月星花伝 gessyo-kaden   作:渡邉 実一

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#01:誰にも届かない鼓動(1/2)

 誠実な方じゃないと思う。

 自分勝手で、天邪鬼で、気が短くて、そのせいで苦しんでばかりいる。

 だから昨晩、あんなに頭のおかしい夢を見ることになったんだ。

 あぁ、一体、今日という日をどんな気分で過ごすことになるんだろうか。恐ろしい。

 

「……やめた」

 

 寝床から上体を起こすと室内を眺めた。めまいに襲われる。

 

「……飯食えばなんとかなるだろ」

 

 寝床から脱出した。寝巻きなんて豪華なものは持っていない。襖の方に進んでいく。

 襖の梁の上に学ランがかけてある。ヨレヨレになっていた。ロクに手入れをしていないから。

 

(わたる)。今日、早いね」

「まあな」

 

 後ろを振り返ると、栞が毛布に包まっている。いつもの、二度目の就寝というやつ。

 

「朝ごはん作ってあるから」

「ありがと」

 

 ぶっきらぼうな返事……だったと思う。

 襖を開けて、廊下に出る。粗っぽい木目の床。足元が冷たい。

 トイレと、洗面所と、いま目覚めたばかりの寝室。この狭い家を回って身支度を整える。

 最後に辿り着いたのは、居間だった。

 襖戸が開いていく時の乾いた摩擦音を聞きながら、座卓の上を眺める。

 

「お、いいじゃん」

 

 卓の真ん中に置いてある皿の上には卵焼きとウインナー。少しばかり端の方には、すまし汁の入った鍋が置いてある。

 畳の上にある炊飯器が目に入る。傍には俺の弁当が。

 

「……」

 

 卵焼きとウインナーを一切れ摘んで、胃に放り込んだ。朝飯は、ほとんど食べない。いつものことだ。

 時刻は、午前七時三〇分。履き潰したスニーカーとともに家を出る。いつものことだ。

 玄関を出てすぐ、大きな杉の木ごしに隣家を見る。誰も居ないことを確かめてから、なんの舗装もされていない通学路に飛び出した――いつものことだ。

 

 *  *  *

 

 霧雨が降っている。

 お天道さまが雲の切れ端に横たわっていた。いわゆる、キツネの嫁入りというやつ。

 細かいシャワーの粒みたいな水滴が前髪を濡らしている。手首から先にかけての湿った感じ。学ランの袖についた水分をシャッシャッと払い飛ばす。

 空を見上げると、太陽が雲の切れ端から飛び出して、いよいよ彼方の青空へと羽ばたこうとしているみたいだった。実際には、雲が動いているだけなんだけど。

 雨なんて気にならない。むしろ濡らして欲しい。傘は面倒だ。

 

「ちょっと早すぎたな」

 

 小高い丘を降りていく。坂の下には、国府第三中学校が見える。薄汚れたベージュ色の校舎が。

 雨と晴れとの境界線を見やりつつ、真後ろを振り返る。

 やっぱり、来ていない。

 ……校舎の西側にある校門を通り抜けて、下駄箱にスニーカーを放り込んで、すぐ傍にある階段を二段飛ばしで駆け上がり、渡り廊下を突っ走って、右手に曲がってまっすぐに廊下を行くと、3年3組と書いてある年季の入った表札が見えてくる。

 開け放たれたスライド扉をくぐると、まだそんなに見慣れてもいない教室が広がる。

 午前七時五十五分。人はまばらだ。俺とそして、向こうに座っている篤と砂羽(さわ)を含めても十人ほどしかいないだろう。

 

「……」

 

 挨拶はしない。自分の席へと進んでいく。

 俺たちに反応する奴なんかいない。いないけど、先ほどまでは確かにあった喧騒の波が崩れるというか、空気が変わったのはわかる。

 

「はよっす~!」

 

