石上優はもう戻れない   作:顎髭

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とにかく石上の心が黒くなってます。平然と傷付く事を口に出します。最後ら辺で、とんでもない言葉をミコちゃんに吐き捨てます。今回はかなりの鬱回です。
今更過ぎますが、言っておきます。私達が知ってる石上優は、本作では登場しません。



石上優は堕ちるに堕ちた

石上優。彼の事は、風紀委員長である私も知っている。

普段から校則違反を行っている、生粋の不良生徒である事は重々承知だ。委員会の一員である、伊井野ミコや大仏こばちも、彼については手を拱いていた。だがそれは、校則違反が凄過ぎるとか、そういった類いのものではなかった。

 

『私には……石上を注意する資格など……ありません…。』

 

自分より体格の良い不良生徒にも臆しない彼女が、そんな弱気な台詞を吐いた。一体全体何があったのか。私は気になり、友人の大仏君から全てを聞いた。

中等部で起きた事を聞いて、成る程道理で他の不良生徒とは何か違うオーラを出していたのか。そう納得した。私だって、あんな目に遭えば、彼の様になってしまうかもしれない。いや、誰だってそうなるかもしれない。

人間はとても脆い生き物だ。ふとした事で、崩壊してしまう事はざらにあるとは思ったが、石上君の件に関しては、何ともまあ生々しくて、凄惨過ぎた。

しかし、このまま校則違反者を放っておいて良い理由にはならない。何とかしなければ。伊井野君をこのままにはしておけない。何とかして、立ち直らせなければ。そして…………。

 

 

 

 

 

「君、こんなところで何をしている?」

 

伊井野君の言った通りの場所で、彼はゲームをしていた。服装も乱れており、相変わらずの校則違反ぶりだ。

 

「あ、あの……委員長……。」

「まあ伊井野君。君にも、いつも通りの厳しさを取り戻して欲しいんだよ。そして……石上君。」

 

私の呼びかけを無視して、彼はゲームを続けていた。

 

「ゲーム機及びゲームソフトの持ち込みは禁止している。何度も言う様だが、放課後まで没収させてもらうよ。」

「…………………。」

「……い、石上………。」

 

風紀委員長の傍らで、伊井野は石上を見ていた。

 

「……虎の威を借る狐って、まさにこの事なんだな。伊井野。」

「!」

「大仏と一緒の時は、怖気付いてんのか知らないけど、何にも言ってこないくせして……。結局風紀委員長に頼むのかよ…。お前も随分な根性無しなんだな。」

「石上君、口を慎むんだ。それに、伊井野君は、私が勝手に連れてきたんだ。伊井野君は根性無しなどではない。」

「……さっきからチラチラこっち見てないでさぁ、何か言ったらどうな訳?俺に何か言いたい事があるんでしょ?」

「あ………いや…えっと……。」

「………いつもはビービーうるせぇのに、ちょっと睨んだり圧をかけたりしたら、すぐに怖気付く。中等部の会長選挙の時だってそうだよな?」

「!!」

「あんだけ恥晒しといて、何度も何度もチャレンジしてさぁ…。周りから後ろ指差されてんのに、懲りずにさぁ……。

 何というか、今となりゃ………お前のやってる事って、大傑作だな。ここまでくると、笑えてくるわ。」

 

一気に胸が締め付けられる感じがした。それと同時に、中等部時代での出来事が一気に蘇った。

会長選挙で惨敗し泣いた時。周りから笑われた時。全ての辛い出来事が、鮮明になった。

 

「少し言い過ぎではないのか?仮にも同じクラスの者だろう?

 それに、彼女は頑張っている。君達がそれに気付こうとしないだけだろう?」

「……クラスメイトだろうがなかろうが……、俺からすればどうでも良い事だよ……。

 てか……頑張っても出来ない物は出来ない。お前さぁ、まさかだとは思うけど、まだ生徒会長になろうとか考えてる訳?やめた方がいいぞ?またあんな恥晒す気なの?凄い精神してんな。」

「………て………。」

「…………ん?」

「………もう…………やめてよ……。」

 

伊井野は、顔を下に向けて、涙をこぼしていた。

 

「……まだあの時のこと……根に持ってるの……?だったら謝るから……もうやめて…………。」

「伊井野君……。」

「私……あんたがあんな事する奴じゃないっての………最初から分かってた………。校則違反はずっとするわ、態度は最悪だわで……確かに私はあんたの事が嫌いだった………。でも………そんなふざけた事する奴ではないのは………最初から分かってた………。

 なのに……何もしてやらなかった………。ただ傍観してるだけだった…………。私が何か行動してたら………あんたはこんな風にならなかったんじゃないのかって………ずっと思ってた………。

 ……今更過ぎるかもしれないけど…………ごめんなさい……。」

 

体と声を震えさせて、伊井野は頭を下げた。

 

「…………………………。」

 

こいつが僕に頭を下げる事など、絶対に無いと思ってた。

僕の知っている伊井野ミコは、自分の主張ばかり押し付ける、融通の効かない女。だが、陰で人一倍頑張っている、誰よりも評価されるべき人間。だから僕は、あの時伊井野の机に………。

まあでも……………、それも過去の話だ。

 

「……あん時も言ったけどさぁ、今更過ぎるんだって。大体そう思ってたんなら、何ですぐに行動に移さなかった訳?」

「そ、それは……!」

「結局お前も、あいつらと同じだって事だよ。なのに今になってノコノコと頭下げられてもさぁ……。逆に苛つくんだけど。」

 

3人のやり取りを、陰で大仏は見ていた。

やっぱりだ。もう、あの頃の石上優は、完全に姿を消した。

もう、どうする事も出来ないのでは……。

私だってそうだ。石上の噂に懐疑的だったものの、結局彼の為に何もしなかった。いや、何かしたとしても、私の様な弾かれ者の事など、誰も気にも留めないだろう。そう諦めていた自分がいた。

だから、現在の石上優が誕生してしまった。例え誰にも信じてもらえなかったにしても、彼に味方がいるという事、ただそれだけを示せていれば………。

 

「……チッ。あんたらと絡んでもマジで時間の無駄だ。ほら。」

 

投げやりな感じを出し、石上は風紀委員長にゲーム機を手渡した。

 

「好きにすればいいさ。もう、ゲームもつまんなくなってきたし……。いっその事、そっちで処分してもいいよ。

 ………それと伊井野。」

 

石上は泣き崩れてその場に座り込んでる伊井野に近づいて来た。そして、伊井野の前でしゃがみ込み…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっきり言って、目障りだ。消え失せろ。」

 

そう吐き捨てて、石上はその場を去った。

伊井野は更に泣き崩れて、ただひたすら「ごめんなさい」を連呼していた。そうであるにも関わらず、風紀委員長は伊井野をなだめず、ただ呆然と立ち尽くすしか出来なかった。彼の心の闇が、自身の想像よりも遥かにドス黒かった事に、絶句していたから……。

勿論、大仏もそうだった。

もう、彼を救い出す手立てなど、無い。

そう悟ることしか出来ない自分に、彼女は悔しさを覚え、握り拳を強く握り締めた。




本当に、鬱この上ありません。
ですが、私の得意分野なんです。
次回は、石上の家族について書きます。これもこれで、大分重くなると思います。
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