鬼滅の刃、厳密にはまだ興行収入一位にはなってないそうですね。
なんでも「千と千尋の神隠し」の記録にリバイバル上映の記録が8億円ほど加算されたんだとか……
まあそれもあと数日のうちに抜かしそうですね(笑)
そんなわけで最新話です!
「――なるほど、つまり禰豆子は鬼になってすぐに昏睡し、その間一度も人を食べていない。加えてその間に暗示を用いて、禰豆子には人間が守るべき家族に見えるようにしてある…と?」
「ああ、その通りだ」
楓子の問いに囲炉裏を挟んで対面に座る鱗滝が頷く。
産屋敷の屋敷にてお館様より炭治郎と鬼となった妹・禰豆子の調査をすることになった楓子は現在手始めに狭霧山に来てお館様へ手紙を送った本人である鱗滝左近次への聞き取りをするために会いに来ていた。
「その暗示、どのくらい確実性のあるものなんですか?」
「絶対の確証はない。あくまでも気休め程度だ。しかし、少なくとも炭治郎が最終選別に行って帰ってくる間、わしは禰豆子から襲われることはなかった」
「なるほど……」
フムフムと頷きながら楓子はメモを取る。
「……やはり、禰豆子の存在は受け入れがたいのだな」
と、そこで鱗滝は呟くように言う。
「この1000年の時間の中で人を襲わない鬼の存在など前代未聞だ。鬼とは人を喰らい害す存在だ。そしてそれと戦う鬼殺隊の鬼への憎悪も嫌悪も1000年分積み重ねてきたもの……そう簡単に例外など受け入れられるものではないか……」
「…………」
鱗滝の言葉を黙って聞いていた楓子は
「一つだけ訂正を」
そっと手を挙げて言う。
「私がこうして派遣されたのは、禰豆子という存在の実態を明確にするためです。しかし、それは彼女という例外を鬼殺隊の中で認めさせるためです」
「それは……」
「信じてるんですよ、お館様も私も。食人の衝動に抗い、鬼舞辻無惨の呪縛すら撥ね退ける鬼がいるということを」
「…………」
楓子がにっこりと微笑んで言う言葉に鱗滝は押し黙る。その表情は身に着ける天狗の面によってう伺い知ることはできない。それでも――
「大好楓子君」
そっと絞り出すように口を開いた鱗滝はそっと頭を下げる。
「どうか、禰豆子が鬼殺隊に受け入れられるように、よろしく頼む」
「……ええ、お任せ下さい」
そんな鱗滝の言葉に楓子は優しく微笑みながら頷く。
「ただ、一つだけお願いしたいことがあります」
「なんだ?」
楓子の言葉に鱗滝が訊く。
「私が炭治郎くんと彼の妹について調査してること、まこちゃんには秘密にしてくれませんか?」
「それは構わんが……どうして秘密にするんだ?」
「……まこちゃん、この二年間炭治郎くん達のことをずっと黙っていました。これはきっと私を巻き込まないためだと思うんです」
「……そうだな」
「そんな私が別の方向から話を聞かされ、あまつさえ積極的に関わってきてる、なんて…まこちゃんにとっては不本意だと思うんです」
頷く鱗滝に楓子は苦笑いを浮かべる。
「なので、ちゃんと他の隊士達を納得させることができるだけの物証を用意しておきたいんですよ」
「……大好君」
「あともし私に黙っていた理由が巻き込まないためじゃなくて炭治郎くんの妹の存在を知った私が問答無用で罰すると思われてたとかだったら、私に初めから話してたらこんなに苦労せずに済んだんだぞって思い知らせてやりたいんですよ」
「……もしかして真菰が黙っていたことを怒っているのか?」
「いいえ?そんなこと?ありませんけど?」
鱗滝の問いに楓子はニコニコと笑みを浮かべて答えたのだった。
