『宝具屋』開きました~英霊の必殺技、お売りします~   作:繭山 巣立

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ちょっと間が空きましたが、私は元気です。小説家になろうで投稿している方も書き溜めを頑張っています。



第三話 カルデア子供組

 

大人も楽しめるごっこ遊び屋、ぽんぽこ狸の『宝具屋』は今日も繁盛していた。

おやつを食べ終えた子供サーヴァントは、お手伝いのお駄賃を握りしめて英霊の必殺技を買う。

10 QPで一回、化かしの術で再現された宝具演出が自身の意のままに飛び出すという、ただそれだけの店なのだが、――そこは名高き金長大明神が開く店。再現された宝具の幻は、ごっこ遊びに使うには贅沢過ぎるほど。

立体的なプロジェクション・マッピングのように、実体はないが実像はあり、効果はなくとも効果音はある。

 

利用者のはしゃぐ声が、その楽しさの証明だった。

 

「繰り返すページのさざ波、押し返す草の栞。すべての童話は、お友達だー!

 誰かのための物語(ナーサリー・ライム)!」

 

子供たちの英雄、童話という概念が英霊となったナーサリー・ライムの宝具は、本来なら固有のもの。

しかしその宝具をほら話(フェイクロア)という似た存在であるとは言え、別の英霊が使えるなどあり得ない。

だからアメリカンジョークで語られる巨人、ポール・バニヤンという少女がそれを使えるのは――ここ、宝具屋だけなのだ。

 

「これが開拓者魂なんですーっ!!

 驚くべき偉業(マーベラス・エクスプロイツ)!」

そしてその近くでは、別のサーヴァントが当のバニヤンの宝具を使っている。ただの少女の矮躯から巨大化し、大きくなった足をドスドスと鳴らすの彼女の名はジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。その略歴は複雑なので省くが――兎にも角にも、本来ならあり得ない筈の彼女もまた、実像を伴うごっこ遊びを楽しんでいた。

 

「真のサンタ道、見せてあげる! 聖なる夜、ステキでムテキな奇跡の一瞬。

 優雅に歌え、かの聖誕を(ラ・グラスフィーユ・ノエル)!」

そんなジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの宝具を使うのは、異様に露出の多い複数の意味で危ない少女。「正体不明の殺人鬼の可能性のひとつ」として生まれた反英霊、ジャック・ザ・リッパー。しかしこうして遊ぶさまは、普通の子供と何ら変わらない。

 

「ここからは地獄。わたしたちは炎、雨、力――殺戮を此処に。

 解体聖母(マリア・ザ・リッパー)!」

 

そして最後に、切り裂きジャックの(剣呑な)宝具で遊ぶ、子供たちの英雄、童話という概念が英霊となったナーサリー・ライム。

子どもとは残酷なもので、童話もまた残酷なもの。よってナーサリー・ライムという英霊は、英雄らしい英雄ながらも何処か狂気を内包してもいる。

ふりふりの衣装にも関わらず、彼女は霧に満ちるロンドンを俊敏に飛び交っているーーフリをしていた。

 

つまり。

ほら話から生まれた少女、ポール・バニヤン。

仮定に仮定を重ねた存在しないはずの少女、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。

産み落とされなかった子供たち、ジャック・ザ・リッパー。

決まった形を持たないはずの童話の集合体、ナーサリー・ライム。

 

仲良く遊んでいることが奇跡と言えるほど、存在が希薄な彼女たちが“化かし”という幻が生み出す宝具を楽しんでいる。

その光景を見て、カルデアのマスター藤丸立花は思うのだ。

 

「“――痛快だね”」

「フッ、まったくだな」

彼の呟きに対し、赤い外套の英霊エミヤがニヒルに賛同する。

 

「俺的にはカオスだなーって感じなんですけど」

 

これに対し、疑似サーヴァントの少年は首を傾げるだけだ。カルデアに召喚されてから日の浅い彼は、彼女たちの背景を何も知らない。

だからこそ、どちらの意見も別に間違っていないのだ。

現に今、シミュレーションルーム内は生み出した宝具の幻影が混ざり合い、まとまりがない。

 

