恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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恋25 恋柱の継子と相互理解

 

「どうぞ、おかけください」

 

 あれから、仕切り直そうということで珠世さんたちが泊まっている宿に招かれた。

 二人の泊っている部屋に入った私は珠世さんが座った向かいに腰を下ろす。

 

「ほら、茶だ」

 

 と、愈史郎くんが私の前に湯呑と饅頭の乗った皿を出す。

 

「おやおや、これはご丁寧にどうも」

 

「ふんッ、お前のことは信用していないが、珠世様が招いたんだから最低限のもてなしはする」

 

 礼を言う私に愈史郎くんは鼻を鳴らす。

 そんな彼に微笑みながら私は湯呑に手を伸ばし

 

「だが、気を付けろ?そのお茶、毒を入れてるかもしれんぞ?」

 

 湯呑を持ったところで愈史郎くんがニヤリと笑いながら言う。

 

「愈史郎!」

 

 そんな愈史郎くんへ珠世さんが声を上げる。

 

「そんな失礼なことッ!」

 

「ですが、珠世様!俺はやっぱりまだこの女は信用できません!この女の肩書を聞きましたか!?あの鬼殺隊に九人しかいない最高戦力である柱の継子――弟子です!しかも情報戦略部の部長!医療部門の責任者!つまりこの女は鬼殺隊の中でも中枢にいるんです!そんな奴が本当に鬼である我々を信用するとお思いですか!?これは罠に決まってます!」

 

「愈史郎、あなたの心配する気持ちはわかります。ですが信頼関係とは相互に築くものです。この方が私たちのことを信じるといった以上、私たちもその言葉を信じ、真摯な態度で向き合わなければなりません。我々を信用してもらうためにはまずはこちらが信じなければ相互理解など永遠にかないません」

 

「ぐッ……で、ですが!」

 

「ですがではありません!――すみません、楓子さん。愈史郎が勝手な真似を」

 

 言いながら珠世さんは私の方に視線を向ける。

 そんな珠世さんに微笑みながら私は頷く。

 

「いえいえ、愈史郎くんも珠世さんのことをおもんばかってのことでしょう。それだけあなたのことを大切にしてるんですね。あ、お茶のおかわり貰えます?」

 

「そう言っていただけると――って、お茶もお茶菓子も完食していらっしゃるッ!?」

 

 頷きかけた珠世さんは驚愕の叫びをあげる。

 

「お、お前!ちょっとは毒が入ってるかもとか思わなかったのか!?」

 

「微塵も」

 

 驚愕の表情で愈史郎くんが訊くので私は頷く。

 

「な、なんで……?」

 

「だって、二人のこと信じてるから」

 

「…………」

 

 私の答えに愈史郎くんは呆気にとられた様子で呆ける。

 

「それに……」

 

 そんな愈史郎くんに微笑みながら

 

「君が珠世さんに嫌われるようなこと、するとは思えなかったから」

 

「ッ!」

 

「言うなれば愈史郎くんの珠世さんへの愛を信じた、って感じかな」

 

「貴様ッ!」

 

「愈史郎!」

 

「はい珠世様ッ!」

 

 私の言葉に顔を真っ赤にして叫ぶが、珠世さんの言葉に慌てて姿勢を正す。

 

「重ね重ね申し訳ありません」

 

「いいですよ、信頼って言うのは積み重ねですからね。これから気長に行きますよ。長い付き合いになるでしょうから」

 

 珠世さんの言葉に私は肩をすくめながら言う。

 

「愈史郎、楓子さんにお茶のおかわりを」

 

「あ、饅頭のおかわりもある?美味しかったからそっちも欲しいなぁ~」

 

「貴様図々しいにも程が――」

 

「愈史郎、楓子さんにお饅頭のおかわりも」

 

「はい珠世様ッ!!」

 

「あ、どうせなら私だけじゃなく珠世さんと愈史郎くんの分も淹れて来てよ。ゆっくり飲みながら話そうよ、和やかにねぇ~」

 

