石上優はもう戻れない   作:顎髭

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原作のアニメ三期制作が決定しましたね。
恐らく前生徒会長や龍珠さんが声付きで出て来る訳ですが、私の脳内では、

前生徒会長(CV.櫻井孝宏)
龍珠桃(CV.種崎敦美)

で再生されてます。てか、そうなって欲しいです。
そんな私のくだらない願望はさておき、引き続き龍珠さんの過去(私の勝手な想像)を、どうぞ。


そして龍珠桃は辞めたくなった

「あ?何だお前?」

「何だお前って……。これは困ったね。これでも、僕は生徒会長なんだよ?この胸の飾緒が目に入らなかったのかい?」

「……何の用なんすか?」

「君にいい話があるんだ。生徒会室で、お茶でもどうだい?」

 

 

 

 

 

「……へぇー……。私なんかを生徒会に……。馬鹿なんかお前?」

「随分ストレートに物を言うんだね。というか、仮にも僕は先輩なんだよ?敬語は使って欲しいところなんだけどね…。

 ……まあ、でもそれがいい。」

「…えっ?」

「君の様に、何に対しても臆せず物を言う事が出来る人間が、ちょうど欲しかったのさ。それが、僕が君を推薦した理由さ。」

「………………。」

「フフッ。随分僕の事を警戒している目をしてるね。そんなに他人を拒みたいのかい?

 良かったら、君の鬱憤を聞かせてくれないかい?」

「…………何なんだお前………。あと、その胡散臭い笑みやめろ。見てて腹立つ。」

 

私は会長に睨みを効かせた。

 

「………まあ、じっくりと考えて欲しい。僕はいつでも大歓迎だよ?」

「…………そうかよ……。」

 

曖昧な感じの返事をして、私は生徒会室から出て行った。

何なんだあいつは……。変わった奴だ。私がどういう奴か分かって……るか……。

分かってる上で私にあんな誘いを………。

そんな事を考えながら歩いていたものだから、周りの事がよく見えていなかった。誰かとぶつかってしまった。

 

「いて………。」

「あ、ごめんごめん!大丈夫?」

 

この時の私は思ってもなかった。

 

「……あ!もしかして、君が龍珠桃ちゃんだね?」

「あ………はい……。」

 

この人に出会っていたからこそ、私はまだ秀知院にいる事が出来ることに……。

 

「……ねぇ、そのキーホルダーって……。」

「え、あ……。」

 

その人は私のキーホルダーに目をつけた。私の大好きな熊のキーホルダーだ。

 

「可愛い〜!もしかして、この熊のキャラクター好きなの?」

「えっ………まあ……。」

 

何なんだこの人は?ていうか、誰なんだ?

 

「そっか〜。私もちょっと欲しくなっちゃったかなぁ〜。」

「…………………。」

 

一体何なんだ?この無駄にフレンドリーな感じ。ちょっと苦手だし………ウゼェ。

 

「………あんま私と関わらない方がいいっすよ。変に噂されても知りませんよ?」

「……そ、それってどういう……?」

「私の親が誰だか、あんただって知ってんだろ?私と関わっても、ロクな目に遭いませんよ?」

 

どうせ、あんただってそうなんだろ。仲良くするだけ仲良くなって、都合が悪くなったら勝手に切り捨てて、今度は私に後ろ指を……。

分かり切ってるんだよ。わざわざそんな辛い思いするくらいなら、最初から拒めばいい。

 

「そんじゃ。」

「あ、ちょ、ちょっと桃ちゃん!」

「気安く私の名前を呼ぶな。馴れ馴れしい。」ギロッ

 

つばめに睨みを効かせて、龍珠は去っていった。

 

「…………………。」

 

つばめは龍珠の後ろ姿を見て、こう思った。

本当は、友達が欲しいのでは?本当は、誰かに笑顔を見せたいのでは?

