ルームシェアをしてます。ええ、パラサイトって言うんですけど…… 作:凧の糸
タイトルはクソほども内容とは関係有りません。
それではどうぞ
司波家の門前には六人乗りの無人運転大型コミューターが停まっていた。達也と深雪は珍しいなと思った。(2090年代は戦争や以前よりはマシになったが緩やかな少子化で人口が減っている為、基本的な四人乗りのコミューターが多いからである)
コミューターには一人の成人男性と成人女性が乗っていた。
「明けましておめでとうございます、師匠」
「明けましておめでとうございます、九重先生」
手短に挨拶した達也と丁寧に腰を折った深雪に、九重八雲はシートに座ったまま嬉しげに笑顔で答えた。
「いやぁ、今日はまた一段と艶やかだねぇ。吉祥天もかくやの麗しさだ。今日の深雪くんを目にしたならば、須弥山の天女も羞恥に身を隠してしまうかもしれないね」
実に彼らしいセリフだったが「先生……人を待たせてるって仰ってませんでした?」
ツッコミが隣の女性から入る。
「小野先生、明けましておめでとうございます。しかし、待たせているとは?」
深雪も同じ事を考えているようだった。珍しい六人乗りのコミューターを持ち出している事に加え、小野先生の発言は暗にこの車にもう一人乗せる予定の人間がいると言う事であった。これには八雲本人から直ぐに答えられた。
「僕の知り合いだよ、といってもまだ君らと同い年だけどね。色々と用事があるから、彼も参拝に誘ったのさ」
「高校生、ですか……」
達也たちの入学に際してその人物について何も言わなかった事を鑑みるに魔法科高校生では無さそうだった。であるならば普通の高校に通う古式魔法師であるのだろう。
何故か一高に通わない事を一瞬疑問に思ったが、古式魔法師特有の閉鎖性からしてそういう事なのだと一人合点した。千葉家と関わりを持つ、幹比古たち吉田家が珍しいのかも知れない。どうであれ会ってみなければ分からないのだ。
「参りましょう、お兄様」
「そうだな、深雪」
達也は深雪に促されてコミューターへ乗った。
「師匠、ここが彼の家ですか?」
恐らく古式魔法師であろう彼の邸宅は2090年代でも一般的な一軒家だった。それもそのはず、達也は知る由も無いが彼は魔法師でもなんでも無いのだ。達也と深雪と遥が共通で抱いている誤解は九重八雲の「面白そうだから詳細なことは伏せておこう」という考えのもとでのらりくらりと彼の細かいデータをを聞きそびれてしまった。
ピンポーンと八雲が呼び鈴を押すと、慌てた様子で飛び出してきた。
「おっと、え?」
彼は此方の顔を見るなり困惑した声を上げた。
「明けましておめでとう、ハイド君。今日は連れがいるんだ」
「はぁ……そうですか」
「えっと……明けましておめでとうございます、皆さん」
少しの思案顔のあとに達也たちも含めた全員に挨拶をした。
「灰土範利って言います。高校生です。のりとしって呼ばれるのは気恥ずかしいんで、良ければハイドって呼んでください」
照れ臭そうに頭に手を当てて、ほがらかに笑った。
「司波達也です。よろしく」
「よろしく、司波くん」
「達也で良い、司波だとややこしくなる。ハイドと呼んで良いか?」
「勿論だとも!」
範利は達也の言い方に引っかかる物を覚えたが、余り気にしていなかった。
「それじゃあ、ハイド。俺の"妹"の深雪だ」
主に八雲と小野先生、意外にも達也までもが絶世の美少女である深雪に対して灰土範利という青年がどのような反応をとるのか気になっていた。
「こんにちは、灰土さん。妹の司波深雪です。こう見えてお兄様とは同い年なんですよ?」
顔を赤らめるわけでもなく、気にしている様子も無かった。内心で八雲は枯れているのか?と思ったが、あのバケモノ老人の孫だぞ。と思い直した。
「……?」
一方の範利は謎かけのような深雪の言葉に混乱した。同い年なのに、兄弟? 頭を捻る前に達也がその答えを明かしてしまった。
「俺が四月生まれで、深雪は三月なんだ」
「へー、珍しいなあ。」
「ハイド君は着物にノータッチか、出来れば感想を僕は聞きたいね」
「着物ですか……良く似合ってますよ?」
「え?マジで言ってんの?」
八雲は語彙力が下がるくらいに本気で驚いた。
「そう言えば、そちらの方は?」
「こんにちは、小野遥と言います。一高でカウンセラーをしているので、不安な事とかあれは何でもどうぞ」
遥は半ばスルーされていると感じていた時に、話を振られた。九重先生の知り合いなのだから、出来れば懐柔しておいても悪くないと小狡い事を考えていたが神社に早く行くべきでは?と思い始めた。
「そろそろ行きませんか?」
「ああ、そうだったね。行こうか」
五人がコミューターに乗り込むと、先程よりも少しだけ速い速度で動き出した。
