恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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今日からついに「那田蜘蛛山編」です!
原作最初の大きな戦いの場です。
楓子ちゃんの介入でどう物語が変化していくのか、お楽しみください!





恋27 恋柱の継子と那田蜘蛛山

「では、行きます!お世話になりました!」

 

 そう楓子が代表して言い、四人で揃って頭を下げるとひさもそれにお辞儀し返す。

 

「一緒に料理ができて、とても勉強になりました。ありがとうございました!」

 

「私も珍しい料理を覚えられて楽しかったですよ」

 

 楓子の言葉にひさは嬉しそうに微笑む。

 

「では、切り火を…」

 

 そう言ってひさは四人に向けて切り火を切ってくれる。

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

 そんなひさに楓子、炭治郎、善逸がお礼を言う中

 

「何すんだババア!!」

 

 切り火を知らなかったらしい伊之助が激昂するのを炭治郎と善逸が慌てて止める。

 

「あのね、今のは〝切り火〟って言って危険な仕事に行く私達を清めて、私達の無事を祈ってくれてるんだよ」

 

 止められている伊之助に楓子が優しく説明する。

 そんな四人の光景をひさはニコニコと眺め、口を開く。

 

「どのような時でも誇り高く生きて下さいませ。ご武運を…」

 

 ひさの言葉に楓子たち三人が頭を下げ駆け足で走り出す。

 伊之助も少し首を傾げながら三人の後を追って駆けだす。

 四人が少し進んだところで――

 

「誇り高く?ご武運?どういう意味だ?」

 

 伊之助が先程のひさの言葉でよくわかっていなかったところを訊く。

 

「ん~、確かに改めて訊かれると難しいけど……」

 

 そんな伊之助の問いに楓子は顎に指を当てて少し考えるぞぶりを見せ

 

「自分の立場――この場合私たちは鬼殺隊にいる人間として、他の人から見て恥ずかしくない正しい態度を振舞いましょうってことかな。ようは鬼との戦いで、例えば一般人を巻き込むだとか、そう言う非人道的な戦い方をしないようにしましょうね、ってことかな」

 

「ほぉ~ん……」

 

「ご武運って言うのは、さっきの切り火と一緒。私達の無事を祈ってくれてるんだよ」

 

「なんでババアが俺たちの無事を祈ってくれんだよ?何も関係ないババアなのに何でだよ?」

 

「何も関係なくはないでしょ?こうしてお世話になってたんだし」

 

 伊之助の問いに楓子は優しく微笑みながら振り返る。

 

「袖振り合うも多生の縁って言うでしょ?こうして出会って私たちのお世話してくれたんだもん、無事に生きてまた会えた方がいいでしょ?」

 

「…………」

 

 楓子の説明に伊之助は押し黙る。

 

「すごいですね、楓子さん!」

 

 と、そんな様子を黙って見ていた炭治郎が感心した様子で言う。

 

「俺、楓子さんみたいにわかりやすく説明できなかったと思います!」

 

「俺も……」

 

「フフ、まあ普段何気なく使ってる言葉って改めて説明しろって言われると難しいよね」

 

 炭治郎の後に続いて善逸も頷く。そんな二人に楓子は微笑みかけ

 

「伊之助くん、君はひささんの作る天ぷらが気に入ってたよね?」

 

「おう!それがどうした!?」

 

「任務が落ち着いたら、またおばあさん訪ねて元気な姿見せに行こうよ。ついでに天ぷらご馳走してもらってさ」

 

「…………」

 

 私の言葉に伊之助くんは少し黙り

 

「へんッ!しょうがねぇから行ってやるよ!」

 

 言いながら伊之助は鼻息荒く頷く。そんな伊之助に三人は優しく微笑んだ。

 

 

 ○

 

 

 そして、途中数度休憩を挟みながら鎹鴉の案内で走り続けた四人はどっぷりと日が沈んだ頃、目的地――『那田蜘蛛山』の近くまでやって来た。

と――

 

「待ってくれ!!ちょっと待ってくれないか!!」

 

