虹色に輝く世界で ~あなたは残された時間を何に使いますか?~ 作:トミザワ
※今回はオリキャラが登場しますが、お話に直接かかわる人物ではなく、モブとしてですのでご安心ください。
キーンコーンカーンコーン
6限目終了のチャイムを聞き、僕はタブレットをカバンに入れてそそくさと部室へ向かう。もはやそこには前みたく行きたくないとボヤいていた僕はもういない。
なぜならすでに同好会に行くことが当たり前と化してしまっているからだ。
そう考えると世の中の社畜たちはこうやって洗脳されて行くんだなぁ…。と社会の恐ろしさを感じる。
『…ねぇあれだよ。噂の男子生徒』
『本当だ…。初めてみたかも…』
『アンタ話しかけてみれば?笑』
『ねぇ~笑』
「…」
この学校に入って2ヶ月ほど経ち注目されたり笑い者にされるのもいい加減慣れた。まぁこれに関しては中学の頃からやられていたので今となっては何も感じない。
だが、2ヶ月の月日が経つと少し....いや大きく変わった事も起き始める。
「おっ!裕介じゃん!チーッス!」
「ヒェ....」
黒髪ロングヘアの女子が僕の肩を思いっきり叩き話しかけてくる。黒髪ロングといえば清楚なイメージがあるが、舌と耳に付いてるピアスで僕の天敵(ギャル)である事がわかる。
てかこの学校ピアスもいいのね....。
「え、えっと....」
「忘れたの?ユイだよ!ユイ!」
この黒髪ギャルはユイさんと言って宮下さんの友達らしい。ちなみに苗字は知らん。
「裕介ヒドいよ...。4時間前に出会った仲じゃん...。」
そういってユイさんは「シクシク」とわざとらしく泣く。
「え、え...あの....」
しかしコミュ障の僕はこれになんて返せばいいのかわからない。
しかもお相手は出会って4時間のギャル。これで馴れ馴れしく話しかければ『は?そこまで仲良くなった覚えはないんですけど?』とキレられ、無視すれば『は?ノリ悪!』と言われるもはや詰みの状態である。
『こらこら、裕介君が困ってるじゃないか』
声のする方向に振り返ると、そこには黒髪ショートヘアの女子が立っていた。
「お!演劇部の部長じゃーん!」
「お話し中に申し訳ない。さっきしずくが裕介君を探していたよ」
そう言って演劇部部長は僕を見る。その目は(コイツは私でなんとかするから行きなさい)と言ってるような感じだった。アカン惚れそう。
「そ、そうですか...ユイさんすいませんが失礼します...」
僕はそう言ってそそくさと退散する。後ろではユイさんが『えー!』とぼやいてるのが聞こえる。
とにかく助かった....。
そう。変わった事とは同好会以外の人との交流ができた事だ。今さっき話した宮下さんの友達であるユイさん、それに演劇部の部長、他にも天王寺さんのお友達である色葉さん・今日子さん・浅希さん。交流と言っても少し話す程度で仲良しな訳ではないが、コミュ障の僕にとっては大きな変化だった。
それが良いか悪いか置いておいてね。
そして変化はそれだけではない。
「あっ!先輩!」
振り返るとニコニコしながら走ってくる桜坂さん。先ほど演劇部部長が桜坂さんが僕に用事があると言っていた。僕をユイさんから助けてくれるための嘘だと思っていたが、桜坂さんの様子を見る限り本当に用事があったようだ。
「お、桜坂さん...どうしました?」
その言葉に桜坂さんは一瞬不機嫌そうな顔をする。え、俺何かやっちゃいました?(ガチ)
「実はテスト勉強をかすみさんとする事になったんですが、歴史の所でわからない所があって...また裕介さんに教えて欲しくて....」
「え、えと...」
桜坂さんのお願いに僕は困惑する。実は少し前にもお願いされた事があったのだが、そもそも僕は歴史や社会以外まったく勉強ができない。それに得意教科であってもコミュ障の僕に教えるなんて事ができる事もなく、ただ一緒に勉強しただけと言う前例があるのだ。
「や、やっぱり、駄目ですよね?」
桜坂さんは不安そうに僕に聞く。しかも演技のようなあざとい感じではなく、結構ガチで不安そうに。
「だ、大丈夫ですよ」
桜坂さんの不安そうな顔を見て僕は了承する旨を伝える。まぁ元から断れるほどの勇気もないから結局同じ結末を辿るんですけどね。
「あ、ありがとうございます!部室でやるので一緒に行きましょ!」
桜坂さんの言葉に「は、はい」と返事して部室へ向かう。
よくよく考えたら歴史なんて暗記なんだから教えるも何もなくないか?
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「あっ!裕介先輩やっときた!待ったんですからね!」
部室に入るとすでに「プンプン!」とあざとく怒る中須さんが待っていた。てかなんで僕だけ怒られるの?
ちなみに今はテスト期間という事もあって、同好会には来れる人だけが来るという事になっている。
個人的に一年生の教室で勉強会となると他の生徒の目に入って変な噂をされるかもしれないので同好会の部室の方がありがたい。
てか帰りたい。
そもそも僕は余命6ヶ月の身。あと数ヶ月もすればこの学校生活もリタイアとなる。つまり0点を採ろうが成績や内申点がどれだけ低くても関係ないのだ。
つまり無敵の人なのである。
「ほら!裕介先輩もぼーっとしてないで座ってください!」
中須さんの言葉で現実に引き戻され、僕は席に座る。中須さんが僕の向かい側に座り、桜坂さんが隣に座る。
「そういえば、裕介先輩って数学苦手でしたよね。範囲が違いますが、できる所ならよければ教えましょうか?」
あれ?一応僕が教えるって話でしたよね?マジで数学やりたくないんだが。
「お、お願いします....」
まぁ断れないんだけどね。
「テキスト少し見せて貰ってもいいですか?」
桜坂さんはそう言って僕の方に身を乗り出す。
「っ!」
すぐ横にまで桜坂さんの顔が近づく。もはや息遣いが聞こえるほどの距離。髪をかきあげ真剣にテキストを見る彼女はアイドルをやってるだけあってか白く綺麗な肌と整った顔に思わず見惚れてしまいそうになる。
そう。もう一つ変わった事とは同好会メンバーとの距離である。
いや距離近くね?え、なに?僕の事好きなの?