その晩、聞き取りによって遅くなったのもあり、近場に泊まれるような宿もないということで、鱗滝の住む小屋に泊まることになった楓子は鱗滝の用意した夕食を楽しんでから床に就いた。
床に就いたのだが――
「――おぉ!すっごい!ホントに真っ二つになってる!」
何となく寝付けなかった楓子は寝間着の浴衣姿のまま大岩の前に立っていた。
初めて来た時にはまだ炭治郎が来る前だったのでその時には丸いまま鎮座していたそれは、今楓子の目の前にあるそれは月の光に照らし出されて綺麗にスッパリと真っ二つになっていた。
「……炭治郎は会ったのかな、彼に?」
そっと大岩に触れて呟く楓子。
そのままそっと目を瞑り、額を大岩に押し当てる。
「…………」
しかし、待てど暮らせど目当ての声は聞こえてこない。
初めてこの山にやってきたときに聞こえた声を聞きたくて、楓子はあれから何度かこの山に来ていた。しかし、〝彼〟の声を聞くことはなかった。
それから炭治郎が山に来たであろう時期からは楓子も本格的に産屋敷家での家庭教師業や医療関係の研究などが重なったことで忙しくなっていたので、足を運ぶことができていなかった。
そして今日、実に二年ぶりに狭霧山にやって来たので、寝付けなかったこともあり物は試しにとこっそりとやって来たのだ。
「…………」
いったいどれほどそうしていただろうか?
やっぱり無理だなぁ、と諦めて目を開けようとした楓子は
「――おい」
「ッ!?」
その聞こえた声に息を飲んだ。
恐る恐る顔上げ、声のした方、大岩の上へと視線を向ける。そこには――
「まさかお前が炭治郎達のことについて調べに来るとはな」
月光の下、岩の上に腰掛け自分のことを見下ろす宍色の髪の人物がいた。
毘沙門亀甲の着物に白い羽織を着たその人物の顔は右頬に傷跡の模様のある狐の面で隠れている。しかし、その少年を楓子は知っていた。
「――ッ」
岩の上に立ち上がった少年はそのまま跳躍し楓子を飛び越え地面に降り立つ。
「あ、あなたは……!?」
「俺の名は錆兎。鱗滝さんの弟子だ」
驚きの表情で言う楓子に宍色の髪の少年――錆兎は答える。
「俺はずっと、この山で炭治郎の様子を見てきた。あいつは俺たち鱗滝一門の大事な一員だ。そんなあいつを、あいつの妹を、何より鱗滝さんを罰しようというなら、俺たちが許さない」
言いながら錆兎は左手で腰に下げた刀に手をかける。
「答えろ、お前は俺たちの敵か?味方か?鱗滝さん達を害する者か?」
「…………」
問いかける錆兎に、しかし、楓子はあんぐりと口を開け驚愕の表情のまま固まっている。
「……どうした?何を呆けている?何か言ったらどうだ?」
剣呑な雰囲気で問いかける錆兎。彼の問いかけに楓子はスッと息を吸い込み
「好き!!」
叫んだ。
「………すまん、よく聞こえなかったんだが…今なんて――」
「好き!!!」
困惑した様子の声音の錆兎の問いかけの途中で再び、さらに大きな声で叫ぶ楓子。
「………あぁ……」
二度聞いても突然の告白の意味が分からなかった錆兎は困惑のまま首を傾げ
「……お前、何言ってるんだ?」
心底訳が分からないという困惑した声音で聞く。
「あぁ~……好き、ホント好きぃ……声がいい。声からしてイケメン……いっぱいちゅきぃぃぃ……」
そんな錆兎の問いに答えず頬を赤く染めた楓子は蕩けた表情でだらしなくニヤける。
そんな楓子の様子に
「ッ!お前ふざけているのか!?」
錆兎は困惑したまま楓子に詰め寄り胸倉を掴んで大岩に追いやる。と――
「あッ♡」
楓子の口から艶めかしい吐息が漏れる。
