恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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すみません、思ったよりも遅くなってしましました。
本当は昨日の夜にでもあげるつもりだったんですが……
そんなわけでこの話より正式に原作と合流です!





恋17 恋柱の継子と藤襲山

 そこは一年中藤の花が咲き乱れる不思議な山。

 月の光に照らし出され、幻想的な装いを見せる。

 しかし、この山はこの幻想的な景色の裏に恐ろしい顔を隠し持っている。

 

 

 

 鬼殺隊――それを率いる産屋敷家が所有するこの『藤襲山』は付近に住む人間は決して近づかない。関係者以外の立ち入りを禁じているからだ。

 その理由はこの山には無数の鬼が放たれているからだ。鬼の嫌う藤の花で麓を囲われたこの山は鬼を決して外に出さない牢獄なのだ。

 そして、一年に一度、この山を使って鬼殺隊入隊のための最終選別が行われる。

 そして今年の最終選別が行われるのが今夜なのである。

 最終選別の内容は今日より七日間、この山で生き残ること。

 そして、私がこうしてやってきたのはそんな最終選別での監督係の一人として参加者の生命を守るのだ。

 ちなみに私たち監督係がいることは参加者には一応は伏せられている。

 助けてもらえると思って頼りきりになられては試験にならない。なので私たちは本当に危なくならなければ助けに入らない。まあ、昨年に監督係に助けられて再挑戦している子もいるのでそう言う子は私たちのような監督係がいることはわかっているが……。

 最終選別が開始され参加者が森に入る前に私たちは山に入り身を隠しておく。近くには藤の花の家紋を掲げる協力関係にあるお屋敷もあるので、私たちは七日間を交代で休憩を回しながら参加者を見守る。守る私たちが疲労で動けなくなっては監督係としている意味がないのでその辺はしっかりと休めるときに休む。今日から七日間、長丁場になる。

 

 

 

 正面の石階段から行くともうすでに集まり始めている参加者に遭遇するので私を含む監督役は隠れた別の出入り口から入山する。

 美しい藤の花を眺めながら歩いていると、目の前を歩く一人の人物が見える。

 

「あ、村田さぁん!」

 

「ん?――げッ!?お、大好!?」

 

「げッてなんですか、げッて!こんな可愛い後輩を捕まえて失礼ですね!」

 

 目の前を歩く男の人――村田さんに声をかければ、振り返った村田さんは嫌そうに顔を顰める。そんな村田さんに私は口をとがらせて不満を言う。

 

「いや、確かにお前の方が後輩だけど階級的にも役職的にも技量的にも戦績的にも、いろんな面でお前の方が上過ぎて……正直やりづらいんだよ……」

 

「会うたびに言ってますね。もう割り切ってくださいよ。年上から敬われるの私苦手なんですから」

 

「いや知ってるんだが、どうも……」

 

「そんなこと気にしてたら将来禿げますよ」

 

「や、やめろよ!」

 

 私の言葉に村田さんは慌てた様子で頭を手で押さえる。

 村田さんの髪は手入れにこだわっているのだろう、ものすごくさらさらヘアーだ。

ただ私はこの人は絶対将来禿げると確信している。この人絶対ストレスが毛根に来るタイプだ。

 

「まあ安心してください。将来村田さんが禿げる用にカツラ作っておいてあげますから」

 

「禿げる前提で話をすんなぁ!」

 

 肩を叩いて私が言うと村田さんがツッコむ。

 

「お前ほんと初めて会ったころから変わらねぇな……」

 

「変わらない私も魅力的でしょ?」

 

「そう言うこと言えるのホント変わってねぇ」

 

 私の言葉に村田さんはため息をつく。

 村田さんと私は実は長い付き合いだ。私が入隊したての頃に合同で任務にあたったことがあるのだ。それ以来何度か任務を一緒にしたことがある。この人は面倒見がいいし優しい、前世にも似たような先輩がいたのでなんだか懐かしくなってしまってついちょっかいをかけてしまう。あの先輩元気かなぁ~――あ、まだ生まれてないわ(笑)

 

