ルームシェアをしてます。ええ、パラサイトって言うんですけど…… 作:凧の糸
今回は短めの日常回。
それではどうぞ
「はい、九重寺です」
「こんにちは、灰土範利と申します。九重八雲氏と来週の日曜に面会出来ないでしょうか。ジジイの件と伝えれば大丈夫だと思うので」
「は、はい……伝えておきますので……折り返しの電話を後でさせていただきます……」
「はい、お願いします」
電話を切った。
俺は頃合いを見て、九重寺にいつ訪問すれば良いのかを電話していた。流石に
ホームページには埋葬の云々や寺の紹介と多岐に渡っていた。恐らく電話相手も「お墓のことかなぁ」と思っただろうからきっと俺には困惑しただろうな、と思った。
「やぁ、君が灰土君かい?」
「ええと、そうですが……九重寺の方ですか?」
「そうだよ、九重八雲。しがない小坊主さ。にしても入道にお孫さんが居たとはね…………おっと、話が逸れてしまったな。日曜の昼からで良いかな?朝は用事が立て込んでてね」
「はい、ありがとうございます」
「いいのいいの。それじゃあね〜」
プツリと電話は切れた。俺はごろりとベッドに寝転んだ。
「日曜かぁ……」
テスト期間が近づいている事も俺にとっての懸案事項であった。
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「ここか……」
九重寺は画像の通り立派な建物だった。少し厳かな気持ちで足を踏み入れると、多くのお弟子さんが箒で掃いていたり、武術のような訓練もしていた。
「お、来たねぇ」
「こんにちは」
作務衣を着た坊主が居た。彼が九重八雲だろう。飄々とした雰囲気だが、強そうな気がする。
「さあさあ、上がった上がった」
「お邪魔します」
寺にお邪魔させてもらい、靴を脱いで広間に通された。
「さて、
「ご存知ですか」
「まあね。現代魔法師よりは確実に詳しいよ」
「なら、良かった」
俺は、自分自身の中に潜むキャシーと交代した。
「!?」
カクン、と首が垂れると俺の体格はやや小さくなり、髪も長くなって完全に女性のそれに変化した。
同時に九重氏も異変を感じたのか、立ち上がって臨戦態勢を取った。
「ハロー、ヤクモサン。私はキャシー。範利の体を借りている。お前たち人間が言うところの『パラサイト』だ」
「彼の身体を借りているのかい?」
「そうだな、人間風にいうならルームシェアだ。そもそも私は彼らに取り込まれたほうなのだが……それは今どうでもいい。端的に言えば私に協力をして欲しい」
「協力ねぇ……」
和尚は思案気な顔をしている。
「次元に孔が空いた結果、私を含めて十三体の7」:*8が"こちら側"に来た。彼らのリーダー格として再び回収して元の場所に帰還したいのだ。私としても人間に迷惑をかけるのは好まない。回収してくれないか?」
「ふうむ……確かに僕らは君みたいな魔性を倒したり、送り返す役目を持っている。しかし、回収となるとねぇ……仕方は分かるのかい?」
「私達で回収する。回収出来るのが私だけしかないからな。探して私達に姿を教えたり、人間から剥がしたりして欲しい。恐らくだが、貴方たちは剥がし方を知ってる筈だ」
キャシーは自身の知識から古式魔法にそういった術式がある事を知っていた。
「うーん。最近は「魂分け」は出来る術者が減ってるし……この寺にも僕含めて二人しかいないんだよねぇ」
「別に構わない、術者が居なくても分離させることは可能だからな。もしくは、範利たちが危険な時に助っ人として欲しい。頼めるか?」
「そっちなら大丈夫かもね。剥がし方を習得してなくても戦える者はいるから」
「恩に着る」
謝辞を述べた後、彼女の体が膨れ上がり、髪も短くなっていく。一定のプロセスを終えると来た時に会った青年へと変化していた。
「変わりました、和尚さん」
「いやー、すごい凄い。あ、褒めてるのさ、君たちを。魔性と人間がこんなにも調和出来ているなんて滅多に無いんだよ」
(そうなの?)
