石上優はもう戻れない 作:顎髭
話も段々と最終話に近付いてきました。最後まで「石上優はもう戻れない」をよろしくお願いします。
今になって、ゲーム機を壊し、ソフトも全て売ってしまったことを後悔している。まぁやる事が全然無い。ゲームセンターでのゲームも全然いいのだが、いかんせん金もそこまで無い。
いよいよ金銭面での問題が段々と深刻になってきた……。だからと言って、親に頼りたくもない。どうしたものか……。
「………………。」
街中を歩いていながら、石上はすれ違う人々の "ある" 部分を見ていた。
スリって、実際はそこまでバレないんじゃ……?上手くいくんじゃ……?
いやいやいや。何考えてんだ?流石に犯罪まで犯す程、人間として落ちぶれてしまってはな……。いよいよ荻野の仲間入りじゃないか。いけないいけない……。
「……おっと………。すんません……。」
考え事をしてたせいで、誰かとぶつかってしまった。
「……………いやいや、こっちは謝ったのに……。」
ぶつかった男……ん?いや、秀知院生か?
その者は、謝りもせずに颯爽とその場を去っていった。
「……何だったんだ………?」
気にせずに、フラフラと街中を歩こうと思った矢先、自身の財布が無い事に気が付いた。
「………さっきの……!!」
石上はすぐに振り返った。幸いまだ遠くには行っていない。いくら金がそこまで無くても、流石に財布自体が無いのは困る。
人混みを掻き分けて、すぐさまその者の元へ向かった。
「……………!!」
その者も石上が追ってきたのに気付き、路地裏に逃げ出した。
「あ、おい……!!」
石上は走る速度を上げた。こうも全力で走ったのはいつ振りだろうか……。中学の陸上部以来か……。
少しは衰えていると思ってはいたが、案外体力は続くもんなんだな……。加えて犯人はそこまでの速さじゃない。1分も経たない内に、手が届く距離まで縮まっていた。
「おい……待てって……!!」
犯人のワイシャツの襟を掴み、その場に倒れ込ませた。
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
「ゲホゲホッ……!」
いきなり後ろから襟を掴まれて、首に負担がかかったのか、犯人は咳込んでいた。
「おい……何してんだお前……!俺の財布返せよ……!」
「ひっ……!」
「………ん?あれ?お前って………。」
秀知院生だというのは分かってた。けど、まさか同級生だなんて……。しかも同じクラスの……。
「……ごご、ごめんなさい……。何もしないで……!」
「………………。」
めちゃめちゃビビってるな……。まあ、こいつもただの陰キャだから、そんな反応するとは思ってたけど……何でこいつがスリなんか……?
けどまぁいい。
「……財布、返せよ。」
「………え?」
「……いやいや、財布返せって。別にその後は何にもしねぇよ。チクりもしないし。
だからほら、早く返せって。」
予想外の反応をしていた。
そりゃそうか。今相手をしてるのは、秀知院一の不良とレッテルが貼られてる奴だ。何かされるとばかり思ってたんだろ……。
というか、まずそんな奴にスリなんかしようと思うか……?そこが少し疑問だった。
「…………はい……。」
「はぁ………全く。」
幸い、金銭は何も盗られていない。だが、何でこいつがスリなんか……?
石上は不思議そうに彼を見た。
「………………。」ジーッ
「ひいっ……!ご、ごめん……ごめんなさい……!」
「いやいやだから……。謝らなくていいって言ったじゃん……。誰にも言わないから。」
さっきからずっとビクビクしたばかりの彼を見て、少しイラッとはしたか、誰にも言うつもりがないのは確かだ。
いい加減謝るのをやめて欲しいと思っていたが………。
「………ん?」
何かが妙だ。彼の目線は、僕の方を向いているとばかり思っていたが、どうも違う。彼は、僕の後ろに目を向けている。
「ごめん……ごめん……!!」
彼は……後ろにいる何かに謝罪しているのか……?
何だと思い振り返る前に、僕の体に衝撃が走った。
「うぐぁっ……!!」
バチバチとした音が響き、僕の意識が遠のいていくのが分かった。まさか………スタンガン……?
段々と意識が遠のいていくのが分かった。
「……い……早く……ねぇん……。」
「それ……のも……るよな……。」
うっすらと僕を襲った奴らの会話が耳に入ったが、何について話してるのかは全然だった。それっきり、僕の視界は真っ暗になった。
「………んっ………。」
寒さで目が覚めた。どれくらい経過したんだ……?
「………マジかよ………。」
携帯を見ると、時刻はもう23時だった。6時間ばかりもここで倒れてたのか……。
というか、僕を襲った奴らは……どこ行った?一体、何が目的だったんだ……?財布はしっかりとあるし、中身も盗まれてない。
「………………ん?」
人の気配がしたので振り返ってみると、僕の財布をスッた同級生がそこにいた。
「………おい……何してんだ……?」
まさか、僕が起きるのをずっと待ってた……?でも、何で………?
「……聞いてんのか?おい……。」
「助けてぇぇぇ!!!」
突然そいつが大声を出した。
「強盗です!!そこに強盗がいます!!助けて下さい!!」
「は、はぁ?」
突然何を言ってるんだと思い近寄ろうとすると、自分のバックがやけに重いことに気が付いた。
何だと思い中身を見てみると………。
「!!!」
そこには、大量の見知らぬ財布が入っていた。
「何だよこれ……!」
「どうした!?」
近くを通りかかっていた警官がやって来た。マズい。このままだと……!
「強盗です!僕の財布を盗もうとして、暴行を……!!」
「はぁ!?お前何言って……!!」
僕を指差してそう言い放つ彼に、僕は近づいた。
「何勝手なこと言ってんだよ!盗もうとしたのはお前だろ!!」
「君!」
彼に掴みかかろうとする前に、警官に手首を掴まれた。
「……このバッグ、君のかな?」
「違う!俺は何もしてない!」
「………ちょっと、来てくれるかな?」
この時、僕には何が何だかさっぱり分からなかった。ただひとつ言える事があるとするならば………。
終わった。もう、人生終了だ。
僕は連行されながら、そう悟った。そして、僕は再び…………人に、世界に絶望した。