ニートだったけど高収入って聞いたから鬼殺隊に入った。 作:さばっぺ
初めは三人称、途中から一人称です
※11/1 加筆修正を致しました
ある日の夜、一人の男は気を張り巡らせ、周囲を警戒して家に押し入ろうとする不届き者が居ないかの確認をする──でもなく縁側のある畳の間で腕を枕にして寝そべって柿を頬張っていた。
「なんかやる事ねぇかなぁ〜。暇だなぁ〜。トランプも飽きたし、本を読むって言っても活字苦手だしなぁ……。折り紙作りも飽きたし。やる事ねぇなぁ……。何かいい案あるか? カー坊」
そう。言うまでもないだろうがこの男、ニートである。
「引きこもりってやる事ねぇんだなぁ……。金ももう無くなりそうだし、そろそろ働くかな──いや、駄目だ。こうやって働かせようと誘導しているんだ!
どうせ働いたってやっすいやっすい給料で縛り付けられてろくに自由な時間なんて取れないだろうし。まあ別に? 俺だって? 高収入であまり束縛されないような環境なら喜んで引き受けるんだぜ? でもそんな仕事なんてあるわけないもんなぁ……。カー坊はどう思う?」
ちなみにさっきから男が話しかけている相手はカラスである。話し相手が居なさすぎてとうとう動物と会話までできるようになったらしい。
「カァ! カァカァカァ!」
「え? あるの? マジ? どんな仕ご──『ガタン!』
男がそこまで言った時、扉が外れて倒れた音が聞こえた。
否。
「──ッ!? なんだ……?」
「──カァ!! カァカァ!!」
男が何事だと驚いている時、鴉はどこかへ飛び立って行った。
※※※
何があったんだ……? カー坊も慌てて飛んで行っちゃうし。
でも何かあったのは間違いない。それに、明らかに人の足音ではない物が聞こえてくるのだから動物でも入り込んだのかもしれない。
「緊急事態だから使いますよっと」
俺は動物だと危ないので畳の間に飾られてある先祖代々の刀を手にした。一言断ったから大丈夫だよな? まあ駄目って言われても借りるんだけど。
「──ィ! ──レチィ!」
何だこの鳴き声は……。まるで人間の声のようだ。レチとか言ってるように聞こえる。この辺りにそんな鳴き声の動物なんて──
「稀血ィ!!」
「──! うおっと!」
あっぶない……。まさかすぐ近くにいるとは思わなかった……油断した。
それにしてもマレチって何だ……? それにコイツはなんなんだ……? 人間のような見た目だが気配が人間じゃない。明らかに別の生き物だ。目は血走っていて正気を保てていないようにも見える。
「なあ、お前はなんなんだ!?」
ふと疑問に思ったので聞いてみる。俺は動物の言葉がわかるから多分理解出来ると思うんだが……
「稀血ィィ!!!」
「無視かよっ──!?」
駄目だ。マレチとしか言わない。言葉は理解しているようには見えたが、ただただマレチと繰り返すばかりでそれ以外何も言わない。
「ちょ、危ないって! 話し合いしよ!?」
「稀血ィィィィィ!!!」
右から爪を立てて攻撃してきたと思えば、間髪入れずに左からも来る。身体能力が人間のそれじゃない!
「稀血ィィィィィ!!」
今度は脚。意味のわからない速さで蹴ってくる。
「ちょっと落ちつ──がぁっ!?」
いってぇ……。何だこの威力……
相手が攻撃の反動で膠着した一瞬を突き、一度後退して刀を鞘から抜く。すると青と赤の二色に輝く刀身が姿を現した。
「悪い! まだ死ねないんだ!」
本当に、まだ俺16だぞ? 死ぬとか絶対嫌だわ。せめて金持ちになって、何をとは言わないがナニを卒業して、結婚して人生を謳歌してから死にたいわ。
刀を右から左に振り下ろす。相手の胴体に斜めに線が入ったかと思うと、ずるりと上が斜めにずれ落ちた。
「稀血ィィ!! 稀血さえ食えばァ!!」
あ、喋れたんだ。この際だから聞いておくか。
「なあ、マレチってなんだ?」
「クソォォォォ!! 稀血ィィィ!!!」
駄目だこりゃ。話通じないわ。っていうか胴体切断しても生きてるんだが……!? こいつ本当に生き物なのか……?
