虹色に輝く世界で ~あなたは残された時間を何に使いますか?~ 作:トミザワ
「クソ!もう体力とスタミナが…」
車の後ろに身を隠し、持ってるアサルトライフルに弾丸を装填する。
リアル時刻で言うと午前1時。
僕はオンラインバトルロワイヤルゲームをやっていた。
最近、流行っている四人チームになって戦うこのゲームを毎日やっている。
ちなみに同じチームの野良プレイヤー、かしこいエリチカさんは操作ミスで崖から落ちて死に、もう一人の堕天使ヨハネさんは車で激戦区に突っこんで死んだ。
ったく…これだから野良は…。
僕はそう思いながら、敵に対して照準を定める。
「今だ…」
パン!
広い荒野に一発の銃声が鳴り響いた。
1Kill+100
ヘッドショット+150
「よし…」
のこる敵は3人…このままいけば…勝てる!
パシュン!
そう思った途端、一発の銃声と共に車の窓ガラスが割れる。
「クソ!」
急いでスモールグレネードを投擲し、近くの建物の中に入る。
パリン!
家の窓ガラスが割れる。
「狙撃手か…」
完全にマークされている…おまけにこちらからでは狙撃手がどこにいるかもわからない…。
しかも…
「REN-HAZUか…」
プレイヤー表を確認すると、そこにはこの界隈で有名はSランク帯のREN-HAZUというプレイヤーの名前があった。
恐らくコイツの仲間たちが距離を詰めてきてるはず…。
だからといってここで顔を出せば、脳天を撃ち抜かれ終わりだ…。
やはりカツ丼は無理なのか…。
いつもはこうやって諦めていた…。
だが、今日は違う。
僕はVCのスイッチを入れる。
『天王寺さんいける?』
『任せて』
彼女の返答から2秒後、荒野に銃声がなり響く。
rina→REN-HAZU
『排除した』
敵が天王寺さんに釘付けになっている今だ!
建物から出て僕は銃を乱射した。
やった!今日はカツ丼だ!
1st rina&介152
「…勝った」
僕はプレイヤー表を見る。
僕は愕然とした。
「15キル!?」
『リナちゃんボード、ドヤッ!』
「あのREN-HAZUさんですら10killなのに…」
最近はこうして天王寺さんと夜遅くまでゲームをしている事が多い。協力する事でカツ丼を取る事も多くなった。
まぁほとんど、僕がキャリーされてばかりなんですけどね…。
そしてゲームを通じて天王寺さんと話す事が多くなった。
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「……」
「あ…う…」
ネットではね?
ご覧の通り、現実で会うとほぼ会話無し。
しかもこのようにばったりと廊下で出会った日には気まずさMAX。
「っ…」
僕は天王寺さんから目を反らし、離脱しようとする。
しかし…
「えっと…あの…」
天王寺さんは僕の袖を掴み、離そうとしない…。
こんなの誰かに見られたら大変だよ…。
「…これ」
そう思っていると、天王寺さんは2枚のチケットを渡してくる。
「VRシューティングゲーム?」
「うん」
チケットを読むと、ジョイポリスにあるVRアトラクションのチケットだった。本来は鳥のキャラクターを撃つらしいが、期間限定で四人協力型ゾンビシューティングゲームになっているらしい。
「で、でも…」
誘ってくれるのは嬉しいが、色々と問題がある。
1 天王寺さんとめちゃくちゃ気まずくなること
ゲームではお互いよく話すが、リアルではご覧の通りお互いこんな感じだ。果たして天王寺さんは楽しめるのだろうか…。
2.このゲームが四人協力型であること
これが一番の問題。天王寺さんと僕以外に残り二人を誘わなければならない。僕はお察しの通り、誘える友達はZEROだ。そうなると、天王寺さんの友達である浅希さん?と言う人を誘うのだろうが、お互い面識がないため気まずさMAXとなる。
「…大丈夫」
「え?」
一体、何が大丈夫なのだろうか…
「裕介さんの知ってる人だから」
なんかものすごく嫌な予感がする…。
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「あっ!りなりー!すけすけ!」
宮下さんはこちらに気づき、手を大きく振る。
いや分かってたよ…この人が来るって…。
てか前から思ってたけど、すけすけってなんだよ。
「裕介さんとこうしてプライベートで合うのは始めてですね!」
そして中川さん、どうやら元からジョイポリスにアニメグッズを買う予定があり、天王寺さんが誘ったらしい…。
波乱の一日になりそうだ…。
「今日こそはジャッカルのステッカーを手に入れてみせます!」
なるほど…中川さんは限定品のジャッカルステッカーを手に入れたい訳ね…。
ん?
ジャッカル?
「ジャッカルってあのジャッカル!?」
嘘だろ!?中川さん、あれ見てるのか!?
