虹色に輝く世界で ~あなたは残された時間を何に使いますか?~ 作:トミザワ
「あ~」
テストも終わり、いよいよ夏休みを迎える。恐らくこの夏休みが人生最後の夏休みになるだろう。
ならやる事は一つしかない。
それは部屋に籠もってゲーム三昧に決まっている。
エアコンが効いた部屋で布団を被ってお菓子を食べながらやるゲームほど最高なものはない。
友達と遊ぶ?彼女とデート?
こんな熱帯雨林みたいな蒸し暑い中外に出るのは愚者だけである。
まぁそもそも友達も彼女もいないんだけどね...。
そして僕は
なぜか学校にいます
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一週間前
「が、合宿ですか?」
「そうです!夏の醍醐味と言えば合宿しかありません!」
「うんうん!みんなで夏合宿なんてトキメイちゃう!」
僕の質問に高咲さんと中川さんは嬉しそうに答える。一体どこが夏の醍醐味でトキメキを感じるのか僕には一切わからない。
「え、えと...」
しかしそんな事はどうでもいい。なぜなら今、佐竹裕介史上最大のピンチだからである。
期間はわからないが、夏休みに行われる事はほぼ確実。しかも合宿となれば当然練習がある。
休日出勤されたあげくにクソ暑い中練習だと?冗談じゃない。
「いやいや、お前マネージャーだろ」と思ったそこのあなた。この同好会は平気でマネージャーもストレッチやらランニングやら平気でさせてきます。
4日前は朝香先輩に『裕介、ストレッチの相手になりなさい』と言われ思いっきり腰をへし折られました。しかもストレッチ中ずっと胸が当たって気が気じゃなかったです。
そしてその3日前には桜坂さんに『裕介先輩も一緒に走りましょ?』と言われ何故か手をつないで走りました。中須さんが『二人ともお熱いですね~』とからかったせいで桜坂さんは顔を真っ赤にして手を離してくれたけど、絶対『キモ...。そういうのじゃねぇよ』って意味ですよね...。
というわけで人生最後の夏休みを返上してまで合宿に行く価値は一切ない。
なら答えは一つ
断るんだ
「あ、あの僕用事が....」
「同好会全員分の合宿申請がすんなり通って良かったです!」
あー...はいはい。わかってましたよ。人権ないって。
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と言うわけで今に至る。
「もう、てっきり、海辺の別荘とかに泊まるのかと・・・。」
「そんな無駄遣いはできません!」
中須さんはボヤいているが、不幸中の幸いにも宿泊先が学校だと言うこと。これで遠方で一週間とかだったら最悪だった。
そしてもちろん同好会メンバーと僕は別部屋。つまり僕だけ一人部屋となる。あれ?これ場合によってはスマホゲームやりたい放題じゃね?なんか思ったより緩い感じだし、意外と悪くないかも?
「じゃあ皆さんで夕食でも作りましょうか!」
どうやら同好会メンバー全員で夕食を作るようだ。さて僕は買っておいたカップラーメンを部屋で食べながらゲーム三昧としましょうかね。
ガシッ
朝香先輩が僕の手首をガッチリと掴む。
「もちろんあなたも参加するのよ?」
「で、ですよね.....」
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「うわー!美味しそう!」
屋外テラスのテーブルには彼方先輩が作ったピザ、中須さんたちが作ったスイーツ、他にもクラッカーや照り焼きチキン、そして中川さんが作った化学兵器など豪華な料理が並んでいた。
お前は何をしたのか?ってひたすら材料や料理を運ばされていました....。
「「いただきます!」」
さすが彼方先輩、店にも出せるレベルで美味しい。
「裕介せんぱーい、かすみんが作ったスイーツ、あーんしてあげましょうか?」
「いやいいです」
「なんで即答なんですか!」
だってこの前パンケーキ店でそうやって間接キスしちゃったじゃん。今度また同じ事が起きてみろ「また間接キスしちゃったよ...気持ち悪っ」ってなるに決まっている。
「ん~!美味しい!」
美味しそうにピザを頬張る高咲さんを横目に僕はテーブルにおいてある料理を見る。
マジでこの化学兵器誰が食べるんだよ...。
テーブルのど真ん中に置かれている中川さんが作ったスープ?を見る。某国民的アニメのジャイアニズムが作ったとしか思えない独創的な色をしている。本当に何を入れたらこんな色になるん?
