石上優はもう戻れない 作:顎髭
朝日が眩し過ぎる。家から出るのも、登校も久々だ。
ある事無い事書いて、反省文5枚は何とか書いたものの、しかしな……。
『次またしでかしたら、どうなるか分かってるよな?最悪退学も考えさせてもらうからな。』
「………………。」
別に退学になってもいいのだが、何度も言う様に、退学後のプランがまるでない。今は惰性で通い続けてはいるものの、流石に今退学となるのは少しタイミングがな………。
どこかでバイトして一人で暮らすにしても、バイトの面接すら受かる気がしない。
参ったな………。マジでダメ人間だ……。
ボーッとしながら歩いていると、目の前に何かが落ちてくる音がした。そしてそれは、跳ねる様に石上の元へ向かってきた。ラグビーボールだった。
「……………?」
「おーいそこの一年!」
声のする方へ顔を向けると、筋肉質の男子生徒がこちらに手を振っているのが目に見えた。
「悪い悪い!取ってくれないか?」
はぁ………。見るからに一番嫌なタイプな人間だな………。男ではあるが、子安つばめと酷似している部分がある。僕がどういう人間が分かってるくせして………。
そんな事を思いながらも、渋々ラグビーボールを手に取り、その男子生徒の方へボールを投げた。
「おー!センキュー!結構いい投げしてるじゃん!」
チッ……。見るからにザ・陽キャな感じがすんな……。心からうざったいな……。本当はんな事思ってもないくせして……。どうせあの人も僕の事見下して………。
嫌悪感丸出しの視線を向けて、石上は自身の教室へ向かった。
「………………。」
「おーい!何してんだ風野ー?」
「……いや、何でもねぇ。(何か、睨まれた気がするんだが……。気のせいか………?)」
この時の石上と風野はまだ思ってもいなかった。近いうちにまた、顔を合わせる事になってしまう事に……。
「(………確か、伊井野って風紀委員会やめたんだってな……。)」
いつもは風紀委員会の仕事で、教室に入るのが遅くなるのが日常だった伊井野だが、今日は石上が来る前に既に着席していた。
「………………。」
朝から耳が痛くなる思いをしなくなると考えると、まあ多少はいい気分にはなる……がだ。
………朝からコソコソコソコソとうるせぇ……。
まあ確かに殴ったのはこっちだから、それについては何とも言えない。でもな……こいつらにどうこう言われるのだけはマジで苛つく……。こいつらって本当に人を見下す事でしか強さを見出せないんだな……。弱いな。弱過ぎる。ゴミ以下だな。
こんな奴らと同じ空間にいると、息が詰まりそうだ。こっちまでゴミになりそうな気がしてならない。こいつらよりゴミになるのだけは御免被る。もし、じぶんがこいつらより落ちぶれたら………。
「………その時はその時だな………。」
小声で石上はそう言った。
「そうですか………。」
放課後、生徒会では白銀と校長が話をしていた。
「ええ。ですが、彼はそれ相応の事を何度もしてますカラね……。」
「石上優……。次にまた問題行動を起こしたら、退学処分か……。」
「………教師側としては、とても好都合なことデス。不良生徒を即刻処分出来る可能性が高まったのですカラ……。」
俺は、この学校の教師に関してはあまり良い目を持てない。一年次に腐っていて、教師達もそういう目でしか見れなかったというのがまだ残ってるのもそうだが、生徒会長になってからも、二言目には学校の名誉だのと……。彼らは本気で俺達と向き合う気があるのかと思っていた。
「………しかし、石上優以外にも、素行不良はちらほらいます。特に今年の一年はそうです。噂によれば、あの荻野コウと関わりを持っていた者もいるとか……。」
「……それ相応の対応をしなければ……デスね……。」
ただでさえ夏休み前の件もあり、秀知院の評判は現在進行形で右肩下がりだ。これ以上評判が下がるとなると、例え四宮家や四条家がいくら資金を寄付したところで、学校の存在価値自体が薄くなってしまう。
もうあの件で終わりにするんだ。その為にも、生徒会長として対策を練る必要がある……。
「………………。」
白銀は悩んだ。悩んでいたせいなのかは分からないが、生徒会室の扉の陰に立ち、誰かが白銀と校長のやり取りを聞いていたなど、本人達は気付いていなかった。
「…………駄目だ。全然出ない。」
「マジで何してんだよアイツ……。」
「それもこれも全部、石上が………。」
校舎内の人気の無い所で、男子三人が話をしていた。誰かに電話をした直後だったが、出なかったようだ。
「………くそっ……。石上の野郎……余計なことしやがって……。」
「……大友なんてただの馬鹿だから、それっぽい事言っとけば簡単だったのに……。」
「……許せねぇ……。あいつだけは絶対………。」
「………てか、あいつ遅くね?」
「チッ。何分経ってると思ってんだよ……。」
三人が何かに苛ついていると、一人の眼鏡をかけた男子生徒が走ってくるのが目に見えた。
「おいおいおい。何分経ってると思ってんだよ。」
「ハァ……ハァ……ハァ……。」
「相変わらずトロいよなお前って……よぉ!!」
長髪の男子生徒が蹴りを入れた。
「ガハァ……!!」
「チッ。汚ぇな。てか、音がデケェんだよ。誰かに見られたらどーすんだ?えぇ?」
「ご……ごめん………。」
「『ごめん』じゃなくて、『大変申し訳ございませんでした』だろ!!」
メッシュがかった茶髪の男子生徒が腹に拳を入れた。
「……ぐふぅ……!」
「あーマジでイラつくわ。お前といい石上といい……。
何か石上をぶっ潰すチャンスねぇかなぁ〜………。」
「………ん?」
帰宅しようと校門に向かう最中、石上は何か鈍い音が遠くでした気がした。人が殴られる音がした気がした。だが、空耳だと思いその場を後にした。
それと同時に石上は、何か自分にとてつもなく大きい出来事が起きそうな感じがした。それが決して良い出来事か悪い出来事かは、分からないが………。
区切りがいいので、しばらく休載します。
次回投稿日は、1/27(水)に予定しています。