『宝具屋』開きました~英霊の必殺技、お売りします~ 作:繭山 巣立
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「――原初を語る。天地は分かれ、無は開闢を言祝ぐ。世界を裂くは我が乖離剣。
星々を廻す渦、天上の地獄とは創世前夜の終着よ。
死を以て鎮まるが良い。『
カルデアのシミュレーションルーム内で、そんな声が響いていた。
これを聞いて、人類最後のマスター藤丸六花とそのサーヴァント、マシュ・キリエライトは即座の対処を要求される。
「先輩、ギルガメッシュ王の宝具を騙ったサーヴァントがいるとなると――最悪、カルデアが崩壊します!」
「“だって英雄王だもんね”」
「はい、彼を怒らせるととんでもないことに……」
そして現場に急行した二人は、1人の少年が乖離剣エアをぶっ放しているシーンを目撃するのだ。
「うおおお! カッケェェェェ!!」
「“――あの子は確か……”」
「最近召喚された、疑似サーヴァントの少年です! 確か宿しているサーヴァントは……」
人類最古の英雄王、ギルガメッシュが持つ最強の武器『乖離剣』。
ただそこにあるだけで暴風を発生させ、せめぎ合う嵐の断層が擬似的な時空断層となって世界を壊す、対界宝具に分類される天上の一振り。
英霊の中でも最強に位置する、超ド級の武器がそれだ。
決して子供が振り回していいものではないし、室内で使おうものなら建物が吹っ飛ばないはずがない。
「――あれ、どうしましたか、マスター」
ただそれは、勿論それが本物であればの話である。
少年が2人に気づいた直後、荒れ狂っていた空間は消え、元通りのシミュレーター内部が戻ってきた。
「え、あれ――?」
「“……何してたの、君?”」
「ごっこ遊びですよ。せっかくこんなマンガみたいな状況なんですから、思いっきし楽しみたいじゃないですか!」
そういう彼の額には、一枚の葉っぱが乗っている。
そしてその葉っぱを挟むようにして、顔についている人の耳とは別に獣の耳が生えているのだ。
「ただし、サーヴァントの力を使った本気のごっこ遊びですがね。だってそっちの方が面白いでしょ」
「“そうか、君は確か――”」
「はい、そうです先輩。彼は神霊、『正一位・金長大明神』の疑似サーヴァント。つまり……狸の神様のサーヴァントです」
「ポーンぽーこポーン!」
然り然りと言わんばかりに、腹づつみを打ちながら一回り。それだけで少年の体は半分以下の体格となり、その霊基を人の形状から狸の姿へと変える。
「そう、儂の名は金長! 世界最強の狸、金長なんじょ!」
「“え、そうなの、マシュ?”」
「は、はい、そうですね。日本以外に狸の英雄はいませんし、金長さんの伝説は坂田金時さんとも比肩するものですから」
「そう、狸は日の本にしかおらん! そして儂は、日の本の狸髄一の武闘派! ほなけん世界最強格の狸!」
「“それはちょっとズルい気がするけど――”」
と、言いつつも藤丸は金長の毛をなでた。腰を屈め、二足歩行でしゃべる狸はぬいぐるみじみている。
つまりとても可愛らしいのだ。
「“よーしよしよし”」
「あぁン、マスター。儂みたいな老いぼれをモフモフしても何も出んで……アぁン」
「それで金長さん、これはいったい何なんです?」
そんなじゃれ合い、ふざけ合う1人と一匹を華麗にスルーして、マシュ・キリエライトは傍らにあった暖簾を手に取った。
そこにはかき氷の『氷』と書かれた布のように三枚連なっており、合わせて『宝具屋』という屋号が記されていた。
「ああ、それは――」「それはちょっとした、小遣い稼ぎみたいなもんです」
ポンッ、と音を立てて、くるり一回転した金長が狸から少年の姿へと変わる。
「例えばマスター、あなたは色んな英雄と接して来たんでしょ? 色んな宝具を目の当たりにしたんでしょ?」
「“そうだけど”」
「なら、それを使ってみたいと思ったことはないですか? こんな風に」
そして、彼の口がとある詠唱を紡ぎ出す。日頃お世話になっている、台所の英霊のアレだ。
I am the bone of my sword.
――― 体は剣で出来ている。
Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は鉄で 心は硝子。
I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗。
Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく、
Nor known to Life.
ただの一度も理解されない。
Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。
Yet, those hands will never hold anything.
故に、生涯に意味はなく。
So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.
