恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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前回から日が開いてしまい申し訳ありません。
いろいろ用事が立て込んでしまい執筆の時間が取れませんでした。
今回はついについに義勇さんとしのぶさんの披露宴です。
ついに結ばれた二人とそれを祝福する面々の様子をお楽しみください!







恋39 恋柱の継子と水&蟲の披露宴

「――いやぁ~しっかし、まさかお前らがくっつくとは派手に驚きだぜ!」

 

「うむ!しのぶ君に関しては冨岡に当たりが強かったからな!実に意外だった!」

 

 蝶屋敷の道場に集まりグラス片手に陽気に言う天元と杏寿郎。

 

「嗚呼…喜ばしい…あのしのぶがついに身を固めるとは、実に喜ばしい……」

 

「悲鳴嶼のダンナ、涙流して喜んでんのはわかるけど祝いの席で数珠をジャラジャラすんのは地味にどうかと思うぜ」

 

 厳つい顔に感涙を流して言う行冥に天元がツッコむ。

 そんな集った柱の面々に囲まれた義勇としのぶは

 

「みんな、ありがとう」

 

「あ、アハハハ……」

 

 義勇はいつもの無表情に少し驚きを見せ、しのぶは若干困惑した様子で頷く。

 今日のこの集いはついに祝言を上げた義勇としのぶを祝うための披露宴だ。

 産屋敷のお屋敷で耀哉と鱗滝左近次を見届け人として祝言を上げた二人はそのまま蝶屋敷を会場に楓子企画の披露宴にそれぞれ紋付羽織袴と白無垢姿で出席したのだが、まさか二人も柱全員がこうして揃うとは思っていなかったようで驚きを隠せないでいる。ちなみに鱗滝は耀哉と積もる話もあるという事で披露宴には遅れている。

 

「しのぶちゃん!おめでとう!!」

 

 そんなしのぶに蜜璃が満面の笑みで言いながらしのぶの手を取ってぶんぶんと興奮気味に振る。

 

「本当に!本当によかったわね!」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 蜜璃の言葉にしのぶも嬉しそうに微笑む。

 そんなしのぶに蜜璃はうっとりとした表情で見つめ

 

「いいなぁ白無垢。しのぶちゃんとっても似合ってるわ!やっぱりあこがれちゃう!」

 

「ですってよ、伊黒様?」

 

「うッ……」

 

 蜜璃の呟きに楓子がニヤニヤと側にいた小芭内に視線を向ける。

 

「あぁ~あ、交際期間ぶっ飛ばして結婚申し込んで即籍を入れる、なんて思い切りの良さをどっかの誰かさん〝達〟にも見習ってほしいですねぇ~」

 

「「ッ!?」」

 

「「達?」」

 

 楓子の言った複数を示す言い方に天元と杏寿郎が首を傾げる。楓子の言葉に小芭内がビクリと体を震わせるが偶然二人の死角にいたとある強面の柱が小芭内同様にビクリと体を震わせたのは二人には見えていなかった。

 

「恐らく一人は伊黒のことだろうが、〝達〟と言うことは複数人だよな?」

 

「他に誰かいるのか?」

 

 そんな二人の視線に楓子はニヤニヤ笑いながら

 

「さぁてねぇ…誰のことでしょうねぇ?ねぇカナエさん?」

 

「フフフ、さあ、誰かしらね?」

 

「ッ!」

 

 楓子の言葉に同じく曖昧に言いながらチラリと視線を向けられた実弥の頬を冷や汗が伝う。

 

「……どうした、不死川?」

 

「ッ! な、何でもないッス」

 

 そんな実弥の様子に行冥が問うが実弥は首を振る。

 

「そういやぁよ」

 

 そんな実弥の様子に首を傾げながらも天元がふと口を開く。

 

「今日のこの祝いの席にお前が来たのは地味に意外だったな」

 

「あぁ?」

 

「だってよぉ、お前冨岡のこと苦手だろ?いつも派手に文句言いまくってるだろ?」

 

「そりゃぁ…まあなァ」

 

「いったいどういう風の吹き回しだ?」

 

「…………」

 

 天元の問いに実弥は少し考える素振りを見せ

 

「まあ気が向いただけだァ。ちょうど非番の日だったしなァ」

 

「そうか」

 

 実弥の素っ気ない言葉に天元もそれ以上は訊かない。

 

「俺からすりゃ、あの時透の奴が出席してることの方が驚きだけどなァ」

 

