恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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刀鍛冶の里編続きです!
湯治兼いろいろのためにやってきた楓子一行!
そんなわけで最新話です!
と、行きたいところですが、一つだけ訂正というか補足です。
前回の質問への楓子の回答で⑨の推しを「アーチャー」と表記していましたが、「どのアーチャー?」とご指摘ありましたので訂正です。
彼女の言うアーチャーは赤い外套の白髪色黒のアーチャーです。
一応まだ見ていない人への配慮として彼の真名は隠したらややこしくなってしまいました。申し訳ありません!


というところで改めて最新話です!





恋76 恋柱の継子と高い壁

 刀鍛冶の里にやってきた日の晩を温泉につかり、山の幸をふんだんに使った美食に舌鼓を打った楓子達一行。そして、一夜明けて一行は目的の一つ目、楓子の考案した日輪刀、完成形変体刀の性能実験を行っていた。行っていたのだが――

 

「持ちッ上がらッないぃぃぃぃぃッ!!!」

 

「ぐぬぬぬぬぬッ!!動けねぇぇぇぇッ!!」

 

 炭治郎と伊之助の叫び声が響く。

 

「あぁ…やっぱりこうなった……」

 

 そんな様子に楓子はため息をつく。

 楓子の目の前では地面にめり込んだ鉄の塊のような、一見両刃の、西洋刀にも似た形の刀を持ち上げようと引っ張るが持ち上げることも叶わない炭治郎が顔を真っ赤にして引っ張っている。

 そして、その隣では全身を覆う西洋甲冑のようなもの――声から伊之助とわかるそれが地面に倒れうまく動けない様子でもぞもぞと芋虫の様に悪態をつきながら身を捩っている。

 

「炭治郎君その辺でいったんやめとこう。それ以上無理すると筋痛めるよ」

 

「は、はい……」

 

 楓子の言葉に炭治郎がゆっくりと手を放しため息をつく。そんな炭治郎にカナヲが手拭いを渡す。炭治郎は笑顔で礼を言って受け取り額の汗を拭う。

 

「伊之助君も、無理に動こうとすると体を痛めるから一回出ておいで」

 

「ちぃッ!」

 

 伊之助も悔しそうに舌打ちをしながら甲冑のようなそれを外して出てくる。

 

「『双刀』はともかく『賊刀』は大きさの問題もあるから伊之助君じゃ扱えないでしょ」

 

「やってみなきゃわかんねぇだろうがよ!」

 

「なんにでも挑戦することはいいことだけど、限度ってものがあるよ」

 

 伊之助の言葉に楓子は肩をすくめて言う。

 

「そもそもこの大きさを扱えるのは鬼殺隊でも一人だろうな」

 

 そんな楓子に同調するように小芭内が言う。

 

「まあ、〝あの人〟が使うことを想定して案を出したので……まあできるなら他の人にも扱える大きさで作れたらよかったんですが……」

 

「それは無理じゃよ。この『賊刀・鎧』はただの甲冑ではないからのお」

 

 楓子のため息にその隣にいたひょっとこ面の小さな老人――鉄地河原鉄珍が答える。

 

「一見甲冑に見えるこれ、関節部分なんかの継ぎ目に刃が仕込んであるんじゃが、その仕掛けがあるせいである程度の大きさにどうしてもなっちゃうじゃよ」

 

「そもそもこれは〝刀〟と言えるんですか?」

 

「刀じゃよ~。殴っても蹴っても仕込んである刃で斬れるから刀じゃ刀~。素材も日輪刀と同じ猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石じゃし、刀を鍛えるように作ったから刀じゃよ~」

 

「じゃあ…刀、かなぁ?」

 

 鉄珍の言葉に蜜璃が首を傾げる。

 

「ならこれはどうなんですか?」

 

 そんな蜜璃を見ながら善逸が地面に少しめり込んだ〝それ〟を指さす。

 

「これ、〝刀〟っていうより〝鈍器〟なんじゃ……」

 

「そんなことないよ。刀だよ刀~」

 

「えっと…どの辺が?」

 

「………形状?」

 

「絞りだしてそれですか、しかも形状どう見ても〝刀〟というより〝剣〟って感じですけど!?」

 

 楓子の言葉に善逸が叫ぶ。

 

「というか炭治郎でも持ち上げられないこの……」

 

「『双刀・鎚』ね。圧倒的な質量で叩き斬る刀ね」

 

「そう、それです。そもそも持ち上がらないんじゃ使えないんじゃ…?」

 

「炭治郎君達くらいの筋肉量じゃダメかもだけど、蜜璃さんなら、ね?」

 

「任せて!」

 

 楓子に促され蜜璃は地面にめり込む『双刀』を掴み

 

「よいしょッ」

 

 ヒョイと持ち上げる。

 

「そ、そんなあっさり!俺持ち上げることもできなかったのに!」

 

「そうでもないわよ~。これ見た目以上に結構重たいわね」

 

 驚いている炭治郎に言いながら蜜璃はその場で素振りをする。

 