「おいなんだその艶めかしい声は?」
「……あの、ひとつお願いがあるんですが」
錆兎の問いに答えないまま楓子は頬を赤く染めたままチラチラと錆兎へ視線を向け
「私、初めてなので優しくお願いします……」
「……は?」
「あ、でも強引にされるのもそれはそれでアリかも♡」
「いや、聞け」
「で、でも、やっぱりまずは接吻からでお願いします!やっぱり順番って大事だと思うんです!ヴァージンより先にまずはファーストキスを奪って――」
「聞け!!」
頬を赤らめたまま言う楓子に錆兎がツッコみを入れる。
「お前何を勘違いしてるんだ!?するわけないだろうが!」
「え…?でも……」
錆兎の言葉に楓子はそっと視線を下げて自分の胸元を見る。つられて錆兎も視線を下げる。
そこには錆兎によって胸倉を掴まれている楓子の胸元があった。掴まれたことで乱れたそこは白い肌と共に胸元のふくらみが覗いていた。
「ッ!」
その光景に錆兎は慌てて手を放す。
「え…ホントにしないんですか?」
「するわけないだろ、この状況で!」
「…………」
「なんでちょっと不服そうなんだお前……」
少し残念そうに口を尖らせる楓子に錆兎はため息をつく。
「お前本当になんなんだ……?」
「あなたの恋人です」
「そんなわけあるかッ!!」
楓子の言葉に錆兎が叫ぶ。
「あ、錆兎さんの方からばっかり質問してたんで、今度は私から聞いてもいいですか?」
「はぁ……なんだ?」
恐る恐ると言う様子でそっと手を挙げて訊く楓子に錆兎はため息混じりに促す。
「あ、あの…錆兎さん……あのですね……?」
と、顔を赤らめながら恥ずかしそうに口元に手を当てて錆兎をチラチラと見て
「子どもはッ…子どもは何人欲しい?」
意を決したように微笑みながら訊く。
「私は三人欲しいな。女の子がふたり、男の子がひとりね。名前は錆兎さんが決めてあげて。私ってあんまりネーミングセンスないから。えへへ、どっちに似てると思います?私と錆兎さんの子どもだったら、きっと男の子でも女の子でも可愛いですよね。それで庭付きの白い家に住んで、 大きな犬を飼うの。犬の名前くらいは私に決めさせてくださいね。錆兎さんは犬派?猫派? 私は断然犬派なんだけど、あ、でも、錆兎さんが猫の方が好きだっていうんなら、勿論猫を飼うことにしましょう。私、犬派は犬派だけれど動物ならなんでも好きだから。だけど一番好きなのは、勿論錆兎さんなんですよ。錆兎さんが私のことを一番好きなように。そうだ、錆兎さんってどんな食べ物が好きですか?どうしてそんなことを聞くのかって思うかもしれないけれど、やだ明日から私がずっと錆兎さんのお弁当を作ることになるんだから、ていうか明日から一生錆兎さんの口に入るものは全部私が作るんだから。やっぱり好みは把握しておきたいじゃないですか。好き嫌いはよくないけれど、でも喜んでほしいって気持ちも本当だもんね。最初くらいは錆兎さんの好きなメニューで揃えたいって思うんです。お礼なんていいんですよ彼女が彼氏のお弁当を作るなんて当たり前のことなんだから。でもひとつだけお願いがあるんです。私「あーん」ってするの、昔から憧れだったの。だから錆兎さん、明日のお昼には「あーん」ってさせてね。照れて逃げないでね。そんなことをされたら私傷ついちゃうもん。きっと立ち直れないわ。ショックで錆兎さんを殺しちゃうかも。なーんて。それでね錆兎さん、怒らないで聞いてほしいんだけど私、小学校に通ってた頃に気になる男の子がいたんです。