石上優はもう戻れない 作:顎髭
○根本紀明(ねもと のりあき)
オリキャラ。
「つまらない」を嫌い、裏で何かをしては、相手が混乱する様を見るのが趣味な、歪んだ性格の持ち主。
あと、誤字報告ありがとうございました。
テストはまあ、何とかはなった。適当にそれっぽく勉強して、何とか留年しない位の点数を取った。何の為に勉強したかは分からないが。
「…………はぁ。」
屋上で横になり、空を眺めていた。
何度も思う。僕は一体、何の為に息を吸っているんだ?この時間は一体何なんだ?何か利益を成すのか?というか、僕の存在価値は……。
「………流石に暑いな………。」
夕方といえど、今はもう7月。こんな暑いというのち、何故自分は外にいるんだと思い、学校から出る事にした。
「…………このまま脱水で死ぬのも有りだったかな………。」
もう、いつ死んでもいい気がしてきた。なるべく手軽に、あっという間な方法で………。
「……随分浮かない顔してるね。」
誰だと思い、後ろを振り向くと、屋上のドアの陰から、一人の男子生徒が姿を現した。
「やぁ。」
「………誰だ?」
「同級生なんだけどねぇ……まあいいや。僕は根本。根本紀明だよ。」
何だこいつ……。薄ら笑いを浮かべてるしで、どことなく不気味な雰囲気を漂わせている。
「それよりさぁ、どうしちゃったのさ?そんなつまんなそうな顔しちゃってさぁ。何か嫌なことでもあった?」
根本はそう言って、石上に近づいてきた。
「………………。」
「その顔は嫌なことがあったって顔だね?ハハッ。君って結構分かりやすいんだね。」
嫌なことね……。全部だよ。生きてることが、もう億劫になってるよ。
ていうか、何なんだこいつは……。
「………あんまり俺なんかと話しても、無駄に時間が過ぎるだけだぞ。知ってるだろ。俺が何したか……。」
「まぁね。あの事件は結構凄かったなぁ〜。
でさ、その件についてなんだけどさぁ……。」
根本は石上の肩に腕を乗せて……。
「……あいつらに、復讐でもしてみない?」
石上にそう耳打ちした。
「…………はぁ?」
「あれ?僕てっきり、君って同学年の奴らに恨みを抱いてるとばかり……。実はそうでもない感じなのかい?」
「………今でも死んで欲しいとは思ってるけど………。」
「………………大友京子も?」
「…………当たり前だろ。」
あの時自分を拒絶しといて、今更になって謝られても、かえって虫唾が走るだけだ。まんまと荻野の嘘に乗っかったくせして…。
あの時、同学年から嫌になる位の謝罪が殺到した。やっと自分のことを分かってくれる人間が出来た。そんな感情は皆無だった。
あったのは、奴らの虫の良さや程度の低さに対する苛立ち。奴らが自分にやってきたこと、言ってきたことに対する嫌悪や憎悪。あの時、ありとあらゆる悪意が湧き上がってきた。
ただ……。
「………別に復讐したとしても、あいつらはどうせ『自分は何も悪くない』の一点張りだろ。あいつらの民度の低さがお墨付きなのは、お前も知ってんだろ?」
「……まあね〜。正直僕も、あいつらの事はあんまし良い目で見てないし。伊井野ミコに対する嫌がらせ、大仏こばちに対するやっかみ、君に対する罵詈雑言。それら全てに対してあいつらは、『自分は何も悪くない』。醜いよねぇ〜。とってもいい醜さだよねぇ〜ハハッ……。」
よくは分からない。だが、直感で感じた。
こいつはヤバい。異常だ。
「でも、復讐であいつらを反省させられるってんなら、君もやりたいんじゃないかい?どう?どう?」
「…………お前……何が目的なんだ……?」
「目的ねぇ〜……。ん〜………。特に無いかな。」
「……特に…………無い……?」
「別にさぁ、僕は正義のヒーローのつもりでもないし、あいつらを恨んでる訳でも無し。正義感や悪意のもと、僕は君に復讐を提案したんじゃないんだ。
………僕はただ……楽しみなんだよ………。」
「……楽しみ……?」
「あいつらって、親がちょっと偉い、他人よりもちょっと頭が良い。たったそれだけの理由で『自分はあいつよりも上』『自分は特別な存在だ』って自惚れて、他者を見下し馬鹿にする。それを除いちゃえば、自分らはゴミクズ以下だってのにさぁ……。まさに、いい気になってるって言うよね〜。
そんないい気になってるゴミクズがさ、ふとした事でどん底に突き落とされたら、どんな顔するのかなぁ〜?どんな事を口にするのかなぁ〜?僕はそれを見るのが、楽しみで楽しみで仕方がないんだよぉ〜!!