「重いって言いながら流石蜜璃さんしっかり振り回してますね」

 

「この刀は甘露寺さんが使う想定だったんですか?」

 

「いや、これは蜜璃さん向きじゃないと思ってたからなぁ~……」

 

「そうなんですか?でも実際こうしてちゃんと振り回せてますけど……」

 

「使えるからって向いてるわけじゃないんだよ炭治郎君」

 

「???」

 

 楓子の言葉に炭治郎はまだピンと来ていない様子で首を傾げる。そんな炭治郎の疑問に答えるために楓子は蜜璃に視線を向け

 

「どうです?」

 

「そうね…この重さなら大抵の鬼を倒すのに申し分ないと思うわ!でも、フーちゃんの言う通り私向きじゃないわね。この重量で叩き潰す!って感じは『恋の呼吸』との相性が悪い気がするわ」

 

「あ、そういう……」

 

 蜜璃の言葉にやっと理解ができたらしい炭治郎が納得した様子で頷く。

 

「でも、そうなるとこの『双刀・鎚』は誰が……?」

 

「実はこれ『賊刀』を使ってもらいたい人に一緒に装備してもらえたらなぁ、なんて思ってるんだよねぇ」

 

 善逸の問いに楓子は頭を掻きながら言う。

 

「『賊刀』の防御力と『双刀』の攻撃力が合わされば最強では?って思うんだけど……」

 

「流石に〝あの人〟でもこの二つを同時に使うのは厳しいんじゃないか?」

 

「そうですかねぇ~?正直『双刀』に関してはもう少し重量を増やしたいところなんですが」

 

「いやいや、これ以上重くするとか作るこっちが困っちゃうんじゃけど?」

 

 楓子の言葉に鉄珍が焦った様子で言う。

 

「ですよね~……やっぱりこの辺が限界ですかねぇ……里長、残りの変体刀は?」

 

「『微刀』はもう仕上げに入っておるから明日にはお披露目できるじゃろう。『炎刀』はほぼ出来ておる。問題は『千刀』じゃな」

 

 楓子の問いに鉄珍が答える。

 

「正直『千刀』が一番難儀かもしれん。お主の想定していた『千刀』の製造方法がわしらの刀の作り方と相性が悪そうでのぉ」

 

「ん~…ですよねぇ……」

 

 鉄珍の言葉に楓子はうんうん唸りながら考え混み

 

「その辺はおって相談することにして、今日のところはこの辺にしておきましょう」

 

「もういいのか?」

 

「ええ。もともと『賊刀』も『双刀』も使える人が限られているのでそれほど実験できないのは予想していたので。昨日着いての今日ですから、そんなにみっちりとやらなくていいかなぁって思ったんですよね」

 

「あぁ~、だから玄弥君と真菰ちゃんはここにいないの?」

 

「ええ、二人には周辺警備の確認に回ってもらっています」

 

 言いながら楓子は炭治郎達に視線を向け

 

「とりあえず四人はそれぞれの担当鍛冶師さんに日輪刀の整備を頼んでおいで」

 

「は、はい!」

 

「んだよ、これで終わりかよ」

 

 頷いた四人を見送った楓子は

 

「じゃあ、お二人も今日のところはありがとうございます。あとはお二人でゆったり過ごしてください。明日もお願いしますね」

 

「ええ、任せて!」

 

「何かあれば呼んでくれ」

 

 蜜璃と小芭内も楓子の言葉に頷き歩いていく。

 楓子はそんな面々を見送り

 

「――では、里長。変体刀とは別にお願いしていた例の件ですが……」

 

 真剣な顔で口を開いた。

 

 

 

 〇

 

 

 刀鍛冶の里での二日目の夜。

 夕食を食べ、温泉に入ったカナヲは髪を拭きながら縁側を歩いていた。と――

 

「あ、炭治郎……」

 

 縁側に座る炭治郎の姿を見つけ声をかける。

 

「あぁ、カナヲ。風呂上りか?」

 

「う、うん」

 

「湯冷めしないようにしろよ」

 

「ありがとう。大丈夫だよ」

 

 炭治郎の言葉に頷いたカナヲは逆に訊く。

 

「その…炭治郎は何してるの?」

 

「俺?俺は星を見てたんだ」

 

「星…?」

 

 炭治郎の言葉にカナヲは空を見上げる。

 

「あぁ……」

 

 カナヲはその光景に感嘆の声を漏らす。

 

「奇麗だよな。最近ゆっくり見上げることなかったからなんか気付いたらぼんやり眺めちゃってたんだ」

 

「すごい…ね……」

 

 炭治郎の言葉に頷きながらカナヲもぼんやりと見つめる。

 

「……よかったら隣に座るか?」

 

「いいの?」

 

「ああ。――あ、でも湯冷めするとよくないか。体が冷えないように」

 

「だ、大丈夫!お風呂で温まって暑いくらいだからちょうどいいよ」

 

「そうか?じゃあ、どうぞ」

 

 言いながら炭治郎はにっこりと微笑み隣をポンポンと示す。

 カナヲはそっとそこに座る。

 