ううん浮気とかじゃないのよ、錆兎さん以外に好きな男の子なんて一人もいないわ。ただ単にその子とは錆兎さんと出会う前に知り合ったというだけで、それに何もなかったんだから。今から思えばくだらない男だったわ。喋ったこともないし。喋らなくてもよかったと本当に思うわ。だけどやっぱりこういうことは最初にちゃんと言っておかないと誤解を招くかもしれないじゃない。そういうのってとても悲しいと思うわ。愛し合う二人が勘違いで喧嘩になっちゃうなんてのは小説の世界だけで十分よ。もっとも私と錆兎さんは絶対にその後仲直り出来るに決まってるけど、それでもね。錆兎さんはどう?今まで好きになった女の子とかいますか?いるわけないけども、でも気になった女の子くらいはいますよね。いてもいいんですよ。全然責めるつもりなんかないもん。確かにちょっとは嫌だけど我慢するよそれくらい。だってそれは私と出会う前の話ですもんね?私と出会っちゃった今となっては他の女子なんて錆兎さんからすればその辺の石ころと何も変わらないに決まってるんだし。錆兎さんを私なんかが独り占めしちゃうなんて他の女子に申し訳ない気もするんだけどそれは仕方ないよね。恋愛ってそういうものだもん。錆兎さんが私を選んでくれたんだからそれはもうそういう運命なのよ決まりごとなのよ。他の女の子のためにも私は幸せにならなくちゃいけないわ。うんでもあまり堅いことは言わず錆兎さんも少しくらいは他の女の子の相手をしてあげてもいいんですよ。だって可哀想だもんね私ばっかり幸せになったら。錆兎さんもそう思いますよね?」
「そうだな――いや、そうだなじゃない!」
一度頷いた錆兎はすぐに頭を振って慌てて叫ぶ。
楓子の長文の言葉に一瞬錆兎も判断がおかしくなったらしい。
「とりあえずいろいろツッコみたいところはあるが、大前提を一つお前に教えておくぞ」
大きくため息をついた錆兎は口を開き
「実は…俺はもう死んでるんだ」
「え?知ってますけど?」
「………は?」
錆兎の言葉に楓子はきょとんとした顔で首を傾げながら応える。そんな楓子の言葉に錆兎は呆けた声を漏らす。
「え…いや、ちょっと待て。知ってたのか!?俺が幽霊だと!?」
「はい」
「そんなあっさりと……いつから気付いてた?」
「いつって、最初から」
「最初から!?」
楓子の何でもなさそうに言う言葉に錆兎は驚きの声を上げる。
「だって、錆兎さんって言ったら冨岡様の同期で同じ鱗滝さんの弟子の方ですよね?でもあなたは最終選別の夜、あの鱗滝さんに恨みを持つ手鬼に殺されてるはずです。そんなあなたが目の前にいるってことはそれはもう幽霊でしょう?」
「なんで俺のことを知ってる?」
「まこちゃんから聞きました」
「……なるほどな」
「まぁまこちゃんから聞く前から知ってましたけど、知ってた理由は言っても信じてもらえないでしょうからねぇ~」
「何か言ったか?」
「いえ何も!」
呟く楓子に錆兎が訊くが楓子はニコニコと微笑んで首を振る。
「あ、それでですね」
と、そこでふと思い出したように楓子が言う。
「最初に錆兎さんがした質問についてなんですけど」
「………あ!」
楓子の言葉にそこでやっと当初の目的を忘れていたことに気付いた錆兎は慌てて抜けていた気を引き締める。
「そ、そうだ!俺はお前にそれを問い質しに来たんだ!」
「え?今忘れてました?忘れないでくださいよ。わざわざ会いに来るほど大事な目的でしょ?」
「お前のせいだろ!?」
やれやれと肩をすくめる楓子に錆兎が怒声を上げる。
