恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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予告通り番外編です!
皆様のおかげでめでたくお気に入り件数2500件です!
とりあえずまずは本編をお楽しみください!



お気に入り件数2500件記念番外編 恋柱の継子と人生ゲーム

『人生ゲーム?』

 

「そうです」

 

 私の言った言葉をオウム返しした面々に私は頷く。あ、一人だけ首を傾げるだけで口開いてない人もいたけど。

 場所は蝶屋敷。現在居間で私の目の前にいるのは我が敬愛する師である蜜璃さんとその恋人の伊黒様、蝶屋敷の主である胡蝶カナエさんとしのぶさん、冨岡様と我が大親友のまこちゃんが一堂に会している。

 正直カナエさんとしのぶさん、蜜璃さんと伊黒様までは予定通りだったが、今日は偶然冨岡師弟までやって来たのだ。まあそれはそれで好都合だが……(ニヤリ)と、私は内心ほくそ笑みながら素知らぬ顔で説明する。

 

「まあちょっとした気分転換に作ってみたんですけどね?ようは、人生を追体験する遊びです」

 

「人生の追体験?」

 

 私の言葉に蜜璃さんが訊く。

 

「この遊戯は簡単に言えば双六です。進めていきながらお金をためていき、最終的にあがった時の所持金の多さで勝敗を決めます。あがった順番は関係ありません。金を持ってる人が勝者!単純明快な勝敗です!」

 

「世知辛い勝敗の決め方ね」

 

 と、しのぶさんが苦笑いで言う。

 

「それがこの私の開発した遊戯!」

 

 言いながら私は背後に手を回し、リュックから用意したそれを取り出す。

 

「ラブラブ人生ゲェェェムゥ~♪」

 

【挿絵表示】

 

 

「「「らぶらぶ……」」」

 

「「人生ゲーム……」」

 

 私の濁声で言いながら取り出した箱に五人が反復し、冨岡様はいつもの無表情で見る。

 

「……一つ訊いていいか?」

 

「なんなりと」

 

 伊黒様の問いに頷く私。

 

「『らぶらぶ』ってなんだ?」

 

「『LOVE』でラブ。英語です。日本語にするなら『愛』という意味ですね」

 

「何故そこで『愛』なんだ?」

 

「私の趣味です」

 

「だろうなぁ!!」

 

 私の返事に伊黒様がため息をつく。

 

「お前が作ったという時点で嫌な予感しかしないのにその言葉で余計に心配になってきたぞ」

 

「まあまあ!やったらきっと楽しめますから!私が説明しながら進めますんで六人でやってみてください!」

 

『…………』

 

 六人は楓子の言葉に顔を見合わせ

 

「まあ、試しにやってみましょうか」

 

「せっかくふーちゃんが作ったんだしね!」

 

「たまにはこういう遊びをみんなにするのも新鮮ね」

 

「まあ甘露寺がやるなら……」

 

「私も暇ですしいいけど……」

 

「構わん」

 

 まこちゃんや蜜璃さん、カナエさんの乗り気な人を筆頭に六人が頷いたのを見て私は早速机の上にゲーム盤を広げる。

 

「やり方は簡単です。順番にこの車の形をした自身の駒をこっちのルーレット――賽子の代わりですね、これを回して、出た数字の数だけ駒を進めてください。止まった目の項目によって仕事や賭け事などいろんな出来事で所持金が上下します。それでは早速始めてみましょう!」

 

 と、私の音頭でゲームが始まる。

 最初の方は解説をしながらだったが、六人はすぐにルールを覚えテンポよくゲームは進んでいく。

 そして

 

「1,2,3!あら、『大学を卒業して開業医を始める。準備の為に一回休み』ですって」

 

「あ、いいですね。医者は儲かる職業です」

 

「あら?そうなの?これはいいマス目につけたのかしら?」

 

 カナエさんは順調に高学歴の道を進み、医者に。

 

「1,2,3。あら、私は『海外の珍しい品に目を付けて商売を始めると大成功。5000円儲かる』ですって」

 

「あら~、いきなり儲けたわねしのぶ」

 

「一番のお金持ちね!」

 

 しのぶさんが貿易商として大成功をおさめたり(ちなみにこの時代の1円の価値はだいたい1000円くらいだ)

 