 俺のすぐ後ろから、別の男子生徒が入ってくる。

 ざっくばらんにクラスメイトに挨拶をすると、また元気のよい挨拶が返ってくるのだった。朝の雑談の仲間がまたひとり増えたようだ。

 そんな様子を尻目に、すごすごと教室の端、窓際の最前列から三番目の席にカバンを置いた。

 

「渉、おはよう」

「……はよ」

「篤、砂羽、おはよう」

 

 小声で挨拶を返し、席につく。

 すぐ前の席に居る篤は、いつものようにキリッとした、でもどこか冷たい表情で英単語ノートを広げている。ああ、ごめんな。勉強の邪魔して。

 もうひとり、最前列に座っている砂羽は……これまたいつものように、半目をこすりながら窓側に背をもたせている。

 

「さてと」

 

 授業の仕度とばかり、カバンの中身を机の中に入れていたところ、

 

「おはようっ!」

 

 大きな声を響かせて、ひとりの女子が入って来る。ついに来た。いつもより五分ほど遅い。

 

「……」

 

 静寂。誰も挨拶を返さない。これもまた、いつものこと。

 いつも俺が、この3年3組の教室に入って、ちょっと仕度を始めたところで、この女子、汐町由香里(しおまちゆかり)が入ってくる。

 ここまで全部、いつものことだ。

 

「……」

 

 由香里がこちらの方へと。俺のすぐ後ろの席だ。

 今ちょうど、一時間目の教科書類を確かめたところ。

 

「おはよう、渉」

「……おはよう」

「いつもより早かったじゃない。栞さんとケンカでもしたの?」

「そんなことない」

「え~、ほんとに? 急いだんだけど、追いつかなかったよ。ねえ、たまには一緒に登校しようよ」

「してるだろ。たまにだけど」

「ほんとに、たまにだけどね」

 

 勘弁してくれよ。もう中学三年生だぞ。

 

「ねえ、ところで。今日は、した?」

 

 ああ、コレもまた、いつもの流れだ。うっかり、渋い顔をしてしまう。

 

「してないんでしょ!」

「してないけど」

「いや、なんで?」

「どうしても」

「いや、だから、なんで?」

「なんでもだ」

「いやいや、だっかっら~、なんで?」

「なにがなんでも」

「いやいやいやいや、だからさぁ~~、な・ん・でっ?」

「わかってるんだろ」

「……」

 

 由香里が言ってるのは、アイサツのことだ。さっきの自分のように、大きな声でみんなに「おはよう」を告げろと言っている。

 俺はつい、しかめ面になってしまう。言っとくけど、おかしいのはお前だぞ。

 由香里は、ガンッ! という音を立てて(俺の)机の脚を蹴り飛ばすとともに、不機嫌そうな様子で席についた。機嫌が悪い時はこんなことをする。

 

「おい、丸聞こえだったぞ」

 

 篤だった。こちらに視線はない。英単語ノートを読みながら話している。

 ふと見ると、その机の上に薄いピンク色の封筒が置いてある。封が開いている。

 

「なあ、篤。お前は、今日は挨拶したん?」

「僕は、毎日しているよ。ああ、聞くな。わかってるから」

「砂羽は?」

「……え?」

 

 ぼんやりとした様子。

 

「いつものことだろ。そっとしておこう」

 

 篤の言葉を耳に入れつつ、封筒からはみ出した手紙に目をやる。

 ああ、そうか。わかった。どういうものかが。

 思い出してしまった。あの中には、A4サイズの一枚の手紙が入っている。

 ……さて。もう一度だけ、砂羽に聞いてみるか。

 

「なあ、砂羽はさ。教室に入った時、おはようって挨拶してるのか?」

「してない」

「どうしてだ?」

「どうしても……」

 

 砂羽は、すぐ表情に出る。答えに窮しているのが手に取るようにわかる。

 

「いやいや、だから、なんで?」

 

 でも、俺は問いかけをやめない。

 

