虹色に輝く世界で ~あなたは残された時間を何に使いますか?~ 作:トミザワ
また誤字などあれば報告してくださるとありがたいです。
僕は勉強が苦手だった。社会や国語はできるものの、理数系は壊滅的で毎回テストは赤点だった。
僕は運動が苦手だった。生まれつき体が弱いせいか長距離走や短距離走はいつもビリだったし、球技の試合もいつも足を引っ張ってばかりだった。
僕は人と話すのが苦手だった。人と目を合わせることもできないし、声も小さい。いわゆるコミュ障だった。そのせいかいじめられることもあった。
僕は学校が嫌いだ。勉強は苦手だし、運動はできない。それに友達もできないどころかいじめられる。毎日が最低だった。
そんな最低な生活が突然終わる。
気がついたのは体育の授業後。突然、頭痛とめまいが始まり、それがずっと続くようになった。もともと体が弱く、貧血気味のこともあり放置していたが、あまりにも治らないので病院に行くことにした。
診断の結果、脳腫瘍と判明した。放置したこともあってステージ4まで進んでいた。それに手術をしても高確率で再発すると言う絶望的な状況らしく、余命は6ヶ月と宣告された。
僕はそれを聞いてこう思った。
これは罰なんだと
努力もせずに体が弱いからだとか、コミュ障なのを言い訳にして逃げてきた罰なんだと
一体僕に価値はあるのだろうか?
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「は?編入?」
病院のベッドに横たわりながら、母の言葉に驚く。
「そう。お母さんの元同級生に高校の学園長やってる人がいて裕介のこと話したら、ぜひ入って欲しいって!」
どうやら母は編入させる気満々のようだが、僕にその気はない。
「母さん.....。僕は余命6ヶ月なんだよ?今更高校に編入する気はないし、今の高校にも行く意味ないよ。」
すると母は『はぁ...』とため息をついて、こう言った。
「あのね、裕介。余命というのはあくまで予測なのよ?ネットで見たでしょ?普通に余命宣告されても25年生きてる人もいるのよ?もしそうなったらどうするの?それにこの高校は病院にも近いし、裕介の病気のことを知った上で入って欲しいと言ってるのよ?」
学校が病院に近いことや、病気のことを承知の上なのは魅力的なのだが、まず前提として僕は学校に行きたいと一言も言ってないし、むしろ行きたくないのだが...。
「でも僕は行きたくなi.....」
「行け」
「.....はい」
まぁわかってはいだけども僕に拒否権はないんだね。
「ただ一つお願いがある。」
「何かしら?」
「その学校の生徒には病気のことや余命のことは内密にしてほしい。赤の他人に憐れられむのは嫌だ。」
「....わかったわ」
そう言って母は部屋を病室を後にした。
余命宣告をされてから2週間、今は検査のため入退院を繰り返している。今のところ症状はめまいや吐き気、頭痛、ふらつき程度で済んでいるが、悪化すれば、視神経や聴覚異常、場合によっては言葉すら上手く話せなくなると言う。
もちろん再発しないことを賭けて手術をする選択もあったが、僕は手術を断った。金銭的な問題もあったし、何よりもそこまでして生きる必要性を感じなかったからだ。
「はぁ.....」
僕は深いため息をついて外を見る。
空はどんよりとした曇り空だった。
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「はぁ.....」
僕は傘を差しながら、ため息をつく。季節は梅雨に入り、ほぼ毎日大粒の雨が降っていた。
あれから一週間が経ち、とうとう初登校の日がやってきた。
「まさか女子高だったとは.....」
手続きが終わった後、よくよく調べて見るとまさかの女子高だったということが判明。ただでさえ、人と話すことが苦手なのに相手が異性となると尚更だ。
いっそのこと、この大雨で学校が水没してしまえばいいのに.....。
「.....」
そう思ってるとしだいに雨は弱まり、雲の隙間からお天道様が顔を出した。それどころか空は綺麗な虹を描いていた。
なぜ天気はこうも空気が読めないのだろうか。出たくない体育祭の日には雲一つない天気になって。楽しみにしていた旅行の日に関しては大雨になる。
「あっ........」
そう考えてると、あっというまに正門前まで来ていた。
「........」
これから通うことになる私立虹ヶ咲学園は様々な学科が存在しており、一学年だけで約1000人いると言う。つまり全校生徒はおそらく3000人。その中で男子生徒は僕だけ....。つまり地獄と言うわけだ。
それに恐らく学園内には男子の存在を嫌う生徒は一定数いるだろうし、まずこんなコミュ障を相手にしてくれるわけがない。恐らくぼっちになるか、いじめられるかのどちらかだろう。
『ねぇ....あれって』
『編入してくる男子だよ』
『正門の前で立って何やってんの?w』
『迷ってるんじゃないのw 案内してあげればw』
『え~wやだよw』
「!?」
正門前で踏みとどまっていると、いつのまにか注目の対象になってしまっていた。
「っ!」
女子生徒の反応に僕は耐えれなくなり、とっさにこの場から離れようとする。
だがその時、悲劇は起きてしまった。
ドンッ!