どこか………助けて欲しい感じが見受けられた……。心から分かってくれる人間を欲しているのでは………。

 

 

 

 

 

くそっ。くそっ。

今日はどうも調子が狂う。訳の分かんない会長には生徒会に招待されるわ、無駄に明るい先輩に絡まれるわ、何かムシャクシャする。

もうすぐ完全下校時間だった為、屋上に置きっ放しにしておいた荷物を取りに行くと、そこに一人の男子生徒がいた。

 

「あっ………。」

「……あ?何だお前?」

「い、いや……会長に……これをって……。」

 

おどおどした感じで、その男子生徒は龍珠に紙を渡した。

 

「……何だこれ?」

「龍珠って人に、渡して欲しいって会長が………。」

「………さてはお前だな?会長が言ってた混院の……。確か……名前は………まあいいや。んで、何だこれ?」

 

四つ折りになっていた紙を開くと、そこには会長の字でこう書いてあった。

 

『僕はいつでも大歓迎だよ。この時間なら基本的にフリーだから、気楽に生徒会の見学に来るといいさ。』

 

意地でも私を生徒会に入れたいのかよ………。どこまで変わってんだこいつは……。

苛立ちにしてはそこまで湧き上がってくるものではなかった。よく分からない感情が、龍珠の中に芽生えた。

 

「おい。」

「な、何……?」

「……会長にこう伝えとけ。

 『そこまで言うなら見学に来てやる。私がどう言う人間かまだ分かってない様だから、分からせてやる。』ってな。」

「う……うん……。」

「………あとお前。何かおどおどしてて気色悪ぃ。男ならもっとハキハキしろや。腑抜けな男は嫌いだ。」

「えっ……。」

「てか、名前は何だ?」

「あ……し、白銀……。」

「聞こえねぇ。もっとハキハキしろや。」

「し、白銀だよ……。」

「ふーん………白銀ね………。」

 

外部入学生でも、私の事は知ってるはず。

大方私が怖くてこんな感じなんだろうな。ほんっと、どいつもこいつも本当に嫌だ……。

 

「……りゅ、龍珠さん…。」

「?」

「………もし、生徒会に入ったら……そん時はよろしく。」

 

こいつ……。

 

「………ぷっ。ははははは……!」

「……えっ?俺、何かおかしな事言った……?」

「この私によろしくだって?はははは……!お前、私がどーゆー奴か分かってて言ってんのか?

 かの有名な暴力団・龍珠組組長の娘なんだぞ?そんな奴に、『よろしく』って……!

 ………マジでふざけんなよな。」

 

龍珠は白銀の胸ぐらを掴んだ。

 

「どいつもこいつも何なんだよマジで……!!どうせテメェも私の事を家柄でしか判断してねぇんだろ!?最初はいい感じで接してきて、後になって掌返すかのように切り捨てる!!

 もううんざりだよ!!何がよろしくだ!!テメェも私の事そういう目でしか見てねぇくせして!!優等生ぶんのも大概にしろよな!!」

「…………だから何なんだ?」

「……あぁ?」

「……親が暴力団の組長……。だから何なんだって言うんだ?」

「……え…。」

「龍珠さんは龍珠さんだろ?親がどうこうなんて、関係無いよ。

 というか、君はそうやって虚勢を張る事で、自分の本心に蓋をしている様に俺には見えるんだけど……。

 本当は友達が欲しいんじゃないのか?本当は他人の事を信用したいんじゃないのか?」

「……何だと………。」

「………あ、ご、ごめん…!混院の俺なんかが、こんな説教じみた事……。ごめん……。」

「…………お前らに、私の何が分かるってんだ………。もうこんな学校………辞めてやる………。」

 

震えた声で龍珠はそう言い、荷物を持って去った。

階段を降りる最中、視界が潤んでいるのに気が付いた。

涙だ。私は、泣いている。

もう嫌だ。こんな奴らとなんか、もう関わりたくない。もうここに行きたくない。こんな所、なくなってしまえばいい。

何が国内随一の名門校だ。何が由緒正しい名門校だ。ふざけんじゃねぇよ。

こんな学校………こんな学校…………!!

