ルームシェアをしてます。ええ、パラサイトって言うんですけど…… 作:凧の糸
今回はやや説明回とレオ強化回。
それではどうぞ
「どうもー、元気?」
「おう、ハイド。俺は元気だぜ」
今は休みを使って西条レオンハルトの二度めのお見舞いに来ていた。何故人一倍頑丈な彼が病院にいるのかというと、それは少しだけ前に遡る。
ーー数日前
リリリ!!と携帯のメールが入って来たので画面を見ると千葉エリカと表示されていた。正月の時に「暇だったらウチの道場にでも顔出してよ」と電話番号をいただいていたのだ。ただ、その時は「暇な時に行きます」と返事をした。俺にもテスト勉強という頭痛の種があったからだ。
とにかく、彼女からのメールは実に簡潔な内容であったが、同時に重苦しい内容でもあった。
「レオが吸血鬼に襲われて重傷だ、何か助けになれないか?」
早速俺はキャシーに聞いた。
「レオ、吸血鬼に襲われたらしいけど、どうにかならない?」
「なるよー。どうせアイツらのすることだから、養分を吸い取ったんだ、だからエネルギー不足でレオは倒れたんでしょ。」
「補給できんの?」
「一応、範利が触っていれば私が勝手に調節してあげるから、病院に行ってみるのがいいわ」
「合点承知の介」
今は入れそうにないというか、朝っぱらであるので昼間か明日に訪れると予定が定まった。
ーー午後2時、病院にて
「すいません、西城さんはどこの部屋ですか」
結局用事で翌日に行くことを決めて、病院にやってきた。
「203号室ですが……」
メガネをかけた受付さんの奇妙な視線を受けながら病室に向かう。(2090年代は管理に自動化もされているが、昔ながらの受付も存在している。二重に管理する事で安全性を高めようという事だ)
「ありがとうございます」
俺は堂々とレオの病室へ侵入した。
「んあ? あれ?ハイドか?」
学校じゃ無いのか?と聞かれたので、「まだ休み」と答えると、羨ましそうな顔をした。
「まあ、そうだな。灰土範利本人だ。ちょっと治しにきたぜ」
「治しにって……何を?」
レオはポカンとしている。
「レオだよ。ボロボロの状態だから回復を早めてあげようってわけ。触るけど、いいか?」
「何かよく分からんが、頼む」
「じゃ、やるわ」
(お腹の辺、いや、臍の緒かな。そこ触って)
(了解、了解)
服越しにレオの腹へと手を当てると、手は緑色にほんのりと輝き出した。
「暖けぇ。足りなかった何かが溜まっていく感じがする……」
レオは言いようもない気持ちの悪さが徐々に解消されていくのを感じていた。ポカポカと腹が暖かくなり、手足や顔もも血色が少しだけ良くなってきた。
(……終わったわ、ノリも気をつけなさい。エネルギーを分け与えただけなんだからね?)
(分かってるって。別に俺はそこまで体調に変動は無いからそんなに不安がる事はないよ)
「助かった。何てお礼を言ったらいいか。午前中とは大違いだ」
元気そうに上腕二頭筋をペシペシと叩いた。
「午前中?」
「ガッコの先輩方だよ。事件関連でな」
「大変だなぁ……なかなか」
魔法科高校の先輩方、しかも吸血鬼に襲われた彼を訪ねてきたのは十中八九、三巨頭と呼ばれる一高の頂点に座する三人内の二人だろう。一般人でも九校戦は見られるので、彼らの事も範利は一方的に知っていた。おまけに全員
「そりゃそうよ」
「ところで、元気なったらどっか遊びいこーぜ」
「ああ!勿論だ」
パシッ!!とハイタッチをして、俺は病室から出た。回復をさせたとは言え、一応病人の彼にいつまでも負担を掛ける訳にはいかないからだ。
レオには大事を取る様に言い、範利は病院から去った。
こうして、冒頭に戻る。レオンハルトは以前よりも体調を取り戻し、いつでも退院できる状態になっていた。
「そういや、少し後に達也たちも来てたな。幹比古が驚いてたぜ、「す、すごい!完璧に調和してるッ!!」ってな。見たことねぇくらいの興奮具合だったからおかしくて笑っちまった」
「そりゃそうだ。キャシーもがんばったらしいし」
「お、やっぱりか」
納得したような顔でうんうんと頷いていた。
「幹比古が観たのか?」
「ああ。俺の精気だかを測ったらしいんだがな、俺の減った気に接木みたいにほとんど同じになってた精気が内包されてたんだと。あれ、とんでもねえ技術らしいな。幹比古が驚き過ぎて口をぽけ〜っとして惚けてたくらいだからな」
ここで、読者諸君にエネルギーについての理屈を説明を入れておこう。
幽体に充満してる精気が欠けると体調を崩したり、最悪の場合昏睡状態で死ぬ恐れもある。そんな精気を構成するのがエネルギーだ。栄養学などの用語として使用されるエネルギーではなく霊的なエネルギーの事をここでは指す。