その体は、きっと剣で出来ていた。
これに伴い、彼の周囲に果てなき荒野に無数の剣が突き刺さっている心象風景が映し出されていく。
「“これは、エミヤの固有結界――!”」
「いいえ、そんなはずは!」
「
そこは剣の丘。錆び付いた巨大な歯車が、空をひしめき回る場所。
「……あー、楽ーのしいぃぃ! カッケェ! 楽しい!」
「あ、あの、スイマセン! 悦に浸ってるところを申し訳ないですが、説明を求めます!」
「なぁに、簡単な事ですよ。これは金長さんの化かしの術で見せているまやかし。それっぽいだけの幻です」
「“いや、けど、これは――リアルすぎる”」
少年が乖離剣を使用していた時のように、世界の風景が根本的に塗り替えられていた。
この現象とかつて見た宝具との間に、2人は違いを見出せない。
「ぬアーッハッハッハ! そうじゃろうそうじゃろう」
そしてそんな2人に対し自慢するかのように、再び狸形態へと戻った金長が高笑いする。
「儂の変化術は正に神業の域! 狐七化け狸八化けの言葉通り、変化術のみに限れば、かの大妖怪『白面金毛九尾の狐』をも上回る代物よ! ……さて、それではマスター。あなたもやってみたくはありませんか?」
そして流れるように、極めて魅力的な提案をなされるのだ。
やってみたい。やってみたくない訳がない。
「“けど、お高いんでしょう?”」
「それが何と、マスターなら特別割引で一回、10QP」
「“安ッ!”」
しかも思ってた以上にお買い得だった。
「さっきも言った通り、これはあくまでお小遣い稼ぎ。それも他人の褌で相撲を取ってるようなもんなんじょ。
アコギな商売をするつもりはございません。ただこういう経験は、儂が寄り代にしとる坊ちゃんの社会勉強になるやろ?」
ポポンと再び、狸から少年に変化する。
「ここに来てから色々知りましたが、英霊というものはつまり物語に登場するキャラクターみたいなものでしょう?
つまりかつて子供たちは、英雄の真似をしてごっこ遊びをした! 例えば俺がかつて、漫画やアニメのキャラでそれをしたように!
そして俺は金長さんの厚意で、この変化術を自在に使える! なら――それを使ってみんなで楽しみましょうや。
マスター、一緒に本気のごっこ遊びをしましょ?」
「“……”」
「先輩! 魅力的なのは分かりますが、勝手にシミュレーターを使ったことを叱らないと――」
「マシュマロさんもいかがです? あなたも特別割引の対象ですよ。
あと、許可でしたら……確かここにダ・ヴィンチちゃんから貰ったやつが」
そして、2人は顔を見合わせて――。
ちょっとだけだよ!(ですからね!)
直後、声をピッタリはもらせた。
☆☆☆☆☆
「あ、ちなみに牙突とか! アバンストラッシュとか! 水の呼吸十の型『生生流転』とかもできますよ! マスターの世代はどこですか!」
「“君いくつなの? というか『生生流転』って?”」
「あー、そうか世代じゃないのかー」
藤丸六花がカルデアで活動を始めたのは2015年から。
鬼滅の刃の連載は2016年から。
そしてこの世界戦は、まだ2020年を迎えていない。
「じゃあ後で英雄王の倉からジャンプを借りて読みましょう!」
「“あるの!?”」
「実際、映画史に残るレベルで売れまくってる作品ですので」
『王の財宝』の設定的に、たぶんまだ発売されてない最終巻も入ってる。
本作ではそうなっていることにした。
主人公、名もなき少年。(オリキャラ)
とある平行世界で2020年の聖杯戦争に巻き込まれた人物。金長狸ともその時に縁ができ、疑似サーヴァントとしての依り代に選ばれた。中学一年生。まだ小学生時代の素直さが残っている。
金長がお人好しで人間に寄り添ってくれるタイプの英霊なため、疑似サーヴァントとなった際に人格が統合されることもなく、完全に分離された状態で過ごせている。
金長(正一位・金長大明神) かつて、同族とではなく人と歩むことを選んだ狸。
疑似サーヴァント化により、酒吞童子がヤマタノオロチの力を持ってくるかの如く神霊『金長大明神』の力を有したまま召喚できた狸の英霊。
クラスはフェイカー。他者を化かし、騙すことに長けているが、本人の気質が善性な上、狸という概念が持つコミックリリーフ的側面が作用して、悪用はしない・できない。
物語よりの登場人物ということで、坂田金時やナーサリーライムと仲が良い。あと、鬼連中とも偶に酒を飲み合っており、一定の距離をとりつつも関係は良好。