「ま、これから七日間一緒にがんばりましょうね!」

 

「ああ」

 

 頷く村田さんと共に私は山道を歩いて行った。

 

 

 ○

 

 

 

「キヒャヒャヒャァッ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 下卑た笑みで襲い掛かる鬼に緑の羽織の少年は座り込んで叫ぶ。

 そんな少年の目の前に駆け付けた私は飛び込み――

 

「シッ!」

 

「かッ!?」

 

 日輪刀を振るう。私の振るった刀に切られた鬼の首が宙を舞う。

 

「大丈夫?怪我無い?」

 

「あ、あぁ…は、はい……」

 

 鞘に日輪刀を収めながら少年を振り返って見れば、少年はへたり込んだまま呆けた顔で私を見上げている。

 

「立てる?」

 

「は、はい……」

 

 少年に手を差し出すと、少年は恐る恐る私の手を取って立ち上がる。

 私は近くに落ちていた日輪刀――おそらく先ほどの鬼との戦いで弾かれ取り落としたのだろうそれを拾って少年に渡す。

 

「私は今回の最終選別に監督役として参加していた隊士、大好楓子って言うの」

 

「か、監督役……?」

 

「そう。今みたいに殺されそうになった参加者を助けるために私以外にも何人かこの山にいるんだ」

 

「そ、そうだったんですか……」

 

 私の言葉に少年は合点が言ったように頷く。

 

「それでね、悪いんだけど君、失格ね」

 

「え……?」

 

 私の言葉に少年は呆けたように口を開ける。

 

「ごめんね、決まりなんだ。監督係に助けに入られた参加者はその時点で失格。すぐに山を下りるってね」

 

「で、でも俺はまだ――」

 

「うん、まだ頑張りたい気持ちはわかるよ?でもね、君、これが実際の任務中だったら死んでたんだよ?」

 

「ッ!」

 

 食い下がる少年に言うと、私の言葉に少年は息を呑む。

 

「ついておいで。安全に下りれるように案内するから」

 

「う、うぅ……」

 

 優しく微笑む私に少年は目に涙を浮かべ悲し気に嗚咽を漏らす。

 

「お、俺、鬼殺隊に入って…家族殺した鬼を倒すって…誓ったのに……」

 

「……そうだよね、悔しいよね」

 

 ボロボロと涙を流す少年の頭を優しく撫でて私は視線を合わせて膝を曲げる。

 

「君がまだ戦う気があるんなら、もう一年頑張ってごらん?最終選別は一年後にまたあるんだから、それまでにもっと強くなるんだ」

 

「で、でも…俺……」

 

「大丈夫、君はまだ生きてるんだ。生きてさえいればいくらでもできることはある。諦めたら、そこで試合終了だよ?」

 

「……はい」

 

 私の言葉に少年は頷く。

 

「今はゆっくり休みなよ。ゆっくり休んでこれからのこと考えればいいから……」

 

 頷きながら涙を流す少年を連れて、私は安全な場所まで連れて行く、そこに控えていた「隠」に引き継ぎ、私は山に戻る。

 これが監督係の仕事だ。私たちが助けに入り失格を言い渡されたこの反応は大きく分けて二つ。

一つは今の少年のように悔しがる子。こういう子は大抵もう一年頑張って修行して次の最終選別に参加するか、「隠」に入って別の方向から自分にできることを模索する場合がほとんどだ。

 そして、もう一つは安堵したように力の抜けてしまう子。こういう子は大抵刀を置いてしまう。鬼と戦うこと、命のやり取りをするという恐怖に負けて心が折れてしまったわけだ。

 心が折れてしまった子が残念ではあるが、しょうがない。みんながみんな戦う意思を持ち続けられるわけじゃない。戦い続けられるのは本当にごくごく一部なのだ。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「ッ!」

 

 近くでまた悲鳴が聞こえた。私はすぐさま駆ける。

 最終選別はまだ、折り返しの四日目を迎えたばかりなのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七日間の最終選別を終え、空が白んでくる中、私は身を隠しながら最終選別を終えた面々が見える藤の花の影に立つ。