「ええと、だから、どうしても……!」

「いやいや、だからさ、なんでなのか気になるだろ」

「……だって、みんな、」

「真似すんなっ! あんたに問う資格なしっ!」

 

 ガ、ガ、ゴッ! ガガッ! ……由香里は(俺の)机を蹴り続けている。

 篤がため息をついた。

 

「諦めないといけないんだよ」

 

 小さい声だけど、はっきりと聞こえた。真実だけれども、由香里の鋼鉄のハートに響くことは一生ないだろう。

 ……周りを見渡さなくても、わかる。

 今この瞬間、クラスの全員、俺たちのことなんか気にしちゃいない。いや、違う。気にしてないんじゃなくて、気にしたくないんだ。

 それでも気にせざるを得ないから、こんなに変な空気になっている。誰も俺たちの方を見てないけど、心の視界では不愉快なナニカとして映っている。

 

 *  *  *

 

「さて、そういうわけで……それまでは、石器はせいぜい磨いたりするまでが関の山だった。でも、時代を経るごとに、粘土を焼いたら硬くなるとか、鉄や銅でも溶かせるということに気がつくわけだ。そして、冶金技術が広がりを見せた頃が石器時代の終わりの区切りになる……ここもテスト範囲だ。縄文時代と弥生時代の区別をつけられるように」

 

 落ち着かない教室。クラスの半分以上がおしゃべりに興じている。特段変わったところはない。いつもこんな風だ。

 たまに、非常ベルが鳴ったりする。誰かがイタズラで鳴らしているのだ。そんなことは先生も生徒もわかっているので、ベルが鳴っても気にしない。

 俺はただ、機械的にノートを取っている。前方の席を見た。篤は、熱心だ。ノートに独自の書き込みを加えまくっている。

 砂羽は、教科書のページが明らかに違ううえに、落ち着かない様子で貧乏ゆすりをしている。

 

「……」

 

 チラッと、真後ろを振り向いた。本当に、チラッとだけ。

 ……由香里は、片方の肘をついて教科書を読み込んでいた。ピンク色のマーカーが引いてある。

 

「ハイ! それでは~~っ! 静粛に。これから大事なところ」

 

 教壇に立っている教師、赤木先生が声を上げる。

 ……喧騒は止まない。

 

「静かにしなさい!」

 

 喧騒が少しばかり収まった。だが時間の問題だろう。

 

「今日、いや前回もだが、先生な、大事なことを話したぞ。さて、なんだっけ? 身分制度に関することだったよな。はい、だれか」

 

 ……誰も手を挙げない。

 そんな中、篤だけが手を挙げた。

 

「どうした、ひとりだけか? 簡単なとこだぞ」

 

 生徒らを煽っていくも、誰も手を挙げない。

 

「ぎゃははははッ!!」

 

 教壇の近くの席で大笑いをしている者が約三名。

 箱田だった。ピシッとした制服の着こなしだけど、れっきとした不良グループのリーダーである。一緒に話をしているのは、鵜飼尚吾。俺の――

 

「やかましいッ!」

「あ!?」

 

 箱田のメンツの問題だろう、どなる赤木先生に対して睨みを利かせる。

 赤木先生は、深呼吸をしつつ、

 

「みんな、聞きなさい。こんな成績加点チャンスはめったに無いんだぞ。今年は受験だろう」

 

 ……ここで手を挙げないのは不経済だと言っている。

 数人が手を挙げた。ひとりが指名される。

 

「ええと、弥生時代から国家が成立しはじめて……身分制度ができますっ」

「ああ、これは……もうちょっと! でも、平生点加点しちゃうぞ! ほかには」

 

 篤以外の全員が手を下ろしてしまう。

 

 赤木先生は、そぞろに教室中を見渡した。誰も手を挙げないのを確かめてから、

 

「よし、それじゃあ、神部(かんべ)。いってみようか」

 

 篤を指名する。

 落ち着いた声の調子で、回答が始まった――

 

