若きウルトラマン、ゼットが発したそんな些細な疑問。
それを聞き、ゼロはかつて父から聞いたある話を始めた……。
※今作はあくまでも二次創作の妄想であり、公式設定ではありません。ご了承ください。
※また今作には、ウルトラマンZ第19話の要素が含まれております。未視聴の方は是非とも先にそちらをご覧になってください。
――宇宙の何処かを漂う隕石群にて。
同じ速度で宇宙を漂う、大小様々な隕石群。その一つが、突如として速度を上げ、ある方向へ向かって飛んでいく。
地球での単位で測るならおよそ20mはあろうかというそれに向かって、一条の光が飛んでいく。
隕石に到達した光線は、物の見事に隕石を粉砕。そのまま、宇宙の闇に溶け込むように消えた。
次いで闇の中から現れたのは、無数の隕石。小さいものは10m程のものから、大きいものは40m以上のものまで、異なる大きさの隕石が飛んでいく。
そんな隕石に向かって、ブーメランめいた光弾が多数飛ぶ。
小振りな隕石はそれにより破砕されたが、40m以上のものは数発が命中しても、細やかな破片しか撒き散らされない。
「――ォォオオオッ!!!」
そんな隕石に向かって突撃する青い巨人。
身長50mはあろうかという巨体の胸には、『Z』の形をした輝く結晶が埋め込まれ、そこから漏れる青い光が尾を引く。遠くから見たその姿は、さながら青い流星のようで。
青い巨人は拳を突き出したまま、高速で隕石に突撃し――見事粉砕する事に成功する。
「っしゃあ! ざっとこんなもんですよ! どうですか、師しょ――」
う、と巨人が若々しい声で最後の言葉を紡ごうとした瞬間、巨人の目の前が突如真っ暗になる。
星が消えた? ……否、それは――
「――ぅおおおお!?!」
――身長の数倍はあろうかという巨大な隕石。見える限りの星の光全てを遮る巨岩が、先程の隕石群と同じスピードで彼に迫って来ていた。
「で、でけェ! でも――ウルトラ燃えるぜェ!」
しかし、若き巨人の闘志は、この脅威を前にして更に燃え上がった。
巨人は掛け声と共に、再び突撃を敢行。
隕石に拳を見舞うが、表層を僅かに砕くだけで、その勢いはなおも保ったまま。
「なん――のォォォ!!!」
まるで勢いが緩まない隕石を前に巨人は僅かに怯むが、それも束の間、再び拳を握り、隕石にラッシュを浴びせる。
そうして眼前の隕石に集中している彼は気づかない。己の身体が徐々に背後に追いやられている事を。
「――ぐあァ!?」
――そして、背後にも巨大な隕石が迫っている事を。
案の定、彼が気づいた瞬間には時すでに遅し。
彼の身体が隕石でプレスされてしまう。
(く……そぉ……これじゃ光線も撃てねぇ……)
もはや声を上げる事も出来ず、頼みの綱である光線も放てない状況で、それでも巨人は諦めず岩を押し返そうとする。だが、彼を潰そうとする力はなおも強まり――
「――
突如として、先程までの堅牢さが嘘だったかのように、隕石が粉々に粉砕された。
「――! 師匠!」
「師匠じゃねぇっての」
はたして、隕石を破壊した張本人は、青い巨人の眼前に浮かんでいた。
赤と青の混じった体色に、胸に輝く青い結晶と、胸から肩、腕と伸びているプロテクターの如き強固な皮膚。
若き巨人が頭部に
師匠と呼ばれたその巨人――ウルトラマンゼロは、先程隕石に圧し潰されていた若き巨人――ウルトラマンゼットを見下ろしながら、一つ溜息を吐いた。
******
その日は、珍しくゼロの気紛れが働いた日であった。普段なら、自分を師と仰ぎ追いかけてくる若き訓練生を「忙しい」だの「俺は弟子は取らねぇ」だのと軽くあしらいながら――それでも何かしら話をしてしまう辺り、彼の根の良さが伺えるのだが――去るところである。
しかし、この日は偶然にもすぐに済ませるべき用事も無く、更にたまたま通りがかった先輩ウルトラマンの