 と、他の面々の視線にため息混じりに実弥は言いながら振り返る。そこには――

 

「モキュモキュモキュ」

 

 ぼんやりとした表情のままチョコレートケーキを食べている無一郎の姿があった。

 

「あぁ、時透様は私がお誘いしました」

 

「あの時透を頷かせるとは、お前派手にすごいな!」

 

 楓子の返事に天元が驚きの声を上げる。

 

「いや、最初は来る気なかったみたいなんですけど、前に私の食べてたチョコレートを分けてあげたら気に入ったみたいで、同じ店のチョコレートケーキも用意しますよ、って言ったら二つ返事で来ましたよ」

 

「あぁ~……」

 

 楓子の言葉に納得した様子で天元が頷く。

 改めて見れば無一郎はこの蝶屋敷に来てからはひたすらケーキを食べるかビュッフェスタイルで用意されている楓子やアオイ達によって用意された料理を食べるだけでそれ以外のことはしていない。

 

「嗚呼…きっと時透も同じ柱を祝いたい気持ちがあったのだろう」

 

「いや、悲鳴嶼のダンナ、俺の眼から見てもそれは無いように思うぞ」

 

 悲鳴嶼が嬉しそうに微笑みながら言うが天元はナイナイと手を振って言う。

 

「まああの無表情その二の分まで無表情その一を俺達が祝ってやるか!」

 

「無表情その一その二って……」

 

 天元が朗らかに笑って言った言葉に小芭内がため息混じりに言う。

 

「そう言えばお祝いついでに一つ訊きてぇんだがよ?」

 

 と、一転して真剣な表情を浮かべて訊く天元に義勇としのぶも顔を見合わせ真剣な顔で促す。

 

「お前らってさ……」

 

 いつにもまして真剣な眼差しの天元の様子に義勇としのぶのみならず他の柱の面々も真剣な顔になり

 

「お前ら……二世のご予定は?」

 

「……はぁぁぁぁぁッ!?」

 

 天元の質問に一瞬呆けたしのぶだったが、いち早く驚きの声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと宇髄さん!?何言って――」

 

「え?だってお前ら祝言あげたろ?なら次は派手に子作りだろ?」

 

「祝言あげたってことは『私達これからヤリまくって子作りに励みます』って宣言ですよね?」

 

「「ねぇ~?」」

 

「お前らこういう人をからかうときには息ぴったりに……」

 

 笑顔で顔を見合わせて言う天元と楓子の様子に小芭内は溜め息混じりにツッコむ。

 

「しかし、実際世継ぎの問題は重要だぞ!特にお前達は二人共柱だ!きっと優秀な子どもが生まれるんじゃないかッ?」

 

 からかい混じりの楓子達とは裏腹に杏寿郎は素で言う。

 

「お前さんはホント生真面目だねぇ~」

 

「そうかッ?俺も今はまだ結婚は考えていないがそのうち煉獄家の跡取りのことは考えねばならんしな!無関係ではない!だからそのあたりは既婚者には聞いてみたいところだぞ!」

 

「そりゃお前のそれはちょっと特殊な話だろ」

 

 杏寿郎の言葉に天元はため息をつき

 

「で?この生真面目馬鹿は置いておいて、どうなんだ?お前さん達は子どものこととか考えてんのか?」

 

「そ、それは……」

 

 天元のニヤニヤとした問いにしのぶは顔を真っ赤に染めながら言い淀み

 

「その…い、今は私も冨岡さんも柱の職務がありますからそう言うことは考えられないと言いますか!」

 

「ほぉ~ん」

 

「へぇ~」

 

 しのぶの答えにニヤニヤと笑いながら頷いた天元と楓子は

 

「だ、そうだがぁ~?」

 

「旦那様的にはどうなんですか~?」

 

「ちょぉッ!?」

 

 楓子達の標的が義勇に向いたことでしのぶが慌てる。

 

「どう、とは?」

 

「だからぁ、しのぶとの子どもの予定だよ」

 

「ああ……」

 

 天元の言葉に納得したように頷いた義勇は少し考えこみ

 

「しのぶの言う通り、俺達は柱としての責務もある。いまだ鬼の脅威も鬼舞辻も健在な以上今すぐに、と言うのは難しいだろうな」

 

 義勇の答えに天元と楓子は揃って「あぁこっちもこっちで生真面目だなぁ」なんて思いながら苦笑いを浮かべる。が――

 

「でも――」

 

 そんな二人の様子に気付かずに義勇は続け

 

