『宝具屋』開きました~英霊の必殺技、お売りします~   作:繭山 巣立

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第二話です。一話しか投稿してないのに、思いのほか反響があってびっくりしてます。



第二話 英霊エミヤの受難

英霊エミヤは近代の存在である。具体的に言うと昭和生まれだ。ビデオデッキの存在もちゃんと知っている。

だからこそそれらを知らない者たち――主に小学生――から「なんですかそれ?」と言われると普通に傷つく。

詠唱曰く、心はガラスなのだそうだ。ジェネレーションギャップという攻撃は彼に効く。

 

そして、そんな攻撃を使用してくるのがまた一人増えた。

 

「ビデオデッキ……。確か友達のおじいちゃんが使ってましたね」

「ぐはぁッ!」

疑似サーヴァントとして、狸の力を持って限界した少年の口撃が彼に突き刺さる。

「“俺はちゃんと知ってるから”」

「う、うむ、ありがとう。その言葉で幾分か楽になった。ほら、本日のお菓子だ。食べるといい」

現在、彼らは黄金のアップルパイを彼から振るまわれてた。

 

「“おいしい!”」

「いつもありがとうございます、エミヤ先輩」

「かまわないさ。この腕が活かされるのであれば、いつだって振るまおう」

「おかんサイコー!」

「少年、その呼び名はやめたまえ。金色と青色にまたネタにされるだろう」

「ごちそうさまおかわり!」

「もっと落ち着いて食べなさい。たくさん食べたいからと早食いしても、1人に分配した量は変わらないのだからね」

あっという間に空っぽにした皿を受けとりながら、エミヤはやれやれとばかりに笑みを浮かべた。

それを見てマシュもまた微笑みを浮かべ、藤丸もおかわりと皿を差し出すのだ。

そしてそんな一団に対し、カルデア子供組が話しかけてくる。

 

「宝具屋さん、宝具屋さーん」

とポール・バニヤン。

「探していたのだわ、狸のお兄さん」

とナーサリー・ライム。

「ねぇねぇ、わたしたちにまた宝具を売ってくださいな」

とジャック・ザ・リッパー。

「QPならお手伝いで確保してるのですよ、エッヘン!」

とジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。

 

「ふむ? 宝具屋とは一体……」

「“金長さんの化かしの力で、映像記録からサーヴァントの宝具を再現。それを一回 10 QPで販売してるんだって”」

「ごっこ遊び、ただし実際に見えるエフェクト付き、だそうです。I am the bone of my sword. ――― 体は剣で出来ている。……という風に、私も昨日何度も使ってしまって。化かしの術による自動詠唱機能まであるということで、何度も遊んでると覚えてしまったのです」

「待て、私のまであるのか? アレは厳密には宝具と呼べる代物ではないのだが……」

「え? ですが金長さんは許可はとったと――」

「あ、エミヤおかんの場合はシトナイさんから許可をもらいました。あねさん曰く、文句があるなら私に言いに来なさいとのことです」

そして、赤い外套は両手で顔を押さえた。

 

「おぉう……」

彼の喉から漏れるのは、絞り出すかのような戸惑いの声だ。

「先輩、意外な交友関係の発覚です!」

「“エミヤは彼女とどういう関係だっけ”」

「その辺りは聞かないでくれたまえ。そして彼女は君に“あねさん”と呼ばせているのか……。いや、双方が良いならそれで構わないがね」

 

(よし、あとで「俺があねさん呼びしてたら微妙そうな顔してましたよ、エミヤさん」と教えてあげよう。特に根拠はないが、彼女はそれで喜びそうな気がする)

「じゃあ俺はみんなに宝具を売ってきますが――エミヤさんは何か真似してみたい宝具とかありますか? 何時ものおやつのお礼に、無料で売っても大丈夫ですよ」

ひと足先に、シミュレーションルームを目指している子供組を見送りながら、少年はそのように切り出した。

 

「いや、私は自分の能力的にそういうのはないな……皿洗いもあることだし、そこは子どもたちを優先してくれたまえ」

「むう、そうですか。……マスターはおかんに何か、使いたい宝具があるか分かりませんか?」

「“エミヤ・オルタの銃剣を、自分も使いたかった!って羨ましがってたね”」

「それを今言うかね、マスター!?」

「ああ、あのぐれてる方の人なら許可もらってますね。幻術で生み出せますよ」

「出したのかね!? 彼が!? 許可を!?」

「ホントですよー。疑うんなら確かめに行きますか? 忘れてないといんですが――」

「“やめよう”」

「ああ、やめよう。それはやっちゃあいけない」

「そうですね、やめておきましょう」

 

三者三様、全員から止められて、首を傾げつつも流石の彼も納得した。

 

「よく分かりませんが、皆さんがそう言うってことはそうなんでしょうね。――しかしそれでは俺の気が収まらない。本当に何もないんですか?」

(個人的には、もう放ってくれた方が気楽なのだが……)

「“世界一有名な聖剣、『約束されし勝利の剣(エクスカリバー)』とかなら――”」

「やめてくれたまえ!? それを私はどういう顔で使えばいいのかね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハ、愉悦愉悦」

そしてそれを目撃しながら、金ぴか王は愉快そうに笑っているのだった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

なお、彼がエミヤ・オルタから許可をもらったのは本当である。

具体的にはシトナイと押しかけて許可をとりにいった。

彼の日記そうに書かれてあるので間違いない。

 

ちなみに彼女に支払われた報酬は、狂ヘラクレスの『射殺す百頭(ナインライブス)』とエミヤの『無限の剣製』を変化術で自分に使わせることである。

この時、再現した幻術に注文が多すぎて少年は死んだ(精神的に)。

 

「バーサーカーの強さはこんなものじゃなんだからー!」

「あねさん、かんべんしてつかぁさい(疲労困憊)」

 




あとがきでは、自分が(勝手に)考えたサーヴァントの設定を書いていきたいと思います。

金長のステータス
筋力C 耐久C 敏捷B+ 魔力EX 幸運D 宝具B

正一位・金長大明神のステータス
筋力C+ 耐久B 敏捷B+ 魔力EX 幸運C 宝具A+

疑似サーヴァントとして神霊の力を持ってきているため、神様として祀られていない時期の金長が召喚されもの(所謂リリィ状態)よりもステータスが一段高くなっている。
昔話の主人公ということで、源頼光や坂田金時を基準に設定した。
なお彼が登場する物語「阿波狸合戦」は設定上、天保の頃の話。つまり織田信長より後の時代の話で、彼自体はあまり古い英霊ではない。なのでそこは、四国の山奥には平安時代の神秘がずっと残ってたんだよ!で乗り切るつもり。

佐々木小次郎とか言うNOUMINNが、魔法の域にある剣技を使ってようやく仕留められる燕がいたのも山奥なので、理屈としてはたぶん問題ないはず。

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