「1,2,3,4,5。『海外の珍味の養殖に手を出すも珍味過ぎて売れず失敗。5000円払う』……」

 

 なんだかんだお金を払わされるマスに止まり最下位にいる伊黒様。

 

「1,2。あ、『定食屋を始める、開業準備のため100円払う』だって」

 

 まこちゃんは定食屋になった。

 現在の所持金の順位で言えば、しのぶさんが一位でまこちゃんとカナエさんが次いで、三人と少し差はあるもののそのあとを蜜璃さんと冨岡様、最下位に伊黒様、という成績だ。

 そんな中自体はついに動く。

 

「……4か」

 

 回したルーレットが4を示し、冨岡様は駒を動かす。と――

 

「『結婚』……?」

 

「お、ついに出ましたね、結婚マス」

 

 冨岡様の駒はピンク色のマスに止まる。

 

「ここに止まったらルーレットを回してもらい、その出た数字によって他の参加者と結婚です」

 

「ッ!?」

 

 私の説明にしのぶさんがピクリと肩を震わせる。

 

「結婚した場合、その二人は止まったマスの内容を共有します。途中で離婚マスに止まらない限りは結婚関係は継続です」

 

「なるほど」

 

「とりあえず回してみてください」

 

「ああ」

 

 私に促され、冨岡様は再びルーレットを回す。シャァァァァッという軽快な音とともに回転したルーレットはゆっくりと止まり

 

「あ、私ね!」

 

 蜜璃さんを指し示した。

 

「なッ!?」

 

「そんなッ!?」

 

 特に気にした様子のない蜜璃さんとは対照的に伊黒様としのぶさんが驚きに声を震わせる。

 

「では、初めての結婚は冨岡様と蜜璃さんですね。はい、お二人は自分の駒の隣にも一本人を加えてくださいね」

 

「ああ……」

 

「こうでいいのね!」

 

 私の差し出した人を模した杭を自身の駒に刺す。

 

「で、他の参加者の皆さんは結婚祝いとして30円ずつ支払います」

 

「「ッ!?」」

 

「あら、そうなの。じゃあ、はい。二人ともおめでとう」

 

「おめでとうございます!」

 

 息を呑む伊黒様としのぶさんを尻目にカナエさんとまこちゃんがお金を出す。

 そんな様子に二人はそっと悔しげな顔をしながらも

 

「ど、どうぞ……」

 

「冨岡ぁぁッ!甘露寺を不幸にしたら許さんからなッ!!」

 

 二人もお金を払う。払うのだが――

 

「しのぶ、伊黒君も、現実のお金じゃないわよ?」

 

 動揺しすぎたのか震える手で自身の財布からリアルマネーを出す二人にカナエさんが笑顔のまま指摘する。

 

「さあ次は蜜璃さんの番ですね」

 

「うん!」

 

 そんな二人を尻目に私はゲームを進める。

 蜜璃さんは頷いてルーレットを回し――

 

「1,2,3!え~っと、『新婚生活はラブラブで絶好調!新婚旅行で子宝を授かる!みんなから出産祝いで50円もらう』だって!私お母さんになっちゃった!」

 

「「ッ!?」」

 

「あらぁ~!」

 

「それはおめでとうございます!」

 

 驚愕に顔を真っ青にするしのぶさんと伊黒様。カナエさんとまこちゃんは普通にお祝いの言葉を言いながら出産祝いを払う。

 

「「こ、子ども……」」

 

 しのぶさんと伊黒様は今にも泣きそうな顔をしながらお金を差し出し

 

「いや、だから二人とも?本物のお金は仕舞ってね?」

 

 カナエさんに指摘されていた。

 

「ではでは気を取り直して一回休みになってるカナエさんとまこちゃんは飛ばして次はしのぶさんですね」

 

「え、ええ」

 

 私の言葉に頷いたしのぶさんは引き攣った笑顔でルーレットを回し

 

「1,2。え~っと『片思いの相手が結婚。より仕事に精を出して取引が成功。5000円儲かる』……」

 

 しのぶさんの読み上げた言葉の直後、思わず私はバッと顔を背けた。よく見るとカナエさんと伊黒様とまこちゃんも顔を背けている。

 いや、これはさすがに私も居たたまれない。

 

「わ、わ~い、私お金持ち~」

 