 珠世さんの言葉に返事をした愈史郎はギロッと私を睨んでお茶を淹れに行った。

 

「……頼んでから訊くのもあれなんですがお二人ってお茶は……?」

 

「飲めますよ。お饅頭を含む人間の食べ物も食べることはできますし、味もわかります。が、栄養を摂取することはできません。鬼ですから」

 

「へ~」

 

 珠世さんの言葉に私は頷く。よかったぁ~。

 そんな話をしているうちに愈史郎くんが人数分の湯呑と私の分の饅頭を持って戻る。

 

「ほらよ」

 

「ありがとう」

 

「ふんッ!――どうぞ、珠世様」

 

「ありがとう、愈史郎」

 

 私に出した時の仏頂面とはうって変わって優しい笑みで珠世さんの前に置く。

 私が湯呑をもってお茶をすすると、二人もお茶を飲む。そんな二人を見ながら私は口を開く。

 

「それで話って言うのはですね、ユシくん、タマちゃん」

 

「ブ~!!?」

 

 その瞬間対面に座る愈史郎くんがお茶を吹きだす。その飛沫はすべて私の顔面に直撃する。

 

「き、貴様ぁぁぁッ!!珠世様を気安く『タマちゃん』などとぉぉぉッ!!?」

 

「ごめん、真剣な話をする前にちょっと場を和ませようと思ったんだけど……」

 

「こんなので和むかぁぁぁッ!!」

 

「愈史郎落ち着きなさい」

 

 今にも掴みかかってきそうな勢いだった愈史郎くんを宥めながら珠世さんが私に手拭いを差し出すのでありがたくそれを受け取って顔を拭う。

 

「呼び方なんて些細なことです。むしろ親しみやすくていいではないですか?」

 

「え、マジ?乗り気?じゃあ私のことも『ふうちゃん♡』って呼んでください」

 

「誰が呼ぶかッ!!」

 

「愈史郎ッ!!」

 

「はいッ!!」

 

 今度こそ掴んできた愈史郎くんだったが、珠世さんの言葉に素直に元の位置に戻る。それを見届けた珠世さんは息をつき、私に視線を向ける。

 

「すみません、そろそろ本題に入りましょう」

 

「そうですね。そろそろおふざけはここまでにしとかないとキリがない」

 

「ふざけて話を脱線させていたのは全てお前だけどな」

 

 頷きながら言った私の言葉に愈史郎くんがブツブツ言いながら湯呑に口を付ける。そして――

 

「それでふうちゃん、あなたの持つ鬼舞辻無惨の――」

 

「ブ~!!?」

 

 珠世さんの言葉に愈史郎くんの口から緑茶(エメラルド)スプラッシュが迸った。そして、案の定私の顔に降りかかる。

 

「た、珠世様!?い、い、いまこの女のことをッ!!?」

 

「さっきも思いましたけど珠世さんってド天然ですよね~」

 

「え?え?」

 

 アワアワと口を震わせる愈史郎くんと顔を拭きながら苦笑いで言う私の言葉に珠世さんが茫然とした顔で交互に私たちの顔を見て

 

「だ、だって…先程ふうちゃんがそう呼んでほしいと……」

 

「あ、はい。言いました。言いましたけどダメ元の冗談でした」

 

「え……?」

 

「まさか本当に呼んでくれるとは……」

 

「そんなッ……」

 

 私の言葉に珠世さんが羞恥に頬を赤らめて呟くように言う。

 

「まあダメ元でしたけどそうやって呼んでいただけると親しみやすくていいのでそのままでお願いします。私もさっきの通りこれからもタマちゃんって呼ぶんで。構いませんか?」

 

「あ、はい……」

 

「それはよかった――では、改めて本題に入りましょう」

 

 珠世さん――タマちゃんが頷いたのを見て、私も頷き、真剣な視線を向ける。

 