 と、近くに村田さんがやってきた。

 

「お疲れさん。ほれ、お前も食っとけ」

 

「あぁ、どうもすみません」

 

 と、村田さんの差し出す竹の皮に包まれたおにぎりと水筒を受け取る。

 

「今年は四人か、まあこんなもんだよな」

 

「そうですねぇ」

 

 村田さんの言葉に頷きながら私は視線を向ける。

 私の視線の先には最終選別を終えた四人の少年少女たちが立っていた。その顔触れは原作通りのメンバーだった。

 カナヲちゃん、善逸に玄弥、そして――炭治郎の四人だ。

 炭治郎は原作通り、浮雲を思わせる水色の羽織に耳にはトレードマークの花札のような耳飾りをつけている。唯一違うのは頭に「厄除の面」がまだつけられていることだろう。まあこれは原作で本来なら戦いその途中で壊れる手鬼との戦いが無かったからだろう。何せ手鬼は私とまこちゃんで倒してしまっているのだから。

 他の面々も原作通りの格好と様子だ。

 おにぎりをパクつきながら訊く。

 

「今年は死者は出ず、ですかね?」

 

「ああ、さっき隠の人たちに確認した。あの生き残った五人以外はみんな山を下りたとよ」

 

「五人?あそこには四人しかいませんけど?」

 

「なんか一番に山に入って一番に山から出てきてさっさと帰ってったやつがいるらしい」

 

「なるほど……」

 

 私の問いに頷いた村田さんの言葉に私はホッと息をつく。と、同時にそのここにいないもう一人の合格者である猪頭の彼のことを思い出す。と――

 

「「おかえりなさいませ」」

 

 炭治郎たち四人の前におかっぱ頭の二人の子どもが現れる。それはお館様のご子息ご息女の輝利哉くんと遠目だから分かりづらいが多分あれはかなたちゃんかと思われる。原作読んでるときは識別できなかったが、二年以上の期間を二週間に一回顔を合わせてたらいつの間にか姉妹たち四人も見分けがつくようになった。今みたいに遠目だと若干わかりづらいがおそらく間違いないだろう。

 そう言えば前世で最初マンガ読んだときはまさかこの二人がお館様の子どもで、しかも片方は次期当主とは思わなかったなぁ……

 

「今はあの子たちがやってるんだな」

 

「俺の時はあの子たちそっくりの大人の女の人だったけど」

 

「あぁ、それあまね様ですね、お館様の奥様の。ちなみにあの子たちはお館様のお子さんですよ」

 

「………ファッ!?」

 

 私の言葉に村田さんが素っ頓狂な声を上げる。

 

「ちなみにお館様のお子さんは五つ子です」

 

「……はぁ!?てことはあれと同じ顔があと三人いるのか!?」

 

「そうなりますね」

 

「すげぇな……と言うかお前なんでそんなこと知ってんだ?」

 

「いやぁ、私その五つ子さんの教育に関わってるもんで。利発で賢いお子さんたちですよ」

 

「………マジで?」

 

「マジマジ。マージ・マジ・マジデ」

 

 呆ける村田さんに私は頷く。

 

「お、お前ほんとすげぇ出世してんじゃん!何それ!俺の方が先輩なのになんなんだよ!?お前このままいくと柱とかになるんじゃないの!?」

 

「いやいやそれはないでしょ。柱って今九人揃ってて空席ありませんし。私まだ階級『乙』ですから。情報戦略部の仕事とか薬の開発とかばっかりしてて他の人より任務出る頻度減らしてもらってるんですから『甲』になっても柱になる条件満たせるかどうか……」

 

 と、驚いている村田さんに頷きながら答えていた私はバサバサと言う羽の羽ばたく音に視線を戻す。

 ちょうど四人に鎹鴉が与えられたところのようで四人の元にはそれぞれ一羽ずつ鴉が――

 

「なあおい。一匹雀が混じってないか?気のせいか?実はあれで鴉なのか?」

 

「いえ、あれ完全に雀です。鎹雀ですね、珍しいですよ」

 