「しのぶとの間に娘が生まれたら、きっと美しく聡い子になるだろうな」

 

『…………』

 

 義勇の言葉に楓子と天元だけでなく他の面々まで唖然とする。

 

「……え?今コイツ惚気たのか?」

 

「???」

 

 面々の困惑の意味が分からない様子で首を傾げる義勇。

 

「冨岡様、今もしかしてしのぶさんのことを美人で賢いって間接的に言いました?」

 

「??? そう言っただろう?」

 

「ちょぉぉッ!?と、冨岡さん!?」

 

「??? 何かマズかったか?」

 

「いえいえいえ~、不味いどころか大変美味しい思いをしましたよ~。ご馳走様です」

 

「……お粗末様?」

 

 楓子の言葉の意味が分からなかったらしい義勇はとりあえず首を傾げながら言う。

 

「まったく冨岡さんは……必要なことは言ってくれないのにこっちが全く意識していないときに……」

 

 と、そんな義勇の様子にしのぶはぶつくさ文句を言い

 

「あ、そう言えばさっきから気になってたんですが」

 

 ふと思い出したように楓子が口を開く。

 

「しのぶさんって冨岡様と結婚したんですから、しのぶさんも冨岡姓になったわけですよね?」

 

「それは、まあそうね」

 

「じゃあなんで冨岡様のことまだ名前で呼んでないんですか?」

 

「え?……あッ!」

 

 楓子の問いにしのぶは一瞬呆けてからその意味を理解する。

 

「ほらほらぁ~、しのぶさんも今日から冨岡姓になるんですからちゃんと名前で呼ばないとぉ~」

 

「確かにお嫁さんが旦那様を名前で呼ばないってのも変な話よね!」

 

 楓子の言葉に蜜璃も同調して大きく頷く。

 

「俺の母も父のことは名前で呼んでいたな!」

 

「ほれほれ、しのぶよぉ。サクッと呼んじまえよ~」

 

「フフ、これまでずっと名字で呼んでたし照れ臭いかもだけど、もう二人は夫婦なんだしちゃんと名前で呼ばないとね」

 

 それに杏寿郎も悪気無く乗っかり、天元は楓子同様に囃し立てるように、カナエもニコニコと楽し気に言い

 

「「…………」」

 

 そんな光景を小芭内と実弥は気の毒そうな目で見ている。

 

「い、いや…その……」

 

 そんな面々の視線にしのぶはワタワタと慌てふためき

 

「…………」

 

 チラリと義勇の顔を見れば、義勇は無言で無表情――若干期待の色が見える視線でしのぶを見ている。

 

「~~~~/////」

 

 そんな義勇の視線にしのぶは顔を赤面させて意を決したように息を飲み

 

「ぎ……義勇…さん」

 

「ああ、しのぶ」

 

「「ヒュ~ヒュ~!!!」」

 

 照れた様子で言うしのぶに義勇が若干微笑んで言う。

 そんな光景に楓子と天元が囃し立てるように言い、他の面々も微笑まし気にそんな光景を見ている。

 

「そう言えば、しのぶもだけど楓子ちゃんもよね?」

 

「え?私?」

 

 と、そんな中でカナエがふと気づいたように言う。

 

「だって、楓子ちゃんも義勇君のことは冨岡様って呼ぶでしょ?でもしのぶも冨岡姓になるんだからややこしいじゃない?」

 

「あぁ~……」

 

 カナエの言葉に納得した様子で頷いた楓子は少し考え

 

「確かにその通りですね。では、義勇様としましょうか」

 

「様はつけなくていい」

 

「そうですか?」

 

「ああ」

 

 楓子の言葉に頷いた義勇に楓子は少し考え

 

「では、義勇さん、で。改めてご夫婦ともどもよしなに」

 

「ああ」

 

 楓子の言葉に義勇が頷いた。

 

 

 ○

 

 

 そんな光景を離れた所から眺めていた善逸は

 

「なぁ、改めて思ったけど、楓子さんってマジですごい人なんだな。普段の言動がアレ過ぎて忘れてたけど」

 

 楓子が和気藹々と柱の面々に混ざって話してるのを見ながら

 

「ていうかあの見るからにヤバそうな人たちの中に混ざって普通に…なんなら通常運転でイジれるって素直にすげぇな……」

 

 若干呆れながら言う。そんな善逸の両サイドでは

 

「善逸!これ食べたか?すごく美味しいぞ!」

 

 炭治郎が料理に舌鼓を打ち

 