「とにかく、だ!お前には手鬼を真菰と一緒に倒してくれた恩がある。だが、いくら恩人と言えど、炭治郎達や鱗滝さんを罰しようというなら――」
「それなんですけどね?」
腰に下げた刀を構え、その柄に手をかけた錆兎の言葉を遮って楓子が口を開く。
「私最初から炭治郎くん達を罰するつもりありませんよ?」
「………そうなのか?」
「はい。というかこれ鱗滝さんにも言ってあったんですけど?」
「…………」
「まさか錆兎さん、鱗滝さんに聞き取りしてるときの話聞いてませんでしたね?」
「………いや?」
「あ、絶対嘘だ!絶対聞いてなかった!」
間を開けてゆっくりと首を振った錆兎に楓子が叫ぶ。
「聞いてなかったのに私の事を鬼殺隊から調査に来たって色眼鏡で見て勝手に罰しに来た敵だと思ったでしょ!?私のこと何にも知らないのに敵だって決めてかかったでしょ!?」
「………すまん」
「やっぱり!!」
そっと頷いた錆兎に楓子は錆兎を指さしながら叫ぶ。
「うわぁぁショックだわァァァ!!(チラッ?)こっちは炭治郎くんたちのこと鬼殺隊の他の隊士達に認めさせるだけの納得の確証を用意しようと必死なのに!!(チラッ?)よりにもよって味方になってくれるはずの鱗滝一門の錆兎さんから敵と見られるなんてなぁぁぁぁ!!(チラッ?)傷つくわぁぁぁぁぁ!!(チラッ?チラッ?)」
これ見よがし泣き真似をしながら顔を手で覆って叫ぶ楓子。しかし、顔を覆う手の指の間からチラチラと錆兎の様子を窺っている。
「…………」
「あぁあッ!傷ついたなぁぁぁ!!(チラッ?)」
「…………」
「これは何かお詫びをしてもらわないとなぁぁぁぁ!!(チラッ?)」
「……はぁぁぁぁ」
楓子の言葉に錆兎は大きくため息をつき
「わかったよ。確かに俺もお前のことを少し疑ってかかっていた。そのことは確かに悪かったと思う。だから何か俺にできる範囲でお詫びくらいはさせてもらおう」
「え!?」
「おいその意外そうな顔やめろ。お前がほとんど強要したようなものだろうがッ?」
「細かいことは言いっこ無しですよ。それよりもさっきの言葉は本当ですか!?」
「ああ、俺にできることならなんでもしてやる」
「マジっすか!?それじゃあ――」
「ただし常識の範囲内でな。接吻しろとか性的なことはしないからな」
「えぇぇぇぇ……ッ!?」
「えぇぇぇぇ、じゃない!と言うか半ば冗談だったのに本気で考えていたんだなお前……」
「ちぇ~ッ」
錆兎に言葉に楓子は不満げに口を尖らせるも、すぐに気を取り直した様子で思案し
「あ、じゃあひとつお願いがあるんですけど」
「なんかろくでもないこと言いそうな嫌な予感するが、一応聞いてやろう。なんだ?」
「うわぁお辛辣!信用無いなぁ私!」
ケタケタと笑った楓子はンンッと咳払いをし
「そのお面、外してくれません?顔が見たいです」
「……そんなことでいいのか?」
「はい。外すだけでいいです」
「……なんか思ったよりも…いやまあこっちとしては別にいいんだが」
「じゃ、じゃあ……ッ!?」
「…………」
楓子が期待の視線を向ける中で錆兎は手を後頭部に回し、狐の面を留めている紐を外す。
「……これでいいか?」
「…………」
そっと面を外し、楓子を見据える錆兎。そんな錆兎の顔を見た楓子は
「……あぁ…ヤッバ……どーしよう……」
茫然と呟き
「超しゅきすぎりゅぅぅッ♡♡♡♡♡」
ボッと顔を赤面させて興奮した様子で言う。
「え、待って、は?は?は?(怒) カッコよすぎるんですけど?こんな超絶カッコいい人実在すんの?いや目の前にいるんですけど(笑) ちょっと待って、マジしんどい無理無理無理ほんとしゅき!!大しゅき!!錆兎さんらいちゅき!!♡♡♡♡♡」