「いや、あれちゃんと役割果たせるのか?」

 

「……さぁ?」

 

二人で首をかしげていると、そんな時――

 

「ふざけんじゃねぇ!」

 

 叫び声が響いた。

 その声に私と村田さんが視線を向けると、そこでは顔に傷のあるモヒカン頭の少年――不死川玄弥が腕に止まっていた鴉を振り払い、鋭い視線で輝利哉くん達を睨んでいた。あ、ヤベ、完全に〝これ〟忘れてた。

 

「どうでもいいんだよ、鴉なんて!!」

 

 叫びながらずんずんと輝利哉くん達へ歩みを進めていく玄弥。

 

「おい、ちょっとあれ危なくねぇか?どうにか――」

 

「村田さんこれちょっとお願いします」

 

「え――うわぁっと!?」

 

 村田さんの心配げな言葉を遮って私は持っていた水筒とおにぎりを村田さんに放る。

 そのまま村田さんがちゃんとキャッチできたか確認する前に

 

「シッ!」

 

 短い呼吸と共に全力で地面を蹴った。

 そのまま一息に駆け寄り、今まさにかなたちゃんの髪を掴もうと手を伸ばしていた手を左手で掴み

 

「いでェッ!?」

 

 後ろへと捻った。玄弥は突然目の前に現れた私に困惑すると共に捻られたことで腕に走った痛みで顔を顰める。が、そこで私は終わらず、そのまま玄弥の足を払って地面に叩きつけた。

 

「ガハッ!?」

 

 苦悶の表情で吐息を漏らす玄弥を押さえつけて見下ろしながら私はスッと玄弥に視線を合わせる。

 

「君の事情は知らんけど、早く鬼と戦いたいって気持ちはわかるよ。だけど一回落ち着こうか」

 

「な、何だテメェは!?」

 

「君の先輩だよ」

 

 叫ぶ玄弥に私は答える。

 

「血の気が多いことを悪いとは言わない。でも、一回深呼吸して落ち着きな」

 

「て、テメェ離せや!」

 

「まあ聞きなよ」

 

「うるせぇ!いいから離――」

 

「聞けよ」

 

「ガアァッ!?」

 

 あまりにしつこく叫ぶので少しイラッと来た私は掴んだままだった玄弥の手を捻る。

 

「いいかい?君は運がいい。今回の最終選別にいたのが私で良かったね」

 

「は、はぁ!?テメェ何言って――」

 

「今回の監督係に柱がいたら、君死んでたよ」

 

「ッ!?」

 

 私の言葉に玄弥は息を呑む。

 

「いいかい?仮にもこれは鬼殺隊に入隊するための最後の試験だよ?つまりそれを進行している彼女たちもそれなりの地位にいると思った方がいい。というかそのくらいは考え至りなさい」

 

 私は玄弥に問いかける。

 

「そんな彼女たちに、君は今何をしようとした?」

 

「ッ!」

 

 私の問いに玄弥が息を呑む。

 

「いいかい?君はこの最終選別を経て、『鬼殺隊』という組織に所属することになったんだ。組織と言う人の集まる団体に身を置くならその辺は気を付けないといつか痛い目見るよ」

 

「…………」

 

 私の言葉に玄弥は押し黙り

 

「そ、その……す、すみませんでした」

 

 小声で呟くように言った。

 

「ん、ちゃんと謝れるのはえらいけど、謝る相手が違うよね?」

 

「……は、はい」

 

 私の言葉に玄弥が頷いたのを確認し、私は彼を離す。

 解放された玄弥はゆっくりと立ち上がり恐る恐るかなたちゃんに歩み寄り

 

「そ、その……悪かったよ」

 

「いえ、気にしていませんので」

 

 頭を下げる玄弥にかなたは微笑みながら頷く。

 

「いいかい?今日のところは注意だけで済ますけど、言動にはもう少し気を付けようね?でないと――」

 

 言いながら私は玄弥の肩を掴んでそっと耳元に口を寄せ

 

「次はねぇと思えよ」

 

「う、うす!肝に銘じます!」

 