 善逸がキリっとした顔で言うので三人が振り返る。そこでは道の真ん中に三角座りでしゃがみこんだ善逸が三人に視線を向け

 

「怖いんだ!!目的地が近づいてきてとても怖い!!」

 

 と、涙ながらに言う。

 

「なに座ってんだこいつ、気持ち悪い奴だな……」

 

「お前に言われたくねーよ猪頭!!目の前の山から何も感じねぇのかよ!!?」

 

 涙ながらに目の前の山――目的地である『那田蜘蛛山』を指さして言う善逸。

 

「しかし、こんなところで座り込んでても……」

 

「やっぱ気持ちワリィ奴」

 

「気持ち悪くなんてない!!普通だ!!俺は普通でお前らが――」

 

「ッ!?待って!!」

 

 と、善逸の言葉を遮って楓子が山の入口へ続く道へ視線を向ける。三人もその視線の先を見ると

 

「たす……助けて……」

 

「隊服を着てる!!鬼殺隊員だ!!何かあったんだ!!」

 

 道に倒れる鬼殺隊員の姿に炭治郎が慌てて駆けだす。

 

「大丈夫か!?どうした!?」

 

 炭治郎が駆け寄り手を伸ばす。が――

 

「「ッ!?」」

 

 炭治郎と伊之助の目の前で地面に倒れていた隊士の身体がまるで何かに引っ張られるようにふわりと舞い上がる。驚愕に言葉を失いながらさらに手を伸ばす炭治郎。そんな二人のわきを一陣の風が吹き抜ける。

 

「させるかッ!!」

 

 その風の正体――楓子は一瞬で駆け、地を蹴り大きく飛び上がり森へと飛んでいく隊員へ迫ると

 

「シッ!!」

 

 気合の息と共に隊員の背中のあたりへ日輪刀を振るう。

 と、引っ張られるように飛んでいく途中だった隊員の身体が急に自由落下で下へと落ちる。

 

「よっと!」

 

 その隊員の身体を抱き留め地面に降り立つ楓子。

 そんな楓子たちに炭治郎達も遅れて追いつく。

 

「怪我は……何か所かあるけど死に至るほど重篤なのはなさそうですね。とりあえず痛み止めと、出血してるところを止血します」

 

「あ、ああ……ありがとう……」

 

 一瞬の出来事に助けられた本人が茫然としながらてきぱきと治療を行う楓子にただただ素直に頷く。

 

「大丈夫ですか!?いったい何があったんですか!?」

 

 楓子に治療される隊員に炭治郎が訊く。

 

「あ、ああ……鴉から指令が入って十人の隊員がここに来たんだ……」

 

 炭治郎の問いにその隊員は答える。

 

「山に入ってしばらくしたら隊員が……隊員同士で……き、斬り合いになって……!!」

 

「「ッ!?」」

 

 隊員の言葉に炭治郎と伊之助は驚きで息を呑む。楓子も説明を聞きながら視線を鋭くする。

 

「い、いったいなんで……?」

 

「く、蜘蛛だ……」

 

「あぁ!?蜘蛛だぁ!?」

 

 伊之助の問いにその隊員は答える。

 

「こ、この山に入って少しして気付いたんだ……この山は尋常じゃないほど蜘蛛がいるんだ……俺も最初は気にしてなかったけど…他の隊員に襲われた時、その隊員に応戦して刀を振ったら、空振ったんだけどその隊員が襲うのをやめたんだ……たぶん、鬼の能力で操られてたんだと思う……」

 

「なるほど、操り人形みたいに糸で……」

 

「そ、そうだと思う……でも、それ以上は俺も何もできなくて……何とか下山したけど、それが限界で……」

 

 楓子が納得した様子で言うと隊員が頷く。

 

「そうか!さっきあなたがまるで見えない手で引っ張られたみたいに飛び上がったのは……」

 

「この人にも糸がつけられてたってわけだ。私もよくわからなかったけど引っ張られてる様子だったからとりあえず後ろを斬ってみたけど、正解だったのね」

 

炭治郎が楓子の言葉に頷く。

 

「これは山に入るときは気を付けないと……」

 