「──!? 身体が再生しないッ!? 何故だァ!! 何故鬼狩りでもない奴の所に
俺の持つ刀を睨み付けながら叫ぶ相手。それにしても今、鬼狩りって言ったよな。その鬼狩り、ってのがコイツの天敵なのか。つまりコイツは鬼なのか……?
「答えろ。あんたは鬼なのか?」
柱に縛り付けた鬼に刀をチャラチャラしながら俺はそう聞く。
睨むように目を細めて声を少し低めにする。そして意味もなく刀を弄ると威圧感満載の俺の出来上がり。
「あ、ああそうだ」その俺を見て若干ビクッと震えながら相手は答えた。
「分かった。なら鬼の弱点ってなんだ?」
これは単純な疑問。これが分からないとまた出会ったりした時に殺されてしまうかもしれないからな。
「い、言わない!」
まあそりゃあそうか。自分から死にに行く奴なんてそう居ないよな。
と、その時ドタドタと走る音と大きな声が聞こえた。
「大丈夫ですか! 鬼殺隊です!」
今度はなんだ……? キサツタイ……? あ、なるほど理解した。鬼を殺す隊って事か。
「お前が変な事するから鬼狩りが来ちまっ──ガハッ!?」
一応暴れられないように首に手刀をうちまして。
よし、今度こそ出会い頭に攻撃はされなさそうだし呼ぶか。
「こっちです! こっち!」
「はぁはぁ……。大丈夫ですか! 鬼殺隊、階級
「……はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「鬼ならここに居ますって」
「ど、どうやって──って、なんで日輪刀持ってるんだ!?」へー。これ日輪刀っていう名前なのか。
……ん? この人が名前を知っているという事はもしかしてこ先祖の人って鬼殺隊の人だったりする……?
ま、それはあとだ。とりあえず今はこの鬼だな。
「で、どうします? この鬼。俺が一応斬っといたんで、後はなにかすればトドメなんですよね?」
「うん、日輪刀で首を斬り落とすと鬼は消滅する」
なるほど……。そういう事なのか。それで胴体真っ二つにしても死なないんだな。
……じゃあ日輪刀なかったら勝ち目なくないか!?
「日輪刀無かったら勝てなく無いですか?」
「ああ、陽の光を浴びても消滅する。だから夜しか活動出来ないんだよ」
そういう事ね、良かった。
「じゃあ今から首を落とすんであまりみない方が良いよ──はあっ!」
森田さんが首に刀を振るうとストン、と落ちて身体がボロボロと崩れて行くのが見えた。
ちなみに森田さんは真っ直ぐな髪の毛が綺麗に切り揃えられて刈り上げられている。爽やかな好青年、という感じの容姿をしている。身長は俺とトントン位だな。
「ありがとうございました、森田さん」
「いやいや、それにしても凄いね。まさか到着より先に鬼が倒されていただなんて」
「鬼なんて居ないと思っていました」
「だろうね。普通はいるなんて思わないからね……。あ、そうだ。君、鬼殺隊に入る気は無いかな? あまりこういう事はしないんだけど、鬼と出会っても生き残る為に最善の選択──君の場合は冷静さを欠かずに鬼と対峙出来たことだ。そして何より日輪刀を所持し、鬼を斬ることが出来る力がある事だ。どうかな? 入ってみるかい?」
まさかのお誘いですか。別に働くところが無いし──まあ探していないだけなんだけどさ──構わないんだけど……。ほら、俺、金が無いじゃん? その辺がどうなのかは聞いておきたいところだな。
「鬼殺隊ですか……。ちなみに、下賎な話になるんですけど……その、給料……とか貰えるんですか?」
「うん。一応政府非公認の組織だけど給料は出るよ。そうそう、柱になったら幾らでも、だそうだ」
幾らでも……? 何が……?
──金が!? 金が幾らでも……!?
「え!? その柱っていうのになったら幾らでも!? 入ります! 大金を手にすると共に手に職をつけることが出来るなんて一石二鳥じゃないですか!!」
突然の変わりように押されたのか森田さんが少し引き気味になっているが、気にしていられない。俺からしたら死活問題なのだから。
「で、でも柱になるのは大変だぞ? それに、死亡率もかなり高い。まあ僕が誘っておいて今更何を、って感じかも知れないけどさ。それに……もう引き返すつもりは無いんだろう?」
「……はい!」
俺は森田さんの言葉に深く頷きながら返事をした。