 声が震えている。成績は断トツなのに、ホント居たたまれない。

 

「じゃ、じゃあ次、伊黒様行きましょうか!」

 

「お、おう」

 

 頷いた伊黒様はルーレットを回す。と――

 

「け、結婚マスだ……!」

 

 このゲーム二人目の結婚マスに止まる。

 

「ではどうぞもう一度回してください。ちなみにもしこれで蜜璃さんになったら蜜璃さんと結婚ですよ。冨岡さんと蜜璃さんは離婚になります」

 

「何ッ!?」

 

 私の言葉に伊黒様驚きの声を漏らし、しかし、すぐに真剣な顔でルーレットに視線を向ける。

 

「うおぉぉぉぉぉッ!」

 

 気合の声とともにルーレットを回転させる。はじめは勢いよく回転したが、徐々に勢いを緩めていき、ゆっくりと止まる。

 

「あ…わ、私ですか?きょ、恐縮です……!」

 

 と、針の示した人物――まこちゃんが照れた様子ではにかむ。

 

「ぶふぉッ!!」

 

「おいこら、何笑ってる!?」

 

「す、すみません……あんな気合い入れてたのに思った結果にならなくて、可哀想だなぁって……現状見ると大した職にもつけてない伊黒様が年下のまこちゃんに養ってもらってるヒモ状態じゃないですか。いい年した大人が情けないなぁって思いません?」

 

「遊戯の話だろう!?これはただの遊びだろうが!」

 

「そんな!?まこちゃんとの関係は遊びの関係だって言うんですか!?」

 

「喧しいわ!!」

 

 私の言葉に伊黒様がツッコむ。

 

「それじゃあ私ですね。エイッ」

 

 そんな私たちを尻目にまこちゃんがルーレットを回す。出た数字は2だった。

 

「えっと…『結婚相手が浮気。浮気相手に慰謝料を払う事態に。50000円支払う』」

 

「うわぁ~伊黒様最低ぇ~」

 

「あらあら、養ってもらってるのに浮気なんて……」

 

「だから遊びの話だろう!?」

 

 私がジト目で言い、カナエさんも苦笑いで言うと伊黒様が心外だと言わんばかりに叫ぶ。

 文句を言いつつ伊黒様は慰謝料を払う。

 

「はい、じゃあ次は冨岡様!」

 

「ああ」

 

 頷いた冨岡様はルーレットを回す。針は5を示す。

 

「……『ラブラブ新婚生活はほんと最高潮!なんだかんだでベッドが壊れる!60円支払う』」

 

「わぁお!お盛んっすねぇ~!」

 

「あらあら~、どんなに激しい使い方したのかしらね?」

 

 その内容に私とカナエさんはニマニマと笑いながら言う。

 

「冨岡貴様ぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「と、冨岡さん、もう少し控えた方がいいんじゃないでしょうか!?」

 

「ま、待て」

 

 怒声を上げる伊黒様と引き攣った笑顔のまま言うしのぶさんに冨岡様も流石にいたたまれれなかったようで口を開く。

 

「俺は普通にやってるだけだ」

 

「普通にヤッてるだけだと!!?」

 

「最低ですね!!」

 

 冨岡様の台詞を曲解した二人はさらに燃料投下で激昂する。

 

「まあまあ、二人とも落ち着いてください。というか伊黒様さっきした自分の発言をもう忘れてるじゃないですか。これただの遊びですよ?」

 

「「ウッ……」」

 

 私の指摘に二人が我に返りシュンと小さくなる。

 

「ささ、蜜璃さんの番ですよ」

 

「あ、うん」

 

「??? どうかされました?」

 

 と、先を促した私だったが、蜜璃さんは独り口元に手を当てて思案している様子で、私は訊いてみる。

 

「ううん、大したことじゃないんだけどね?」

 

「何かわからないところでもありました?」

 

「うん、なんて言うかね……」

 

 言いながら蜜璃さんは小首を傾げ

 

「どうして新婚生活が最高潮だとベッドが壊れるのかなぁって」

 

「「「「「……え゛ッ!?」」」」」

 

「え?え?え?みんな理由分かってるのッ!?」

 

 唖然とする私たちに蜜璃さんが一人わかっていない様子で周囲の面々を見渡す。

 