「えぇぇぇぇッ!!?」

 

 と、炭治郎の言葉に三人の背後から声が響いた。

 見るとまるで生まれたての小鹿のように足を震わせる善逸が恐怖に引き攣った表情で楓子たちを見ていた。

 

「いやいやいや!!今の聞いてたろ!?無理だって!!」

 

「…………」

 

 そんな善逸の様子に炭治郎は黙り

 

「……俺は、行く」

 

 真剣な表情で言う。しかし、その顔には少しの不安と恐怖が見えた。と――

 

「俺が先に行く!!」

 

 伊之助が炭治郎を押しのける様に前に出る。

 

「へッ!お前はガクガク震えながら後ろをついて来な!!」

 

 と、炭治郎に言ってやる気満々の声で

 

「腹が鳴るぜ!!」

 

 不敵に言った。

 

「伊之助……」

 

「腕が鳴るだろ……」

 

 驚いた様子の炭治郎。善逸は震えながらも冷静にツッコむ。そんな様子を見ながら楓子は治療を進め

 

「……ごめん二人とも先に行ってて。私もすぐ追いかけるから」

 

「はい!」

 

「へッ!テメェがいなくても俺だけで十分だぜッ!!」

 

 楓子の言葉に二人が頷き山に向かって駆けだす。

 そこから数分後に

 

「よし、今できるのはこんなもんかな」

 

 楓子は頷き、広げていた薬や医療器具をてきぱきとリュックにしまう。

 

「とりあえず今できる応急処置はしました。あと、これ持っていてください。藤の花の香袋です」

 

「あ、ありがとう……」

 

「私の鎹鴉で救難は呼んでおきました。すぐに『隠』の人が来てくれると思いますのでここで安静にしててください」

 

 言いながら楓子は立ち上がり

 

「で、君はどうするの、善逸くん?」

 

「え……?」

 

「私は行くよ。この山にいる鬼はかなりまずい相手みたいだからね。二人だけじゃ心配だ」

 

 そう言って楓子は善逸に微笑みかけ再び訊く。

 

「君はどうする?」

 

「俺は……」

 

 楓子の問いに善逸は悩む様子で押し黙る。

 

「前に言ったこと覚えてる?」

 

「え……?」

 

「勇気とはいったい何か?〝怖さ〟を知り、〝恐怖〟を我がものにすること、だよ」

 

「ッ!」

 

 楓子の言葉に善逸は息を呑む。

 

「別に強制するつもりはないよ。いつか恐怖を我がものにできる日が来るだろうからさ。でもね、その〝いつか〟っていつ?」

 

「それは……」

 

「いつか、いつか、って考えてるうちはその〝いつか〟は待ってても来ないと私は思うよ。君の方から一歩踏み出さないと」

 

 そう言って楓子はポンと善逸の肩に手を置く。

 

「いいかい?〝いつか〟って言うのはね、〝今日〟なんだよ。〝いつか〟来る明日じゃなく、まずは〝今日〟頑張ってごらんよ」

 

「楓子さん……」

 

 楓子の言葉に善逸は少し悩む様子を見せる。

 

「……私は行くね。待ってるよ」

 

 そう言って楓子は優しく微笑むと炭治郎達の後を追って山道へ向かって行くのだった。

 

 

 ○

 

 

 炭治郎くん達を追って山道を歩いてた私は

 

「なんで〝柱〟じゃないんだ…!!癸なんて何人来ても同じだ、意味が無い!!」

 

 という叫び声との直後

 

「ギャッ!!?」

 

 短い悲鳴が聞こえた。

 

「今の……」

 

 私は声の聞こえた方に歩を進める。と――

 

「あ、やっぱり村田さん」

 

「え……?――お、大好ッ!!?」

 

「どもどもトゥットゥル~!あなたの可愛い後輩、大好楓子ちゃんどぅえっす!キラッ☆」

 

 と、私は某宇宙アイドルを真似てポーズ込みでウィンクする。

 

「あ、楓子さん!」

 

「んだよ、遅かったじゃねぇか!」

 

「やあやあすまんね~!」

 

