恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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柱合会議は長くなるので二、三話に分かれます。
そんな柱合会議編その1です。
それでは柱合会議という名の炭治郎くんの裁判、開廷!!





恋29 恋柱の継子と柱合会議①

 

「起きろ……起きるんだ……」

 

 まどろむ意識の中、炭治郎の耳に誰かの声が聞こえる。

 しかし、炭治郎はその声に応えられない。体がひどくだるく重たい。意識が浮上するのを妨げる。

 

「起きろ…起きろって……」

 

 それでも炭治郎を呼ぶ声は続き

 

「起き…オイ……オイコラ!やいてめぇ!」

 

 なおも起きない炭治郎に声の主はしびれを切らせたようでその声は徐々にイラついた怒声に代わり

 

「やい!!いつまで寝てんだ!!さっさと起きねぇか!!」

 

 耳元で響いた大音量の怒声に流石にハッと瞼を開けた炭治郎。

 そこには自身の頭のそばで座り込み鬼殺隊の制服に顔を黒い頭巾と口元を黒い布で覆った目元だけ見える男が睨んでおり、さらにその周りで六人の男女が自分を見下ろしていた。

 

「柱の前だぞ!!」

 

「はし…ら……?」

 

 頭巾の男の言葉に炭治郎は茫然と呟く。

 

(柱って…確か楓子さんの言ってた鬼殺隊の一番強くて一番階級が上の人達……この人たちが……!?)

 

 眠りから覚醒したばかりでぼんやりする頭で考えながら炭治郎は辺りを見渡す。

 

(ここはどこだ……?俺はいったい……?)

 

「ここは鬼殺隊の本部です」

 

 炭治郎が困惑していると、自身を見下ろしていた六人の人物のうちの一人――那田蜘蛛山で禰豆子を殺そうと日輪刀を向けてきた蝶の髪飾りの人物が一歩前に出て言う。

 

「あなたは今から裁判を受けるんです、竈門炭治郎くん」

 

「裁…判……?」

 

 蝶の髪飾りの人物――蟲柱・胡蝶しのぶの言葉に炭治郎は茫然と聞き返す。

改めて辺りを見れば、そこはどこかの屋敷の庭のようで、真っ白な玉砂利の上で縄で拘束されていることに気付く。

炭治郎の問いに頷いたしのぶは

 

「裁判を始める前に、君が犯した罪の説明を――」

 

 と、言いかけたが

 

「裁判の必要などないだろう!」

 

「え?」

 

 言いかけた言葉を遮る大声にしのぶは首を傾げながら声の主を見る。

 炭治郎もそちらに視線を向けると、そこには善逸のような鮮やかな金髪に毛先が赤い髪の快活そうな雰囲気の男が大きく頷いていた。

 

「鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我々のみで対処可能!鬼もろとも斬首する!」

 

 と、金髪の男――炎柱・煉獄杏寿郎が言い

 

「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう」

 

 杏寿郎の言葉に賛同して二メートルはあろうかという巨体に筋肉質な太い腕を晒した白髪に宝石の散りばめられた額宛に顔には化粧を施している男が言う。

 

「誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」

 

 と、白髪の男――音柱・宇髄天元が高らかに言い

 

(えぇぇ……こんな可愛い子を殺してしまうなんて、胸が痛むわ、苦しいわ)

 

 と、二人の言葉に大きく開いた胸元から日本人離れした胸が零れんばかりに露出させた桃色の髪の女――恋柱・甘露寺蜜璃が眉を八の字にし

 

「あぁ…なんとみすぼらしい子どもだ、可哀想に。生まれて来たこと自体が可哀想だ」

 

 宇髄を超える巨漢の男――岩柱・悲鳴嶼行冥が数珠を持つ手を合わせて涙を流しながら言い

 

(なんだっけ、あの雲の形。なんて言うんだっけ?)

 

 長い髪にダボついた隊服の小柄な少年――霞柱時透無一郎は無関心でぼんやりと空を見上げている。

 

「殺してやろう」

 

「うむ!」

 

「そうだな、派手にな」

 

 行冥と杏寿郎と天元が言い合う中で炭治郎は

 

(禰豆子!?禰豆子はどこだ!?善逸!?伊之助!?村田さん!?楓子さん!?)