「はい。以前に赤木先生がおっしゃったこと、そのままで失礼します……まず、弥生時代から国家が成立しはじめ、身分制度が始まったと教科書に書いてありますが、事実と異なる部分があります。まず、縄文時代には国家の前段階としてのクニがあり、戦争がありました。そして、敗北したクニの人々は、勝利したクニの人々の奴隷となりました。特に、旧支配者層は弾圧を受け、生活するうえで著しく不便な地域に強制移住させられました。これこそが、現代でいうところの被差別集落問題という国民的課題の始まりであり、その基礎を固めていったのが縄文時代です。すなわち、マルクスの用語でいうところの階級闘争です。虐げられた者たちは、物的生産過程の変遷によって古い生産関係を破壊し、新たな生産手段を身に付け、やがては支配者層への反逆を果たす。この典型が、平安時代に起こった鉄器の生産性革命における自立的村落の始まりです。これはそう、すなわち、弁証法的発展です」

 

 教室が静寂に包まれている。

 ……静けさを破って拍手が聞こえた。赤木先生ひとりによる。

 

「素晴らしい! 神部~、相変わらずだな。今回も満点を期待してるからな。弁証法的発展、なんと素晴らしい響きよ! ああ~、でもな。さすがに教科書にない範囲はテストに出せなくってな、申し訳ない。でも、君のようにやる気のある生徒がいる以上は、いつかそんな問題を出してやろうと思うぞ、先生」

「恐縮です」

 

 教室の空気は、しらけている……と思う。

 誰かが舌打ちをした。コソコソと話がはじまる。

 いつものことだ。

 

 *  *  *

 

 昼休み。

 トイレから戻ってくると、自分の席を確かめる。

 すると、由香里が当然のように俺の席を自分のと合体させている。

 

「渉。早く早く」

 

 『早く俺の弁当を広げろ』と言っている。

 

「ねえ、今日のお弁当は?」

「これ」

「卵焼きとウインナーがこんなに! 羨まし~!」

「そうか?」

「栞さん、料理上手だもんね」

「……」

 

 ツッコミを入れることができない。

 いや、「こんなの誰でも出来るだろ!」とはっきり言えばいいのに。でも、俺には言えないし、言わない。

 

「おいしい」

 

 卵焼きをほおばっている。俺はただ、おいしそうにしているのを眺めているだけ。

 さりとて腹は減っている。今朝食べた分は、もうとっくに消化されている。

 ウインナーを手で摘んで口に入れた。冷たい肉味を感じる。

 

「由香里の弁当は?」

「ん? いつものやつ。あたし、これいらないよ? あげよっか」

 

 レタスとハムが挟まっているサンドイッチを取り出した。コンビニで買ったもの。

 

「じゃあ、もらうな」

 

 サンドイッチを手に取ったなら、弁当を差し出す。

 

「ありがと。いつも」

 

 栞にいつも頼んでいた。できるだけ多めに弁当を作ってほしいと。成長期の身体にこんなんじゃ足りない、と。

 それがいつの間にやら、量が多くなってるだけじゃなくて、もう一組の割り箸まで付いてきてる。

 そんなこんなで、俺はサンドイッチを齧っている。

 レタスもハムもチーズも、なんだか塩っ辛い。ああ、でも運動した後だと、こういうのがうまいんだよな、と思いながら――ふと、篤の席に目をやった。

 あの手紙が置いてある。中身が覗いている、あの手紙が。

 

「篤の机にモノが投げっぱなしなんて。珍しい」

「そういえば、最近ここにいないことがあるな」

「あたしは見てないよ。ねえ、砂羽は? 知ってるんじゃない?」

 

 砂羽は、もくもくと握り飯をほおばっている。

 水筒のお茶で喉を潤したなら、

 

「……ほかの男子といっしょにいる」

 

 静かな調子でそう告げた。

 寂しそう、とはなにか違う。心配、とでもいったらいいのか。

 

