「お買い物行きましょう!」
と満面の笑みで言うカナエ。
1日の始まりからテンションの高いカナエに対して
「……寝る」
疲れた顔の武はそう言うと部屋に戻ろうとする
「えっ?」
「いや寝る。この時代に来て約2ヶ月、鬼殺と瑠火さんの治療で休みなかったんだから1日くらい寝てす……ごしたいと思っていたけど、少しくらいなら」
断ろうとしたが、凄く残念そうな顔をするカナエを見て罪悪感で了承した武。決して後ろにいるしのふが「姉さんの誘いを断るんですか?」と怖い顔をしていたのに屈した訳ではない。
と言う訳で買い物に行くことになったのだが……
「あの……ちょっとよろしいですか?」
買い物に行く途中、カナエは子供を連れてる男に話しかけた。
「ぁあ?」
男は一般人ではないのは一目瞭然、子供の方はボロボロの服でかなり汚れ縄に繋がれていた。
「人買か(こうも大っぴらにやるとは)」
2人を見てそう呟く武。
「その子はどうして縛られているのでしょうか? 罪人か何かなのですか?」
「汚ねぇから繋いでるだけだ」
「こんにちわ、私は胡蝶カナエ……貴方の御名前は?」
カナエは子供に話しかけるが、子供の方は全く反応しない。
(これは……心を閉ざしてる。見た目からするにも随分酷い扱いを受けていたみたいだな)
武は反応しない子供を見て、ある程度この子供の状態を分析していた。
「おい、もういいだろ!?」
ヤクザ風の男はカナエを突き飛ばそうとするが、しのぶがその間に入り男の手を払った。
「姉さんに触らないで……お金を払えばいいんですよね」
しのぶは懐に手を入れる。恐らく金を取り出すつもりだろう。
「はい、ストップ……その金は買物分だろう。ほらっ」
武はしのぶを止めると、自分の財布から札束を取り出す。ヤクザ風の男はその札束を見てゴクッと喉を鳴らす。
「そっ……そんなんじゃ足んねぇな」
どうやら男は欲を出したのか更に金を要求してきた。武はそれに対してタメ息を吐き、気付かれない様に御札を取り出し札束の間に挟む。
「あんまり欲を出すと痛い目をみるぞ」
と笑みを浮かべて男に札束を押し付けた。だが彼の顔は笑っているものの、ヤクザ風の男はひぃと悲鳴を上げて札束を持ち走り去った。
「全く……」
「良かったんですか?」
「別に使い道ないしね……さてと、取り敢えずこの子を連れて帰るか」
「そうですね……」
「武君」
「ん?」
「ありがとう」
「あぁ」
一度家に戻る事にした。
~数日後~
「カナヲ~」
数日前に保護した子供はカナヲと名付けられた。
そして分かった事はカナヲは感情がないと言う事だ。産まれ育った環境故か、感情が失われていた。
「姉さん、この子全然ダメだわ。言われないとなにも出来ないの」
しのぶはそう言う。カナヲには自分で物事を決める事が出来なかった。
「あらあら……まぁまぁそう言わずに。ほらっ、笑って。姉さん、しのぶが笑った顔好きだなぁ」
しのぶはカナエにそう言われ顔を赤くする。
「だって自分の頭で考えて行動出来ない子はだめよ、危ない」
「じゃあ1人の時はこの硬貨を投げて決めればいいわよ。ねーカナヲ」
そう言ってカナエはカナヲに硬貨を握らせる。
「そんなに重く考えなくていいじゃない……カナヲは可愛いもの!」
「理屈になってない!」
「切っ掛けさえあれば人の心の花は開くから大丈夫。何時かカナヲが好きな男の子でも出来れば」
「えっ?!」
ガチッンと音を立てて何が落ちた音がした。そちらを見ると絶望の表情をしている武がいた。
「武君、どうしたの?」
「かっカナヲが……恋? おっお兄ちゃん許しません!」
どうやら武はシスコンに目覚めた様だ。
「あらあら……」
「武さん……」
「なんだ、その目は……だって考えてもみろ、何処の馬の骨とま知れない男にカナヲを渡したくない!」
そう言ってカナヲを抱き上げる武。それを嬉しそうに見ているカナエと呆れた顔で見ているしのぶ。
「そう言えば……武さん」
「ん?」
「この間の男に渡していた札束に何か挟んでいたみたいですけど
」
しのぶはこの間の事で武に訪ねた。
「ぁあ……アレね。ちょっとした呪いをね」
ニヤッと笑う武、何をしたのか分からないが深くは聞かない方がいいと思い追求はしなかった。