まず背景。すなわちシチュエーション。これは産業革命期の大量生産で発生した、膨大な煤煙が混じる硫酸の霧――もちろん化かしの術の幻であり害はない――に満ちたロンドンだ。

 

そこをジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの、クリスマスに歌う聖歌宝具が飛び交っている。当然、おめでたいモミの木だのクリスマスのベルだのが、雪の結晶と一緒に振ってくる。ラッピングされたプレゼントも混ざっていた。

 

で、当のジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィはダイダラボッチ化し、はしゃいでいる。彼女の感覚も化かしの術の対象内なため、実際にリリィは巨人になった感覚を味わっているのだ。幻なので誰かを踏みつぶすということもない。

 

更にはそこを、ナーサリー・ライムの宝具による童話の世界の住人たちが所狭しと駆けまわっている。

よってこれはカオスとしか言いようがない。

 

「では、君はこういうのは嫌いかね?」

「いいえ? むしろ、こういう白いキャンパスに適当に絵の具を塗りたくった混沌はだーい好きです。ああいうのを見てると、俺も宝具で遊びたくなってきますね――っと、どうした?」

そして、それを見てウケている少年のもとに、縮んだリリィが話しかけて来た。

 

「はいっ、宝具屋さん! わたし、本来のわたしの宝具が使いたいです!」

「了解了解、てことはえーっとジャンヌ?さんの宝具だから――うん、大丈夫。許可はもらってるから使えるよ。じゃあはい、化かしの木の葉一枚ね」

「ありがとうございます!」

 

楽し気に受け取ってかけて行く彼女の後から、並んでいた他の子供組ももう一枚の葉っぱを求めてくる。

金長大明神の霊力が込められた、化かしの力を持つ魔術礼装だ。宝具屋とは、あらゆる幻影を生み出すこの葉っぱを売る店であると言える。

 

「主の御業をここに。我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! 我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

聖女ジャンヌ・ダルクが掲げ続けたという、集いし英雄達を鼓舞する旗がはためいた。その旗手は小さなジャンヌ、存在しな筈の幼き別側面。

そしてその旗に集う英雄は三人の少女たち。

 

「空に輝きを。地には恵みを。そして、民に幸せを。愛すべき輝きは永遠に(クリスタル・パレス)!」

マリー・アントワネットの宝具を使うポール・バニヤン。

 

「王家の百合永遠なれ。百合の花咲く豪華絢爛(フルール・ド・リス)!」

シュヴァリエ・デオンの宝具を使うナーサリー・ライム。

 

「聴くがいい!魔の響きを! 死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)!」

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの宝具を使うジャック・ザ・リッパー。

 

少女たちは時に宝具を交換し合い、時に同じ宝具を同時発動し、満面の笑みで英雄ごっこを満喫するのだった。

 

「何度見てもすごいですよね、この魔術礼装?とか言うやつの魔法」

「………」

「………」

「“……”」

そして魔術と魔法の区別がついていない彼の発言に、エミヤとマシュと藤丸は何とも言えない表情を浮かべる。

 

「……まぁいいさ。君が素人である以上、その辺りの区別がなくとも問題はないのだから。

 子供が子供らしくあれるのならば、それは決して悪いことではない」

 





今日も元気に、折角考えたオリジナルサーヴァントの設定を語っていこうのコーナー

【真名】正一位・金長大明神
【クラス】 フェイカー
『偽物』のクラス。このクラスに該当する英霊は本来、他の英霊の偽物や影武者などである。しかし化け狸の英雄である金長は、変化の力であらゆる英霊にガワだけなら化けられるためこのクラスの適性を得た。


フェイカーのクラススキル
単独行動:B
 マスターからの魔力供給を絶ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
偽装工作:EX
 ステータス及びクラスを偽装する能力。もとより変化術にたけている化け狸の英霊で、その中でもトップクラスの実力を持つ金長の場合、そもそも偽装が偽装である気づくこと自体が難しいレベルにまで至っている。その上、神代の魔術を持ってしても看破は不可能。

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