「私の持ってる情報を話す前に二、三確認したいのですが、まず、あなたは鬼を人間に戻す薬を研究している、間違いないですか?」

 

「ええ、間違いありません」

 

「その研究の為に炭治郎くんに鬼の血を集めてもらっている?」

 

「その通りです」

 

「では、もう一つ質問なんですが」

 

「はい」

 

 ここまでは原作を読んでいて当然知っているのだが、まあ訊かないとおかしいだろう。

頷きながらタマちゃんは照れをごまかし落ち着こうと湯呑に口を付け

 

「『()()()()()』があったらその薬製作ってどのくらい捗ります?」

 

「ブ~!!?」

 

 その口からお茶が放たれた。そして、三度目の緑茶(エメラルド)スプラッシュが私を襲った。

 

「あぁ!!す、すみませんつい!!」

 

「いえ…大丈夫です……」

 

 慌てて謝るタマちゃんの言葉に頷きながら私は顔を拭き

 

「我々の業界ではご褒美です!ねッ、ユシくん?」

 

「そこで同意を求めるな!!」

 

 言いながらサムズアップする。そんな私にユシくんが叫ぶ。

 

「え?何?ユシくん嬉しくないの?やっぱ流石に吐き出したお茶は汚い?」

 

「そんなわけあるかッ!!美しい珠世様の口から出たものが汚いはずがないだろうッ!!」

 

「うわぁ予想以上に変態だった……」

 

「お前だってさっきご褒美って言ってただろうがッ!?」

 

「ご褒美とは言ったけど汚くないとは言ってない!」

 

「貴様ぬけぬけと!!」

 

「やめなさい愈史郎!もとはと言えば私がお茶を噴いてしまったのが原因ですから!」

 

「ですが珠世様!!」

 

「と言うかこれ以上その話題を広げないでください!いろいろ恥ずかしいです!ふうちゃんも!!」

 

「はい!」

 

「うっす、了解です」

 

 顔を赤らめて言うタマちゃんの言葉にユシくんが元気に、私もゆっくりと頷く。

 

「そ、それで…何故あなたが『青い彼岸花』のことを?」

 

「私の所属し責任者をしている『情報戦略部』では鬼殺隊に残された約1000年分の記録を一からまとめ直しているんですが、最近の記録…と言ってもそれでも百年近い以前の記録にたった一度だけ、『青い彼岸花』という言葉が登場するんです」

 

 タマちゃんの言葉に私は答える。

 

「その記録というのが、ある鬼――他の記録にもたびたび登場するのでその被害規模などから察するに恐らく十二鬼月……あくまで私の予想ですが、上弦と思われる鬼に遭遇した鬼殺隊士の記録です」

 

「十二鬼月……しかも、上弦ですか……何故そう予想したのですか?」

 

「その遭遇した隊士……結局助からなかったのですが、その遭遇した鬼はその人と共に戦った柱を殺しています。その高い戦闘能力に加え、その隊士の今わの際に残した断片的な情報によると、その鬼は鬼舞辻の命令であるものを探していた、と」

 

 これは本当にあった記録だ。

 この記録を見て私はすぐにこの隊士達が遭遇した鬼の正体に気付いた。

 恐らく、この隊士達が遭遇した鬼というのはほぼ間違いなく『猗窩座』で間違いないだろう。

 前世での原作知識のお陰で鬼側の情勢も把握しているが、それをおいそれと言えないがために知らないふりをするのも楽じゃない。なので、こういったところで嘘にならない程度の説得力のある説明を考えることに私は毎回悩まされる。なので、今回のように都合のいい情報が出て来てくれるとひじょぉぉぉッに助かる。

 

「柱を屠るほどの実力を有し鬼舞辻からの命令で動いている鬼、となれば」

 

「なるほど、それは確かに十二鬼月の上弦の可能性が高いですね」

 

 私の説明に納得した様子で頷くタマちゃん。

 

「そして、その鬼が探していたものが……」

 