「あー。見たことあるわ。箱田とかと一緒に話してるとこ。いつの間に仲良くなったんだろ……でも、どうやって? ねえねえ、捜しに行こうよ!」

「……由香里。そんなに気になるか?」

「うん、気になる。教えて渉」

「そうか。気にしない方がいい」

「えー、なんで? 気になる」

「そのまま、気にしないという選択肢はどうだろう」

「……それこそ気にせず、素直に教えてくれるという選択肢はいかが?」

「篤を捜すのは諦めて、トイレで女子会話に混ざってくるのはどうだ」

「混ざってくるついでに、渉からアドバイスをもらったあたしが篤を捜してみるのはいかが?」

「トイレに行ってみたはいいものの、ほかの女子に相手にされなかったので、そのまま引き返すことになるかもよ」

「そんな傷ついたあたしのために、渉が篤を捜しに行くというのはどうかしら?」

「そして、諦めて帰ってきた俺を、優しいお前らが放っておいてくれる未来を信じてる」

「そ・ん・なっ!!」

 

 キレてしまった。

 

「そんな、諦めて帰ってきた渉が、あの山の向こうまで優しく吹っ飛ばされる未来はいかが?」

「……」

 

 ふいに俺は、篤の机にあった封筒から手紙を取り出した。特に理由はない。話題を逸らしたいだけだ。

 サッと、三つ折りになったそれを開いたなら、流し読みをする。

 ほら、やっぱり。

 

「あ! 渉……人の手紙、とっちゃだめ」

 

 砂羽から注意が入る。

 

「いいだろ。みんなに来てる手紙なんだから。中身はわかってる」

 

ハ教総 第13号

永化3年4月9日

児童生徒・保護者 様

ハッピーマウンテン市教育委員会(教育総務課)

 

辻町地域学習会について(ご案内)

 

 平素よりハッピーマウンテン市教育行政へのご協力を賜っておりますところ、謹んで感謝申しあげます。

 さて、来たる4月21日に表記の学習会(中学生が対象です)を行いますので、皆さま奮ってご参加ください。当日は、各々教科担当の先生のほかに、来賓としてハッピーマウンテン市議会議員の喬木直利(たかぎなおとし)様をお迎えする予定です。

 保護者の皆さまにおかれましては、引き続き教育活動へのご理解ご協力のほどお願い申しあげます。

 

 要約しよう。隣保館(りんぽかん)で学習会があるとのこと。

 手紙を破り捨てた。

 

「ちょっと! 渉」

「ばかじゃねえの。こんな会」

「……やりすぎだよ」

 

 抗議の声など知らぬとばかり、俺は、

 

「いったい、こんなところに通ってなんの意味があるってんだ? 意味がないからクソ会だって言ってんだ」

 

 すると、由香里は立ち塞がるようにして、

 

「やりすぎだよ。篤はね、あの国府高校に行くのが目標なんだよ。だから、この会に参加してるの」

「とっくの昔に知ってる。この会がそれに何の関係があるっていうんだ」

「うちの先生だって、ほかの学校の先生だって、国府高校の先生だって参加するんだよ? 関係あるに決まってんじゃん」

「そんな会に行かなくても、あいつは成績いいだろ」

「成績いいだけじゃだめなんだよ。公立高校なんだから。内申点」

「……ねえ」

 

 ここで、砂羽が割り込んでくる――目が笑っていない。

 

「ど、どうした? 砂羽」

「そんなに篤が気になるなら、今から直接聞きに行ったら? 手紙、破ったこと……謝らないといけないよね?」

「……」

 

 無言で砂羽の目をみる。目が合った。そっぽを向かれる。

 ……が、また俺の方に視線を戻す。かと思えば、またそっぽを向く。

 

「わかったよ、行けばいいんだろ。行くよ。探しに」

 

 すごすごと、教室から出て行く羽目になった。

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