「……そうですね、ここは伊黒様が教えてくれます」

 

「なんで俺なんだ!?」

 

「いや、やはりここは恋人である伊黒様から説明をされた方がいいかと思って……」

 

「作ったのはお前なんだからお前が説明しろ!!」

 

「えぇ~……」

 

 伊黒様の言葉に渋々頷いた私は大きくため息をつき蜜璃さんに向き直る。

 

「いいですか、蜜璃さん?何故新婚生活が順調だとベッドが壊れるかと言いますと――」

 

~数分後~

 

「さ、さぁ~!つ、次は私の番ね~!/////」

 

 私の説明で理解した蜜璃さんは顔を真っ赤にして先ほどの自分の質問を忘れるために努めてテンション高めに宣言してルーレットを回す。

 

「わあぁッ!9!たくさん進める~!」

 

 と、ここでこのゲームで最大の数字をたたき出した蜜璃さんは笑顔で駒を進め。

 

「――7,8,9!え~っと?『ラブラブ新婚生活はほんと最高潮!なんだかんだでベッドが壊れる!60円支払う』……」

 

「…………」

 

 そっと無言で60円払う蜜璃さん&冨岡様の絶倫夫婦。そしてそんな二人に引き攣った笑顔で微笑むしのぶさんと般若のような形相の伊黒様。なんかもういっそ哀れだ……。

 

「で、では次は私ね!」

 

 怒りマークを幻視するような引き攣った笑顔のまましのぶさんがルーレットを回し駒を進める。

 

「え~っと?『意中の人は振り向いてくれないのに顧客にはやたらモテて商売繁盛。1000円の儲け』わ、わ~い……」

 

 私はこんなに元気のない「わ~い」を初めて聞いた気がする。なんかもうホント哀れだ。所持金は一人トップをひた走っている才女、お金はあるのに世知辛い……。

 

「次は私ね」

 

 と、そんなしのぶさんに苦笑いを浮かべながらカナエさんがルーレットを回し

 

「え~っと、『強面で口の悪いヤクザの若頭に言い寄られ貢がれる。500円の臨時収入』。あらあら~」

 

「ブフゥッ!」

 

 あまりに的確なマスに私は思わず噴き出した。これ作ったときは特に何も考えずテキトーだったが、まさかこれにカナエさんが止まるとは。本人も今私の頭に浮かんでるのと同じ人物が浮かんでいるのか少し声の調子が上がった気がする。

 

「??? 姉さんも楓子もどうしたの?」

 

「ううん、何でもないわよ。ね、楓子ちゃん?」

 

「え、ええ。ちょっとした思い出し笑いです」

 

 カナエさんの視線に私は慌てて頷く。

 危ない危ない、これはまだオフレコだった。

 さてさて、気を取り直して続いては伊黒様の番。

 

「えっと、『結婚相手の親友と浮気。刃傷沙汰に発展。一回休み』」

 

「うわぁ~、まこちゃんがいるのに私に手を出すとかうわぁ~」

 

「だから遊びの話だろ、遊びの!?」

 

 ドン引きして言う私に伊黒様がツッコむ。

 そして続いてまこちゃんの番。

 

「えっと、『度重なる結婚相手の浮気に我慢の限界を迎え離婚。相手から慰謝料10000円をふんだくる』」

 

「おお、やっと気付いたんだねまこちゃん。こんなどうしようもない甲斐性無しのヒモな上に浮気しまくる最低の男なんてさっさと捨てるに限るよ」

 

「だから!遊びの話だろ遊びの!!」

 

 頷きながら言う私の言葉にまこちゃんは苦笑いを浮かべ、伊黒様は大声でツッコむ。

 

「ささ、次は冨岡様ですね」

 

「ああ」

 

 私に促され冨岡様はルーレットを回す。

 

「『以前付き合っていた異性に言い寄られる』」

 

「えッ……?」

 

 マスの内容を読み上げる冨岡様の言葉にしのぶさんの顔に笑みが浮かび

 

「『――が、今の結婚相手への愛はみじんも揺るがない!キッパリと元カレ(元カノ)の誘惑を断ち切り愛を再確認。さらに子どもが増える』」

 

――ガンッ

 