大粒の涙を流しながら、龍珠は外に出て行った。

 

 

 

 

 

もう、何もしたくない。

龍珠は帰宅すると、真っ先に自分の部屋に閉じ篭もった。

組員の人間が何事だと思いノックをしたが、部屋に近づくなと怒声を放った。そのまま何時間が経過しただろうか。夕飯や風呂の呼び掛けにも答えず、ただベッドの上で丸くなっているだけ。

もう………全部が嫌だ………。

 

「……桃。」

 

ノックの音が聞こえた。あれほど部屋に近づくなと言ったが、ノックの音の直後に聞こえたその声だけは別だった。

親父だ。普段滅多に家に帰ってこない親父だ。

 

「………入るぞ?」

「………ああ………。」

 

静かにドアを開けて、龍珠の父は部屋に入った。

 

「…………………。」

「………何だよ……?」

 

龍珠父は、その場に腰を下ろした。そして………。

 

「………悪かったな…。」

「…………………。」

「俺なんかが親父で……お前にこんな辛い思いをさせちまって……。もう、学校に行きたくねぇんだろ?」

「……何でそれを………。」

「んなもん見りゃ分かる。大事な一人娘だからな。」

「………だったら……何だって言うんだよ………。」

「………全部ゲロっちまえ。」

「……は?」

「……お前、本当はどうしたいんだ?本気で学校辞めたいと思ってんのか?」

「……そう言ってんだろ……。というか、もう転校もしたくない……。どうせまた後ろ指差されるだけだ………。」

「……じゃあ、このままずっと引き篭もってんのか?」

「……………………。」

 

龍珠はさらに縮こまった。手にしてた熊のぬいぐるみを強く抱き締めて。

すると、龍珠父は立ち上がり、龍珠の頭を撫でた。

 

「……はぁ……。何だよ………本当は学校行きてぇんじゃねぇか………。」

「……そんな………そんな事……ない……。もう………秀知院なんて………嫌だ………。」

「お前はほんっと、素直じゃねぇな……。誰に似たんだが……。

 何でそうやって自分から突き放しちまうんだよ?せっかく快く話しかけてくれた奴を、悪意無く接してくれた奴を、何でそうやって突き放しちまう?

 ……裏がある、と思っちまうのか?」

「………だって………今までずっと……そうだった……。」

「今までがそうだからって、これからがそうとは限らねぇだろ…。

 誰もがお前の敵だ?何でそう決め付けられんだ?根拠はあんのか?」

「………何だよ……結局親父もかよ………!」

「………ん?何だその紙は?」

 

龍珠の右手には、会長からの手紙が握られていた。

龍珠父はそれを手に取り、開いた。

 

「あっおい……!」

「なになに………。生徒会か……。お前、やっぱ学校行きてぇんじゃねぇか。」

「そんな事………!」

「じゃあ何で、さっさとこの紙を捨てなかったんだ?何で破かなかったんだ?」

「!!」

「…………本当に学校に行きたくねぇんだったら……、今ここでこの紙を破いてみろ。」

「……は?」

「もう行きたくねぇんだろ?だったら、いつまでも会長からの招待状握り締めてても意味ねぇだろ?ほら、破いてみろ。」

「……………………。」

「どうした?ほら、ほら。破けよ。」

「……………………。」

 

龍珠は父から紙を受け取った。

そうだよ。もう学校に行きたくねぇんだよ……。こんなのいつまで持ってても仕方ねぇ……。さっさと破いちまおう。こんなの、ただのゴミクズだ。こんなの………。

 

『それが、僕が君を推薦した理由さ。』

 

生徒会なんて……秀知院………なんて…………。

 

『………もし、生徒会に入ったら……そん時はよろしく。』

 

こんな紙切れ………なんて………。

 

「……………何で…………。」

「………ん?」

「……手が…………言う事聞いてくれない…………。」

 

体を震えさせて、龍珠はそう言った。

 

「………ハ…ハハハハ……!!」

「……な…何だよ急に…………。」

「何が手が言う事聞いてくれないだよ!!ちゃんと言う事聞いてんじゃねぇか!!ハハハハ……!!」

「そ、そんな事…………!」

「………これで立証出来たな。桃。」

「…………………。」

「お前は、まだ学校に行きてぇ。

 だからもう、変に虚勢なんか張るな。自分に正直になれ。

 ……会長さんに招待されて、本当は嬉しかったんだろ?」

 

………何なんだよ…親父まで………。

何で親父まで私の事を……私の事を………。

 

「…………うっ………ぐっ……。」

 

何で親父まで……私の事を……泣かしてくるんだよ………。

今まで溜まっていた思い、自分が本当はどうしたいのか。

それが涙になって、全部出てきた。

いつ振りだろう。こんなに声を出して泣いたのは。男臭ぇ親父なんかに抱きついたのは。

いつ振りだろうか。親父が、私にこんな温かい笑顔を向けてくれたのは………。

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