それぞれ単体ではネタとして入れたかったんですが一話分のボリュームにならなさそうだったお話を集めてみました。
本日のお品書きは
○風柱は噂される
○恋柱の継子と次期当主
○水柱の継子は心配する
の三本です!
○風柱は噂される
それはある日の柱合会議の後の雑談でのこと
「最近、特に女性隊士からひそひそ話されるんだがよォ…なんか理由知らねぇか?」
風柱・不死川実弥は揃っている面々の顔を見ながら聞く。
「お前の気のせいじゃないか?」
実弥に天元は言うが
「いや、明らかに俺を見て、なんなら指差しながらひそひそ話してやがる。俺が視線を向けたら慌てて目を逸らされるしよォ」
「うむ!それは確かに何か噂されているな!」
実弥の言葉に杏寿郎が頷く。
「ふん、大方普段から言動が乱暴なお前のことだ。どこかで他の隊士の反感でも買ったのだろう」
「あぁ、それはありそうですね、不死川さんですし」
「あぁ…嘆かわしい……下の者にも慈愛をもって接するのだ、不死川……」
「おい、待て。何を勝手に俺が何かやらかしてる前提で言ってやがんだテメェらはよォ」
「大丈夫よ不死川さん!普段確かに言動は怖いときあるけど不死川さんがまじめな人だって私たち知ってるから!」
「蜜璃さん、フォローしているつもりでしょうけど、言動が怖いって部分が否定できてないし、あなたのそれもやらかしてる前提ですよ?」
小芭内はため息交じりに言い、その言葉に納得するしのぶと涙を流して諭す行冥の言葉に実弥の額に青筋が浮かぶ。そんな実弥をフォローする蜜璃だったがその言葉をしのぶにツッコまれる。
「本当に身に覚えはないんですか?」
「ああ、ねぇなァ」
しのぶの問いに頷く実弥。
その答えに面々は首を傾げるばかりだ。と、そんな中で――
「ッ! もしや!」
ポンと手を打って杏寿郎が声を上げる
「もしかすると不死川、お前の服装のせいかもしれんぞ!」
「あぁん?どういう意味だァ?」
杏寿郎の言葉に実弥は首を傾げる。
「不死川!君の服装は俺も前々から気になっていたんだが……」
「あぁん?」
杏寿郎の指摘に実弥は一度自分の服を見て
「どこかおかしいか?」
首を傾げる。そんな実弥に杏寿郎は
「うむ!その胸元、少々開きすぎではないだろうか!?」
スパっと正面から切り込んだ。
その言葉に杏寿郎と同じことを前々から感じていたしのぶ、蜜璃、小芭内、そしてずっと黙っていた冨岡が内心納得する。
「あぁん?そうかァ?」
しかし、杏寿郎の指摘も実弥はよくわかっていない様子で首を傾げる。
「お前に対してひそひそ話を行っていたのは女性隊士がほとんどだったのだろう!?君のその大きく開いた女性隊士には少し刺激的なのではないだろうか!?」
「確かにそれはあるかもしれませんね」
杏寿郎の言葉にしのぶが頷きながら言う。
「た、確かにその胸元は目のやり場に困るときがあるわね!うちの継子のふーちゃんも『不死川様の胸元はドスケベが過ぎる』って言ってたわ!」
「お前だって俺と大差ねぇだろうがァ」
「えッ?」
「おい待て。確かに甘露寺の服装もちょっとアレなところがあるが、お前と一緒にするな」
「えッ!?」
「そうですよ。蜜璃さんのこの服はゲスメガネこと前田さんの『これが普通』だという言葉を真に受けるほど純真な心の表れなんですよ。好んで開けてる不死川さんと一緒にしないでください」
「えぇッ!?」
実弥の言葉に呆ける蜜璃は続く小芭内としのぶの言葉にさらに驚愕する。
「こ、この服っておかしいの……?これが普通なんじゃないの……?」
「いやいや、私含めてほかの女性隊士はそんなに胸元開いた服着てないじゃないですか?というか私も似たような服を最初に渡されたので前田さんの目の前で燃やしてやりました」
「えぇッ!!!?」
しのぶの言葉に蜜璃は驚きの声を上げる。
「そんな……恥ずかしいけどこれまで我慢して着てたのに……」
一人ショックを受ける蜜璃をオロオロと小芭内が慰めるのを尻目にしのぶは実弥に視線を向け
「不死川さんは蜜璃さんの服、どう思います?」
「年頃の女がする格好じゃねぇだろ、胸元開けすぎだァ。正直初めて見たときは痴女かと思ったなァ」
「痴女ッ!?」