 直後続いたマスの内容にしのぶさんが机に顔面から突っ伏し鈍い音を上げる。

 そんなしのぶさんに何も言わず、冨岡様と蜜璃さんはそっと自身の駒に子どものピンを加える。

 

「え、え~っと、次は私ね~」

 

 気を取り直して顔を上げた蜜璃さんはルーレットを回し

 

「えっと、『子どもが小学校に入学、学費で1000円支払う』あらぁ~もう小学生になったわ!」

 

 嬉しそうにお金を支払う。

 

「はい、次、カナエさんです」

 

「ええ」

 

 私が促すとカナエさんが頷きルーレットを回す。

 

「え~っと、『ヤクザの親分の手術を成功させる。強面の若頭から本格的に求婚される。500円の臨時収入』あらあら~」

 

~~~~ッ!

 

 わ、笑っちゃダメ!笑っちゃダメ!と、私は必死に笑いをこらえるために座る足の腿を抓る。

 

「次はしのぶさんですね」

 

「ええ」

 

 気を取り直した様子で咳払いをしたしのぶさんはルーレットを回す。

 

「何々~?『偉い人になる。1000円貰う』雑すぎない!?」

 

「まあアレです。偉くなったから袖の下とかもらったんですよきっと」

 

 叫ぶしのぶさんに私は答える。

 

「それじゃあ今度は伊黒様ですね!」

 

「あ、ああ……」

 

 頷いた伊黒様はルーレットを回し

 

「『悪い女に騙され貢がされる。女性不信に。1000円を払う』大好ぃぃぃぃぃッ!!

 

「なんで私なんですか!!」

 

 バンッと机を叩きながら叫ぶ伊黒様に私は叫び返す。

 

「勝手に私を悪者にしないでください!ていうかもしも私がその悪い女だったとしたら確実にさっきの浮気の刃傷沙汰の延長戦ですよ!伊黒様の浮気のせいなんだから自業自得です!」

 

「くッ…!」

 

 私の言葉に伊黒様は渋々座り直し1000円を机に叩き付ける。

 

「まったく……はい、じゃあ次まこちゃん」

 

「う、うん」

 

 私に促されまこちゃんが苦笑いでルーレットを回し

 

「えっと『自分の半生を描いた自叙伝を執筆出版すると人気が出て重版が決まる。1000円の売り上げ』小説家かぁ~」

 

「まあ結婚相手のヒモが親友と浮気とか劇的な人生だもんね」

 

「そこで俺を見るな俺をッ!!」

 

 ため息交じりに視線を向けると伊黒様が叫ぶ。

 

「では続いて冨岡様の番ですね」

 

「ああ」

 

 頷いた冨岡様がルーレットを回す。

 

「……『携わっていた事業に失敗。夫婦仲は最悪に。仲の修正を試みるも修復不能。離婚する。子どもの数×2000円の慰謝料を払う』」

 

「あららぁ~離婚マス踏んじゃいましたかぁ~」

 

 冨岡様の読み上げたマスの内容に私は苦笑いを浮かべ

 

「あらあら、冨岡様は離婚ですか~。お可哀想に~♪」

 

「しのぶさん嬉しそうですね」

 

「いえいえそんなことはないわよ~♪」

 

 私の指摘にしのぶさんは満面の笑みで答える。

 

「ささッ、次は蜜璃さんですね~」

 

 しのぶさんは笑顔のまま蜜璃さんを促す。

 

「それじゃあ……」

 

 しのぶさんに促され蜜璃さんはルーレットを回し

 

「あ、また結婚マスだわ!」

 

「ッ!」

 

 結婚マスに止まった蜜璃さんは笑顔で言う。そのことに伊黒様は息を呑む。今度こそ蜜璃さんとの結婚を考えているのだろう。が――

 