 

「お前……柱が話しているのにどこを見てるんだ?」

 

 妹や友人たちの安否を確認しようと辺りをしきりに見渡し、そんな炭治郎の様子に黒頭巾の男――『隠』の一人である後藤は呆れた様子で言う。

 

「このお方たちは鬼殺隊の中でも最も位の高い九名の剣士だぞ」

 

「九…名……?」

 

 後藤の言葉に炭治郎は改めて目の前の人物たちに視線を向ける。

 しかし、そこには六人しかおらず――

 

「そんなことより、冨岡と真菰はどうするのかね?」

 

「ッ!?」

 

 と、新たな声が聞こえて炭治郎は声のした方向に視線を向ける。そこには――

 

「拘束もしてない様に、俺は頭痛がしてくるんだが?」

 

 と、黒と白の縞模様の羽織を着たおかっぱの黒髪に左右で色の違う瞳、口元を包帯で覆った男――蛇柱・伊黒小芭内が松の木の上から指差しながら言う。

 

「胡蝶妹の話によると、隊律違反は冨岡も、そしてその継子である真菰も同じだろう。何かしらの処分はあってしかるべきだ。でなければ下の者に示しがつかん」

 

 と、小芭内の言葉に炭治郎はその指さす方向に視線を向ける。そこには

 

「…………」

 

 半分で模様の違う羽織の男――水柱・冨岡義勇がそっぽを向いて立っており

 

「私達はどんな処罰でも甘んじて受けます!ですが、彼――炭治郎くんには厳正な裁判による判断をお願いします!どうか!」

 

 花柄の赤い羽織を着た頭に狐の面を被った少女――鱗滝真菰が義勇の隣で神妙な顔で膝をついて頭を下げる。

 

「まあこのように大人しくしていますし、処罰は後で考えましょう」

 

 そんな二人の様子にしのぶが言い

 

「私は、〝彼〟から話を聞きたいです」

 

 と、しのぶの言葉に(義勇を除く)残りの面々の視線が向く。

 

「彼が鬼殺隊員の身でありながら鬼を連れて任務にあたっていたこと。そのことを当人の口からちゃんと説明を聞いておきたいです」

 

 そう言ってしのぶは促すように炭治郎に視線を向け

 

「あなたはあの鬼を〝妹〟と言っていました。しかし、鬼を連れていたこと自体は鬼殺隊の隊律違反に当たります。そのことは知っていましたか?」

 

「ッ!」

 

 しのぶの問いに炭治郎は息を飲み、ゆっくりと身を起こす。

 

「ゆっくりでいいので、話してください」

 

「…………」

 

 真剣な表情で言うしのぶの言葉に炭治郎は意を決し

 

「俺の…俺の妹――ガハッゲホッ!!」

 

 言いかけた言葉は顎に走った鈍痛に遮られた。炭治郎はその痛みに顔を顰め咳き込む。顎の痛みだけではない。那田蜘蛛山での戦闘で炭治郎の身体は疲労で限界だった。

 

「水を飲んだ方がいいですね」

 

 そんな炭治郎にしのぶは懐から取り出した瓢箪のフタを開け炭治郎に歩み寄りしゃがんで口元に向ける。

 

「顎を痛めているのでゆっくり飲むように」

 

 炭治郎はしのぶの優しい声音の言葉に頷きその瓢箪を咥えて中の水を飲む。

 

「鎮痛薬が入っているので多少は痛みが引くでしょう。でも、怪我自体は治っていないので無理はしないように」

 

 炭治郎がある程度飲んだところで瓢箪を離し、フタをしたしのぶは

 

「では、改めて話してください」

 

 そっと促す。

 

「……鬼は、俺の妹なんです」

 

 炭治郎は大きく深呼吸し、話し始める。

 

「俺が家を留守にしている時に襲われ、帰ったら家族みんな死んでいて、妹は鬼に……だけど!鬼になってこの二年、妹は人を喰っていません!今までも、これからも、人を傷つけることは絶対にしません!!」

 

 炭治郎はなんとか禰豆子に危険性がないことをわかってもらおうと一生懸命に話す。しかし――

 

「くだらない妄言を吐き散らすな」

 

 炭治郎の言葉に目を細めて小芭内が炭治郎を指さし

 

「そもそも身内なら庇って当たり前。言うこと全て信用できない。俺は信用しない」

 