ゼロとしても、宇宙の各地に出現する怪獣や侵略者への対処をせねばという使命感はあったが、同僚にも「他者を鍛える事もまた、己の成長の糧となります」と諭され、成る程、一理あると考えたのだ。
「……ったく、あれぐらい捌けねぇようじゃ、いっちょ前にウルトラマンなんて名乗れねぇぞ。アレが怪獣なら、もっとヤバい状況にだってなりかねないんだからな」
「ぐぬぬ……まだまだ修行が足りないって事っすね……」
隕石の一つに腰掛けながら、やや辛辣な口ぶりでゼロが話す。一見して楽な姿勢のように見えるが、宇宙空間という上下という概念の存在しない空間において、実はかなり精神力を使う。自分の位置を見失わない優れた平衡感覚に加え、時には無重力空間を漂う小惑星等に着地せざるを得ないウルトラ戦士にとって、重力制御は謂わば必須技能の一つである。
対するゼットも、疲れからかどこか覚束ない重力制御で隕石に腰を下ろすと、自らの未熟さを自覚してか、悔しそうに拳を力一杯握り締め、震わせていた。
ゼロがそう口にするのも無理はない。事実、自分の身の丈以上の怪獣と戦う事もあるのが、この先ゼットが属する事になる宇宙警備隊という組織だ。
所属としては別の宇宙警備隊――ウルティメイトフォースゼロのリーダーであるゼロもまた、若いながらも歴戦のウルトラ戦士として、そうした敵と戦ってきた経験がある。
不意に、ゼロの脳裏をかつて戦った巨大な敵の姿が過った。
……同時に、共に戦った戦士達の姿も。
「……ま、俺も一人で戦ってきた訳じゃねぇが。けどそれは、誰かに甘えてよっかかってもいいって意味じゃない。多分、訓練校でも習ってんだろ? 例え一人でも、決して諦めるなって」
そう口にし、ゼロはゼットに向き直る。
ゼットは、言葉として理解は出来ても、完全には呑み込めていない、そんな様子で唸っていた。
「……ま、焦らなくてもその内分かるもんだ。もし地球に派遣されて地球人と一緒に戦う事があれば、それがどういう意味かもっと理解できると思うぜ」
「うーん……そういうもん、なんですかねぇ……」
分かりやすく頭を右へ左へと揺らしながら考え込むゼットの姿に、ゼロは思わずクスリと微笑む。
幸いにも、それがゼットに気付かれることはなかった。
そんな時、唐突にゼットが顔を上げた。
「そういえば師匠」
「だから師匠になった覚えはねぇっての。……で、なんだよ?」
「あのマン兄さんも、かつては地球で戦ってらしたんですよね」
そんな話の切り出しを聞き、ゼロは考える。ゼットの言うマン兄さんとは、恐らくは――
「……ああ。初代の事か?」
「そう、そうです! ウルトラ兄弟の!」
――初代ウルトラマン。光の国においてその名を知らぬ者はおらず、誰もが憧憬の念を抱く英雄にして、今なお戦い続ける、まさしく生ける伝説。
またの名を、怪獣退治の専門家。
「ずっと不思議に思ってた事があってですね、えっと、その……」
「おいおい、落ち着いて話せよ。……今日は特別だ。答えられる事なら聞いてやる」
そうゼロが諫めると、ゼットは「すいません」と、恥ずかしがるように自身の頭を押さえた。
「……えっと、なんでマン兄さんには、皆のような名前がないんです?」
一瞬、ゼロにしては珍しく、きょとんとした様子を見せ、それから周囲をきょろきょろと見渡しだす。
「……あれ、俺、何かまずい事でも訊いちゃいましたかね?」
「……いや。お前がそういう事言い出すとは思わなかったからよ。もしかして今日は流星群でも来るんじゃねぇかって」
「お、おお……? つまり、俺ある意味師匠に信頼されてる!? ウルトラ感激!」
「ポジティブだなオイ」
やや呆れたように肩を竦めるゼロとは対照的に、ゼットは身振りからして心底感動していた。
「……まぁいいや。つっても、俺もそこまで詳しくは知らねぇ。親父に似たような事訊いて、その流れでちょっとだけ聞いたぐらいだしな」
「え、ゼロ師匠のお父上……セブン師匠に?」
「何故に親父まで師匠?」と思わないでもなかったが、とりあえず、「おう」、と頷き、ゼロは語りだす。