お日柄も良く……から始まるような、ぎこちなさ満載で大して面白味も無い会話を繰り広げてしばらくする。
時が経つのは早いもので駅に着いた。
「さあさ、降りようか」
八雲に促されて範利たちは降車し、キャビネットに乗り換えて神社へ向かった。
「へー、一高ってそんな感じなんだ」
快速のキャビネットでは車窓の光景が目まぐるしく移り変わる。
「まさかハイドがエイミィの幼馴染みとはな」
「私も驚きです。エイミィから幼馴染みの話を少し伺った事があったので」
「アイツ、何言ってたんですか?」
学校での英美を知らない範利は幼馴染みが自分をどう評しているか気になって尋ねた。
「……いいですか?少し口が悪くなると思いますが」
遠慮がちに深雪がそう言った。
「いいよ、予想できた事だし」
「『へなちょこで泣き虫で、バカでアホだけど……なんだかんだ優しい』そうですよ」
「げ……アイツ……」
範利は『泣き虫で』の言葉で昔の事を忌まわしい記憶を思い出したと言わんばかりに顰めっ面になる。
「仲良いんだねぇ、幼馴染みと」
いつもよりも二割増しでニヤニヤとしている八雲。範利は助けを求めようと達也の方や深雪の方を向くも達也は素っ気なく、深雪はニコニコとしていた。そして、最後の砦である遥の方を向くと「若いっていいわねぇ……」と感慨深そうな表情で何処か遠くを見ていた。
(誰も頼りにならねぇなぁ、範利)
(シンジ、うるさいぞ)
シンジは範利と幼い頃からの人格付き合いだった。エイミィと出会った頃にはもう居た彼は一番最初に出来た友達だった。
(ピーピー泣いてたのが悪い。あの時俺に変わったからまだマシだったが、居なけりゃ一生モノの恥だったぜ?)
(……まあ、そうだけど)
ポーン!と到着を知らせる音が鳴った。
(ほら、動けよ)
(分かってるって)
五人で固まって動くが、その度に「うわぁ……」とか「綺麗だ……」という声が上がっていた。それもそのはず、深雪は絶世の美少女なのだ。
反応の薄い達也の友人や範利が珍しい方であって彼らが決して無遠慮だとかそう言う訳では無い。それ程までに彼女は極まった美しさを纏っていた。
徒歩五分で神社の境内に入った。
「わっ、深雪さん、キレイですねぇ!」
ファー付きケープコートを着てメガネをかけた女子がうっとりした視線を向けていた。達也と深雪の反応を見るに、彼女は友人のようだった。他にも友人らしき人たちがチラホラ見受けられる。誰もが美男美女と言ったところか。
「明けましておめでとうございます、達也さん。良くお似合いです。少し意外ですけど」
達也に向かって花が咲くような笑顔を向けた。
「明けましておめでとう。ほのかも良く似合ってるよ」
達也もそれに微笑み返したが、服をチラッと見てこう言った。
「でも意外、ってことは、やっぱり少し違和感があるのだろうか?」
「そんなこたぁないんじゃねぇの?達也、良く似合ってるぜ。ん?そういやそこの奴はお前の知り合いか?」
ガタイよく、さっぱりとして快活そうな青年が範利に注目した。それとともに全員の視線を範利が集めた。
「凄い……キラキラしてる……」
「あんまりパッとしないわね」
「ちょっとエリカちゃん!」
ヤンチャそうな女子が早速噛み付いてきた。そして、範利の中にもソレに反応を起こした者が居た。
(ワシらに向かって随分と無神経な女だな)
(やめてよ正虎……君が暴れると面倒になるよ……)
老人系の人格である正虎だ。僕らの中の人格でも屈指の強さと賢さを兼ね備えている。
(というより、何でみんなほいほい出てきてんの?)
(老人は暇だからな。他の連中も珍しい面子にはしゃいでおるのだろうよ)
(気をつけてよ)
変なやつ扱いされるのは、もう勘弁だった。
「おい、ハイド、大丈夫か?」
「あ、うん、大丈夫」
話題が分からない。しかし幸運な事に八雲がリードを出してくれた。
「彼が僕の知り合いの灰土範利くんだよ」
「っと……灰土範利です。ハイドって呼んでくれ。あとキラキラ見えるのは多分俺の体質だ」
おや?と皆不思議がったが八雲はあの事について話した。
「そうなんだよねぇ。アレ見せれば分かるんじゃない?」
「えぇ……マジスか? 身体が隠れるくらいの布ありません?」
やるにしてもここでやるのは気が進まなかったし、せめて布くらいは欲しかった。あわよくば、範利はこれを口実にごねてやろうとさえ思った。
「勿論持ってきてるさ」
「うわ、何でこんなに用意がいいんだよ……」
九重八雲はまるで魔法のようにポケットから大きなシルクの布を取り出して、俺に渡した。
「何すんだ?」
達也の友人だというレオが訝しげにこちらを見た。
「マジックだぜ。世紀のな」
半ばやけくそになって布を被る。範利はゆっくりと精神を落ち着け、深く、深く沈んでいった。
(キャシー、変わってくれ)
(……いやよ)
(えー!拗ねないでよ)
(拗ねてないわよ!!!)