だが落ち着け、ここで勘違いを起こしてみろ。
『そんなつもりじゃなかったんですけど.....ごめんなさい。』
と振られて泣きながらあの世に行く事になる。
冷静になるんだ。
「あ、あの!ち、近いです...」
よう言った僕、危うく勘違いをおこして惚れそうになった。
「え!?あ、すす、すいません!」
僕の言葉に彼女は顔を真っ赤にしながら距離をとる。
もはやその反応ですら勘違いするからやめて欲しい...。
中須さんの方を見ると「はぁ...。まったくしず子は...」とため息をついていた。
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「つ、疲れた...。」
勉強会(半分は雑談(特に中須さん))も終わり、帰途につく。
学校の昇降口を出ると少し太陽が沈みはじめ、ニイニイゼミが鳴いていた。
「「あ」」
すると昇降口前でバッタリと上原さんに会ってしまった。
「ゆ、裕介君も勉強で残っていたの?」
「は、はい。上原さんもですか?」
「う、うん。侑ちゃんと...。忘れ物取りに戻るって行っちゃって、ここで待ってるんだ。」
「「.........」」
そして両者沈黙。しまいには上原さんはスマホを見てしまう。別に僕としては上原さんや高咲さんに用事もないし、帰ればよいだけなのだが、それすらも気まずい。黙って帰るのも気が引けるし、声もかけずらい。
マジでどうしよ。
「「......」」
しばらく沈黙が続いた後、僕は横目にチラッと上原さんの方を見る。
「っ!」
するとスマホからチラッと横目に僕を見ていたのか目が合ってしまい、すぐに上原さんはスマホの方へ目線を向ける。
どうやら気まずいと思っているのは向こうも同じなようだ。
そういえば......。
上原さんと二人きりで話した事ないかも?
必ず話す時は高咲さんか他のメンバーがいる時......いや...他のメンバーがいても上原さんと僕でのコミュニケーションは取った事がないかもしれない。
「あ、あの!」
「ひゃい!」
上原さんが突然話しかけてきたため驚いてしまった。そんな僕に上原さんは『ご、ごめんね』と謝る。
「あ、あのさ裕介君は中学の時の事とかお、覚えてる?」
「は、はい?」
突然の質問に困惑してしまう。覚えていないわけがない。体育会系、文化祭、そしていじめられる毎日。むしろさっさと忘れてしまいたいほどだ。
「あ、あのね!ちょっと前に中学の同級生に会ったんだけどさ、私全然思い出せなくて....。ゆ、裕介君は他のクラスの人とか憶えてる」
困惑してる僕を見てか上原さんは質問の意図を話しだす。
なるほど、そういう事だったのか...。
でもごめんよ。上原さん。その裕介君は友達とかいなかったし、途中一時期不登校だったから他の教室の人なんて覚えてるとかそういうレベルじゃないんだ...。
イジメの主犯の顔は覚えてるよ...。ははは....。
「他のクラスの人はまったく覚えてませんね....。仲の良い友達とかだったら覚えてますけど...」
なんて言える訳もなく、無難な回答をする。
「そ、そうだよね。ご、ごめんね。」
そう言いながら、上原さんは微妙な顔をする。一瞬ホッとしたような表情を見せ、すぐに残念そうな表情になった。
これあれかね。お前に仲の良い友達なんていないだろって思われたかな。
だとしたら悲しいよ....。事実だけど...。
「じ、じゃあ僕はこれで...」
「う、うん」
結局気まずさが無くなる事はないまま、僕は退散した。
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「ふぅ....」
自宅に着き、僕はベッドにダイブする。今日も濃い1日であった。
入学から約2ヶ月....少しずつ変化している。自覚はないが、周りだけではなく恐らく自分自身も変わっているのだろう。
「....僕は本当に死ぬのか?」
僕はあの告知から自分が本当に死ぬのかあんまり実感が出来ていない。
余命6ヶ月....。ただ訴訟や責任問題を回避するためにあらかじめ短い間に告知する事になっているらしい。
ただそれでも長く見積もって一年。それも一年間元気で活動できる訳ではない。学校で生活できるのはあと数ヶ月だ。
「.....なんて言おう」
いやもし言ったらどういう反応をするだろうか?心配してくれるのかな?
どちらにせよ物凄く気を使わせてしまうだろう。
「事前に先生には言っておこう」
仮に僕が学校生活をリタイアしても家庭の事情とか適当に言い訳をしておいてくださいと伝えておこう。
「.....」
死への恐怖はない。元々最低な人生だったから。ただ今の同好会メンバーには感謝している。
『少しずつ変わっていこ』
宮下さんの言う通り、最期くらいは少し変わっていたい。そして面倒ではあるけれど、何か同好会のために少し貢献したい。
そう思ってしまった。
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続く。
久しぶりの投稿すぎてどんな感じで書けばいいのかめっちゃ迷いました。地の文とか構成おかしいと思ったら報告お願いします。
そしていつも通り、感想、誤字報告よろしくお願いします。