 と、炭治郎くんと伊之助くんに言う。

 

「ていうか、大丈夫ですか村田さん?あちこちボロボロですね。あ、鼻血出てる」

 

「この鼻血はそこの猪のせいだ!!てかお前こんなところで何やってんだよ!?」

 

「ちょいといろいろあって今この炭治郎くんの面倒見てるんです」

 

「楓子さんにはいつもお世話になってます!楓子さんのお知合いですか?」

 

「私が鬼殺隊入ったころに合同の任務何回かした先輩隊員の村田さん。村田さん、こちら炭治郎くんと伊之助くんです」

 

 私はそれぞれを指差しながら紹介する。

 

「面倒見てるって……お前ついに継子持ったのか!?」

 

「え?違いますけど?そもそも柱じゃないですから、私」

 

「でも情報戦略部と医療部門の責任者やってるんだろ?もはや秒読みだろ……」

 

「え……?」

 

 と、村田さんの言葉に炭治郎くんが呆けた顔をする。――あ、ヤベ……

 

「ふ、楓子さんってそんなに偉い方だったんですか!?」

 

「知らなかったのかお前!?」

 

「私が秘密にしてましたから。私変に敬われるの苦手なんで、()()()()()()()()()()()

 

「ヒッ!?」

 

 ニッコリと微笑みながら言うと村田さんが怯えた様子で引き攣った表情になる。

 

まったく、村田さんはおしゃべりですね~(お前、何ばらしてくれとんねん)

 

「……怒ってるか?」

 

いえいえ、怒ってませんよ~?(テメェ、あとで覚えてろよ)

 

「怒ってるだろ!!言葉の陰に本音が見え隠れしてんだよ!!」

 

 私の言葉に村田さんが叫ぶ。おかしいな、今の私は仏様顔負けのアルカイックスマイルを浮かべているはずなのに……。

 

「まあ私のことはいいんです!今はこの山の鬼ですよ!村田さん、とりあえず現状の確認はできてるので――」

 

 言いかけた私だったが

 

 ガサガサガサッ

 

「「「ッ!?」」」

 

 草をかき分ける音に揃ってその音の方向に視線を向ける。そこには――

 

「出たッ!気を付けろ!あいつら厄介なんだよ!」

 

 そこにはゆらゆらと挙動のおかしい鬼殺隊員が立っていた。

 

「なるほど、あれが例の操られている隊員ですか!」

 

「操られてる!?」

 

「ここに来る前に他の隊員の方に聞いたんです!どうやらこの山にいる鬼は人を操るんです!隊員の背中のあたりに糸があります!それを切れば隊員たちは解放されます!」

 

 と、話している間に操られた隊員たちが続々と寄ってくる。

 

「はぁッ!!」

 

 私は論より証拠と一番近くにいた隊員の背中に周り刀を振るう。と、私の前にいた隊員がガクリと膝をつく。

 

「しゃぁッ!やっぱし!」

 

「おお!」

 

「俺も負けてられっかぁぁぁッ!!」

 

 感心する炭治郎くんと負けじと操られた隊員たちに向かって行く伊之助くん。

 

「そ、そうか!わかった!俺も――」

 

「あ、待ってください!蜘蛛にも気を付けてください!でないと――ッ!」

 

 言いかけた私は左手がガクンと引っ張られる感覚を感じ

 

「せいッ!!」

 

 左手の延長線上に刀を振るう。と、引っ張られる感覚が消える。

 

「やっぱり!ただ切っただけじゃだめだ!」

 

 私が言ったところで私や炭治郎くん達が糸を斬って解放したはずの隊員たちが再び操られ立ち上がる。

 

「だったら蜘蛛を皆殺しにすればいいってことだな!!」

 

「無理だ!!蜘蛛は小さいし多分かなり数がいる!!操ってる鬼を見つけなければいけないんだよ!!」

 

 再び襲ってきた隊員たちに応戦しながら伊之助くんの言葉に炭治郎くんが答える。

 

「でもさっきから変な匂いが流れてきていて俺の鼻がうまく機能してない!!伊之助!!もし君が鬼の位置を正確に探る何らかの力を持っているなら協力してくれ!!」

 

