ルームシェアをしてます。ええ、パラサイトって言うんですけど…… 作:凧の糸
アニメで来訪者編がしていると聞いて。
作者の知識は二十一巻までなので、こんなところが違うよとかあれば感想までよろしくお願いします。
「うーっ、もうちょい着込んでおけば良かった……」
街はすっかり夜に入り、冷え切っていた。俺こと普通の高校生である
え?普通の高校生は自分のことを普通って言わない?……それについてはまぁ、少しだけ言い過ぎた。俺は少しだけ変わった高校生。それでオッケー?……うん、よし。
そもそも今のご時世で普通と特別を分けるのは「魔法」を使えるか、使えないか、だろ。
念のために言っておくが、ファンタジーやRPGみたいな魔力を使って奇跡を起こすみたいな夢に溢れたものじゃないよ。純粋な科学の延長にある、21世紀が生み出した最大の科学の落とし子さ。
勿論、今の私は技能を行使する事は不可能です。素質や領域のリソースが必要であると私は過去に読書によって知識を得ました。
それがな、中学生の頃に魔法力検査があって体育館で検査するんだが……書類にはものの見事に「貴方には魔法力適正がありません」ってでかでか書かれてたよ。
その頃からかな、月が美しいって思い始めたのは。
俺だって年頃の男の子だ。自分には力があって魔法を自在に扱うみたいな妄想の一つや二つしたことだってある。運悪く周囲の友達にはそこそこの適正、つまり魔法科高校へ入学出来るほどの適正があった。
「気にすんなよ、たかが魔法だぜ?」「そうそう、俺は工業系に進むし」
友達はそう言って落ち込む俺を励まそうとしたが、すっかり捻くれてしまっていた俺には全てが嫌味にしか聞こえなかった。
久々に会った幼馴染みも「アンタは高校、どこ行くの?私は第一高校だけど」
間違っても俺の進学する東京第一高校では無かった。彼女の家は魔法の大家であることを俺はよく知っていたし、彼女が魔法を使うところだって見たことがあった。ちょっと不機嫌になった俺に終始気を遣っていた彼女。今思うと俺は凄く情けなくて、死にたくなるくらいにかっこ悪かった。
流石に入学式の頃になれば、踏ん切りくらいつく。ましてや3、4ヶ月も経てば尚更だ。俺のせいで一方的にギクシャクしていた人間関係はすっきりした。でも、一度ザラついた精神は直ぐに治る訳ではない。
ふと、夜中に家から出た時に、雲間に満月が出ていた。真っ暗な道に黄色い光が降り注ぎ、ミラーがピカピカと光り輝いていた。
ああ、なんて、魅惑的で、狂気的なーー
道路の真ん中で満月から目を離すことが出来なかった。
いや、満月が俺の目を離させないのだろうねぇ。
つか、お前長いよ。
かさぶただらけのぉ心を月光はぁ癒してくれたぁ。それからと言うものぉ、家の窓から美しい月が見えたときにはふらりと家から外出するようになったぁ。
「あー、お腹すいてきたな……」
明かりに虫が惹かれるように、突発的に飛び出して来てしまった。晩飯は未だに湯気を出しているだろうか。呑気に座っているとコツコツと足音が聞こえてきた。俺はこんな時間に通るなんて、珍しいなあとちらりと足音の方に首を向けた。
「……!?」
知らぬ間に俺の後ろに居た。なんだ?コイツ。
「おい、アンタ……何の用だ?」
コートを着て、深く被り顔を隠した怪しい者。こちらをじっと見つめてくるので今すぐにでも逃げ出したくなった。
「もらうぞ……!」
「は?」
意識は暗転する……
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米国からパラサイトと呼ばれる一種の精神寄生体は、手頃な所に手頃な人間がいたので、己が欲求に従って"繁殖"しようとした。
しかし、どう言う訳か男に触れた瞬間に男の中へと吸引されてしまった。元々いた場所でも経験したことの無い未曾有の事態に混乱したが、その前に目の前には重力や物理法則を無視した空間が現れた。
『まるでエッシャーの絵みたいだ』