 私の言葉に玄弥はビシッと背筋を伸ばしてブンブンと顔に脂汗を浮かべて頷く。

 

「ん、いい返事だね」

 

 そんな彼の姿に私はニッコリ微笑みながらポンポンと肩を叩き――

 

「じゃ、進行を妨げてしまってすみません!」

 

「いえ、ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

 私の言葉に輝利哉くんとかなたちゃんがお辞儀する。

 

「それじゃ、進行役頑張ってくださいね」

 

 言いながら私は二人に手を振り元の場所に戻っていった。

 

「お、お前すごいな……」

 

 戻った私を出迎えた村田さんが感心したような驚いたような顔で言う。

 

「ま、ああいう人にはその場でちゃんと言ってあげないと。私たちはあの子たちの先輩ですから。まあ恐らく私はあの子たちとそんな歳変わらないでしょうけど。せいぜい一つ二つの差ですね」

 

 頷きながら村田さんがキャッチしてくれていたおにぎりと水筒を受け取る。

 

「先輩なら憎まれても指南しないと。後輩がよそで大ポカやらかしたらそれが一番可哀相ですから。それが私たちの責任ですよ」

 

「…………」

 

 私の言葉に村田さんが呆けた顔をする。

 

「……なんですか?」

 

「……お前、実は歳ごまかしてないか?本当は俺より年上だろ?」

 

「それは私が老けて見えるってことですか?よろしい、ならば戦争だ」

 

「違う!そうじゃなくて!なんか今のお前の言葉、すごく重みがあったというか!十六やそこらのやつが言えるような台詞じゃないだろ!」

 

「あぁ、そう言う……」

 

 村田さんの言葉に私は納得して頷く。

 

「ま、今のは人からの受け売りですよ」

 

「そう言うことか……」

 

「そういうことですよ」

 

 頷きながら再びおにぎりをパクつくのだった。

 

 

 ○

 

 

 その後、鉱石選びや制服の採寸を終えた面々は解散となり

 

「君、ちょっといいかい?」

 

「はい?」

 

 私は帰ろうとする面々の下に行き、炭治郎に声をかけた。

 

「あ、あなたはさっきの!」

 

「うん、さっきは騒がせてごめんねぇ~。そっちの君もちょっときつめに捻りすぎたわ!」

 

「い、いえ……」

 

 炭治郎の言葉に頷きながら後ろにいた玄弥に言うと、玄弥は体をびくりと震わせて頷く。

 

「でね、君にちょっと訊きたいことがあるんだけど」

 

「??? なんでしょうか?」

 

 私の言葉に炭治郎が首を傾げる。

 

「そのお面、『厄除の面』だよね?君、鱗滝さんやまこちゃ――真菰ちゃんの一門の子かな?」

 

「鱗滝さんたちのお知合いですか!」

 

 と、私の問いに炭治郎はパッと顔をほころばせる。

 

「私とまこちゃんは同期なの。ちょうど五年前に今の君たちみたいに最終選別を受けてね」

 

「と言うことは…もしかしてあなたが『ふーちゃん』さんですか!?」

 

「あら、知ってたの?」

 

「はい!真菰さんから話聞いてます!とっても頼りになる大事な親友だって!」

 

「おやおやぁ?そいつは照れますなぁ~」

 

 炭治郎の言葉に私は微笑みながら頬を掻き

 

「私、大好楓子」

 

「俺は竈門炭治郎です!よろしくお願いします!」

 

「うん、よろしくね~」

 

 元気にいう炭治郎に頷きながら

 

「そっかそっか。最近まこちゃんがよく家を留守にしてたり、鱗滝さんのところよく訪ねてると思ったら君の修業をつけてたのね。教えてくれればいいのに」

 

 笑いながら言っていると、ちょうどその時そばにカナヲがやってくる。

 

「あ、ちょうどいいや――カナヲちゃん!」

 

「……はい?」

 

 私が呼び止めると一拍置いてカナヲちゃんが足を止めて歩み寄ってくる。

 

「炭治郎くん、この子は栗花落カナヲちゃん。この子も私の知り合いでね。せっかく同期になったしよければ仲良くしてあげて!」

 

