100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第十六節 一見して必要以上に集まる強者

 怪しさ満点の装いだったため、俺は誰にも触れられず依頼の時間まで過ごせた。

 組合員の方は俺を見てこそこそ話していたけど。なんだか頼んだ飲み物を誰が運ぶかで争っていたような音が聞こえたけど。

 とにかく、俺に実害はなかったのだ。

 

 開始時刻になれば、集合場所である冒険者組合前に3台の馬車が並んで停まる。

 真ん中の一番大きな馬車にはたくさんの物資と、身なりの良い者と鎧を纏った者がそれぞれ2名ずつ詰めていた。

 身なりの良い2名が組合員と話した後、集合場所に集まっていた冒険者へと顔を向ける。

 

「我々は依頼を出したテナー様の使いである調査員です。貴方方が今回の依頼を受けてくださった冒険者で、お間違いありませんか?」

 

 身なりの良い者改め調査員が念のために集まった冒険者たちへ確認すれば、集まっていた者たちが各々肯定を示す。

 

 依頼をうけた冒険者は、俺を含めて11人。

 奇妙な事に、カウとサーヴァンもそこに含まれる。

 冒険者のなり立てであるカウでは依頼制限に引っかかりそうだが、おそらく階級の高いサーヴァンと組んでいるために制限を通ったのだろう。

 冒険者の一行となった場合、依頼制限はその冒険者たちの平均となる制度があったはずだ。

 

「では、護衛をよろしくお願いします」

 

 調査員とおそらく衛兵である者たちが真ん中の馬車に乗り込み、冒険者たちは前後の馬車に別れる。

 俺は後ろの馬車。カウたちと同じ馬車であり、他に2人が乗っている。

 幸い、まだカウたちにも俺の正体は露呈していない。

 サーヴァンに会釈された気がするけど、きっとあれは同業者へのただの挨拶だ。

 

(いや、無理があんだろ)

 

 煩い。言及してこなかったし、カウに伝えた素振りもないんだ。

 色々察した上で俺の正体を隠してくれてるんだから、問題ないんだ。

 

(左様かい)

 

 良いからその小憎らしい顔を退けろ。それか引っ込め。

 

(まぁ待てって。お前の仕事仲間を検分してやろうって、わざわざ出張ってきてやったんじゃねぇか)

 

 いつも気まぐれに出張ってくるエクスカリバーのどこに『わざわざ』という要素があるかは知らないが、検分してくれると言うならさっさとやってほしい。

 短い付き合いとはいえ、力量が分かるに越した事はない。

 

(んじゃ、まずは魔術師の方からな)

 

 エクスカリバーは外套と尖った帽子の、まさに魔術師という男の元へと飛んでいく。

 そして品定めする訳だが――

 

(……は?なんだこいつ)

 

――エクスカリバーはいきなり眉を顰めた。

 

(どうした、エクスカリバー。そいつに何かあったか)

(こいつ、魔力制御が見事だな。全然漏れてねぇ。だってのに装備がどれも質が低い。こりゃ手ぇ抜いてやがるな?)

 

 エクスカリバーの観察眼によると、己の技量に見合っていない低質な装備で固めている魔術師。

 手抜きとエクスカリバーは推測したが、なんだって手を抜いているのだろうか。

 

(こっちの剣士は……。訳が分かんねぇな)

 

 その魔術師の隣に座る剣士も、エクスカリバーが首を傾げても仕方ない風体をしていた。

 彼が座る際に邪魔になって立てかけた武器は、弓に槍、斧に大槌、長剣にブーメランと、無駄に品揃えが良い。

 しかし、冒険者としては無駄すぎる。装備が多ければその分重量が増し、動きが鈍くなる。重装の盾役だとしても、盾と武器1つで済むはずだ。

 というか、よくそんなたくさんの武器を抱えて歩けていたな。

 

(こいつもできる。できる奴なんだがぁ……。あぁぁ、マジで分からん。どれが本物の得物だ?満遍なく鍛えてるみてぇで全然分かんねぇ)