寄主の持つ記憶と知識からパラサイトは目の前の現象を把握した。また、パラサイトはここがある種の精神が作り出す特殊な空間であることも理解していた。
「おいおい、誰だよ」
「さあ?しらねぇ」
「どうしよう……」
『……?』
似たような声で何者かが会話を行なっていた。兎にも角にも接触しなければ相手の支配権を握れそうにもないので声のする方向へと歩いていった。
ドアを開けて部屋に入る。いない。
引き戸を開けて部屋に入る。いない。
ドアを蹴り破って室内を確認する。いない。
何処かに主が居ることだけは確信していたが、ちっとも見つからない。かれこれ5000ほどの部屋を確認した。侵入者にとって幸いだったのは、精神世界であるが故に疲労や肉体的ダメージが発生せず、時間という概念が存在しない事だった。
その時だ。
「まーだー?まってるんだけど」
『!』
パラサイトはチャンスであると思った。右前の扉から音が漏れていると確認したからだ。簡易な魔法によってドアを易々と破り、堂々と侵入した。
「おー、じっくりみると美人さんだねぇ……」
「そうか?典型的なヨーロッパ系の顔立ちでしょ」
歪み切っている部屋に大勢の老若男女、アジア系、特に日本に多い顔立ちをした人間たちがいた。
『なんなんだ……貴様ら……』
記憶内では軍人として様々な修羅場や不可思議な事態にも出くわして来たが、津々浦々を探してもこんなおかしい人間は存在しないだろうと思った。
「俺たちは灰土範利の中に潜む、もう一人の自分。ペルソナの亜種だ」
会話が出来る。自らの意思は存在するようだった。
『なら、貴様らにお願いをしたい。私の繁殖に協力してくれ』
私はなるべく穏便に済ませたかった。最近はアンジー・シリウスに追われるだけでなく、残り十二体の同胞からも攻撃されることがあったので面倒ごとは勘弁して欲しかったし、争い自体をあまり好まないからだ。
「いいけど……協力してくれるって約束するか?」
『ああ、約束する」
そう言った瞬間に皆がニヤニヤと笑い出した。……皆?
私は自分の言動に違和感を感じた。更にあれほど湧いてきていた繁殖欲求も収まってきている。
「……?」
「そうだな……簡単な説明をすると、お前は俺たちの一員になった。」
「どういうことだ?……なるほどな」
私の中へ情報が流れ込んできた。人間たちが言う共生関係というものに近かった。約束を媒介とした融合に近い方法、むしろ進化というべきだった。
「ようこそ、ハイド荘へ……」
その瞬間に部屋の壁がバラバラと崩れ去り、超巨大な豪邸が現れた。庭には噴水があり、ガーデンもあった。おまけに松の木や紅葉がある庭園や他にも様々ある。和洋折衷のカオスな光景に思わず立ちくらみそうになった。
「これは……」
「あ、いたの?」
先程までいた彼らは既に居らず、私が襲った青年がそこにいた。
「俺は灰土範利。ここのオーナーみたいなことをしてるよ。よろしくね、キャシー」
「ああ、よろしく。早速話を始めようか、ノリ」
「いいよ、どんなの?」
「私以外の12体のパラサイトと呼ばれている仲間を回収して欲しい。我々は本来ならリーダー格の一匹と残りの十二体で形成される情報体なのだが、次元の壁を越える際に12体が狂ってしまったようだ。この状態は私にとって非常に好ましくない。まずは調査したいからどうにかして接触して欲しい」
私の存在理由を果たすためにも必要な事だった。もう少し返答には時間がかかるかと思ったが、想像よりも素早く返答があった。
「じゃあ、まずは会えばいいのか……でも見分けつかないぜ?」
「それに関しては私がサポート出来る。元々の我々は互いに特殊なレーダーのようなものを持っているから何処にいるか直ぐにわかる。分岐した今は個体として確立してしまったから以前のような常時リンク状態ではなくても痕跡を読み取れる。どうだろうか?」
「オッケー、でも俺にも学校生活とかあるし、ゆっくりでもいいかな」
それには文句が無かった。どうしてそんなことを気にするのか私には疑問に思えて仕方なかった。