「それじゃあもう一度ルーレットを回してください。対応した数字の方と伊黒様以外とは結婚できます」

 

「おいちょっと待て!何故俺はできないんだ!?」

 

「さっき伊黒様が止まったマス忘れたんですか?」

 

「何ッ!?」

 

 私の指摘に伊黒様、加えて蜜璃さんとカナエさんとしのぶさん、まこちゃんが確認するようにそのマスに視線を向ける。

 

「先程伊黒様は悪い女に騙されて女性不信になっています。このため女性との結婚は成立しなくなってます。なので蜜璃さんが仮にルーレットで伊黒様に対応した数字を出しても結婚できません」

 

「そんな…馬鹿な……」

 

 伊黒様は私の説明に崩れ去る。

 

「それじゃあ蜜璃さん、ルーレット回してください!」

 

「は~い!」

 

 私の言葉に蜜璃さんは再びルーレットを回す。出た数字が指し示したのは

 

「あ、しのぶさんですね」

 

「「はぁぁぁぁッ!!?」」

 

 直後、しのぶさんと伊黒様が声を上げる。

 

「え?待って!私も蜜璃さんも女だけど!?」

 

「いやぁ~これは遊びなんでその辺大雑把に作ってるんですよねぇ~。もちろん男同士も行けます」

 

「その話詳しく!!」

 

 笑いながら言った私の言葉にまこちゃんが反応する。

 

「そ、それはつまり、今回で言えば冨岡さんと伊黒様の結婚も……!?」

 

「Exactly――その通りでございます」

 

「カハッ!!」

 

 私がニヤリと笑って頷くとまこちゃんが興奮した表情で固まる。

 

「真菰ちゃん、どうしたの?」

 

 そんなまこちゃんの様子にカナエさんが訊くが、まこちゃんは虚ろな目で俯きブツブツと何事かを呟いている。

 

「お、おばぎゆ……いや、ぎゆおば……!?そ、そんな可能性が……!普段は冨岡さんにつんけんと険悪な伊黒様も二人きりになれば甘々に……!?こ、これは捗る……ふ、フフッ腐腐腐腐腐腐(フフフフフフ)~」

 

「あ、大丈夫です、一種のこう言う病気ですんで」

 

 腐った笑顔で微笑むまこちゃんの様子に私は頷く。

 

「ささッ、気にせず行きましょう!次はカナエさん!」

 

「え、ええ……」

 

 楓子の言葉に困惑しながらも、とりあえずルーレットを回し

 

「えっと、『新薬の開発に成功。1000円儲かる』」

 

「おお!新薬なんてすごいですね!」

 

「そうねぇ~。薬の調合はしのぶの方が得意なんだけどね」

 

 言いながら嬉しそうにカナエさんは笑う。

 

「ささ、次はしのぶさんですね」

 

「ええ……」

 

 しのぶさんは気を取り直すように咳払いをしてからルーレットを回し

 

「えっと…『新婚生活はラブラブで絶好調!新婚旅行で子宝を授かる!みんなから出産祝いで500円もらう』って同性婚で子どもが生まれるわけが――」

 

「おめでとうございます!じゃあ皆さんから出産祝いですね!」

 

「できるの!?同性なのに!?」

 

 しのぶさんが驚きの声を上げる。

 

「可能です。何の問題もありません」

 

「えぇ~……」

 

 私が頷くとしのぶさんが茫然とし、

 

「待って!?ということは当然男性同士でも!?」

 

「Exactly――その通りでございます」

 

「なん…ですって……!?」

 

 再びニヤリと笑って頷いた私にまこちゃんが目を見開き

 

「じゃ、じゃあ冨岡さんと伊黒様の間にも……!?」

 

「可能よ!」

 