 

 エクスカリバーの観察眼を以てしてもどれが主武装か分からない剣士。

 もう剣士という表現すら正確性を疑われる冒険者だ。

 

 そんな奇妙な2人組と同じ仕事に就いてしまった俺は、予測できない依頼の行く末に不安感を覚えてしまう。

 そんな俺だけ気が滅入り始めたところで、カウが立ち上がる。

 

「皆さん、同じ依頼を受けた仲間として自己紹介をしませんか?」

「お、良いねぇ。辛気臭いのは嫌なんだ。俺は仲良くやりてぇって事で、俺から行こうか」

 

 カウの建設的な提案に乗ったのは、剣士かも疑わしい冒険者。

 彼は陽気な雰囲気を醸し出してから口を開く。

 

「俺はユウダチ。3級冒険者だ。荒事は大好きだから、先陣は貰ってくぜ」

 

 どうやらエクスカリバーの同族のようだ。

 

(誰が戦闘狂だって?)

 

 そこまでは言ってないだろ。

 

「では、次は私か。私はレオナルド。こいつと組んで冒険者をやっている。階級は3だ。見ての通り魔術師だから、前線には立たせないでくれ」

「陰気な奴だが、俺共々よろしくな」

「……お前のように陽気な振る舞いは面倒なんだ」

 

 魔術師改めレオナルドは細い見た目に合う中性的な声を発しつつ、肩を組んできたユウダチを払い除けた。

 ……もしかして、女性なのか。

 

(男だぜ?付いてるからな)

 

 なんだ、男か。

 

(露骨に残念がりやがったな、こいつ)

 

 男ばかりでむさ苦しいのは勘弁だ。

 その点、カウが居てくれて助かった。

 

「私はカウと言います。まだ8級冒険者です」

「8級?この依頼6級からじゃなかったっけ?」

「そっちの付き人が3級以上なんだろう」

 

 ユウダチの疑問に対し、レオナルドは己の頭で答えを得た。

 頭は回るが、社交性は低そうだ。

 

「ご明察でございます。私めは3級でございます。カウお嬢様と共に冒険者をやらせていただいております、サーヴァンと申します。以後、お見知りおきを」

 

 相手の身分問わず、サーヴァンは礼儀正しいお辞儀をしながら自己紹介をしていた。

 仕える人の名誉を貶めないため、細心の注意をしているようだ。

 

「へぇ、カウはお嬢様なのか」

「はい!マインズ家の次女で、今は見聞を広めるために冒険者として旅をしてます」

「ほう!そいつは良いな。旅は良いぞぉ、色々面白い体験ができるからな」

 

 陽気なユウダチと元気なカウ。

 彼らのやり取りはこの場を心地よく暖めている。

 そうして暖めたところで、この暖かさに加えようと次の人に意識を移す。

 

「それで、そちらの方は?」

 

 次の人とは、当たり前だが俺だ。

 外套と頭巾で正体を隠している俺を、カウの視線が貫いていた。

 (まず)い。カウとは言葉を交わした仲だ。

 口を開けば正体が露呈するかもしれない。

 

「……」

 

 俺は俯いたまま、黙秘する作戦に打って出た。

 

「あのぉ……」

 

 待って、カウ。頭巾の下を覗き込まないで。

 

「お嬢様、彼は就寝中のようです」

 

 サーヴァンはそんなカウを引き留めた。

 ありがとう、サーヴァン。貴方の優しさが身に染みる。

 

「あ!寝てたんですね。……ちょっと騒ぎすぎていなかったでしょうか」

「起きていないようですから、大丈夫でしょう。しかし、これからは気を付けねばなりません」

「そうですね。少し声量を抑えましょうか」

 

 カウはサーヴァンの注意を誠実に受け止めた。

 俺への興味も失せたようで、すぐに離れて元の場所に戻る。

 

 それから話題に上げられる事もなく、俺は寝た振りを慣行するのだった。

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