「甘露寺ッ!? おい不死川!言葉を選べ!甘露寺が可哀そうだろう!!」
「ッ! す、すまねェ……」
ショックを受けて目に涙を溜めてワナワナと震える蜜璃の様子に小芭内が怒声をあげ、蜜璃の様子と小芭内の圧に不死川は思わず謝罪を口にする。
「まあとにかく、不死川さんの蜜璃さんへの感想はそのまま同じような格好をしているあなたへの印象と同じなんですよ」
「い、いや…だが俺は男だぞ?」
「男だろうとそんな風に胸と腹筋を開けっ広げにしてたら女性の方も目のやり場に困りますよ」
「ッ!」
しのぶの言葉に実弥は息をのむ。
「不死川よ、服装の乱れは風紀の乱れだ。これを機にその崩した服装を正してはどうだ?」
「……チッ!わかったよォ!」
行冥の言葉に渋々頷いた実弥はその場で隊服の前をとめる。
これにて一件落着、と、その場の誰もが思った――のだが
――柱合会議から数日後
ヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソ
「…………」
実弥に対するヒソヒソ話は特にやむことはなかった。
ヒソヒソヒソ
ヒソヒソヒソ
「だぁぁぁッ!!服装変えても駄目じゃねぇかぁぁぁぁッ!!!」
結局その後、実弥の服装は元通りになった。
その報告に気の毒に思った冨岡が実弥をご飯に誘ったが、「テメェに同情されたくねぇんだよォ!!!」とキレた実弥に殴り掛かられた。
○恋柱の継子と次代当主
それはある時、私が報告のために産屋敷家の屋敷を訪れた時のこと。
「ッ! 楓子さん!いいところに!」
「はい、どうかされました?」
慌てた様子のあまね様の言葉に私は首を傾げる。
「じ、実は輝利哉が!」
「ッ!? すぐに案内してください!」
あまね様の言葉に私は顔を強張らせ、頷いたあまね様に案内されて一つの部屋に案内される。
その部屋の真ん中には布団が敷かれ、そこにはおかっぱ頭の黒髪の女児しか見えないが正真正銘男児な子どもが寝かされていた。頬は赤くなり顔に汗が浮かび息も荒く、その瞼は閉じられている。
「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」
荒い息を繰り返すその少年――産屋敷輝利哉様の枕元に座った私は布団の裾から輝利哉様の手を取り脈を測り、顔や首元を触診、瞳孔の確認などいくつかの診察を行い、持って来ていた荷物の中からいくつか薬を取り出し飲ませる。
その後少し様子を見ていると
「すぅ……すぅ……すぅ……」
輝利哉様の吐息が落ち着く。
私は改めて脈を測り触診を行い
「……もう大丈夫です」
「ッ! よかったッ!」
笑顔を向けて言うと、あまね様はへたり込むように座り込んで安堵した様子で言う。
「幼いこの子に、もうすでに『呪い』の影響が出たのかと思いましたわ……」
「私もそれを懸念しましたが、恐らくはただの風邪かと思われます。いくつか薬を飲んでいただきましたのでもう大丈夫かと、直に目も覚めるでしょう」
「そうですか……ありがとうございます」
「いえ、これくらい大したことはありません」
私の言葉に頭を下げるあまね様に私は微笑む。と、
「あまね、楓子、輝利哉の様子はどうだい?」
「お館様!」
襖が開けられ、布団に眠る輝利哉そっくりの顔立ちの白髪の少女――長女のひなき様に連れられたお館様が顔を出す。
「ええ、今は落ち着いていらっしゃいます」
「楓子さんのお陰ですわ。それと、『呪い』の影響ではないだろうとのことです」
「そうか、それはよかった」
私とあまね様の言葉にお館様とひなき様がホッと安心した様子で息をつく。
「すまないね、楓子。手間を取らせた」
「いえいえ、滅相もありません」
お館様の言葉に私は微笑みながら答える。
「この子は私の次に当主を継ぐ存在だ。万が一のことがあるかと心配したが、大事無くてよか――ゴホッゴホッ!」
「「お館様!」」
言葉の途中で咳き込んだお館様に私とあまね様が慌てて駆け寄る。
「し、心配ないよ」
「しかし、お館様!」
優しく微笑むお館様に私は首を振る。
「お館様、少し前から左目の視力を失って、最近右目も視力低下してきているんですよね?あなたの方が『呪い』で重症なんです。無理をしてはいけません」