「お察しの通り、『青い彼岸花』です」

 

 タマちゃんの言葉に今度は私が頷く。

 

「その『青い彼岸花』について、鬼殺隊ではどのくらい情報を掴んでいるんですか?」

 

「残念ながらほとんど掴んでいません」

 

「それじゃあ意味ないじゃないか!」

 

 私の言葉にユシくんが声を上げる。

 

「鬼殺隊でももちろんその隊士が命と引き換えに持ち帰った情報、当然調べるためにちゃんと動いたよ。でも悪いことってのは重なるものでね……運悪く『青い彼岸花』について調べ始めた頃に鬼の勢力に押され始め鬼殺隊存続の危機に追いやられかけてね。探し物どころじゃなくなったの」

 

 そんなユシくんに私は肩をすくめながら答える。

 

「結局その時は何とか持ち直して鬼殺隊がなくなることはなかったけど、代わりにそのどさくさの間にお館様が代替わりしちゃって、『青い彼岸花』捜索が有耶無耶になっちゃったの」

 

「なるほど」

 

 私の言葉にタマちゃんは納得した様子で頷く。

 

「今の炭治郎くんと禰豆子ちゃんの件が片付いたら正式にお館様に『青い彼岸花』捜索の進言は出す予定です。だから、これはあくまで私個人が集めた情報で、確証も何もあったものじゃないんですが」

 

 そう断ってから私はタマちゃんに視線を向け

 

「もし、私の調べ上げたことが正しいなら、『青い彼岸花』は鬼舞辻無惨の手に渡ることはありません。そして、今の状況のお二人のもとにも」

 

「どう言う意味だ?」

 

 ユシくんがギロリと私を睨んで訊く。

 

「私が調べた情報では、『青い彼岸花』は一年の間に限られた二、三日の間しか咲かない。しかもそれは昼間限定です」

 

「「ッ!?」」

 

 私の言葉に二人が息を呑む。

 

「だ、だが、鬼も太陽にさえ当たらなければ昼間でも――」

 

「もちろん鬼が昼間活動できることも、太陽さえ出ていなければ外を出歩けることも知っています。でも、仮にその花の咲く日を特定できたとして、その日に太陽が少しも射さない天気に都合よくなると思いますか?そんな天気でその日を迎えられる確率は、いったいどれ程なのか?途方もない数字になるでしょうね」

 

「…………」

 

 私の言葉にユシくんは押し黙る。

 

「今はまだ一年の間に特定の期間の昼間にしか咲かない、という情報くらいしかめぼしい情報はありません。ですが、近いうちに鬼殺隊の情報収集能力を使って必ずや『青い彼岸花』を見つけてみせます。なので、もしもその花が鬼を人に――」

 

 そこまで言ったところで、私は目の前に座るタマちゃんが

 

「フッ……フフフッ……フフフフフフフッ……」

 

 俯き肩を震わせ、笑いを噛み殺していることに初めて気付いた。

 

「珠世様……?」

 

 そんなタマちゃんの様子にユシくんも困惑した様子で覗き込む。

 

「フフッ……フフフッ……まさか、まさかあの男が……あのいけ好かない男が追い求めてやまなかったものが、完全なる進化を求めたあの臆病者が、完璧でないがゆえにそれを手に入れられないだなんて……!」

 

 そう言って上げたタマちゃんの顔はこれ以上ないほどの、美しいまでの満面の笑みだった。

 

「なんと言う因果応報!あの臆病者にふさわしいこれ以上ない報いではないでしょうか!?」

 

「めっちゃいい笑顔ですね、タマちゃん。そんなに嬉しいですか?」

 

「ええ、ええ!こんなに滑稽なことはありません!!ざまあみろ鬼舞辻無惨!!アハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 私の問いに頷いたタマちゃんはそのまま腹の底から「ザマミロ&スカッとサワヤカ」の笑いが出てしょうがねーぜッ!といった様子で笑い転げていた。

 そして、数分間笑い続けたタマちゃんは

 

「……失礼しました。あのように大声で笑ってしまい、はしたない姿をお見せしました」

 

 コホンと咳払いをした後、姿勢を正して座り直す。

 

「いえいえ、別にはしたないってことはなかったですよ。ただ、あの頭無惨に対して相当うっぷん溜まってたんだなぁって思ったくらいで」

 

「あ、頭無惨!?フヒヒヒヒヒィッ!?