~~~~~ッ!!

 

 頷いた私の言葉にまこちゃんが声にならない悲鳴を上げ

 

「キュ~……」

 

 そのままバタンキューと後ろに倒れこんだ。

 

「あちゃぁ~……許容限界を超え(キャパオーバーし)てしまったか……」

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

「大丈夫ですよ。ほら、見てください」

 

 カナエさんが訊くが私は頷き、倒れるまこちゃんの顔を指さす。

 

「綺麗な顔してるでしょ?嘘みたいでしょ?尊死してるんですよ、それで……他の人には大したことなくても、許容限界を超えた供給を受けるだけで……もう動かないんだぜ」

 

 倒れるまこちゃんの顔はそれはそれは満ち足りた笑みをしていた。あ、当然生きてるのでご心配なさらず。

 

「まあこれはまこちゃんは続行不能なので離脱(リタイア)ですね。五人で続きしましょう!」

 

「「えぇぇぇぇぇぇ……」」

 

 私の言葉にしのぶさんと伊黒様が「え?まだ続けるの?」と言わんばかりの顔で言うが、気にせず私は進める。

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、というわけで全員あがりましたね!」

 

「ああ……」

 

「そうね……」

 

 私の言葉に伊黒様としのぶさんがやつれた顔で頷く。蜜璃さんとカナエさんは笑顔で、冨岡様は無表情で頷く。

 

「では、今回の順位は~ドゥンッ!ドゥクドゥクドゥクドゥク~!ジャンッ!!」

 

 口でドラムロールを言った私はバッと顔を上げ

 

「第一位!しのぶさん!圧倒的所持金で第一位!」

 

「あ、はい……」

 

 笑顔で指差す私と対照的にしのぶさんは大して喜ぶことなく疲れた顔で頷く。

 

「そして、第二位!蜜璃さん!」

 

「やったぁ!二位だぁ!!」

 

 指差す私の言葉に蜜璃さんは嬉しそうに微笑む。

 

「そして、第三位!カナエさん!」

 

「途中まではいい調子だったんだけどね~、残念だわ」

 

 カナエさんは私に指差されて頷く。

 

「続いて、第四位!冨岡様!」

 

「ああ」

 

 指差す私に特に表情を変えずただ頷く冨岡様。その顔は喜んでいるのか悔しがってるのかいつも通り全然わからない。

 

「そして、最下位は~伊黒様でした~」

 

「ああ……」

 

 私の言葉に伊黒様は疲れた顔で緩慢に頷くだけだった。

 

「まこちゃんは途中離脱なので順位に反映しておりません――いやぁ~どうでした皆さん?楽しんでいただけました?」

 

「この顔を見て楽しめたと思うか?」

 

「ものすごく疲れたわ……」

 

「そう?私はそれなりに楽しめたわよ」

 

「私も!とっても楽しかったわ!」

 

「…………」

 

 私の問いに五人がそれぞれの反応をする。そんな五人を見渡した私は頷き

 

「じゃあ二回戦行きます?今度は私も参加して――」

 

「「二度とごめんだ!!!」」

 

 私の提案は全力で叫ぶ伊黒様としのぶさんによって却下され、以降「ラブラブ人生ゲーム」は永久封印されたのだった。

 

 




というわけで改めまして、祝!お気に入り件数2500件!!
お陰様でお気に入りにしていただいている方が2500人を超えました!
本当にありがとうございます!
ここまで応援いただき本当にありがとうございます!
これからも皆さんに楽しんでいただけるように頑張りますので、今後ともご愛顧よろしくお願いします!



さて、今回の番外編を挟んで次回からはいよいよ『那田蜘蛛山編』です!
あの原作でも苦戦を強いられた那田蜘蛛山での戦い、楓子ちゃんの介入でどう変化するのか!?
お楽しみに!


そして、以前募集しましたご質問に今回から本格的に答えていこうと思います!
まず最初の質問はムッシーさんから頂きました二件の質問です。

――出版しているわけですが、初めてBL方向に舵を切ったときの心境は?

楓子「そりゃまあ前世の現代で書いていたとはいえ、この大正時代ではかなり流行の先取りで、受け入れられない可能性もあるだろうな、とは予想してました。でも、私思うんですよ、男同士の恋愛(BL)の嫌いな女性はいないって……だから、少し怖かったですが、全力で自分の描きたいという思いに正直に筆を走らせました」

――原作キャラの中で交際するのなら誰?男女どちらでも可

楓子「最推しなのは蜜璃さんと錆兎なのでもし交際できるならそのお二人ですけど、蜜璃さんに関しては原作のあの伊黒様との心通じ合っちゃった最後見ちゃうとどうしてもそこに割って入るのは憚られるので、その辺は複雑なオタク心ですね」

ということでした!
今後もいろいろ質問に答えていきますのでまた何か気になることなどありましたら今後の本編のネタバレにならない程度にお答えしますのでどしどしお寄せください!
それではまた次回お会いしましょう!



~大正コソコソ噂話~
楓子はこの「ラブラブ人生ゲーム」の他に「宇宙エロ本争奪ゲーム」という某ギャグアニメ(漫画原作)で登場した双六風ゲームも開発しましたが、よく考えたら大正時代の人に「宇宙」とか「異星人」とか「エロ本」って通じるの?ということに作ってから気付いたため日の目を見ることなく自室の押し入れに封印しました。


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