「はい!もちろんです!」

 

 私の言葉に頷いた炭治郎はカナヲに視線を向け

 

「俺は竈門炭治郎!よろしくな、カナヲ!」

 

「……よろしく」

 

 ニッコリ微笑む炭治郎にカナヲもいつもの感情の見えない笑みで頷く。

 

「お~い、そこの血の気の多い君も」

 

「………あ、俺っすか!?」

 

 と、後ろに立っていた玄弥に呼びかけ

 

「あと、そこのカッコいい金髪の君も」

 

「ッ!? そ、そ、それって俺のことですかぁぁッ!!?」

 

 さらに後ろで所在なさげにこっちの様子をちらちらと見ていた善逸にも声をかける。

 二人がやってきたところで

 

「君たち、名前は?」

 

「……不死川玄弥です」

 

「我妻善逸です!!先輩俺の髪ってホントにカッコいいですかッ!!?」

 

「うん、ロックでイカしてると思うよ~」

 

「ろ、ろっく?いかしてる?なんかよくわからないけど褒められてますよね!?」

 

「うん、褒めてる褒めてる」

 

「キャッホ~イ!!!」

 

 頷いた私に善逸は満面の笑みで飛び上がる。

 

「アハハハ、この子面白れぇなぁ」

 

 私はそんな光景を見ながら笑い

 

「四人とも、最終選別突破おめでとう」

 

 四人の顔を見渡して言う。

 

「これで君たちは晴れて鬼殺隊の隊士になったわけだし、刀ができたらすぐに任務にも出るようになる。鬼殺隊の隊士として活動してたら君ら同期で顔を合わせることもあると思うからさ、同期で仲良くやってね」

 

「「はい!」」

 

「……うっす」

 

「…………」

 

 私の言葉に炭治郎は力強く、善逸はニコニコと笑顔で頷き、玄弥も遅れて頷き、カナヲは返事をしないが一応頷く。

 

「私もみんなより何年か早く鬼殺隊に入ったし、何かと力になれることもあると思う。任務で一緒になることもあるかもだから、その時はよろしくね」

 

「「はい!」」

 

「……うっす」

 

「…………」

 

 再び四人が先程と同じように頷く。

 

「ま、みんな疲れてるだろうし話はこの辺にしとくね。刀届くまではゆっくりできるだろうから、その間に英気を養って、任務頑張って!」

 

 言いながら私は背負っていたカバンを下ろし

 

「はい!疲労回復には甘いもの!さつま芋でお菓子作ったからよかったら食べてって!」

 

「ええ!いいんですか!?ありがとうございます!」

 

「そ、それ俺らもいいんですか!?」

 

 カバンの中のお重を取り出す私に炭治郎が嬉しそうに微笑み、善逸が自分と玄弥を交互に指差して訊く。

 

「もちのろんよ!何人残るかわからなかったからたくさん作ったからたくさん食べてくれなきゃ困る!」

 

「ウヒョォォォォ!!美人の手料理味わえるなんてヤッベ最終選別頑張ってよかったァァァ!!!」

 

「……俺は、別に」

 

「ハァァッ!?お前馬鹿かぁぁ!!?女の人の手料理をタダで食える機会なんてそうそうねぇんだからありがたく食っとけよなぁ!!」

 

「お、おう……」

 

 帰ろうとした玄弥の肩を善逸が掴んで叫び、その圧に玄弥がたじろぐ。

 そんな光景に笑いながら私はカバンから敷物を取り出して広げ――

 

「あ、ごめん。ちょっとこれ広げておいてくれる?」

 

「あ、はい」

 

「おぉ任せくださぁぁい!」

 

 敷物を四人に任せ私は

 

「輝利哉くん!かなたちゃん!」

 

 視界の端に見えた二人の下に駆け寄る。

 

「あ、楓子さん、監督役お疲れ様でした」

 

「ううん。輝利哉くんたちの方こそお疲れ様でした」

 

「楓子さん、先程はありがとうございました」

 