「お願い伊之助くん!!」

 

 炭治郎くんの言葉を引き継いで私も言う。

 

「私に秘策がある!この場にいる隊員たちは私たち三人が何とかするから、君は大元を――」

 

 と、そこまでいったところで私の上を影がゆっくりと横切る。

 

『ッ!?』

 

 その陰に気付いた私以外の三人も周囲の隊員たちに注意を払いながら上を見る。と、そこには――

 

「僕たち家族の静かな暮らしを邪魔するな」

 

 糸の上に立つ白髪の少年がいた。

 ――累だ。

 髪で隠れているが、その左目には『下伍』の文字がある。正真正銘の十二鬼月・下弦の鬼だ。この那田蜘蛛山の主、他の鬼たちを自身の配下にし、血鬼術を分け与えて〝家族〟とする鬼。序盤最も炭治郎達を苦しめる鬼だ。

 ここで仕留められれば炭治郎くん達を必要以上に傷付けずに済む、と考え日輪刀を握りこんだところで

 

――本当にここで倒してしまってもいいのか?

 

 頭の片隅でそんな疑問が浮かぶ。

 そうだ、ここで炭治郎くんは累との戦いで苦戦はするが、その結果『ヒノカミ神楽』を使えるようになり、禰豆子ちゃんも血鬼術『爆血』に目覚める。

 そんなパワーアップイベントを無かったことにしていいのか?

 と、迷ってしまったせいで、私は一瞬出遅れた。気付いた時には伊之助くんが累へと飛びかかり、しかし、跳躍が足らずそのまま地面に落ちたところだった。累はそのままさっさとどこかへ行ってしまう。

 

「伊之助くん!!とりあえず今はこの操ってる大元の鬼だ!!あの子どもの鬼はたぶん違う!!別にいるはずだよ!!」

 

「チィ!あーあーあー!!鬼の居場所探せばいいんだろ!!」

 

 そう叫んで伊之助くんは二本の刀を地面に突き刺しそれを大きく手を広げて片膝をついてしゃがみ込む。

 

「獣の呼吸・漆の型!!空間識覚!!!」

 

 そのまま数秒後

 

「見つけたァそこか!!」

 

 伊之助くんが叫んだ。

 

「でかした伊之助くん!!」

 

 そう叫び返した私は

 

「よぉしッ!今度は私の番!!」

 

 言いながら私はリュックに手を突っ込み目的のものを取り出す。

 この私がこの状況を知っていてなんの対策も用意していないと思ったか!?

 

「こういう時用に用意してた私の秘密兵器(リーサルウエポン)!!」

 

 リュックから取り出した拳大の壺を大きく掲げながら言った私は

 

「せい!!」

 

 近くにいた操られた隊員の背後に刀を振るい

 

「ふうちゃんパウダ~!!」

 

 その壺の中身をひと摘みその隊員へ振りかける。

 すると――

 

「く、蜘蛛が避けてる!?」

 

「よっしゃ予想通り!!」

 

 驚く村田さんの言葉を聞きながら私はガッツポーズする。

 

「い、いったい今のは!?」

 

「藤の花を粉末にしたものだよ。鬼は藤の花が苦手だからね!」

 

「すごい!」

 

 問いに答えた私に炭治郎くんは感心した様子で声を上げる。

 

「でも一つ問題があってね。この粉末の毒性じゃ鬼を殺すのは難しい。せいぜい体調を崩させる程度なんだ」

 

 そう言ってから「でも」と断って

 

「こういう鬼の能力によって操られてる虫とかになら効くわ。藤の花の香袋とかお香と一緒の効果は見込める」

 

「なるほど、これを使えば――!」

 

「これ以上この人たちを操られることはないってわけ!」

 

 炭治郎くんに頷き

 

「ってわけで村田さん!これを!!」

 

「お、おう!?」

 

 私は持っていた壺を村田さんに投げ渡す。

 

「村田さん、ここお願いします!私たちは大元を何とかしに行きますから!」

 

「わ、わかった!任せろ!情けないところを見せたが俺も鬼殺隊の剣士だからな!!」

 