 冷徹に言い放つ。そして――

 

「あああ……鬼に取り憑かれているのだ。早くこの哀れな子どもを殺して解き放ってあげよう」

 

 行冥は涙を流しながら言う。

 他の柱たちもそれぞれ意見に差異はあるようだが、炭治郎の言葉を信じていない表情だ。

 

「ッ!」

 

 そんな柱たちに炭治郎は再度口を開こうとし――

 

「お待ちください」

 

 新たな声がそれを制した。

 

「彼の処分について、判断を下すのは待っていただきたい」

 

 その声の主は玉砂利を踏みしめ炭治郎達のもとに現れる。その人物は――

 

「ふ、楓子さん!!」

 

 

 

 ○

 

 

 

「申し訳ありません。お館様へのもろもろの報告の為来るのが遅くなりました」

 

 と、私は並ぶ柱の面々へ頭を下げる。

 

「楓子ちゃん!?」

 

「大好!?」

 

「蜜璃さん、伊黒様、お久しぶりです。大好楓子、戻りました」

 

 驚き目を見開く蜜璃さんと伊黒様に頭を下げ

 

「杏寿郎さんも、お久しぶりです」

 

「うむ!息災そうで何よりだ!!」

 

 もう一人の師である杏寿郎さんに微笑みながら言うと、杏寿郎さんも大仰に頷きながら笑顔で言う。

 

「こいつの処罰を下すのを待てとはどういうことだ?」

 

「そのままの意味です、宇髄様」

 

 訝しむ様子で私を見る宇髄様に私は答え

 

「今回の彼と彼の妹への処罰についてはお館様のお話を聞いてからにしていただきたいんです」

 

「どういうことだね?」

 

 と、私の言葉に悲鳴嶼様が訊く。

 

「悲鳴嶼様、それに皆さん、今回の件についてお館様はすべて把握していらっしゃいます」

 

『ッ!?』

 

 私の言葉に柱の面々が息を呑む。いや、時透様だけはなんかぼんやりと首を傾げながら私の顔を見てるだけだ。どうせ「誰だこいつ?」とか思ってるんだろう。一回会ってるんだけどなぁ……。まあそれはさておき

 

「なので、彼の裁判はお館様の意見を聞いてからにしていただきたいんです」

 

「話は派手に分かった」

 

 と、私の言葉に宇髄様が頷き

 

「だが、何故お前がそれを知っている?何故柱でもない無関係なお前がここにいる?」

 

 言いながら私を指さす。

 

「無関係ではありません」

 

 そんな宇髄様の問いに私は首を振る。

 

「私はお館様直々の命で炭治郎くん達に同行し、彼と彼の妹の様子について調べていました。なので、私も関係者です。それはもう派手派手に」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 私が言うと、蜜璃さんと伊黒様と杏寿郎さんとしのぶさん、それにまこちゃんの五人が目を見開く。

 

「ま、待って!それどういうことなの!?」

 

「お前が受けた任務は『新人隊士の育成』ではなかったのか!?」

 

「俺もそう聞いていたぞ!」

 

「わ、私も……!」

 

「あ、すみません。それ、嘘です」

 

 蜜璃さん達の問いに私は悪びれながら答える。

 

「お館様から口止めされてまして。まあ言えるわけないですしね、『鬼を連れた隊士の素行調査に行ってきます』なんて。なので、嘘は嘘でも『合理的虚偽』ってやつですね」

 

「そ、それは……」

 

「まあ……」

 

「うむ!確かにな!!」

 

 蜜璃さん達は私の言葉に納得した様子で頷く。

 

「あ!じゃあさっきのお館様への報告って言うのも……」

 

「はい、炭治郎くん達に同行し那田蜘蛛山までの様子についてお話してきました」

 

 しのぶさんの問いに頷いた私は改めて柱の面々を見渡し

 

「まあそんなわけなので、この炭治郎くんへの裁判、私も――」

 

「あ、思い出した」

 

 と、言いかけた私を時透様が言いながら指さし

 

「君、〝チョコの人〟だ」

 

「誰がマクギリスやねんッ!!?」

 

 その言葉の衝撃に私は思わず叫んでいた。

 いやいやいや、あんたのその声でそう呼ばれちゃうともはやそれだよ!それ以外の何物でもないよ!