 

「珠世様!?おい貴様不意打ちはやめろ!!珠世様が思わぬ攻撃を喰らって引き笑いを起こしてるじゃないか!!せっかく笑いが収まってたのに!!」

 

「ごめんなさい、何気なく言った言葉がまさかここまでウケるとは思わなくて……」

 

 再び笑いに崩れ落ちたタマちゃんにユシくんが駆け寄り私に怒声を上げる。私もそんな様子に思わず苦笑いを浮かべる。

 そのまま待つこと数分――

 

「た、大変失礼しました……はぁ…はぁ……」

 

 息も絶え絶えな様子でタマちゃんが何とか復活する。

 

「い、いえ、私もまさかここまでツボに入るとは思わず……」

 

 そんなタマちゃんに私は頷く。

 

「それで、『青い彼岸花』があれば鬼を人に戻す薬を作る研究が捗るか、という最初の質問に戻りますが、結論から言えば非常に捗ります」

 

「あ、やっぱりそうなんですね!」

 

 タマちゃんの言葉に私は目を輝かせる。

 

「詳しいことは実物を実際に研究してみなければわかりませんが、少なくとも『青い彼岸花』は鬼舞辻が鬼化する際に使われた薬の材料です。つまりその花があれば人が鬼になる工程が分かります。鬼になる工程が分かれば逆に人に戻す方法もおのずと見えてくるはずです」

 

「なるほど!」

 

 タマちゃんの説明に私は頷き

 

「では、もしも私が『青い彼岸花』の情報を掴み、手に入れることができたら、その時は共同研究していただけますか?」

 

「それは……」

 

 つづけた私の言葉にタマちゃんは言い淀む。

 

「……やはり、まだ私のことは信じきれませんか?」

 

「いえ、ふうちゃんのことは、ここまでのやり取りで信じられると確信しました」

 

「……すみません、話を遮るつもりはないのですが、一つお聞かせください。――今日のやり取りのどこにこの女を信じられる要素がありましたかッ!?」

 

 ユシくんがそっと手を挙げながらどうしても理解できない、という様子で顔を顰めて訊く。

 

「……愈史郎の言わんとすることはわかります」

 

「あ、わかるんですね」

 

「……すみません」

 

 私の言葉にタマちゃんが申し訳なさそうに謝る。そこからタマちゃんはでも、と続け

 

「ふうちゃんの言動は若干アレなところはありましたが、それは私たちのことを『人喰い鬼』という色眼鏡無しで見てくれたからこそ。彼女の言葉に悪意や私たちを落とし入れてやろうという思惑は感じられませんでした。それは、あなたもうすうす感じたことではなかったのですか?」

 

「ウッ……それは……」

 

「彼女がふざけた言動をしていたのは、自分をさらけ出し、本音で語ることで私たちに自分の人となりを見せる意図があってのことです。そうですよね、ふうちゃん?」

 

「…………」

 

 タマちゃんの言葉に私は少しの間を開け、ゆっくりと頷き

 

エ、エエ!モチロンデスヨ!