そう遠くない昔、父と語り合った、ちょっとした話を。
******
「そういやよ、なんで親父はウルトラセブンって名前なんだ?」
その言葉に、真っ赤なマント――栄光のウルトラ兄弟である事を示すブラザーズマントを翻しながら、真紅のファイター、ウルトラセブンが振り返る。
「いきなりだな。どうした?」
「別に。ただ……あんまり親父とはこうして話した事、無かったろ」
そう言いながら、ゼロは照れ臭そうに顔を逸らす。
そんな様子に、セブンは密かに微笑んだ。
「ほら、他のウルトラマンには名前があんだろ? ジャックとかエースとかタロウとか。なのに、親父の名前はそもそもウルトラ『マン』ですらねぇ。そりゃ気になるだろ」
セブン21とかもいるけどよ、と付け加えながら、ゼロはそう口にした。
事実、光の国のウルトラ族には、それぞれ固有の名前が存在する。ウルトラマンの後に付く名前がそれだ。光の国の事実上トップのウルトラの父と母にも、当然名前がある。
そんな疑問の声に、ふむ、とセブンは手を顎にやり、思案する。
「そうだな……強いて言えば、ウルトラマンと似たような理由、といったところか」
「ウルトラマンって……あの?」
「そうだ。皆が初代と呼ぶ彼の事だ」
そこで、セブンはある事に思い至る。
「……そういえば、私の今の名前は、元々地球人が付けてくれたものという話はしていなかったか」
「あ? いやいや、今初めて聞いたぜそんな話」
そうか、とセブンが頷く。
「かつて、私が恒点観測員340号でありながら、地球を訪れていた時の事だ。当時はウルトラマンが去り、地球防衛組織も科学特捜隊からウルトラ警備隊になっていてな。私も、ウルトラ警備隊の一員として戦っていたのだ」
「一応聞いた事はあるけどよ、それがどう関係あんだ?」
「何、単純な話さ。当時の私は、誰にも正体を知らせず、ただの風来坊としてウルトラ警備隊に属していたわけだが……ウルトラ警備隊の皆は、ウルトラセブンとしての私も、チームの仲間として受け入れてくれたのだ」
――ウルトラ警備隊の、七番目の仲間。故に、ウルトラセブン。それこそが、私の名の由来なのだ。
そう語るセブンの顔は、どこか誇らしげで。
しかし、ゼロとしてはまだ腑に落ちない点があった。
「……親父がなんでセブンって名前なのかは分かったけどよ。それがどう、ウルトラマンと関係してくるんだ?」
「む、ああ、そうか。すまない。少し懐かしんでしまった」
ははは、とセブンは気恥ずかしげに笑った。
「……ウルトラマンがどうして地球にやって来たか、それは知っているな?」
「そりゃあ、な」
ウルトラマンが地球に来た理由など、光の国の者なら誰でも知っている。
凶悪な宇宙怪獣ベムラーを怪獣墓場に輸送する任務に就いていた彼は、脱走したベムラーを追って地球に来訪した。子供でも知っている事だ。
「ふむ。では……ウルトラマンがどうやって地球に滞在していたかは?」
「あー……ちょっとぐらいしか知らねぇな。確か、地球人と融合してたんだっけか」
地球人との融合は、多くのウルトラマンが地球に滞在する際に用いる手段の一つではあるが、それを行うのは融合相手が重傷を負っている場合がほとんどだ。
人間と融合する異星人は数多く存在するが、融合した相手を治癒する力というのは、光のエネルギーを扱うウルトラマンならではと言ってもいい。
ほとんどのウルトラマンは人間との融合がやっとだが、ウルトラマンの中でも別格の存在、ウルトラマンキングに至っては、崩壊する宇宙そのものと融合する事で、宇宙を治癒したりもしている。
ただし、当然ノーリスクではない。ジャックやエースのように、あまりにも融合していた期間が長くなると分離が出来なくなり、意識レベルで一つになる可能性もある。ウルトラマンとして死ぬ事は、同時に融合相手の地球人の死を意味するのだ。
そんな前例もあってか、彼ら以後のウルトラマンは可能な限り早急に分離を済ませるか、もしくはセブンのように地球人に擬態する能力を使っている。