 と、ひとり興奮していたのだが

 

「まく……?」

 

「誰それ?」

 

「……すみません、こっちの話です」

 

 蜜璃さんと時透様の呟きと共にその場の全員が首を傾げるので、興奮していた頭が急速に冷え、私はそっと頭を下げ

 

「と、とにかく!この会議、私も同席させていただきます!」

 

 コホン、と咳払いをして私は改めて宣言する。

 

「うむ!君の話はよく分かった!」

 

 と、私の言葉に杏寿郎さんが大きく頷き

 

「ただ、一つ聞かせてほしい!」

 

「なんでしょうか?」

 

 続いた杏寿郎さんの問いに私は杏寿郎さんの顔を見る。

 

「君がお館様にした報告の内容を聞きたい!それと、それに対するお館様の反応もだ!」

 

「なるほど……」

 

 杏寿郎さんの言葉に頷いた私は首を振る。

 

「すみません、お館様ももうすぐ来られると思います。お館様のご意見を私が先んじて言うのは……」

 

「うむ!それは確かに道理だな!」

 

 私の言葉に杏寿郎さんは納得した様子で頷く。

 

「ですが」

 

 そんな杏寿郎さん、そして、他の面々に向けて言う。

 

「この会議における私の考えと立ち位置だけ明確にしておきます」

 

「ふーちゃんの考えと立ち位置って?」

 

 私の言葉に蜜璃さんが訊く。そんな蜜璃さんに頷き、私は炭治郎くんのそばまで歩み寄り、そのまま並ぶ柱の方々と炭治郎くんの間に立って柱の方々に向き直り

 

「今回のこの炭治郎くんの罪の是非を問う裁判において、私は炭治郎くんの味方として彼を弁護させていただきます」

 

 そう宣言した。そんな私の宣言に対しその場の面々はそれぞれ

 

「そんな……!?」

 

 蜜璃さんは驚愕に目を見開き

 

「大好…お前まで……」

 

 伊黒様は息を飲み

 

「なんと!?」

 

 杏寿郎さんは興味深そうに眼を見開き

 

「なるほど!俺達が検察と裁判官、お前が弁護士になるってわけか!派手に面白れぇ!!」

 

 宇髄様は楽しげに笑い

 

「あああ、なんということか……鬼に味方する者が増えるとは……」

 

 悲鳴嶼様が涙を流しながら数珠を持った手を合わせ

 

「…………」

 

 時透様は興味なさそうにぼんやりと空を見上げ

 

「そう…楓子も……」

 

 しのぶさんは目を細めて私の顔を見つめ

 

「…………」

 

 冨岡様は無言と無表情で、しかし、私へ視線だけは向け

 

「ふうちゃん……」

 

 まこちゃんは今にも泣きそうな顔で私を見つめ

 

「楓子さん…ありがとうございます!!」

 

 私の背後では炭治郎くんが涙ぐんだ声で礼を言っていた。

 

「二人のこと、調査するため同行し観察し続けた結果、私は彼と彼の妹に希望を見出しました。彼の妹は彼や私達と共に戦えます。私はそう確信しています」

 

 チラリと炭治郎くんに微笑みかけながら頷き、柱の面々たちに言う。

 

「そ、そうです!」

 

 そんな私の言葉に炭治郎くんが頷き

 

「禰豆子は俺と一緒に戦ってきました!これまでも、そしてこれからも鬼殺隊として人を守って戦えます!!だから――」

 

 そう言いかけたところで

 

「オイオイ、なんだか面白いことになってるなァ」

 

 新たに聞こえてきた声に遮られた。

 その声に私も含め、その場の全員の視線が集まる。

 視線の先には――

 

「鬼を連れた馬鹿隊員ってのは、そいつかいィ?」

 

 白い羽織に胸元の大きく開いた隊服、胸や腹やぎらつく瞳の顔にも痛々しい傷の走る獰猛な笑みを浮かべた男――風柱・不死川実弥が禰豆子ちゃんの入っているであろういつもの木箱を持って立っていた。

 

「一体全体どういうつもりだァ?しかも本人以外にもそこの女……」

 

「大好楓子です!蜜璃さんの継子の!!」

 

「名前なんか聞いちゃいねぇんだよォ」

 

「……うっす」

 