変わって貰おうとキャシーにコンタクトを取ったが、何故かとても不機嫌な彼女はついに精神の奥にまで引っ込んでしまった。こうなってしまえばどうにもならないのでハイド荘の大部屋にいる者たちをチラリと見た。
(仕方あるまい……ワシが出る)
正虎が立ち上がった。
(え!?私が出ようとしたのに……)
癖っ毛の彼女は霞。かなりの美人であるのだが……ガサツで直ぐに手が出るのが欠点だ。逆に言えばそれくらいしか欠点のない才女であるとも言えた。
(霞は頭もカスカスか?)
いつの間にか部屋の隅にいたシンジが霞が最も嫌がる言葉でからかった。
(うるさい!バカシンジ!!!)
効果音が出るんじゃないかと思うくらいの鋭い一撃はシンジの頬を捉えて吹き飛ばし、地面に転がったシンジは白目を向いて泡を吹いていた。
(あーあ、正虎が座っちゃったよ……)
残念がる霞は相変わらずシンジをツンツンと蹴り続けていた。
基本的にはずっと俺が座るかオーナー権限の自動設定にしてるかのどちらであり、過去の件や交代の面倒さから貸すのは滅多にない事である。
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「どうしたんだろう、ハイドさん。急に黙っちゃって……」
ほのかは出会ったばかりの
「師匠、何をさせようとしたんですか?」
少し険しい顔で八雲を問い詰める達也。
「まあまあ……」
その時だった。すうっとハイドの身長が大きくなった。ダボっとしていた服が少々パツパツになるくらいにガタイが良くなり、達也たちは気のせいか彼の雰囲気が老年になったと感じた。
「どうも、明けましておめでとう。そこな娘、誰がパッとしないって?」
そこに若者の服を着た、とてもアンバランスな老人がニヤッと悪い笑みを浮かべていた。
「わ〜お……」
果心居士の再来と謳われる九重八雲も予想だにして無かった事態に陥り、口が少しだけ乾燥してしまっていた。
「うそぉ……」
千葉エリカは目の前の冴えない青年が、突然に強者の雰囲気を醸し出したことに驚いていた。彼女にとって青年が老人になったことなどどうでもよく、すぐさま戦闘者としての血と本能が彼を『戦うに値する相手』と認識したのだった。
「ねぇ、おじさん」
犬歯が思わず剥き出しになるほどの獰猛な笑みを老人、正虎へぶつけるエリカ。一食触発の空気でさえ正虎は嬉々として拳を構えた。
「ワシに闘いを挑むか……面白ぇ……」
境内の一角で巻き起こる闘気の奔流。何だ何だと周りに人が集まり始めた。
次回につづくーー
「って、なるかボケェェ!!!!」
『!?』
一同は老人から出た若々しすぎる範利の声に驚いた。
(範利……いいところだったのに……)
(うるせぇ、お前が動くと俺はボロボロになるんだよ!!)
(アレは闘気のぶつけ合いだから猫じゃらしでチロチロ遊ぶみたいなモンさ、いいだろそれくらい)
(ダメです。今結構疲れたんだよ、主にお前のせいで)
(ハァ……降参してやろう。範利、ちっとは鍛えんか!)
(マサが強すぎるだけだ)
カケラほどの闘気の放出で既に範利はヘトヘトだった。過去に正虎に身体を使わせてしまったが為に、一切怪我を負っていなくても全治三ヶ月ほどの大怪我を負ったのは嫌でも記憶に残っている。回復系の魔法が無かったらとんでもないことになっていた故にそれからというもの、正虎には最大限の警戒をしているのだった。
「すごい……萎んでいってる……」
風船から空気を抜くようにパツパツの服装が元のゆったりした服に戻っていった。あまりの変貌ぶりに巷で「風船人間」の噂がまことしやかに囁かれるようになるのは、また別の話……
締めくくるようにレオはこう呟いた。
「確かに……マジックだったな。魔法科高校生の俺らが言うのも何だけど……」
その言葉には流石の深雪でさえもが乾いた笑いを上げざるを得なかった。
キャラクターのあれか、これか。
・正虎
年齢は見た目から六十代ほど。本人は「100歳」と豪語しているが真偽は不明。凄まじい強さを持っており、自己加速術式無しで同等の速さを出せる。過去に正虎と範利が替わった時、加減を知らずに範利の肉体を使ってしまってボロ雑巾の状態になってしまった。人喰い虎を「狩った」事があるらしい。弱点は範利の肉体の脆さと老人の体力のなさ。
・霞
女性で、範利やシンジと同じくらいの年齢。ボサッとした髪に毛先は荒れているが、整えさえすれば美人。かなり賢い。他人からイジられるのが嫌い。
・シンジ
範利、霞と同じ年齢。ややカッコつけな面があり、範利の兄貴分のようなもの。霞をからかってはぶっ飛ばされている。たまに関係なく殴られるので運が良いとは言い難い。