「あ、ああ…すまない……」
私の言葉にお館様は申し訳なさそうに頷く。
「あまね様、ひなき様、輝利哉様は私が看ていますから、お二人はお館様を」
「……わかりました。よろしくお願いします」
私の言葉に頷いたあまね様がお館様に肩を貸してひなき様とともに連れていく。
三人を見送った私は改めて輝利哉様の枕元に腰掛け、横に置いていたタライで水を絞ったタオルで彼の顔に浮かんでいた汗を拭い、再びタオルを水で濯いだ後に彼の額の上にのせる。
彼――産屋敷輝利哉の事情については情報戦略部に選抜されて産屋敷に保管される情報を整理するためにお屋敷に通ううちにある日お館様本人から聞かされた。
まあ私自身は前世での原作知識で知っていたのだが、それはともかく、彼は先もお館様が言っていた通りお館様の次に当主になる予定の子だ。
原作では彼を含め顔がそっくりな五つ子がお館様とあまね様にはいる。その中でも男児は輝利哉のみ。ただし、産屋敷の男児は病弱なために13歳までは女子として育てるというしきたりがあるらしい。実際子どもの短命は昔は割と珍しいことではなく、7歳までは神の子なんて考え方もあったくらいだ。七五三なんかはその辺の考えが由来だったりする。そんなわけで厄除けとして男子を女子として育てる風習は珍しいわけでもない。
そんな彼だからこそ、今日はただの風邪だったが次期当主である以上、イレギュラーが起きて産屋敷の『呪い』の可能性があったので私もお館様たちも敏感にならざるを得ないわけだ。
あと、これはどうでもいいが、原作で炭治郎たちの最終選別の時に案内役をしていた片割れも彼だ。あの時一歩間違えば玄弥は次期当主殴ってた可能性もあるのか……ていうかお館様の実子殴ってる時点で大丈夫なんだろうか?
と、そんなことを考えていた時――
「ん……」
輝利哉様が目を覚ました。
「おや、目が覚めましたか?」
「あなたは……大好さん」
「楓子でいいですよ、輝利哉様」
「私は……」
「風邪で体調を崩されたようです。診察はさせていただき、解熱剤も飲んでいただいたので明日には全快されると思いますよ。まあ熱で朦朧としてたので覚えてないかもしれませんけど」
「そう…ですか……」
「喉乾いていませんか?汗もかいてましたし水分取られた方がいいですよ?体、起こせますか?」
「は、はい……」
私の言葉に少しふらつきながら上体を起こす輝利哉様を支え、布団の上に座ったところで枕元に置いていた湯飲みを渡す。
「……ふぅ」
「食欲ないでしょうが何か食べておいた方がいいですよ?リンゴでも剥きましょうか?」
「は、はい……」
頷く輝利哉様の前で私はわきに置いてあったリンゴとナイフに手を伸ばしてシュルシュルと剥いていく。
「……見てください、兎です!」
「おお、すごいですね……」
私の差し出した皿に並ぶ兎状に切られたリンゴを見て輝利哉様が感心した様子で眺めている。
「まあ食べてみてください」
「はい」
頷いた輝利哉様はリンゴを手に取って齧る――が
「……ご馳走様です」
一切れ食べきったところで輝利哉様が呟くように言う。
「やはり食欲ないですか……」
「すみません……」
「ああ、いえ!別に怒ってるわけじゃありません!――あっ!いいこと思いついた!」
申し訳なさそうに言う輝利哉様に手を振って否定する私はそこでふと思いつく。一瞬席を外して調理場に行った私は目当てのものを見つけて戻ってくる。それは「おろし金」だ。
「擦り下ろしてしまえば固形より食べやすくなるでしょう」
言いながら私は剥いてあったリンゴをすりおろしていく。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
器を受け取った輝利哉様は匙ですくって食べる。さっきよりも食べやすかったようで擦り下ろした分をすべて平らげた。
「ご馳走様です」
「お粗末様です」
少し顔色が良くなった輝利哉様に私は微笑む。
「良くなっているとはいえまだ薬の影響もあるでしょう。早めに休んでください」
「はい」
私の言葉に素直に頷いた輝利哉様は布団に横になる。しかし――
「……眠れませんか?」
「……はい」