「ハグシャグハグシャグ!!」

 

 伊之助は炭治郎以上に料理をがっついて楽しんでいた。

 

「……うん、お前ら料理楽しむのもいいけど俺の話聞いてる?」

 

「あははは…まああの空間は継子の私でも気後れするから、そこに普通に混ざっていける楓子ちゃんは改めて豪胆だなぁって思うね」

 

 炭治郎と伊之助にため息交じりで言う善逸に苦笑いの真菰がやって来る。

 

「あ、真菰さん!」

 

「やッ!楽しんでる?」

 

 真菰の登場に炭治郎も気付き顔を向けると、真菰はニコニコと微笑んで訊く。

 

「真菰さんは祝言の方にも出てたんですよね?」

 

「うん、いろいろお手伝いもあったしね。しのぶさんもとっても綺麗だったよ」

 

 炭治郎の問いに真菰はニコニコと笑って答える。

 

「私もいつか着るのかなぁってちょっと楽しみになっちゃったよ。まあ相手がいないけどねぇ」

 

「真菰さんは美人ですからすぐにいいお相手が見つかるんじゃないですか?」

 

「フフ、ありがとう。――炭治郎はそういうことをサラッといえるところ本当に末恐ろしいと思うよ」

 

 炭治郎の言葉に嬉しそうに微笑んで真菰は言いながら続けてボソリと呟く。

 と、そんな時――

 

「まこちゃ~ん!」

 

「は~い!――ごめんね、呼ばれたから行くね」

 

「あ、はい」

 

 断ってから行く真菰に手を振りながら炭治郎達は見送り

 

「真菰さんもなぁ……あの持病が無ければ文句無しに美少女なんだけどなぁ……」

 

 そんな真菰の後姿をため息混じりに見送り

 

「てかお前食いすぎだろ!」

 

 隣で延々と食べ続けていた伊之助にツッコみを入れる。

 

「真菰さんが来てからも一切手を止めずに食べ続けやがって!どんだけ腹減ってんだよ!」

 

「あぁ!?俺の勝手だろうが!」

 

「いや別に好きにすりゃいいけどよ、あんまりこういう祝いの席でそんな下品に食べてたら――」

 

「こらぁ!」

 

「ほら怒られる」

 

 言葉の途中で聞こえた声に善逸はため息交じりで視線を向けると、そこには腰に手を当てて怒った様子のアオイが立っていた。

 

「まったく、そんなにがっついて!誰も盗らないからもっと味わって食べればいいじゃないですか!」

 

「うるせぇ!俺の好きに食わせろ!」

 

「もう!口に物入れて叫ばない!」

 

 アオイの言葉に文句を言う伊之助にしょうがないなぁと言った様子でため息をついたアオイは伊之助に歩み寄り

 

「ほら、口の周りにこんなに食べかす着けて。赤ちゃんじゃないんだから」

 

「んだとコラァ!!俺様を子ども扱いすんじゃねぇ!!」

 

「はいはい。子ども扱いが嫌ならせめてもう少し大人しく食べてください」

 

「うわっぷッ!?てめッ…やめろぉぉぉ……!」

 

「ほら暴れない!……はい、綺麗になりましたよ」

 

 伊之助の顔の周りを手拭いでグイグイと拭いたアオイは満足そうに頷き

 

「あと!さっきから見てたらお肉とか天ぷらばっかり食べて!もっとお野菜とかも食べないと栄養が偏りますよ!」

 

「うるせぇ!好きなもん好きなだけ食って何が悪いんだよ!?」

 

「まったく、そんなんじゃ強くなれませんよ!」

 

「なん…だと……!?」

 

 アオイのため息混じりの言葉に伊之助は驚愕に表情を凍り付かせる。

 

「戦って強くなるためには体が資本!健康的な肉体だからこそ自分の持てる力を十全に出せるんであって、体に不調があれば強くなりませんよ!」

 

「そ、それは……」

 

「わかったらちゃんとお野菜も食べる!美味しくて栄養価のある料理、持って来てあげますから」

 

「……チッ!わかったよ!食えばいいんだろ食えば!!」

 

「うん、よろしい。ちょっと待っててくださいね」

 

 嫌そうにしながらも素直に頷いた伊之助に満足そうにうなずいたアオイは料理の並ぶ机の方に向かって行く。

 そんなアオイの後姿を見送った善逸は

 

「いやいやいやいや!!何今の!?」

 

 驚愕に叫ぶ。

 

「善逸、そんな大声上げたら他の人の迷惑になるから――」

 