「よろしくお願いします!!」

 

 大きく頷いた村田さんに応え、私は炭治郎くん達を伴って駆けだした。

 

「炭治郎くんは私があの粉末使うときは離れててね。禰豆子ちゃんに影響があるかも」

 

「わ、わかりました!」

 

 私の言葉に炭治郎くんが頷く。そんな彼の顔を私は黙って見つめ

 

「??? どうかしましたか?」

 

「……ごめん!なんでもない!先を急ごう!」

 

 首を振ってさらに歩を速める。

 くそ、さっき思わず迷ってしまった。

 今炭治郎くんを助けることと、多少危険な目に遭っても炭治郎くん達が成長すること、きっと今後のことを考えれば後者の方がいいのだろう。でも、そのために彼らが傷つくのを私は黙って見ていられない。でも必要以上に原作介入してしまえば逆に炭治郎くん達の生存率が下がってしまうかもしれない。

 ……とりあえず今は迷ってる場合じゃない。まずは目先の相手、隊員たちを操ってるあの母鬼を何とかしないと。

 と、考えたいたところで――

 

「駄目……こっち来ないで!!」

 

 私たちの進行方向から声が聞こえた。見ると

 

「誰か階級が上の人を連れて来て!!そうじゃないとみんな殺してしまう!!お願い…お願い!!」

 

 隊員たちを涙を流しながら斬り付けるポニーテールの女性隊員がいた。

 

「炭治郎くん!!伊之助くん!!先に行って!!この人たちを助けたらすぐに追いかける!!」

 

「はいッ!!」

 

「お前がいなくても俺が鬼をぶっ殺してやるぜぇぇぇッ!!」

 

 応じた炭治郎くんと伊之助くんに

 

「伊之助くん!これ持って行って!!」

 

「ああんッ!?」

 

「藤の花の粉末!!炭治郎くんは禰豆子ちゃん連れてるから使えないから!!」

 

「しょうがねぇなぁ!!貰っていってやる!!」

 

「すみません、お願いします!!」

 

 私の言葉に頷いた伊之助くんと炭治郎くんは駆け出し

 

「逃げてェ!!」

 

 操られた女性隊員は二人を追って駆け

 

「せいッ!!」

 

 わたしはそんな女性隊員を操る糸を斬る。

 その瞬間女性隊員の身体がガクッと倒れこみそうになり、とっさにそれを受け止め

 

「これでもう操れないだろッ!!」

 

 女性隊員の身体に藤の花の粉末を振りかける。

 そのまま女性隊員をそっと地面に降ろす私の背後で倒れていたほかの隊員たちが操られて立ち上がらせられて

 

「遅い!!」

 

 立ち上がりきる前に私はその糸を斬り、同じく藤の花の粉末を振りかける。

 さらに周囲に倒れる隊員たちにも粉末を振りかける。

 

「とりあえずこのあたりの人が操られることはもうないだろう……」

 

「こ、これは……?」

 

「藤の花の粉末です!これをかけておけば糸をつけ直されないからもう操られることはないはずです!」

 

 答えながら女性隊員に駆け寄り傷の具合を見る。

 

「腕の骨折が酷い。動かない可動域にも無理矢理操られて……ひどいな」

 

 とりあえずそこまで見たところで他の隊員たちの診察もしていく。

 かなり危ない状態の人も何人かいる。原作で本人たちも言っていたが折れた骨が内臓に刺さってる者もいた。

 

「ここでは機材もないし処置は難しい……とりあえず今は鎮痛剤と骨折箇所の固定だけでも……」

 

 私は大急ぎで応急処置をして回る。

 

「すみません、今の手持ちの道具と薬ではこれが限界です。とりあえずここで動かずじっとしていてください。すでに救援を飛ばしているのでもうすぐ『隠』の方が来てくれると思いますから」

 

「あ、ありがとう……」

 

「さっきより…楽になった……」

 

 応急処置を施し木にもたれるように寝かせた隊員たちに言うと、隊員たちは口々にお礼を言う。

 それに頷きながら私は立ち上がる。

 

「それじゃあ行きます。さっきの藤の花の粉末でまた操られることも鬼がやってくることも無いと思いますんで!」

 

「あ、ああ……」

 

「お、お願い!私たちの分も鬼を!!」

 

「はい!任せてください!!」

 

 隊員たちの言葉に頷き、私は駆けだす。

 出来るだけ手早くそれでいて丁寧にしたが、少し応急処置に時間がかかってしまった。炭治郎くん達は大丈夫だろうか?