輝利哉様の目はばっちり開いていて眠れないらしい様子はわかる。
さっきまで寝ててまだ眠気が来ないのだろう。
「そうですねぇ……」
私は少し考え
「あ、眠れるように何かお話でもしてあげましょうか?」
「え?」
「私も寝付けない時はよく母が枕元でお話を聞かせてくれたんですよ」
「なるほど……」
私の提案に輝利哉様は頷き
「じゃあ…お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろんです」
頷いた私は、さて何の話をしようか、と考え――
「……輝利哉様は『飛行機』というものを知っていますか?」
「……確か米国で今作られている空を飛べる乗り物ですよね?」
「そうです。今からするのはそんな飛行機がもっと万人から親しまれるようになった世界の物語です」
そして、私はとある物語を語り始める
~数十分後~
「――フィオを抱えたポルコはジーナの飛行艇に彼女を押し込み、ジーナへ言いました。
『ジーナ、こいつをカタギの世界に戻してやってくれ』
『……ズルい人、いつもそうするのね』
『……すまねぇ、行ってくれ』
ジーナの言葉にポルコは一歩引きながら呟きます。その様子を見つめたジーナはふっと微笑み操縦士に視線を向け言います。
『出して』
彼女の言葉でエンジンが動き出し、プロペラが回り、飛行艇はゆっくりと進み始めます。
そんな飛行艇から体を起こしたフィオは身を乗り出し、ポルコに顔を寄せるとそっとくちづけをしました。
突然のことに呆けるポルコは後ろから迫る飛行艇の翼をよけられず頭をぶつけて海に倒れてしまいました。
そんなポルコに構わずジーナとフィオを乗せた飛行艇は青空へと飛び去って行きます。
海面には身を乗り出していたフィオが落とした帽子が浮かんでいて、起き上がったポルコはそっとそれを手に取り、自身の頭にのせて飛んでいく飛行艇を眺めます。そんな彼の下にカーチスが歩み寄り並んで飛行艇を見送ります。と、そんな彼らの下に向かってくるプロペラとエンジンの音が聞こえてきました。
見れば、ジーナたちの飛び去った方向とは逆の方向からたくさんの空軍所属の飛行艇たちが迫ってきていました。
『イタリア空軍のお出ましだ……』
『手伝うか?奴らを他所に引っ張って行くんだ』
ポルコの問いに頷こうと視線を向けたカーチスは
『あぁ!おめぇその顔!』
と、驚きの声をあげながらポルコを指差します。
『待てよおい!』
ポルコはそんなカーチスの追求から逃げるように自身の飛行艇へと歩いていきます。
『おい!顔見せろって!』
『お前の舟はそっちだろ!』
『ちょっとだけ!』 」
「…………」
「その後、イタリア空軍の出動は空振りに終わりフィオがミラノに帰る日が来ても、ポルコは姿を見せませんでした。
でも、その代わり、彼女はジーナととてもいい友達になりました。
それから何度も大きな戦争や動乱が起きましたが、ジーナとフィオの友情は続きました。
フィオがピッコロ社を継いだ後も、夏の休暇『ホテル・アドリアーノ』で過ごすのがフィオの大切な決まりです。
ジーナはますます綺麗になっていき、ホテルにはあの空賊などの古いなじみも通ってきます。
まだ大統領にはなっていないが映画俳優となったあのミスター・カーチスも時々「あのアドリア海での夏が懐かしい」と手紙をくれるそうだ。
ジーナの賭けがどうなったかは……彼女とフィオだけの秘密……」
そこまで言ったところで私は微笑み
「おしまい」
そう締めくくった。
「どうです?眠くなりました?」
「……面白くて聞き入ってしまいました」
「あちゃぁ…話の選択ミスりましたね」
輝利哉様の答えに私は苦笑いを浮かべる。
「まあ楽しんでいただけたならよかったですが、少し話過ぎましたね。そろそろ本当に休みましょう」
「はい……」
頷く輝利哉様に微笑みかけ、私はそっと額を撫でる。
「大丈夫です。寝付くまでここにいますから。体調が悪いときは不安になりますよね?」
「……ありがとうございます」
輝利哉様はふっと表情を和らげる。
「……あの」
「はいはい?」
「……お話、とても面白かったです」
「フフ、そうですか、それはよかった」
輝利哉様の言葉に私は微笑む。