「すけすけ?」
「あ」
宮下さんに言われて気がつく
完全に声に出てた…
終わった…
絶対『オタクキッモ…』と心の中で思われた…。
「もしかして見てるんですか?」
「へ?あっはい…」
突然の中川さんの質問にパニクりながらも返事をする
「っ〜!!!」
中川さんは顔を赤くし、歯を食いしばる。
「中川さん?」
一体どうしたと言うんだ…。
「せ、先週の放送見ましたか!?強大な敵を前にしたジャッカルが負けるとわかっていてもヒロインが逃げるために時間を稼ぐシーン!感動しますよね!あと先々週の放送でのアクションシーン、凄かったですよね!今までのヒーローアニメとは違い、しっかりとアクションシーンにも作画を入れていて、そのシーンを見ただけで涙が…」
「は、はい...」
ぶっちゃけ言うと、めっちゃ共感できる…。わかるよ…めっちゃ作画良すぎて何度も録画でそのシーン見返してるもん…。
ただ宮下さんや天王寺さんがいる手前冷静でいなければ…
「ちなみにこの前、限定カードも手に入れたんですが…」
「えぇ!?」
なんだと…?
あれ中々手に入らずにプレミア品になっているあれをだと?
「く、詳しくお願いします!」
「はい!そのカードはお台場の…」
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なんとかジョイポリスに着きました…。
道中に同好会内に自分を含むアニメ厄介オタク2名が炙りだされた事と宮下さんのなんとも言えないダジャレトークを聞かされた事以外はね…。
そして今…
「いっけー!」
宮下さんはマシンガンでゾンビの群れを次々と倒して脱出路を切り開く
「りなりー!いける?」
「援護する」
宮下さんと天王寺さんのチームワークはバッチリで基本は宮下さんがマシンガンでゾンビを薙ぎ払い、装填の際に天王寺がカバーをする見事なチームプレイだ…。
そしてアニメオタク二人組はというと…
「う、うわわわ!」
中川さんはゲーム自体に慣れてないのか操作がおぼつかない状態で天王寺さんや宮下に守ってもらうという状況だ…。
そして僕は
「ヒッ…」
めちゃんこビビってます…。
てか何これ?
思った10倍くらいリアルで怖いんだが…
しかも3人はドンドン前に進み、現在孤立中…。
唯一幸運なのがゾンビのタゲがあの3人に向いてるおかげてまったく襲われない事だ。
もうファイナルウェーブに差し掛かった事だし、そろそろ終わりかな。
「………えっ…」
そう思ってた矢先、とんでもないものを見てしまう。
大きさは他のゾンビより数十倍の大きさ、手には巨大な斧を持っており、誰が見てもボスとわかる風格をしていた。
ボスゾンビはゆっくりと3人の後ろへと近づく
「そんな…」
しかし、あの3人は背後から近づくボスに気づかず前のゾンビの集団を撃退する事に夢中である。
「っ…」
このままでは3人が…
「っ!」
僕は彼女らの元へ全力で走る。恐らく今射撃してももう遅い…。ならば僕が自ら犠牲になって盾となれば最初の一撃は回避できるばずだ!
「中川さん!天王寺さん!宮下さん!」
ボスゾンビは「うぉぉぉ!」鳴き、斧を振りかざす!
僕は彼女たちを抱き、そのまま床に伏せる
そして3人を抱きしめた途端にある事に気がつく。
あっ…
これゲームだった…
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「申し訳ありませんでした!!」
僕は3人に土下座をし、謝罪する。
「いいって!いいって!店員さんもよくある事だって言ってし?愛さんは気にしてないよ!」
宮下さんの言う通り、店員さん曰く、VRゲームをやると現実とゲームの世界がわからなくなる人はかなりいるそうだ。
まぁ3人にハグした客は僕しかいないらしいですけどね…
こうして新たな黒歴史を作ってしまったのだった。
もう学校行けない…。
というか黒歴史で済んだと考えるべきかも…。
危うく通報かセクハラで訴えられてもおかしくなかった…。
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「あー…」
僕はジョイポリス内にあるベンチでさっきの一連の件について黄昏れていた
ちなみに天王寺さんと中川さんはラノベを買いに書店に行った
「すけすけ!」
「ひぃあ!」
頬に冷たい物があたる。後ろでを振り返ると宮下さんの姿があった。
「アハハ!びっくりしすぎだって!」
宮下さんはそう言い、僕の隣に座る。
「っ…」
僕は宮下さんとどのように接すればいいのか未だに悩んでいる。同好会で過ごしているうちに宮下さんが悪い人ではない事はすでにわかっている。
ただ彼女と僕は住む世界が違うのだ。
いつも明るくて
運動神経抜群、色んな部活から引っ張りだこで
どんな人にも優しくて
友達もたくさんいて
周りを笑顔にできる太陽のような彼女
比べて
根暗で
何にもできないしやろうともしない
コミュ障で会話のキャッチボールすらままならない
いつもみんなの足を引っ張って
嫌われ
存在感のない
空気のような僕
きっと僕と彼女が分かり合える日は一生来ないのだろう
「すけすけはさ、愛さんの事怖い?」
「…ぇ」
突然の質問に硬直してしまう。
『なんとか言ったらどうなの!?』
『そんなにみんなの事が嫌いな訳!?』
中学時代のトラウマが蘇る。
「そ、そんなこと…」
必死に否定するが、声は震え、嫌な汗が全身からブワッと吹き出る。
「い、いや責めてる訳じゃないんだよ!?」
宮下さんも僕の反応に気づいたのか必死にフォローを入れる。
「ただ愛さんにもその気持ち分かるなぁって思って」
その言葉に僕はなんとも言えない気持ちになった。
気持ちがわかる?