「そんなこと言ってる場合かッ!?」

 

 炭治郎が興奮する善逸を注意しようとするが善逸によって遮られる。

 

「あの馬鹿の伊之助が女の子とイチャイチャしてんだぞ!?これが黙ってられるわけ――」

 

 言いかけた善逸の言葉は

 

「た、炭治郎……」

 

 おずおずと現れたカナヲに遮られる。

 

「あ、カナヲ!どうしたんだ?」

 

「その…これ……」

 

 炭治郎がニッコリと微笑みながらカナヲに訊くとカナヲはおずおずと後ろ手に隠していた皿を取り出す。

 

「これ美味しそうだね!山菜の天ぷら?」

 

「炭治郎がタラの芽好きって楓子さんに聞いたから……時期じゃないからタラの芽はないけど山菜の天ぷらはあったから……」

 

「ありがとう!一緒に食べよう!」

 

「う、うん」

 

 満面の笑みで頷いた炭治郎にカナヲは少し頬を赤く染めて頷き炭治郎の隣に座る。

 

「…………」

 

 そんな炭治郎とカナヲの様子に善逸は唖然と口を開いたまま凍り付き、そんなことをしている間に伊之助のもとにアオイが戻ってくる。

 

「はい、どうぞ。あなたが好きな天ぷらもいくつか見繕ってきましたから」

 

「おう……ってぇ!なんで隣に座んだよ!!」

 

「あなたがちゃんと行儀よく食べるように見張ってます」

 

「はぁ!?ざっけんな!!んなことされなくても――」

 

「あと、この天ぷらは私が作ったものなので味の感想を聞いてみたいので」

 

「……これ、おめぇが作ったのか?」

 

「そうですよ?今日の料理は私と楓子さんで用意したものですから。その天ぷら以外にもあなたが口にしたものの中には私が作ったものもいくつかあったと思いますよ」

 

「そうか……」

 

 アオイの言葉に頷いた伊之助はアオイの持ってきた料理を数秒見つめ、その中から山菜の天ぷらを掴み口に入れる。

 

「……まあ、美味いんじゃねぇか」

 

「そうですか、よかったです」

 

 ぶっきらぼうに言う伊之助の言葉にアオイは微笑む。

 その笑顔を見た伊之助は

 

「(ほわぁ……)」

 

 どこか幸せそうに顔がほころびかけ

 

「ッ!ッ!ッ!」

 

 自身の顔が破顔しかけているのを自覚し慌てて首を振って料理をがっつき始める。

 そんな光景を見た善逸は

 

「…………」

 

 炭治郎達のやり取り同様唖然とした顔のままあんぐりと口を開けて見つめ、数回伊之助たちと炭治郎達の様子を交互に見て

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!なんでこいつらばっかりィィィィ!!」

 

 頭を抱えて後ろにビターンとぶっ倒れながら泣き叫ぶ。

 そんな善逸を

 

「善逸くん何してんの?」

 

 楓子が呆れた顔で見ながら訊く。

 

「あ、楓子さん」

 

「知らねぇ。なんか急にこうなった」

 

「…………」

 

 炭治郎と伊之助の言葉に、改めて二人の様子をジッと見た楓子は

 

「あぁ、いつものことか」

 

 全てを察し、ため息をつく。

 

「じゃあ気持ち悪い善逸くんは置いといて」

 

「気持ち悪いとかいうのやめてくれません!?俺だって傷つくんですけど!?」

 

 ものを横に置くジェスチャーをする楓子に体を起こした善逸が叫ぶ。

 そこで善逸は初めて楓子の後ろに三人の人物がいることに気付く。

 

「炭治郎くんは前の柱合会議の時に見かけてると思うけどちゃんと話したことないよね?伊之助くんと善逸くんは初対面だから一緒に改めてちゃんと紹介するね」

 

 言いながら楓子は一歩横に避けて自身の背後に立っていた三人を示す。

 

「三人とも、こちら炎柱の煉獄杏寿郎さんと恋柱の甘露寺蜜璃さん、蛇柱の伊黒小芭内様」

 

 楓子は一人ずつ指しながら紹介していく。

 

「蜜璃さん、杏寿郎さん、伊黒様、こっちが三人も御存じの竈門炭治郎くんに我妻善逸くん、嘴平伊之助くん。少しお話していたように今私がお館様の命によって特別特訓を組んでいる子達です」

 

「うむ!話は聞いている!楓子君が人に教育するまでに成長したこと、師として鼻が高いぞ!」

 