「…………」

 

「…………」

 

 二人はしばらく黙って星を眺めていたが、ふとカナヲが炭治郎を見る。

 

「………」

 

 なんとなくその横顔がいつもの覇気がないようにカナヲには感じられた。

 

「……ん?どうかしたか?」

 

 炭治郎はそんなカナヲの視線に気付き炭治郎が首を傾げる。

 

「いや…その……」

 

 カナヲはそんな炭治郎の問いに言い淀み

 

「……炭治郎、何かあった?」

 

「え?」

 

「なんだか、元気がないように見えて……」

 

「そう…かな……いや、そうかもな」

 

 カナヲの言葉に炭治郎は小さく頷き

 

「ちょっと、自分の力のなさを感じてしまったって言うか……」

 

 少し寂しそうに口を開く。

 

「楓子さんも、甘露寺さんも、伊黒さんも、みんなすごい人ばっかりで……俺じゃびくともしなかった刀を甘露寺さんは簡単に扱ってたり、そんなすごい刀をたくさん考えついたり、他にもいろいろできるし、伊黒さんもすごく強いし……でも、そんな人達でもできないことがあって……じゃあ俺はみんなよりもっとできないことばっかりで、そんな駄目な俺はもっともっと努力しないとなぁって」

 

 炭治郎は自嘲するように笑い

 

「悔しいなぁ…たくさん鍛えてもらって、一つ一つできるようになっていってるけど、またすぐに目の前に分厚い壁があるみたいなんだ。すごい人達はもっともっと先のところにいるのに、俺はまだそこに行けない……俺は楓子さん達みたいになれるのかなぁ……」

 

「炭治郎……」

 

 カナヲはなんといっていいか言い淀み、そんなカナヲの様子に炭治郎は慌てて努めて明るく微笑み

 

「大丈夫だ!ちょっと落ち込んだりもしたけど、俺頑張るからさ!頑張って、もっと強くなってちゃんと、禰豆子を人間に戻さないといけないんだからな!」

 

「…………」

 

 にっこり笑って言う炭治郎の言葉にカナヲは少し考え

 

「……私、前はなんでも硬貨を投げて決めてたの、覚えてる?」

 

「え?あ、ああ。勿論覚えてるけど……」

 

 突然のカナヲの言葉に炭治郎は困惑しながらも頷く。

 

「でも最近は硬貨を使わなくてもちゃんと自分で決められるようになってきた。それは、炭治郎がきっかけをくれたから、私が本当は〝全部どうでもいい〟って思っていないことを気付かせてくれたから」

 

「そ、そうかな…?」

 

「うん」

 

 炭治郎は少し照れ臭そうに訊くと、カナヲはゆっくりと頷く。

 

「これは、炭治郎にしかできなかったこと。炭治郎よりも前から会っていた楓子さんにも、甘露寺さんにも、伊黒さんにも、師範達にも、私が変わるきっかけは作れなかった。炭治郎は楓子さん達にできなかったことができてる」

 

「そう…だな……」

 

「…………」

 

 カナヲの言葉に炭治郎は目を見開き頷く。そんな炭治郎にカナヲは照れた様子ではにかみ

 

「……えっと、うまく、言えないけど、えっと……」

 

 もじもじと俯きカナヲは思案し

 

「炭治郎は、駄目じゃないと思う…よ?」

 

「そっか……」

 

 カナヲの言葉に炭治郎がしみじみと頷き

 

「ありがとう、カナヲ!」

 

「う、うん!」

 

 にっこりといつもの優しい笑顔を見せる炭治郎にカナヲも微笑むのだった。

 




というわけで新たな変体刀の登場でした!
そして、思い悩む炭治郎君とそれによりそうカナヲちゃんでした!
そして、楓子の言う〝例の件〟とはいったい……
というところで今回はこの辺です!

というわけで今回の質問コーナーです!
今回はR0さんからいただきました!

――楓子ではなく、冨岡夫妻への質問です。
1つ目は奥さんは旦那さんと結婚して彼の過去、特に羽織の持ち主について、何か聞いていますでしょうか?
(口下手の要因ともなったお義姉さんの件やご親友が鬼を狩りまくったのに対して自分は鬼を倒す所か己の足で逃げることもできなかった件です。)
2つ目はクリスマスに楓子から貰った贈り物は今、どうしていますか?

しのぶ「聞いたわ。なんで半分ずつ違う柄の羽織なのか、ずっと疑問でしたがやっと謎が解けたわ。そして、結婚が決まった時に義勇さんにお願いしてお姉さんのお墓詣りはしてきたわ。と言っても、私より彼の方がたくさん積もる話をしているようでしたけど
二つ目の質問に関しては結婚してすぐに家探しして燃やしたわ」

義勇(実はそれを見越して大好から同じものをもう一冊貰っていたのだが……見つかるとまた燃やされるから黙っておこう)

ということでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
また次回もお楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
実はコッソリ廊下の先で訊いていた楓子と真菰でしたが、二人はクールに去りました。


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