 

「珠世様、こいつめっちゃ声裏返ってます。声震えてます。これ以上ないって程目が泳ぎまくってます。こいつそんなこと考えてなかったですよ、これ」

 

 私の様子にユシくんがジト目で睨みながら言う。

 

「いや待って!違うの!そうじゃないの!特にそんなつもりなかったというか、私素の状態でこんな感じというか!あえて自分を曝け出して信じてもらおうとかそう言う意図は全くなくて、あくまで普通に話してただけなの!だからそこまで考えてなかったけどタマちゃんの言う考えがなかったわけではないと言いますか!」

 

「ほ、ほら!」

 

 私の言葉にタマちゃんがホッとした様子で言う。

 というか原作知識があるから二人のことは最初から味方としか思ってなかったからなぁ……つい鬼殺隊の人達と接するみたいにしちゃってた。

 

「コホン……と、とにかく、私はあなたのことを信じられるし、あなたが『青い彼岸花』を手に入れることができたなら、共同研究することに異論はありません。むしろこちらからお願いしたいくらいです」

 

 仕切り直すようにタマちゃんが口を開く。

 

「ですが、あなたを信用し、あなたと協力するということは鬼殺隊と行動を共にするということ。あなたは私たちを信用できても、鬼殺隊の他の方たちは果たして私たちのことを受け入れてもらえるでしょうか?私が懸念しているのはそのことです」

 

「それは……」

 

 タマちゃんの言葉に私は言い淀み

 

「それは、私も懸念しています。鬼殺隊の隊士は鬼に大事なものを奪われた人たちの集まりですから、鬼の協力者なんてすぐには受け入れがたいかもしれません」

 

「そう…ですか……」

 

「でも!今それを変えるために鬼殺隊を率いているお館様から勅命で私は動いています!禰豆子ちゃんという人を一度も食べたことのない鬼を、ともに鬼舞辻無惨たちと戦う協力者という立ち位置の鬼の前例を作ることができれば、タマちゃんたちの存在を認めさせることもそう難しいことじゃないと思うんです!」

 

「ふうちゃん……」

 

「だから、待っていてください。私が必ず、禰豆子ちゃんが人を襲わないことを、人と協力して戦えることを認めさせますから」

 

「……ですが、わかっていますか?それは簡単なものではない。禰豆子さんが人を襲わないことを証明する、それは悪魔の証明に他なりません」

 

「わかってます。でも――」

 

 タマちゃんの言葉に頷いた私はニッコリ微笑み

 

「逆に、禰豆子ちゃんがこれから先の未来に人を襲うということも、証明は困難ですから。反対する人たちにとっても条件は同じです」

 

「そう…ですか……」

 

 私の言葉に頷いたタマちゃんは

 

「わかりました。あなたに賭けてみようと思います」

 

 微笑みながら言う。

 

「準備が整ったらいつでもご連絡ください。私たちはあなたのことを信じて待つことにします」

 

「わかりました。できるだけすぐにお呼びできるように頑張ります!」

 

「ええ」

 

 私の言葉にタマちゃんは頷き

 

「ふん、珠世様は信じているようだが、俺は期待せず半信半疑くらいで待っておく」

 

「それでも半分は信じてくれるんだ!ありがとう!」

 

「~~~ッ!皮肉の通じない奴め!!」

 

 私の言葉にユシくんが顔を顰め、しかし、それ以上何も言わずにそっぽを向く。

 

「これからよろしくお願いしますね、タマちゃん、ユシくん」

 

「ええ」

 

「……ふんッ!」

 

 私の言葉にタマちゃんは笑顔で頷き、ユシくんは鼻を鳴らしてそっぽを向いたのだった。

 




楓子ちゃん、珠世さん達との協力を取り付ける、の巻でした!
さあ鬼舞辻無惨を追い詰める準備が着々と進んでいきます!
あとは悪魔の証明の立証をするだけです!



~大正コソコソ噂話~
愈史郎が楓子に出した饅頭は泊まった際に宿側から貰ったものです。
珠世と愈史郎は宿に泊まる際に二人の関係は「姉弟」ということにしています。ただ、あまりにも愈史郎が珠世のことを「姉さん」と呼ぶのをどもってしまったので宿の人の間では「禁断の年の差恋愛の末駆け落ちしたのではないか?」という噂が立っています。


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