「キャッ!」
「うっ.....」
この場から逃げ出そうとした瞬間、人とぶつかってしまった。
「イタタタタ.....」
僕とぶつかった相手はツインテールで髪の先が緑色のかわいらしい女の子だった。
しかし、そんなことはどうでも良かった。問題は彼女が僕とぶつかったあと衝撃で尻餅をついてしまい、その先が水溜まりであったことだった。つまり彼女はびしょ濡れ。
「ぁ...ぇ.......ぁ」
早く謝らないと.....。そう思ってるのに声が出ない。
『うわっ.....高咲さんかわいそう.....。』
『びしょ濡れじゃん.....。なんでアイツ謝らないの?』
正門前ということもあってか周りの視線が嫌と言うほどわかった。
「ご、ごめんなさい!」
僕はそう言って、その場から逃げ出してしまった。
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「はぁ.....」
僕は虹ヶ咲学園の隣にある公園のベンチに座っていた。
恐らく.....いや100%僕の学校生活は終わった。もとから終わってはいたのだが、せめて静かに過ごしたかった。女子の情報ネットワークは恐ろしく、今頃編入してくる男子生徒はコミュ障でぶつかって謝るだけ謝って逃げ出した最低どクズ野郎と広まっているだろう。
「はぁ.....早く死にたい。」
ガシッ
そうつぶやくと誰かが僕の肩に手を置いた。僕はとっさに振り返る。
「ヒッ!」
正体は先ほどぶつかった女の子だった。それとさっきまでいなかったピンク色の髪をした女の子が隣にいた。
「侑ちゃん、この子なの?」
「うん!間違いないよ!だって虹ヶ咲の制服着てるじゃん!」
あっ.....終わった。
きっとこの後、校舎裏に連れてかれボコボコにされたのち、毎日「おい!佐竹!パン買ってこいよ!」みたいにパシられるんだ.....。
「さっきはごめん!」
そう考えていると、ツインテールの女の子は頭を下げた。
「えっ.....あ.....」
僕はなにがなんだからわからず呆然としていた。
「私、スマホ見ながら歩いてて、前全然見てなかったの!本当にごめんね!」
そう言ってツインテールの子は再度頭を下げた。
「侑ちゃんも謝ってることだし、許してくれないかな?」
ピンク色の髪をした少女の言葉に僕はコクリと頷いた。そして「僕も悪いです。」と謝れない自分に嫌気がさした。彼女はほとんど悪くないのに。そう考えているとツインテールの彼女は僕の手を握り、こう言った。
「じゃあ行こっか?」
彼女は僕の手を引き、走りだす。
「あ、あの.....ちょっと」
声が小さいせいか僕の言葉は彼女に届かない。
「ちょっと侑ちゃん!急に走らないでよ。」
「歩夢も早くしないと遅刻になるよ。」
彼女は僕をどこに連れてこうとしてるんだ?
答えは決まってる。
嫌だ
怖い
行きたくない
しかし、そんな思いとは裏腹にどんどんと正門は迫ってくる。
「ようこそ!虹ヶ咲学園へ」
その言葉を合図に僕の学校生活が始まった。
続く