 私の言葉にギロッと睨みながら言う不死川様に私はため息をつきながら頷く。

 あぁ、やっぱ駄目だったか~……一応はこうならないように隠の人達には注意促しといたんだけど……こんな反論した瞬間に切られそうな殺気マシマシの強面で睨まれたらやっぱ拒否できないよなぁ……

 と、心中で人知れずため息をついていると

 

「困ります不死川様!どうか箱を手放してくださいませ!!」

 

 慌てた様子で女性の隠――東城さんって言うらしい――が追って現れ

 

「あ、胡蝶様、大好様、申し訳ありません……」

 

 しのぶさんと私の姿を見つけ、申し訳なさそうに眉を寄せてペコペコと頭を下げる。

 原作でもそうだったのか、しのぶさんは正確に状況を見定めて判断を下せる様に他の柱の人達が先走らないように私同様の注意を隠の人達に促し禰豆子ちゃんの管理を任せていたらしい。

 

「…………」

 

 しのぶさんは箱を持って現れた不死川様に不機嫌な様子を一切隠さず

 

「不死川さん、勝手なことをしないでください」

 

 ギロリと睨みながら言う。

 しかし、しのぶさんの不機嫌な睨みも一切気にした様子無く無視して

 

「鬼が何だって?鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?そんなことはなァ……」

 

 言いながら不死川様は刀の柄に手をかけ

 

「ありえねぇんだよ馬鹿がァ!!」

 

 言った直後日輪刀を抜き、禰豆子ちゃんの入った箱に突き立てる。貫いた反対側、切っ先の方から鮮血が迸り

 

「うぅッ!」

 

 箱の中から籠った小さな、しかし、確かに苦悶に満ちた短い悲鳴が聞こえた。その瞬間私の前身の毛がゾワリと逆立つのを感じた。原作知識で知っていたとはいえ、やはりこうして目の前で見ると駄目だ。めちゃくちゃ腹が立つ。

 同様に禰豆子ちゃんの悲鳴が聞こえたらしい蜜璃さんとまこちゃんが息を飲んで顔を顰め、しのぶさんは睨む視線を一層鋭くし、あの無表情がデフォルトの冨岡様ですら眉を動かし

 

「ッ!」

 

 身内である炭治郎くんは怒りに満ちた顔で勢いよく立ち上がった。

 

「あッ!」

 

 横にいた隠の後藤さんが止める間もなく駆けて行く。私?この後の流れ知ってるから止めない。

 

「俺の妹を傷つけるやつは!!柱だろうが何だろうが許さない!!」

 

 叫びながら不死川様を睨む。

 そんな炭治郎に不死川様は獰猛な笑みのまま高らかに笑い

 

「ハハハハ!!そうかい、そいつはよかったなァ!!」

 

 言いながら日輪刀を箱から抜き去り刀身についた血を払う。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 その光景にぶちぎれた炭治郎くんが不死川様へ向けて駆けて行く。不死川様もそんな炭治郎くんを見据え

 

「やめろ!!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!!」

 

「ッ!!」

 

 が、冨岡様の言葉に一瞬気を取られる。

 その隙に炭治郎くんは一気に駆ける。

 一瞬反応の遅れた不死川様はたたらを踏んで後退りながら刀を振るう。しかし、炭治郎くんは縛られたまま大きく飛び上がり

 

「フンッ!!」

 

 大きく振りかぶった頭を不死川様の顔に叩き込んだ。

 

「ガッ!?」

 

 炭治郎くんの頭突きを受けた不死川様は苦悶の声と鼻血を出して倒れ持っていた箱を落とし、炭治郎くんも縛られているので受け身も取れずに玉砂利の上に倒れる。

 その光景に柱の面々が唖然とする中

 

「ブフッ!」

 

 蜜璃さんが堪えきれず噴き出す。

 と、そのことに周囲の視線が蜜璃さんに集まり

 

「すみま――」

 

「ブハハハハハハハハッ!!ず、頭突きてッ!!しかも不死川様も鼻血出してるしッ!!プギャー!!」

 

 顔を真っ赤に染めて手で顔を覆ってか細い声で言った蜜璃さんの声は私が大声で隠すつもりもなく高らかに笑ったことで掻き消される。

 

「おい大好、空気を読め」

 