「いえいえ、どうってことありませんよ」

 

 かなたちゃんの言葉に頷きながらカバンに手を入れ

 

「はい、二人にもどうぞ」

 

「え……」

 

「いいんですか……?」

 

「どうぞどうぞ。私の手作りだから大したものじゃないですけど」

 

「そ、そんなことないです!とっても嬉しいです!」

 

 笑いながら言う私に輝利哉くんは真剣顔で言う。

 

「そうですか?そう言ってもらえると嬉しいですね」

 

 そんな輝利哉くんに微笑み

 

「あ、ただ――」

 

 私は言いながらそっと二人に顔を寄せ

 

「これは進行役頑張った二人の分ですから。ひなきちゃんたち他の三人の分はまた今度ってことで、これは三人だけの秘密ですよ?」

 

 言いながら右手の人差し指を立てて口に当て「し~」とジェスチャーしてからウィンクする。

 

「わかりました」

 

「は、はい……」

 

「うん、よろしくお願いしますね」

 

 笑顔で頷くかなたちゃんとぎこちなく頷く輝利哉くんに頷き

 

「というか、輝利哉くん大丈夫ですか?顔赤いですよ?」

 

「ッ!? い、いえ、大丈夫です!」

 

「そうですか?無理しないでくださいね」

 

 私の問いに力いっぱい頷いた輝利哉くんを気にかけながら

 

「それじゃあ、お引止めしてすみません。早く帰ってゆっくりお休みください」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

「ふ、楓子さん!お菓子、ありがとうございます!」

 

「いえいえ。輝利哉くん、ホント無理しないでくださいね?」

 

「は、はい!」

 

 頷いた輝利哉くんに一応は納得し、私は二人に手を振りながら炭治郎達の下に戻る。

 

「ごめんね、お待たせ~!」

 

 私の置いて行ったお重を中心に敷物の上に座る四人に私は言いながら自分自身も座り

 

「さ、食べよっか」

 

「はい!」

 

「待ってましたぁ~!」

 

 頷く炭治郎と、嬉し気に声を上げる善逸。

 玄弥とカナヲは一応頷いていた。

 

「さ、それでは、いただきま~す!」

 

「「いただきま~す!」」

 

「い、いただきます……」

 

「…………」

 

 元気に言う炭治郎と善逸、控え目に言う玄弥はそのままお重の中に並ぶ私特製のスイートポテトに箸を伸ばす。

 しかし、カナヲは箸を持ったまま座ったままだ。

 

「カナヲ、食べていいんだよ」

 

「……(コクリ)」

 

 私が声をかけたところでやっとカナヲも箸を伸ばす。

 

「うわっうんめぇぇぇぇ!!」

 

 と、善逸が嬉しそうに声を上げる。

 

「やべぇ、ちゃんと旨いのに美人が作ったって思うとさらに何十倍も美味しく感じる!」

 

「おいおい、美人なんて言われたら照れるじゃないか~」

 

 善逸の言葉に私は笑いながら言う。

 

「楓子さん、これ本当においしいです!ありがとうございます!」

 

「いいよいいよ。疲れたろうからたくさん食べて」

 

「はい!」

 

 元気に頷く炭治郎を見て笑いながら私は玄弥に視線を向け

 

「どう?美味しい?」

 

「……うっす」

 

「そう。それはよかった」

 

 私の問いに控えめに頷く玄弥に微笑み

 

「カナヲは?ときどき蝶屋敷にも持っていくし食べたことあると思うけど、美味しいかな?」

 

「…………」

 

「そいつはよかった」

 

「え、今その子何も言ってないし首も振ってませんでしたけど……」

 

「細かいことは気にしない!さ、私もた~べよ!」

 

 ツッコむ善逸に私は笑って聞き流して、自分もスイートポテトに箸を伸ばした。

 その後、三段の重箱に入っていたスイートポテトはすぐになくなり、四人が帰路へと就くのを私は見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 こうして、私は炭治郎達と出会った。

 ここから、本当の意味でのこの「鬼滅の刃」の世界での戦いは幕を開けるのだ。

 

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