「そうだ。……その時に融合した地球人は、実は彼の不手際で重傷を負ってな」
その告白に、ゼロは思わず数秒の間、絶句してしまう。
「親父、それって」
「心配するな。彼もそれを隠してはいないし、知っている者は知っている。……これは、彼にとっての切っ掛けの一つであり、同時に彼が『ウルトラマン』を名乗る理由の一つ、みたいなものだからな」
そうしてセブンが語りだしたのは、ウルトラマンから聞いた当時の話。
脱走したベムラーを追跡し地球にやって来たウルトラマンは、ベムラーが現地にて『竜ヶ森湖』と呼ばれる湖に潜伏したのを確認。すぐ捕縛しようと湖に向かった、そんな時。
ベムラーを逃した焦りからか、不幸にも当時の防衛組織に当たる科学特捜隊が保有するジェットビートルと衝突。パイロットであった青年――ハヤタ・シンの命を奪ってしまったのだ。
「……で、己の過ちを心底悔いたウルトラマンは、その命を共有する事で生き永らえさせた、と」
うむ、とセブンが頷いた。
「……当時の光の国では、命を共有する技術自体は完成されていた。ウルトラマンキングという伝説級の存在を参考にしてな。だが、それを実際に利用する者はいなかった。戦いで重傷を負った者の治療に関しても、銀十字軍がずば抜けていたからな」
光の国のウルトラ族は、非常に生命力に溢れている。それは、彼らの源たる光のエネルギー――もっと言えばディファレーター光線――が供給できる環境であれば、事実上不滅の存在足り得るが故に。
しかも後の研究で、人間を含む生命が放つ感情の変動から来るプラスエネルギー――誰が呼んだか、『心の光』と呼ばれるもの――もまた、ウルトラマンにとっての力になる事が判明したのだ。
生命科学に関しては、ウルトラ族以上に研究し、発展させてきた存在もそうはいない。
「それに……他の惑星の生命体に関しても、当時観測されたのは殆どが外宇宙へ進出しては戦争や侵略を引き起こすような連中か、もしくはそもそも文明を持たない者ばかりでな。それに、一つの星に滞在するような事も無かったんだ」
宇宙にはどこにも似たような存在というのがいるらしい。例えば、地球でも存在が確認されたラゴンやピグモンといった、本来は闘争を好まないような怪獣が、地球とは別の惑星にもいたりする事もままある。
そういった存在を巻き込むような戦いが起これば、結果は二つに一つ。生かすか、死なすかだ。
宇宙警備隊は、基本的に敵対する勢力は実力行使で排除し、その命を奪う事がほとんどである。だが、いくら命に関しての研究が進んでいても、それを慈しめない程冷徹だったという訳ではない。命を奪う事、そして巻き込んでしまった事への罪悪感も当然感じる。……地球人が考える命の価値観とは、確実にズレてはいるが。
そんな時であった。太陽系第三惑星、地球にウルトラマンが訪れたのは。
「私がかの地に行ったのはウルトラマンの後ではあったが、ハッキリ言って……新鮮だった。何せ、多彩な文化・文明を持ちながら、外宇宙への進出を未だ果たしていなかったのだから」
彼らが目にしたのは、それまで見てきたあらゆる星々とはまるで違う、異質な世界。
独自の科学文明はあれど、外宇宙にまで足を延ばせる程ではなく。
多くの宇宙人のように、人々がどれも似たり寄ったりの姿をしているわけでもなく。
そんな未熟で奇妙な星ながら――美しい。
そう思わされるだけの魅力が、この星にはあった。
「勿論、全てにおいて良い星だとは、口が裂けても言えんよ。当然の事だが、彼ら地球人も、時として過ちを犯す。……私も、ウルトラマンも、他のウルトラ兄弟も、少なからず彼らの抱える業を見てきた」
その言葉の重みが如何ほどかを、この時のゼロは知らない。否、後に本格的に地球に滞在する事になった時ですら、ゼロは悪人と呼べる地球人とはほとんど遭遇していないのだ。状況が状況故に。せいぜいがちょっとしたチンピラぐらいなもので。