いや分からない
人と話す事がどれだけ難しくて、怖くて、苦しいか
コミュ障の考えてる事なんて太陽のような彼女には分かるはずがない
「愛さんね、昔はすっごく人見知りで泣き虫だったんだ」
「は?」
その言葉を理解するのに時間がかかった。
「アハハ!もしかして信じてないな?」
宮下さんは笑いながら言う
「ご、ご冗談ですよね?」
ダジャレの次はジョークにも力を入れたのかと思った。
「本当だって」
信じられなかった
「本当に昔は人と話すのも無理でいつも一人で遊んでた。」
どこか懐かしむように語る宮下さん
「でもね、そんな私を変えてくれた人がいたんだ…。その人のおかげで今の愛さんがあるんだよ」
「…」
僕はうつむいたまま黙る。
「だからすけすけも変われるよ」
変われるか…
宮下さんの言葉にすぐに答えが出た。
「変われませんよ」
人は変われない。
宮下さんも天王寺さんも元から素質があって周りにフォローされたから今があるのだ。
残念ながら僕にはコミュニケーションを上手く取れる素質はないし、フォローしてくれる人もいない。
これが現実だ。
「いや変われるよ」
宮下さんは真っ向から僕の言葉を否定した。
「な、何を根拠に…」
「だってもう変わってるじゃん」
「はい?」
宮下さんの言葉に僕は再度、聞き返してしまう。
変わってる?
僕が?
「すけすけは愛さんと初めて会った時の事覚えてる?」
初めて会った時…たしか高咲さんに連れられて同好会の見学をした時の事だろう。
「あの時のすけすけはさ、声も小さくて、自信もなくて、言いたい事も言えなかったじゃん!」
「それは今も変わらないですよ…」
あの頃の僕と今の僕は何にも変わっていない
「そんな事ない!」
今までうつむいていたが、その声に反応して宮下さんの顔を見る。
「…やっとこっち見た」
彼女の顔は真剣そのものだった。
「っ…!」
僕は怖くなって顔を逸らそうとする。
「こっち見て!」
すると宮下さんは両手で僕の掴む。
「すけすけは前より声も大きくなっているし、りなりーのライブの時もちゃんと意見してくれたじゃん!」
意見と言うのはきっと天王寺さんのライブに反対した時の事だろう。
「あれは…僕が天王寺さんにょりゃいぶを邪魔しただけでぇ」
何故かわからないが、宮下さんが僕の頬を強く掴む
「あの時さ、愛さんもみんなもりなりーを説得する事しか考えてなかった…。」
宮下さんは僕の頬を掴みながら続ける
「でもね?もし愛さんやみんながりなりーを説得できてなかったら、きっとライブの日にたくさんの人をがっかりさせちゃってたと思う」
宮下さんはそう言い、手を僕の頬から話す。
「だから足なんて引っ張ってないよ」
彼女は真っ直ぐな瞳で僕を見る。
「だから少しずつ変わっていこ?」
そして真剣な表情から笑顔になり、彼女はこう言った。
「それに愛さんがいつでも助けてあげるし!」
「え?」
「愛さんに任せなさい!」
彼女はそう言い、僕の背中を優しくポンと叩く
「お待たせしました!」
声のする方向を見ると、そこには買い物を終えた中川さんと天王寺さんの姿があった。
「これ愛さんに…」
天王寺さんは愛さんにストラップをプレゼントする。宮下さんは「ありがとー!りなりー!」と言いながら天王寺さんに抱きついていた。
「私からも!」
そして中川さんも宮下さんに何かをプレゼントしていた。
「どうかされたんですか?」
「へ?」
突如、中川さんが質問してくる
「いえ…何やら微笑んでいたので…」
自覚はなかったが、なんとなく理由はわかった気がする。
「い、いえ…愛さんはみんなから愛されてるんだなと思って…」
僕がそういうと宮下さんは黙り込む。えっ?もしかしてまずい事言った?
「プッ…!あははは!ウケる!」
すると突然宮下さんは笑いだす
「愛さんは愛されてるって!ダジャレだよね?」
「え?アハハ」
言われるまで気づかなかったわ…
「私も気づかなかったです」
「私も」
彼女のダジャレが面白いか面白くないかと言えば、面白くはないだろう。
ただ
彼女がダジャレを言ってる時
天王寺さんも
中川さんも
僕も
全員が笑顔だった
太陽のような彼女と
優しい同好会のみんながいるのなら
もしかしたら変われるかもしれない
心のどこかでそう思ってしまった
続く
感想、誤字脱字報告あれば、お願いいたします