「あの、またお話聞きたいです」
「ええ、いいですよ。そうですね……今度は神様のお供え物の料理を食べてしまって豚にされた両親を元に戻すために神様の来る湯屋で働くことになった少女のお話、とかどうですか?」
「それも面白そうですね……」
「ええ。他にもいくつかお話はありますので、また今度お聞かせしますよ。なので今は……」
「はい…ちゃんと寝ます……」
「よろしい」
頷く輝利哉様に私は再び頭を撫で、布団を首までかけて直す。
「おやすみなさい、輝利哉様」
「おやすみなさい……」
その後、輝利哉様はすぐに規則正しい寝息を立て始めたのだった。
○水柱の継子は心配する
冨岡の屋敷の庭にて、木刀を振るう真菰。
「フッ!フッ!フッ!」
「…………」
そんな彼女を少し離れた位置から眺めていた義勇は
「……そこまでだ」
「はいッ!」
義勇の言葉に構えを解き、木刀を下げた真菰は義勇へ視線を向ける。
「……今日の指導はここまでだ」
「えッ……?」
義勇の言葉に真菰は茫然と呟くように問う。しかし、義勇は何も言わずに彼女に背を向ける。
「ま、待ってください!」
そんな義勇にまこもは慌てて駆け寄る。
「あ、あの…どうして……?」
「…………」
真菰の視線を受けた義勇は数秒黙り
「……剣に身が入っていない。何か他に気にかかることがあるんだろう?」
「ッ!」
義勇の指摘に真菰は息をのみ
「……はい」
ゆっくりと頷いた。
「………実はどうしても気になっていることがあるんです」
「…………」
真菰の言葉に義勇は黙って、しかし、先を促すように視線を向ける。
「……あの、冨岡さんは」
その視線を受け、真菰は少し躊躇う様子を見せたが、意を決したように顔を上げる。
「冨岡さんは、風柱の不死川実弥様とは仲がいいんでしょうか?」
「不死川と……?」
真菰の問いに義勇は首を傾げるが
「不死川とは…あまり仲は良くない……」
「やっぱり……」
「俺はあいつと折り合いが悪いらしい……」
頷きながら義勇は答える。
「……あの」
そんな義勇に真菰は少し言い淀みながら口を開く。
「……こんなこと、継子である私が口をはさむのは差し出がましいのですが」
「……ああ」
「……その」
真菰はそこで意を決したように頷き
「あ、あの!冨岡さんにはしのぶさんがいるのはわかっています!でも、不死川様のことも邪険にはしないであげてほしいんです!受け入れてあげてとは言いませんから、せめて拒絶だけは……お願いします!」
「???」
真剣な表情で頭を下げる真菰に、しかし、義勇はその言葉のほとんどが意味が分からなかった。
「不死川様もただ自分の気持ちに戸惑っているだけなんだと思います!だから、多少きついことを言われても嫌わないであげてください!」
「あ、ああ……?」
よくわからないまま、真菰の熱心な様子に義勇は思わず頷く。
「きっと、不死川様は冨岡さんと仲良くしたいはずですから、不死川様が自分の気持ちに折り合いをつけられるまで、待ってあげて下さい」
「……ああ、俺も不死川とは出来るなら仲良くしたいと思っている」
「そうですか!冨岡さんもそう思っていただいているならきっと大丈夫です!きっとお二人なら親友になれますよ!」
「……そうか」
「はい!」
嬉しそうに頷く真菰に首を傾げる義勇は
「……気にしていたのはそのことか?」
「はい!おかげですっきりしました!」
「そうか……」
「はい!なのでもう大丈夫です!指導の続き、お願いします!」
そう元気に行った真菰の言葉に頷き、指導を再開したのだった。
義勇は知らなかった、真菰が『妖滅の刃』の愛読者だということを……。
大正コソコソ話①
実弥に対してヒソヒソと話していた人達は九割が『妖滅の刃』の愛読者で残り一割が柱たちの想像していたドスケベな胸元について気にしていた人たちらしいですよ。
大正コソコソ話②
看病をしたその後、楓子がお屋敷を訪ねる度に輝利哉は自分から会いに行くようになりました。その様子をお館様含む産屋敷の面々は微笑ましく見守っています。
大正コソコソ話③
その後前よりも実弥に話しかけるようになった義勇ですが相変わらずの言葉足らずで毎度毎度実弥を怒らせています。