 まずは大急ぎで合流を、と考えていたところで――

 

「ッ!?」

 

 私は背中に感じた悪寒にとっさに飛びのく。と、私の一瞬前にいた地面に何かが数発着弾し爆ぜる。

 

「いったい何が……!?」

 

 突然の攻撃に困惑する私。こんな攻撃をする奴、原作では那田蜘蛛山にはいなかったはず……。

 

「不意打ちだったのに、よく避けたわね」

 

「流石はあのお方が我々十二鬼月に殺すように命じられたわけだ」

 

「ッ!?誰だッ!?」

 

 困惑する私に先程弾丸のように何かが飛んできた方向から二人分の声が聞こえる。

 私の声に少し間を開け、月明かりの届かない木の陰の闇から二人の人物が姿を現す。

 一体は額から一対の角を生やした白髪の女の鬼。もう一体は額と両頬に計三つの×字の傷のある男の鬼。私は、その顔を知っていた。

 

「お前を殺せばあのお方は血を分けてくれると言ったわ」

 

「人間一人に十二鬼月の下弦が二人掛かりというのはいささか過剰な気もするが、この程度で血を分けていただけるなら楽なもの」

 

 そう言って二体の鬼は

 

「貴様を殺して私たちはさらに強くなる」

 

「俺たちの為に死んでくれ、大好楓子」

 

 そう言って二体の鬼はそれぞれ左目に『下肆』『下参』とか書かれた瞳を細め、獰猛に微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく頑張って戻ったね」

 

 産屋敷の邸宅にて耀哉は息も絶え絶えの様子の鴉を優しく撫でながら言う。

 

「私の剣士(子ども)たちは殆どやられてしまったのか。そこには〝十二鬼月〟がいるかもしれない」

 

 言いながら耀哉は庭の方を向いたまま背後に呼びかける。

 

「〝柱〟を行かせなくてはならないようだ。義勇、しのぶ」

 

「「御意」」

 

 耀哉の呼びかけに部屋の中で正座し話を聞いていた義勇としのぶの二人が応じた。

 

 




ついに突入那田蜘蛛山!
しかし、原作にどこまで介入するかその線引きに悩む楓子ちゃんの前に現れた原作ではまだ登場しないはずの下弦の鬼(イレギュラー)
この変化が物語にどう変化をもたらすのか!?
お楽しみに!


さてさて、今回の質問はひんさんから頂きました三つです!

――さねカナ(実弥×カナエ)CPは守備範囲ですか?

楓子「守備範囲どころか直球ど真ん中ストライクです!というかあの二人現在進行形で――っとすみませんまだこれオフレコでした!」

――女装もしくは男装をさせたいキャラはいますか?

楓子「女装なら冨岡さんですかねぇ?あの人顔整ってますし髪も長いですからねぇ。たぶん化粧の仕方でいくらでも化けますよ。
 男装ならしのぶさんとカナエさんですかね?あの二人なら宝塚の男役ばりのイケメンが出来上がるんじゃないでしょうか?」

――今後の自筆出版で書く予定のものはありますか?

楓子「かまぼこ隊の友情(BL添え)あ、ただ三人ともそれぞれのCP(炭カナなど)は守りますよ?もちろんモデルにするだけであくまでフィクションだから実在の個人・団体等は関係ありませんのであしからず!」

といことでした!
また次回の質問コーナーでお会いしましょう!



~大正コソコソ噂話~
楓子の言葉により、善逸は那田蜘蛛山に入山しています。
原作のように禰豆子を追って、ではなく、自ら立ち向かう〝いつかの明日〟を〝今日〟にするために。


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