あぁ〜!想像しただけでゾクゾクしてきた……!あいつらの顔面が蒼白になるのを……早く見たいなぁ……!」
狂ってる。
根本紀明を端的に言い表すなら、その一言が適切だろう。奴はただ、同学年の奴らが苦しむ様を見るのが好きなだけだ。全て自分が楽しむ為だけに、他人を蹴落とす様な奴だと……。
「………………。」
「……あれ?絶句しちゃった?僕のこと、クズって思っちゃった?まあ〜さぁ〜、荻野程のクズでは無いと思うけどさー……。流石にあれは外道が過ぎるよぉ〜。何か変な斡旋業に手ぇ染めてたんだって?」
「な………何で知って………!!」
「情報収集能力には自信があるんでね。それで荻野の事強請ろっかなぁ〜って思った矢先、君があの事件を起こした。そして荻野の嘘に皆が騙されて、君が悪者扱い。そしてさらにその5ヶ月後、君が真実を告発して、君の疑いは晴れて、荻野は人生から永久的追放。
何と言うかなぁ〜………。あんまり僕の好みの展開じゃなかっ」
言い終わる前に、石上は根本に掴みかかった。
「知ってたんなら、何で助けなかった!?何で野放しにした!?」
「まあまあまあ……。そうカッカしちゃ駄目だよ〜……。」
「俺はあんな地獄を味わったってのに、お前は本当の事知っときながら見て見ぬ振りかよ!!どうだった!?楽しかったか!?俺のあんな無様な姿見れて、お前は大満足か!?」
「………まあ、無実の人間をゴミ扱いするあいつらを見るのは、何とも滑稽だったけどさ。馬鹿みたいだったなーハハッ……!」
「………………。」
「……ん?殴りたい?いいよいいよ。君の鬱憤が僕みたいな奴で晴らせるなら、どうぞどうぞー。」
ヘラヘラしながら根本はそう言った。
「…………………チッ。」
石上は根本の胸ぐらを離すと、階段を降りようとした。
「ああーちょっとちょっと!まだ話は終わってないって!」
「何だ?俺を馬鹿にしに来たんじゃないのか…!?」
「最初に言ったじゃーん。一緒にあいつらに復讐しないかって!
で、その返事はどうな訳さ?当然僕は大歓迎だよ〜?」
殺したくなってきた。
余裕ぶってるこの調子。おちゃらけた感じで相手を馬鹿にして、相手が憤っている様を見て楽しむ。そして、真実を知っていながら助けなかった奴がいたことに対して………僕は本気であいつを殺したくなった。
「………一緒にさ、いい気分になろーよ?」
根本は再び近づいてきて、僕の肩に腕を置いた。
「嘘かどうかも疑いもせず、自分らの憶測を勝手に真実と決め付けたあいつらを……。自分の事をいじめてきたあいつらを……。一緒に潰そ?」
石上優は、過去のことを頭に浮かべた。
自分は何もしてないのに、周りからは冷ややかな視線。嫌がらせの数々。嫌になる程の罵声や悪口。
そのせいでどれ程死にたくなったか。なのにあの時の僕は、頑なに本当の事を言わなかった。たった一人の人間を守る為に。
「………少しは………気分が晴れるのか………?」
でも、それは本当の感情を押し殺していただけだった。
本当は心からあいつらの事が憎かった。殺したかった。死んでほしかった。何でなんだ?おかしいだろ?何で荻野が被害者で、僕が悪者なんだ?僕はただ、極悪人をどうにかしようとしただけなのに。
なのにあいつらは………。大友も大友だ。せっかく守ろうとしてやったのに、僕を突き放しやがって……。お前なんかの為に身を挺した自分が馬鹿みたいだ。
もう、どーでもいいや。どいつもこいつも、死ねばいいのに。
「………さぁ?お返事は?」
「…………○○○○。」
そう言って僕は、階段を降りて、玄関へと向かった。
一週間程投稿をお休みさせていただきます。
次回投稿は、12/7になる予定です。