石上優はもう戻れない   作:顎髭

47 / 52
石上をでっち上げたクラスメイトの子なんですが、何か色々と言い回すのも面倒臭くなったので、神部 浩季(かんべ ひろき)と名前をつけさせていただきます。
明らかにオリキャラでありますが、そこのところは御了承ください。


生徒会は問い詰めたい

「(これでいい……これでいいんだ……!石上君には悪いけど……こればかりは……。)」

 

僕は数日前、クラスメイトの石上優を、恐喝やスリを行っていた犯人とでっち上げた。

あの後、僕も警察に連れられて取り調べを受けたのだが、自分でも驚くぐらいすんなりと取り調べは終わった。もう、石上君が犯人だと決め付けているみたいだった。けどまあ、そりゃそうだ。財布は全部丁寧に指紋を拭き取って、気絶してる石上君に触らせておいたのだから。

これでいいんだ。これでいい………。これで……いい……はず……。

 

「…………ん?」

 

下校しようと下駄箱を開けると、一枚の紙が入っていた。何だと思い見てみると……。

 

『あの件で話がある。今すぐ視聴覚室に来い。』

 

……… "あいつら" からか……。

渋々視聴覚室に行くことにした。

けど……何かヘマをした覚えは無い。僕はただ……そう、ただ……。

そんなことを考えながら、僕は視聴覚室の扉を開けて、中に入った。

 

「………あれ?」

 

おかしい。誰もいない。

 

「………でも、確かに視聴覚室だって」

「ああそうだ。視聴覚室で合っているさ。」

 

いきなり後ろから声がした。振り向くと、そこには………。

 

「……1年B組の、神部浩季くんですね?」

「………時間……あるかな?」

 

何で………何で生徒会の人達が………?

 

「………あ………えっ……。」

「………単刀直入に聞きます。あなた、石上優の事件について、何か隠していますね?」

 

四宮副会長のその問い掛けを聞いた瞬間、心臓の鼓動がマッハスピードで速くなるのが分かった。

そして、考えるよりも先に、足が動いていた。

 

「あっ………!」

 

逃げなきゃ。逃げなきゃ。ここでバレたら……バレたら……!!

 

「やすやすと逃がすと思うか?」

 

突然僕の前に現れたそいつは、僕の胸ぐらを掴み、その場に僕を押さえつけた。

 

「ぅぐっ……!」

「………逃げ足が随分と速いな。その持ち前の逃げ足を使って、お前は何度スリを続けてきたんだろうなぁ?」

「な、なんの……ことだよ……!!」

「知らないは言わせんぞ?あの件について知っている事、全て吐いてもらうからな。」

 

 

 

 

 

 

 

「後は頼みました、会長。俺は、まだ調べなければならない事があるので。」

「悪かったな小島。そっちも頼んだぞ。」

 

今、視聴覚室には、僕を含めた五人の人がいる。そのうちの四人は、生徒会の人達だ。

 

「………改めて聞きますね。1年B組の神部浩季くんで、間違いないですね?」

「……………はい。」

「………先程の私の問い掛けを聞いて逃げ出したということは……あの事件について何か、自分にとって不都合な事があると言ってる様なものですが………何か反論はありますか?」

 

………つい反射的に逃げ出してしまった。しくじった。

 

「…………………。」

「……神部くん。隠してることがあるなら、今ここで喋って。」

 

大友が神部の元に近付きそう言った。

 

「………………。」

「…………だんまりか……。なら、今から俺達の質問に答えてもらおう。

 ………石上優が警察に補導された日、君は何故体調不良と嘘をつき、学校を休んでいたんだ?」

「…………そ、それは………。」

 

言える訳がない。もし言ったら……言ったら……!!

 

「…………なら質問を変えよう。何故その日、石上優の財布を盗んだんだ?」

「ぼ、僕は盗んでなんかない!!」

 

勢いよく席から立った。

 

「皆さんだって知ってるでしょ!?石上君がスリやら恐喝やら行ってたって!!その日は確かに学校を休んでました。けど、風邪の薬を買いに行ってただけなんですって!!その帰り道の最中、石上君に路地裏に連れて行かれて、『財布を寄越せ』って……!」

「風邪………ですか……。」

「…………え?」

 

かぐやが神部の方を見た。

 

「風邪はたった一日やニ日で治る程、やわな病気ではないはず……。なのに、何故あなたはこうもピンピンしているんですか?」

「…………!!」

「………もしその日、本当に風邪をひいたのであれば、何故その翌日に学校に来れたのですか?」

 

つい咄嗟についた嘘が……!