「かまわん、最終的に集まればいいからな」
「それじゃあ、お開きだ。俺自身はそろそろ起きるけど、君はずっとここにいられるから、ごゆっくりね」
「了解した」
ノリは空中に出現させた階段を登って、ハイド荘のある空間から消え失せた。
「さて、部屋に行こうか」
割り当てられた部屋は303号室。くるりと後ろを振り向くと、大勢の子供たちが駆け寄ってきた。
「ねーねー!おねーちゃんあそぼー!!」
「新しい人でしょ?僕らと鬼ごっこしようよ!」
「あ、ああ」
この身体の元となった人物の記憶も幼い頃に遊んだ記憶はかなり薄かった。それが理由かは理解しかねるが、遊びに興ずるべきと私は判断した。
「いいぞ、なにして遊ぼう?」
子供たちのわいわいと騒ぐ声は不思議と不快感を感じなかった。
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俺、灰土範利は東京にある、ごく一部の人物しか来ない場所。そこへリムジンに乗りながら向かっていた。一ヶ月に一度ほどは行くように命令されているが、正直それ以外となると気が進まないのだ。
「範利様、もうじき到着です」
「ん」
ジジイの配下の黒服さん。サングラスを掛けている上に特徴に乏しいので髪型くらいでしか見分けられない。
「黒服さん、毎度ありがとうね」
「私どもはそれが仕事ですので」
車のドアを開けて、とある寺モドキに入って行った。
「おい、ジジイ。生きてる?」
青波入道とかいう名前を名乗っているが、東堂青波というバケモンみたいなジジイ。一応俺の祖父だ。日本の偉い人ランキングを作ったとしたら上から数えた方が早い人なんだが、寺モドキにこもっていつも仏像を見てるジジイだ。
「相変わらず口が悪いのぉ、範利。お前が俺のひ孫でなきゃ土に埋めてるとこだったわ」
「まあ、茶番はいい。分かってるだろ?」
「ん?何のことかな?老人には分からんわい」
ふざけて老人の真似をしてきた。コイツは年齢が60くらいあるのにあと二百年は生きそうな勢いなのだからそのバケモノっぷりを多分皆が理解してくれると思う。
「パラサイトだよ。俺に接触してきたけど、何でこうなってる?」
「ああ、あれか。勝手にすれば良い。面白い事になってるから邪魔せんようにな」
「へいへい、了解」
面白いことを邪魔されるのをジジイは何より嫌っていた。こればかりは面倒なので俺の素直に従う。
「そうだ、九重寺という場所がある。暇なら行ってみなさい。ワシの知り合いと言ってもいいぞ」
事実上の命令だった。
「うえ、どこだよ」
「さあ、帰れ」
「はいはい、仏像磨きが忙しいからねぇ、じい様は」
「学生は勉強しとけ」
「……点数はまあまあだから」
寺モドキを出ると黒服さんは直立不動で待っていた。
「家でよろしいですか?」
「いつもすいません。よろしくお願いします」
態々ドアまで開けてもらい、乗り込んだ。
「それでは発車いたします」
車は音も立てずに静かに進んで行った。
オリ設定:東京第一高校
戦争で高校も再編された結果、東京では第一〜第八までの普通科高校に纏められた。主人公の友人が言ったように工業高校や商業高校も存在するし、私立高校も一応ある。
・キャシー
やって来たパラサイトのリーダーともいえる存在だった。パラサイトの中でも特別なので、こちら側に来た時に残りの十二体は離反した。
なお、残った人間はUSNA軍、スターズに回収されている。他のパラサイトと比べると繁殖欲求も低いので、交戦的では無い。今はあくまで範利の一部を借り受けている状態。
・ペルソナ
とあるゲームではなく、主人公の精神に住んでいる住人の総称。基本的には主人である範利を尊重して出てこないが、稀に出てくる。交代すると見た目や雰囲気が変化してしまうので注意が必要。
精神世界でハイド荘を作って普段は過ごしている。最初に出てきた「エッシャーの絵みたい」と評された空間も精神世界の一面。