(私は元になった人間とお前くらいしか会った事ないぞ)
(そーなのね)
心の中での一瞬にも満たない会話。お互いに初めてだからどう凄いのか分からない。和尚のうんうんとしきりに感心する姿はやや滑稽に写ってしまった。
「そう言えば、もう少しで正月だよね。お参りとかするのかい?」
色々と世間話に興じていると、季節の話題を彼は振ってきた。
「ええ、しますよ。あんまりお馴染みは決めずに色々回ってみてますけどね」
「そうか、なら日枝神社に行かないかい?僕の知り合いに面白い高校生がいてね、多分来るだろうから行かないか?」
「それならば是非。現地集合で?」
「まあ、僕が誘ったからね。コミューターで君の家の前まで行くよ。ただ、朝少し早いかも知れないからそこだけ注意してね」
「分かりました……うん、もういい時間なので帰ります。今日はありがとうございました」
時計を見ると、そろそろ帰った方が良さそうだった。今日面会の時間を作ってくれたことに深く感謝し、深々とお礼をした。
「それじゃあね〜」
ぷらぷらと手を振る和尚。ジジイの知り合いだからと警戒してしまったが、いたっていい人だった。キャシーも途中でいただけた甘味に満足しているので、俺たちは上機嫌で家に帰った。
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ーーハイド荘
「今年も正月が来たな……」
ハイド荘は変幻自在。季節と住人の気分によって和にも洋にも変わる。まさに正月の季節は日本家屋になっており、こたつや門松などのお正月グッズに溢れていた。
「のり〜雪遊びしよ〜!」
雪が瞬時に降り積もり、雪原が広がる。
目の前の白髪の少女、ゆきは女性型で幼い人格をしており、遊ぶのがとても好きだ。キャシーと出会った時も真っ先に遊んで、一番最初に仲良くなったのも彼女だった。
「ゆき、ごめんな。キャシーが何処か知らない?」
「あっち〜!」
ゆきは日本家屋の離れを指さした。
「ありがとな、今度は遊ぼう」
「やくそくだよ〜」
ぴょんぴょん跳ねて、手を振るゆきを尻目に俺は離れへと向かった。
「キャシー、居たか……」
こちらは雪が積もっていなかったが、もくもく煙が上がっていたので焚き火をしている事だけは分かった。
「ん?どうした、ノリ?」
縁側でちゃんちゃんこを着込み、焼き芋を頬張っていた。焼き芋はやらんぞという鉄の意思も見えたので、そちらはスルーすることに決めた。
「和尚と会ってどうだった?」
「強いな、それも人間の中でも指折りだろう。今の状態では吹き飛ばされるかも知れないが、別次元の本体が有れば余裕だろう」
少なくとも口元に芋をつけて言うセリフではなかった。
「……そう言えば、お前らの生態ってどんな感じ?」
「藪から棒に……何だ?」
「本体あるっていったろ?お前らは身体が無いんじゃなかったか?」
一応、パラサイトの生態については家の本で確認した。
「ああ、言い方が悪かった。私ーーいや、私達は本来は高度な次元に住んでいるの。稀にこちら側への孔が空いて流入する事もある。例えばなんだけど、吸血鬼。吸血鬼っているだろう?」
「うん、一般人にも結構知られてるよ」
「蝙蝠の姿で描かれたりするが、アレの一部は蝙蝠に私達が……こちら側の言い方では『取り憑いて』適応した姿だ」
「何に適応したんだ?」
「そこで一番使えそうな生命体の姿かな。場合によっては異なるが、私達の本来の姿に近い人間の姿を取ることが多い」
「へぇ……」
「人間が基本的にパラサイトと呼ぶ者は私達にとって召使いでね、脱走された、という訳さ。」
「じゃあ、お前とパラサイト12体は別物って事か?」
「厳密に言えばそーなる」
「まじかよ、発表すればノーベル賞だな」
「ノーベル賞って?」
知っていそうなものだったが、キャシーは首を傾げた。
「世界の交流があった過去に特定の分野で世界的な凄い事をしたら貰えた賞だよ。お金も貰える」
「ふーん、凄いってこと?」
二人だけで喋っていると、トテトテと子供たちが歩いてきた。
「あそぼ!!」
ここに住んでいる子供たちが全員揃い踏みだった。
「みんな来てたのか……キャシーはどうする?」
キャシーを見ると、ウキウキした顔で立ち上がった。
「私も遊ぼうか」
「やったあ!!」
大勢で雪合戦やソリで遊んだ。
「楽しいね、ノリ」
「だな」
子供たちがへろへろになる時までずっとずっと遊び続けた。
いかがでしたか?
次回は正月。餅に魔法に転校生とてんてこ舞いの回となっております。