 

「………それは……。」

「……風邪をひいたのは、全くの嘘。あなたはあの日、全く別の理由で学校を休んだ。体調に関することでもなく、身内の葬式やらそういう類いのものでもない。」

「………べ、別に……休んだ理由なんて知っても……。」

「………まあそうですね。別に休んだ理由を知ったところで、何にもなりませんね。」

「………なら………!」

「だとするなら、これはどう説明するつもりですか?」

 

かぐやがそう言ったと同時に、藤原が視聴覚室のモニターを起動させて、ある映像を見せた。

 

「………な、何ですかこれ……。」

「とある街の防犯カメラの映像です!そーこーにー、こんな物が映ってました!」

 

早送りをし、とある場面が映し出した。

 

「……………!!!」

 

その映像を見た瞬間、神部の体は硬直した。

 

「………なんで……なんで………。」

「………神部くんが石上くんの財布を盗み取るところが、しっかりと映ってるんだよ。」

「それだけじゃありません。目撃証言もしっかりと取れてます。『眼鏡をかけた小柄な男が、髪の長い男から追いかけられてた』『髪の長い人が、返せって言ってた気が……』などと……。」

「……この映像からして、明らかに髪が長い男というのは、石上優のことです。もし仮に石上優がスリを行っていたとしたら、普通『返せ』と言いながらあなたを追いかけますか?でもまあ、それ以前に映像としてしっかりと映ってるんですがね………。あなたが石上優の財布を盗み取ったね。」

 

おかしい……おかしい……!!ここらの監視カメラのことはしっかりと調べ尽くしたはずなのに……!!

 

「………あと、一つ付け加えておきますが、この監視カメラ……つい最近つけられたものだそうです。」

「!」

「………最近スリやら恐喝が起こっていることをきっかけに、警察側が数日前につけたものです。

 流石に用意周到で几帳面な犯人も、本当に最近のことまでは把握しきれなかったんでしょうね………。」

 

かぐやが再び神部の方を見た。その瞬間、体の震えが始まった事が、自分でも分かった。

 

「…………これでもまだ、石上君が犯人だって言えるの?そして………教えて欲しい。何で、そんな嘘をついたの?」

 

しくじった。今の状況を端的に表すなら、それが一番似合ってる。

 

「………………。」

 

………もう、ここまでバレてるのであれば………。

 

「………僕が…………やりました………。石上君のことを、でっち上げました………。」

 

僕がやったこと "だけ" は言ってしまおう……。

 

「……………そうか……。」

「……けど、どうして………。」

「…………ここ最近のスリも、全て僕です……。お金に困ってた……ただそれだけの理由です………。」

「……………神部くん。」

 

その場にへたりと座り込んだ神部に近付き、大友は……。

 

「………今から謝りに行った方がいい。」

「!」

「…………石上くんに、しっかりと謝りに行くべきだよ。」

「………でも………。」

「………正直、私が言う資格無いと思う。石上君がああなったのは、全部私達のせいだし……。けど、ちゃんと償わないと。謝るだけでも、全然違うと思うよ………。」

「………………。」

 

そうだな……。僕 "だけ" が謝れば……謝れば……。

 

「………ですが、不思議ですね。」

「な、何がですか?」

「不思議とは、一体……?」

 

白銀と藤原は訳が分からなかった。

 

「……神部くん。あなたのご両親が経営している会社は、そこそこ優秀で、経営成績も低下していません。とてもと言っていい程、金銭面で困ってるとは思えません……。」

「!!」

 

ま、まずい……!!

 

「あなた………本当にお金目当てでスリを行ったんですか?」

「………………。」

 

嫌な汗が背中から流れるのが分かった。これは、かいてはいけない汗だ。

 

「………神部くん……?」

「………………それは………。」

「……もう一度聞きます。」

 

かぐやは神部の元に近付き、目を見開いた。

 

「本当に、お金目的でスリを行ったのですか?」

 

まただ。また、考えるよりも体が動いてしまった。四宮副会長を突っぱねて、一目散に逃げようとしてしまった。

これだけは知られてはならなかったのに……!!これだけは感づかれたくなかったのに……!!

 

「待つんだ神部くん!!」

 

咄嗟に白銀が神部の右手首を掴み、神部が逃げるのを何とか阻止した。

 

「離して……離してください……!!」

「その様子だと、何か別の理由でスリを行っていたんだな!?まだ何か、俺達に隠してることがあるんだな!?」

「知らない……知らない……!!何も隠してなんか……!!」

「一体、何が目的でスリなんかしたんだ!?」

 

これだけは駄目だ……!!これだけは駄目なんだ……!!

 

「……………神部くん!!」

「嫌だ!!離してください!!」

 

白銀を振り払い、視聴覚室から出ようとした………が、いつの間にそこからいたのか、大友が立ち塞がり、視聴覚室の鍵を閉めた。

 

「……本当の理由を教えてもらうまで……帰さないよ。」

「ひぃ……!!」

 

本当の理由なんて言えない……!!もし言ったら……言ったら……!!

 

 

 

 

 

『俺らに逆らわない方がいいと思うけどなぁ〜?』

『お前、自分の親の立場分かってんの?』

『あんなのバラされたら、お前もう秀知院にいれなくなるよな?』

 

 

 

 

 

父さんが……僕の会社が……!!

 

「……お願い。言って。」

 

神部は涙目になりながら、首を横に振った。

 

「………神部くん!!!」

「言えない!!言ったら、僕の家族が」

 

…………あっ。

 

「ん?今、何て………?」

 

しまった。つい……!!

 

「………まさか神部くん………誰かに脅されてるの………?」

 

知られたくなかった。けど、もうそこまで頭が回ってなかった。

恐らく生徒会の人達は、僕に関して調査するだろう。それで本当のことが知られたら………父さんが……家族が……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。