減ったエネルギーは健康的な生活を送ったり、特殊な古式魔法によってのみ充填される。つまり、本来なら時間が一番の薬なのだ。しかし、キャシーはエネルギーの文字通り全てを心得ている。精神生命体なのでそこら辺の匙加減はお茶の子さいさいなのだ。
半ばインチキじみた方法でレオ自身の持つ幽体と精気を測定し、範利の持つ一部の精気を練り上げて、レオのものと寸分違わない精気を作り出し、キャシーがパラサイトが精気を吸い取るのと逆の要領で流し込んだのである。
「そういやさ、ハイドとキャシーがやってくれた後から何か変なものが見えるようになったんだよなあ……今だってハイドから色んな色が見えるしさ」
「げ、マジかよ」
苦々しく範利は顔を歪めた。
「マズかったか?」
「マズくはないんだが……俺のエネルギーの一部が混じったかもな。都合よく考えれば、対パラサイトとか、通常の格闘戦にも応用できるかもしれない……ぞ?」
「お、そうか」
意外にもレオはケロッとしていた。
「良くないものが見えるかも知れないから、気を付けろっても……まあ今はそんなに見えないだろうし。今度ウチに来てよ。はい、これ」
範利の携帯端末の番号をレオに送信した。
「おう、登録したわ。サンキュー、ハイド」
「ん、良かった。じゃあそろそろお暇するわ」
そこそこ喋ったので、もう夕陽が傾き始めていた。
「じゃあな、また今度」
「今度な〜」
範利はそっとレオの病室から出た。途中でレオとどことなく似た雰囲気の女性とすれ違ったが、気のせいだった。
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ーー灰土邸
レオは一人で範利の家まで訪れていた。色々な人からきつくお叱りを受けていたので、すぐにパラサイトに逆襲しようともならなかったし、このままでは返り討ちにされるのが目に見えていたからだ。
「よっ!ハイド。結構大きい家を想像してたけど、意外と普通だなぁ……」
「まあ、一人住まいならこれくらいでちょうど良いもんさ」
「そっか……」
どこと無く範利の家の事情をレオは察した。自分にも聞かれたくない部分があるのだから、それを気にしないことにした。
リビングに入り、椅子に座ると範利は話を切り出した。
「じゃあ、早速始めよう。今から俺以上に詳しく奴に替わるから」
「おお、凄えな、相変わらず」
範利の身体の境界がぼんやりとしていき、赤毛で白衣を着た壮年の男に範利は交代した。
「初めまして……私はリチャード……魔法の研究をしている者だ」
「ど、どうも。西城レオンハルトです……」
「そう緊張しなくて良い。君は中々に面白い状況にあってねぇ……是非とも解剖してみたいのだ。ノリトシの友人でなければね」
「あ、あはは……」
「気にするな、研究者ジョークだ。」
レオは目の前の男が冗談を言っているとはとても思えなかった。手元にあるメスに軽く手が伸びているのをレオは見逃していなかった。
ピ!とタブレットを操作すると壁に表示が出現した。脳みその断面図や経絡図が見られる。
「キミの状態は面白いと言ったのは事実だ。ノリトシのエネルギーの影響で脳神経が特殊な構造に変化している。所謂、霊視放射光過敏症と似た現象だが、これは過敏でなく脳領域の拡大と言うべきだな」
「拡大?」
「キミは、脳の機能がほとんど使われていないのは知っているか?」
「まあ、それくらいなら」
レオに古式魔法の知識はなくとも、それくらいのことならば雑学程度に知っていた。
「1%、キミの脳の機能が解放された。それは計り知れない能力をキミに与えたわけだ。オーラが見えるというカタチでね」
「……凄いっすね」
自分で何かが変わった感覚はしないが、ここ最近の色の増えた生活は自分でも確かに思うところはあった。
「さて、脳の話は終わり。キミは実践派だろう、小難しい理論を聞くよりは本職から習ってくれ」
そうとだけ言って、リチャードの身体の輪郭は再びぼやけ、より大きくガタイの良い肉体に変わっていく。
「正虎さん……だっけ?」
「よく覚えてたなぁ、小僧。エネルギー……気の使い方をみっちり教えてやる」
目の前の老人はニタニタと笑っていた。あの時には気づかなかったが、恐ろしい程分厚くて燃え盛るようなオーラを噴出していた。
「うおっ!!」
「ガハハハ!! うっかり漏らしておったわ。耄碌はしたくないわい」
レオは老人が冗談を言っていると思いたかった。老人が「漏れた」と評したオーラを少し浴びただけで、レオは蛇に睨まれた蛙のように身がすくんだ。
よく分からないことだらけだったが、彼に師事すれば間違いなく強く成れる事だけは確信した。
詰まるところ、レオにメガネ時々コンタクト男子になってもらおうという回だった。
次回くらいにバレンタインとかも書こうかな?