はっきり言えば、銀河はおろか、あらゆる宇宙を股に駆ける程の勇士であっても、地球の奥深さに関しては未だ初心者であった。
――そんな彼でも、分かる事はある。
「……でもよ。それでも守りたいと思えるものがあったからこそ、ウルトラ兄弟達は……他のウルトラ戦士も、地球を守って来たんだろ?」
セブンはその問に、静かに頷いた。
「ウルトラマンも、最初は罪滅ぼしの為に戦っていた。他でもない自分のせいで、一人の地球人に理不尽な死を遂げさせてしまったのだから」
それ故に、ウルトラマンは犠牲となった地球人と合体し、地球の為に戦った。合体した地球人が元々地球防衛の為に働いていたからというのもあったが、意外な事にウルトラマンは、合体した際にその意識を地球人の側に委ねたのだ。
「……意外だと思うかもしれないが、そのウルトラマンという名を彼に与えたのは他でもない、合体した地球人その人だったそうだ」
ゼロもこれには目を丸くする。まさか、不慮の事故とはいえ自分を死なせた相手に
「マジかよ。地球じゃウルトラって言葉ってこう、すげぇ良い意味で使うんじゃねぇの?」
ゼロとて、まがなりにも地球に滞在した経験のあるウルトラマンだ。暇な時間にちょっとした調べ物をしたりもする。……その過程で、自分の名前がどういう意味を持つのか調べ、少し凹みそうになったものの、捉え方次第では良い意味にもなるのを知って内心喜んでいたのは内緒だ。
「それだけ、その地球人は高潔な精神を持っていたという事だろう」
「
「まぁともかく、罪の意識も勿論あったのだろうが、何より地球人がその名で呼び、愛してくれる事が嬉しかったんだろう」
「だから、ウルトラマンはその名前に誇りを抱いて名乗るようになった、と」
「まぁ、憶測ではあるがな」とセブンが付け足す。
「そうして名前を貰って、地球人を知っていくうちに、ウルトラマンはウルトラマンとして成長し、地球人を……いや、地球という星を愛するようになったって事か」
そうして言葉にすると、ゼロは段々と、己の父が何故「ウルトラマンと似たような理由」と話したのが分かった、ような気がした。
そんなゼロの様子に、満足気に頷くセブン。
「……だから、彼が『ウルトラマン』を名乗らなくなるとしたら、それは――」
「それは?」
そうしてセブンが口を開くかどうかという時に、けたたましいサイレンが鳴る。それは、どこかの惑星で人々や弱き生き物が何らかの脅威に晒されている事を意味している。
話が気になったゼロだったが、しかしそれ以上にウルトラ戦士としての使命感の強い彼は、「行こうぜ、親父!」と言うなり、真っ先に警備隊本部へと向かって行った。
そんなゼロの背中に頼もしさを感じつつ、セブンは彼の後を追う。
――彼が『ウルトラマン』を名乗らなくなるとしたら。
――それは、彼が自らの姿を棄て、地球人からの賞賛も名誉も失ってでも地球を守ろうとする時だろう。
その起こり得るかも分からない推測を、胸の中に仕舞いながら。
******
「そういや、あの続き結局聞けなかったな」とゼロがぼんやりと考えていると、隣から異様な気配を察知。
そちらへ振り向けば――
「お、おおおおおお!!! なんと、泣ける話なんだァッ!!! ウルトラ感動秘話でございますなァ!!!」
ゼットが男泣きをしていた。
「いや、過剰に反応しすぎ――」
「俺も! エース兄さんから貰った名前に誇りをもって、立派な宇宙警備隊としてウルトラ頑張るぜ!!!」
「あ、あそう。ガンバレー……」
一人でヒートアップしていくゼットに、ゼロは何の言葉も掛けられずにいた――が。
「……あ? 今なんつった?」
「え? ……『貰った名前に誇りをもって――』」
「違ぇ、その直前だ」
「『エース兄さんから貰った』?」
その言葉を最後に、暫し痛々しいまでの沈黙に包まれ――
「……えっと、師匠? どうしました?」
直後、ゼロの迫真の絶叫が、数百kmも先の惑星にまで轟いたとか、いないとか。