100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者   作:RAINY

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第三十五節 暴力は色々と解決する

「ここが件の森ですか……」

 

 マリーたちが魔道具調査のために向かった森であり、おそらく彼女たちが消息を絶った場所。

 一見して何の変哲もない森だ。

 パースも注意深く観察しているようだが、二の句が続いていない辺り、目ぼしい物を発見できてはいないようである。

 

「首飾りの反応はこの近くです。さぁ行きま―――ぐえ」

「そう勇み足になるなって。こっちは少数なんだからよ」

 

 ムラマサが先行しようとしたところを、ユウダチが襟首を掴んで制止した。

 ユウダチの言葉の通り、こちらはたかだか6人。

 聖剣エクスカリバーと聖剣デュランダルがあるとはいえ、油断するのは(まず)い。

 

「俺が先頭を行って案内する。レオナルドの位置は俺も首飾りで反応を追えるからな」

 

 3級以上の実力を持つだろう冒険者のユウダチ。彼が先導に立候補した。

 弓に半棒、細剣に湾曲剣、斧に大槌と、相変わらず多数装備を背負っている。

 その背中はユウダチの実力を知っていれば、心強く思うだろう。

 

「先頭、よろしくお願いします」

「おうとも」

 

 俺が代表して先導を任せると、ユウダチは笑顔で請け負った。

 隊列の先頭はこれでユウダチに決まったのだ。

 後ろにムラマサが続き、そのムラマサの両脇をリカルドとパースが固め、ニオ、俺の順でムラマサの後ろに付き、隊列ができ上る。

 

「……今さらですけど、ユウダチ。他の部品、どこやりました?」

「な、失くしてはいねぇよ……?」

「どこやったかって聞いてんだよ」

 

 部品とはなんの事か不明だが、ムラマサはその在処を大層気にしていた。

 ユウダチがはぐらかそうとすれば、その声に幾分か殺気が混じる程だ。

 何故か、赤い枝のような物も握っている。

 

「レオナルドに預けたまんまですすみません!」

「……ちょっと焦がして良いですか」

「良くねぇよっ、全然良くねぇ!頻繁に使わないよう、レオナルドに没収されてるんだ!俺は悪くねぇ!」

 

 レオナルドに没収されるという事は、何か危険物なのだろうか。

 ムラマサの友人のようだし、案外聖剣のような武器を持っている事も考えられる。

 その武器で暴れた結果が没収、という可能性はあるか。

 

「……レオナルドの判断となると、ユウダチだけの非ではありませんね」

 

 ムラマサは得心し、赤い枝をしまった。

 ユウダチは殺気がなくなった事に安堵し、胸を撫でおろしている。

 

「ムラマサさんが喪失を気にしてるって事はもしかして、その部品とやらは聖剣だったりするんですかねぇ」

 

 一悶着が収集したところを見計らい、パースは部品について詮索した。

 4番隊隊長としては、聖剣を所持している可能性を無視できないらしい。

 

「聖剣という程大した武器ではありません。ユウダチ専用に作った、ただの仕掛け武器です」

 

 意外には、ムラマサは簡単に口を割ってくれた。

 いや、意外でもないか。歴代ムラマサの作品も、割とあっさり明かしていたし。

 

「仕掛け武器、と言いますと?」

「10個の部品をそれぞれ組み合わせる事で様々な武器になる、そういう仕掛けを施してある物です。……こいつには結構色んな武器を作ってきましたが、毎度『飽きた』の一言で返却、悪い時はどこかに放ってきちゃうんです」

 

 ムラマサが『こいつ』と称して指差す人物は、もちろんユウダチである。

 なるほど。またどこかへ放ったのかと、ムラマサは心配になったが故に殺気を発したのか。

 

「飽きさせぬように趣向を凝らした結果が、仕掛け武器なんですが……」

「今回は長続きしてるぜ?」

「長続きじゃなくて、永続してください。次はもうありませんからね」

 

 ムラマサに念を押されているが、、ユウダチに悪びれた様子はない。

 

「そう言っていつも新しいの作って―――」

「次はありませんからね」

「うぃっす。こいつは大事にするんで修理だけはお願いしゃす。ちゃんと対価は払うんで」

 

 ぶり返したムラマサの殺気に、ユウダチは背筋を伸ばした。

 おまけに殊勝な態度を心がけている。

 

「っと、話は変わるけどよ、ムラマサ」

「なんですか。機能の追加なら考えてやらなくもないですよ」

「それはまたの機会に話し合いたいが、そうじゃなくて。これ、首飾りはここだって示してるんだが……」

 

 ユウダチが首飾りを掲げれば、ムラマサがそれを覗き込み、自身の首飾りも覗き込む。

 ……首飾りの何が『ここ』と示しているのだろう。

 

「そうですね、彫像の目が動いてません」

 

 ……首飾りの彫像って、目が動いたのか。

 ちょっと怖くないな。

 

「……ん?ああ、そういう事ですか。ユウダチ、この下です」

 

 ムラマサが彫像を傾けてみれば、その目は確かに下を向いた。

 ユウダチは目の向きが見やすくするためか、彫像を水平に構えていたのだ。

 だから、前後左右に向けても、上下には向けなかったという事になる。

 

「下、ですか……。掘削機なんて持って来てませんから、どうしましょうね」

「ぶち抜きゃ良いだろ、よっと」

「え、ぶち抜くって、おいおいおい!」

 

 パースが地面掘削による時間浪費を懸念しているのだが、ユウダチはそんなのお構いなしで大槌を大きく振りかぶった。

 リカルドが驚きつつもその行動を止めようとするが、残念ながら間に合わない。

 ユウダチの振り下ろしは、地面を砕いた。

 ただし、土が舞い上がったり、割れた岩が隆起したりはしない。

 穴が、開いたのだ。

 

「……パース隊長。空洞のような物、それもかなり人工的な造りのそれが確認できます」

 

 ニオは空いた穴の先に人工物を視認した。

 正規の方法では絶対ないが、俺たちは敵の拠点らしき物を見つけたのだった。

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