「お前…大丈夫か、頭が?」
「大丈夫!!致命傷です!!」
「大丈夫じゃないな」
楓子が満面の笑みでサムズアップするのを錆兎はため息交じりに頷き
「フッ……お前は変わった奴だな」
ふっと脱力するように微笑む。その顔に楓子は
「ヒンッ!!」
心臓を抑え、顔をくしゃくしゃに歪ませてのけ反って倒れる。
「お、おい急にどうした!?」
その様子に驚いた錆兎は慌てて駆け寄り抱き起す。が――
「あ、無理。顔近い息当たってる私今錆兎さんの腕に抱かれてる推しからの過剰供給に心臓がパニック起こしてる無理死ぬ理性が崩れ去る苦しいしんどい心臓痛い吐きそう」
荒い息で、しかし、幸せそうな満面の笑みを浮かべた楓子。
「お、おい本当に大丈夫か!?息も荒いしどこか悪いんじゃ……」
「優しいぃぃぃぃ!!――あ、駄目だもう我慢できない」
言いながら楓子は目にも止まらぬ速さで手を伸ばしガシッと錆兎の首を両腕で拘束。
「ッ!?」
そのことに驚き拘束から逃れようとするが楓子は驚くべき筋力でガッシリと錆兎をつかんで離さない。
そのまま楓子は
「ジュ・テェェェンムッ!♡♡♡」
「おいッ!?」
巻き舌で叫びながら自身の唇を突き出して錆兎へと顔を近づけていく。慌てて錆兎は楓子の顔を両手で押さえる。しかし、楓子は恐ろしいほどの力で顔を近づけていく。
「フンゥゥゥ……!」
「ンチュゥゥゥ~!!」
二人の攻防はそのまま数秒続き
「ッ!」
ギリギリまで追い込まれた錆兎はとっさに顔を逸らす。
「チュッ♡」
と、そこでついに楓子の唇が錆兎の頬に触れる。
「フンッ!!」
「きゃふんッ!?」
そこでやっと力の緩んだ楓子を錆兎が放り投げる。地面にしなだれるように倒れる楓子は顔を上げて錆兎を見上げ
「ちょっと!なんで避けるんですかッ!?」
「避けるに決まっているだろうが!」
楓子の叫びに錆兎がキスをされた左頬を手で拭いながら叫び返す。
「お前!俺がさっき言ったこと忘れたのか!?」
「錆兎さんが過剰供給して私の理性崩したせいでしょう!!私は悪くない!!錆兎さんが誘惑してきたんだ!!」
「するかッ!!人聞きの悪いことを言うな!!」
楓子の叫びに錆兎がツッコむ。
「もういい!お前もうさっさと寝ろ!鱗滝さんへの聞き取りも済んだんだから次は炭治郎に合流するんだろう!?さっさと休んでおけ!」
「え…もしかして私の体調気遣ってくれてます?」
「ッ!」
「え、嘘マジ優しい。口悪い風に言ってるけど私の事気遣ってくれるとかマジ推せる。やっぱ大ちゅき!いっぱいちゅき!!」
「う、うるさい!お前に頑張ってもらわなければ炭治郎の鬼殺隊での立場が悪くなるんだ!つまりお前のためじゃなくあくまでも炭治郎のためで――」
「あぁ照れてるぅ~!もうか~わ~い~い~!♡♡♡♡♡」
「~~~ッ!!」
楓子が満面の笑みで言いながら抱き着こうとするのをバッと飛びのいて避けた錆兎は
「もういい!せいぜい道中気を付けることだな!じゃあな!」
「やっぱ心配してくれてるんじゃないですか」
「うるさいッ!!二度と来るな!!」
楓子の言葉に叫んだ錆兎はそのまま森の中に去って行ったのだった。
~大正コソコソ噂話~
楓子ちゃんのこの一連の行動は会えないと思っていた錆兎に会えたことで変なテンションになっていたことと、伊黒としのぶのヘタレ具合を散々見てきたので、あぁなってはいけない!、と反面教師にした結果推しへの愛が暴走しました。