「じゃあこれも食べようかな~」
しかし高咲さんはそんな事も気にせずに化学兵器に手を出す。
「あっ!それは!」
天王寺さんが止めようとする。しかし時すでに遅し。ブツは高咲さんの口の中に入っていた。
サヨウナラ...高咲さん。
また天国で会おうな。
「うん! こっちも見た目よりマイルドで美味しい!」
「それは良かったです!」
「「え!?」」
予想外の感想に一緒に驚いてしまう。え?ガチ?美味しいの?それとも高咲さんが味音痴なのか?
「ちょっと味を調整したんだ~。」
彼方先輩の言葉を聞いて納得した。でも本当にちょっとなんですかねー?
「「ごちそうさまでした!!」」
夕食も食べ終わり、後は片付けのみとなった。明日の朝食はたまごパーティーをしようというアホンダラがいましたが、中川さんのおかげでなんとか回避できました。
「ダイバーフェス、ホント、すごかったな・・・。」
色々なトラブルと僕の黒歴史を残したダイバーフェス。あんな大人数の前でパフォーマンスをし、観客を虜にしてしまうのだからやはりアーティストは凄いなと思う。
「あー! かすみんも早くステージに立ちたいです! その時は、かすみんのめちゃかわパワーで、お客さんをメロメロにしちゃいます!」
「私は自信を持って自分を表現したいです!」
「彼方ちゃんはベッドの上でリラックスしたいなー。」
「愛さんは、ライブでダジャレぶちかましたい!」
「来てくれた人みんなと、手を繋いで踊ったりしたいな!」
「オンライン中継で、離れた人とも繋がりたい!」
「ダイバーフェス以上に、本気の私を見せるつもりよ!」
「私も、私の『大好き』を叫びたいです!」
「ステージに立つだけで、胸がいっぱいになっちゃいそうだよ・・・。」
全員がライブへの思いを語る。なんかライブ関係なくね?と思うのがいくつかあったような気がするがそこも含めて虹ヶ咲らしいと思う。
「私はみんなのステージが見られるだけでときめいちゃう!」
高咲さんはそう言って僕の方を見る。
「えっ?」
全員の視線が僕に集まる。ナニコレ?僕もなんか言わないといけない系?
「ぼ、ぼくは....」
アカン!アカン!これ地味に回答ミスったら死ぬやつやん。
これでしどろもどろしたり答えれないとかしてみろ『は?全然やる気ないやん』と思われ、変な回答したら『イキんなよ』って思われるやつや。
「僕はみなさんの事を....」
『みなさんの事を応援したいです』そう言おうとした。一番無難な回答だ。
それでいいのか?
転校初日にぶつかって逃げた僕なんかに話しかけてこの同好会に誘ってくれた高咲さんと上原さん。
こんなダメダメな僕だけど先輩として接してくれた桜坂さんと中須さん。
こんな僕だけど始めて趣味が同じで一緒に楽しめるって事を教えてくれた天王寺さんと中川さん。
少しずつでも人は変われるって事。少し強引だけどなんやかんや僕を引っ張ってくれた朝香先輩と宮下さん。
どんな人にも常に優しくて安心させてくれたエマ先輩と彼方先輩。
本当に応援するだけでいいのだろうか?
違う。
「僕は...」
僕にはやりたいことがある
やらなければならない事がある。
「僕はみなさんの....」
「みなさんの夢を叶えたいです....いや」
「必ず皆さんの夢を叶えます」
僕は死ぬまでに彼女たちに恩返しをする。
続く