。貴公の活躍のおかげで、また我が国の平和は守られた。褒賞は後日贈ろう。下がって良いぞ」

 

 文句は言われなかったが。

 やはり最早大体の部分が定型文みたいになっているのは、俺の気のせいだという事にした。

 そこを指摘したって、何も良い事はないし。

 

「ははっ」

 

 とりあえず、もう退出の許可は下りているので、俺は遠慮なく退出させてもらう。

 こんな堅苦しい場所に留まるより、しなくてはならない事がある。

 

 そう、俺の外出を狙ったであろう盗聴の犯人。そいつの証拠を掴む事だ。

 

 そうして王宮の自室へと足を早めていれば、あちらからある人が向かってくる。

 

「テノール様!お帰りなさいませ!」

 

 ああ、なんとも麗しきルーフェ様の出迎え。

 大衆のそれとは比較にならない程俺への思いが籠った歓待は、俺の疲れを微塵も残さずに吹き飛ばしてくれる。

 

「ただいま戻りました、ルーフェ王女殿下」

「全く、テノール様はやはりまたすぐに王命に走られてしまって。わたくしがどのくらい寂しく感じているか、分かっていただけないのですか?」

「それは、申し訳ありません。しかし、むしろ1週間近く休めたのは久々の事でしたので」

 

 奔走した約1年間、1週間休めた日があっただろうか。

 命がけの仕事をして、2日空けたら次の仕事と。俺の擦り減る精神を無視した、過密な日程だった事しか記憶にない。

 

「そんな潰れてしまいかねない遣われ方なんて、お労しいです」

「でも、ルーフェ王女殿下がこうして迎えてくれるおかげで、俺は頑張れています」

「テノール様……っ」

 

 俺の事で悲しんだり喜んだりを心の底からしてくれるルーフェ王女。彼女がそうしてくれている事で、俺の心は確かに癒されてきた。

 可愛い子がこう、慕っている気持ち全開で来てくれるからね。

 これで喜ばない男が居るなら是非会ってみたい。そして説き伏せたい。

 

「もしよろしければ、俺の自室で歓談などいたしませんか?」

 

 俺は犯人の証拠を掴む事より、この癒しをもっと得る方を優先した。

 いつまた王命が降っても良いよう、心だけでなく体も癒さねばならない。

 

(かわい子ちゃんと話せば、体が癒されんのか?)

(ああそうだ)

(左様かい)

 

 あまりにも当然な事を聞くものだから俺は食い気味に答えたが、エクスカリバーは聞いておいて興味がなさそうだ。

 

「え、えっと……。テノール様のお部屋は掃除中でして」

「掃除中?」

 

 5日空けただけで、しかもその5日前もそんなに汚していなかったはずだ。

 なのに掃除中とは、何かあったのか。

 

「す、少しでも埃が積もっていてはいけないと、わたくしが掃除を頼みました」

「なんだ、そういう事でしたか」

 

 何の事はない。俺の部屋が綺麗であるよう、ルーフェ様が気を回してくださったのだ。

 彼女はとても健気に尽くしてくれている。

 

「お気遣いありがとうございます」

「いえ、わたくしはな、何もしておりませんので。それと、すみませんが、用事が入っておりまして」

「そうですか。残念ですが、またの機会で」

「は、はい!では、また」

 

 ルーフェ様は淑女らしい一礼をしてから、この場を後にする。

 早足だったようだが、用事の直前まで俺を待ってくれていたのだろうか。

 もうそんな小さな所作だけで、俺は暖かさが胸いっぱいだ。

 

 さて。俺の部屋は掃除中との事で、適当に時間を潰そう。

 

 俺は王立図書館に寄り、掃除の終わりを待つのだった。

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