「充電、充電!」
胡桃が私の膝の上に乗っかっている。
充電と言っているけど、一体何を充電しているのだろう。
ちょっと考えてみる……けど、やっぱりダルい。
「胡桃は……なんで私の上に乗るの?」
たずねると、胡桃が振り返って私を見上げる。
膝の上に乗っても見上げられるほど、胡桃は小さい。
「充電するためだよ!」
胡桃はそれだけ言ってまた前を向く。
結局よくわからない。
「……何を?」
「元気! ……かな?」
「膝の上に乗るだけでできるんだ?」
何も返事が返ってこない。
あまり深く聞いても仕方ないので、とりあえずそのままでいることにする。
座ったまま、胡桃はもぞもぞと動いている。
「反対なら、もっとちゃんと充電できるかも!」
「……反対?」
そう言うと胡桃は、膝の上から降りる。
目の前には小さな背中が立っている。
ほとんど背中を向けたまま、胡桃は体のひねりだけで振り返ってこちらをチラリと見た。
「……どうしたの?」
胡桃の表情は、横顔しか見えないのでよくわからない。
胸の辺りで握られた手が、より強くぎゅっと握られた気がした。
「えいっ!」
そんな掛け声と一緒に、胡桃がまた私の膝の上に乗る。
勢いはあったけど、軽いのであんまり痛くない。
上に乗るのはいつも通り。
でも、確かに反対……だった。
胡桃はペタンコ座りで、私と向かい合う形になっている。
両手で私の制服の下の方をつかんでいた。
「……反対?」
「そう、反対……」
そう呟く胡桃の声は、いつもの元気さがない。
充電、と言っていた。元気がないのだろうか? ちょっと心配になる。
胡桃は顔を少し傾けて、うつむいている。
でもこれは仕方ないのかもしれない。
だって、向かい合っているんだから。
私だってこのまま見上げられたら目をそらしてしまうかもしれない。
ちらっとだけ、胡桃がこっちを見た。
どことなく、顔が赤い気がした。熱でもあるのだろうか?
胡桃の小さな額に手を伸ばす。
「ひゃあ!」
胡桃が小さく悲鳴をあげた。
「……どうしたの?」
「ど! ど! どうしたのって! シロこそ何を……!?」
「熱があるのかと思って」
初めてちゃんと胡桃がこちらを見た。
やっぱり顔が赤い気がする。
何度か口を開いたり閉じたりする。
「ば、バカみたい!」
そう言って胡桃は膝の上からおりて、結局いつもの背中を向けた状態で座りなおした。
バカみたいと言われてしまった……。
目の前にある、胡桃の頭を見る。
熱は大丈夫なんだろうか? 最初より近くなった背中が暖かい。
もし胡桃が風邪で休んだら……。
学校をさぼって、看病にでも行こうかな。
そんなことを思いついた。