「いやいや!い、今のは笑いどころでしょ!!フヒヒヒヒッ!!」

 

 伊黒様に窘められるが知ったこっちゃない。

 因果応報というかなんと言うか、今ならヌケサクとタマちゃんの気持ちがわかる。これこそ『腹の底から「ザマミロ&スカッとサワヤカ」の笑いが出てしょうがねーぜッ!』ってやつだ。

 そんな私の笑い声をBGMに立ち上がった炭治郎くんは体を起こし禰豆子ちゃんの入った箱を背中に庇い

 

「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!!」

 

 不死川様を睨みつけ叫ぶ。私も笑いが収まってきた。あぁお腹痛い。

 

「てめェェ…」

 

 不死川様は怒りの形相で鼻血を垂らしたまま取り落とした日輪刀を掴んで立ち上がり

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

 ギロリと炭治郎くんを睨む。

 

「し、不死川様、ま、まずは鼻血拭いて…ブフゥッ!」

 

「うるせェ!!てめぇはいつまで笑ってやがんだァ!!」

 

 鼻血垂らした不死川様の顔に私は再び噴き出す。そんな私に不死川様は炭治郎くんに向けていた以上の睨み顔を私に向け――

 

「「お館様のお成りです」」

 

 直後、お館様のご息女達――にちかちゃんとひなきちゃんの声が響いた。

 

 




というわけで柱合会議編その1でした。
笑い上戸の楓子ちゃんが鼻血垂らした実弥の顔に堪えられるはずもなく……ツボっちゃいましたねぇ(;^ω^)
さてさて、次回よりお館様もやって来ての本格的な裁判の開始!
楓子ちゃんは炭治郎くんの「お咎め無し」を勝ち取れるのか!?
お楽しみに!!



そして、今回の質問コーナーです!
今回は引きこもりたい…!!さんからいただきました!

――好きな声優さんは誰ですか?

楓子「声優さんはみんな好きですし声でキャラクターに命を吹き込む御業は超尊敬してますが、あえて挙げるなら……女性なら花澤香菜さん、沢城みゆきさん、早見沙織さん、悠木碧さん、坂本真綾さんですかね。男性は神谷浩史さん、宮野真守さん、杉田智和さん、中村悠一さん、梶裕貴さん、山寺宏一さん、小山力也さん、藤原啓治さんですかね。そこからさらに一人に絞れって言うなら……まあやっぱり花澤香菜さんですね」

――ゲームとか好きですか?好きならどんなゲームをやりますか?

楓子「やりますよ~。格ゲーにRPGとかいろいろと。特にやってたのはギャルゲーとか乙女ゲー、あとはモンスターをハントするゲームとかやりこんでましたね~」

と、言うことです!
質問はまだまだ募集していますので、ドシドシどうぞ!
それでは今回はこの辺で!
次回の柱合会議の続きもお楽しみに!



~大正コソコソ噂話①~
原作よりも楓子ちゃんの介入で義勇との交流が増えているため小芭内の義勇たちへのねちっこさは若干緩和されています。小芭内から見た義勇は「楓子の標的(?)にされた被害者(?)仲間。お互い大変だよな……まあそれはそれとしてお前はもうちょい意思表示しろ。あと相変わらず拙者不幸でござるみたいな顔してるのはムカつく」です。

~大正コソコソ噂話②~
会議が始まる前、那田蜘蛛山からの帰還の途中にしのぶは楓子と真菰へ誤解を解こうと接触しましたが、残念ながら解ききれませんでした。が、とりあえず誰にも言わないと約束を取り付けることに成功しました。
しかし、実は楓子はしのぶ達の押し倒し事件を目撃した後、冷静になって思い返し「いやいやあの『唐変木of唐変木』の冨岡様がしのぶさんを押し倒す?ないないないないwwwどうせラブコメでよくある弾みで押し倒しちゃった的なラッキースケベ案件ですねわかりますwww」と考え至っていますが「誤解してると思われてるままの方がなんかいろいろ面白そうだから誤解したままのふりしてよぉっと」って考えてます。
ちなみに真菰は誤解したままです。「冨岡さん、ついに抑圧した欲求を爆発させて野外でしのぶさんといたそうとするなんて!なんでもっと早く意志とか欲求を表に出さなかったんですか!!」と、思ってます。


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