「私は今蜜璃さんに主に師事してるけど、私の呼吸の師匠は杏寿郎さんなんだよ。だから今も時々稽古つけてもらっててね。蜜璃さんの師匠でもあるから、大師匠って感じかな」

 

 杏寿郎の言葉に照れ臭そうに微笑んだ楓子は三人に杏寿郎を指しながら言う。

 

「この間の会議で会いましたが改めまして、竈門炭治郎です!楓子さんにはいつもお世話になってます!」

 

 言いながら炭治郎は立ち上がって三人にお辞儀する。

 

「炭治郎くん!ふーちゃんから話は聞いてるわ!鬼になった妹を人間に戻すために頑張ってるんだよね!」

 

 そんな炭治郎に蜜璃はニコニコと微笑みながら言う。

 

「お館様もお認めになってるし、ふーちゃんが信じてるんだもの!君達兄妹のこと私も応援するわ!大変だと思うけど頑張って!ふーちゃんからいろんな事学んでね!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 蜜璃の言葉に炭治郎は嬉しそうに微笑んで頷く。

 

「うむ!俺もお館様がお認めになり楓子君が可能性を見出した君や君の妹には興味がある!楓子君が君たちの師となっているのならそんな彼女の師である俺にとっても継子も同然!まとめて面倒見てやろう!!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 杏寿郎の勢いに炭治郎も勢いで頷く。

 

「それでそっちの君達も――」

 

 言いながら蜜璃が善逸達にも視線を向け

 

「炭治郎くんと一緒に頑張ってんだよね!二人のことも応援してるよ!」

 

 と、言いながら両手をグッと握って微笑む。

 そんな蜜璃の笑顔に

 

「ィィイヤァァァァァァァァッ!!!?」

 

 善逸が汚い高音で絶叫を上げる。

 

「何この人嘘みたいな美人!!?こんな人日本にいたの!?」

 

「えぇっと、大丈夫?どこか悪いんじゃ――」

 

「しかも優しい!!こんな俺に心から心配してくれてる!!?美人な上に優しいとか!!」

 

 心配そうに怪訝そうな顔をする蜜璃に善逸がさらに叫ぶ。

 

「ていうか!ていうか何より!!」

 

 叫びながら善逸の視線が蜜璃の顔からゆっくりと下に降りていき

 

「何これおっぱいでかッ!!こんな大きさ見たこと――」

 

 と、言いかけた善逸は

 

「グエッ!!?」

 

 気付いたら床に叩きつけられていた。

 一瞬のことで自分の身に何が起こったのか分からず床に大の字に倒れる善逸の顔にスッと手刀が向けられ、同時に目の前に冷たい左右で色の違う瞳で睨みつけられる。

 

「貴様…今何を言った?甘露寺に下卑た欲望を向けたか?万死に値するぞ?」

 

「ヒィィィィッ!?」

 

 小芭内の冷たい視線と共に首に押し付けられる手刀とその押しつぶされそうなほどの殺気に善逸が悲鳴を上げる。

 

「はいはい、落ち着いてください伊黒様」

 

 そんな小芭内を楓子が苦笑いで止めに入る。

 

「善逸くん、それに炭治郎くんと伊之助くんも、この伊黒様は私の師匠――蜜璃さんの婚約者でちょっと蜜璃さんのこと好きすぎるところあるのにヘタレで一切手を出さないくせに他人が蜜璃さんをちょっとでもイヤらしい眼で見ると敏感に察知して全力でつぶしに来るめんどくさい人だから気を付けてね」

 

「誰がめんどくさい人だ!!」

 

「ヘタレのところは否定しないんですね」

 

 楓子に怒鳴る小芭内に苦笑いで楓子が言う。

 

「ていうか、そんなに好きなら婚約してるんだしそのままさっさと義勇さん達みたいに祝言あげちゃえばいいのに」

 

「だ、だから甘露寺が成人するまでは祝言は上げないと決めたと言っただろうが!」

 

「祝言あげてなくても恋人なんだからもっとイチャつけばいいのに……まあ、いまだに手を繋ぐだけで顔真っ赤にする恋愛クソ雑魚ナメクジのヘタレ柱の伊黒様には難しい話ですよね」

 

「誰が恋愛クソ雑魚ナメクジでヘタレ柱だ!!」

 

 楓子が鼻で笑うのを小芭内が怒声を上げるが当の楓子は「やれやれだぜ」と言う様子で肩を竦め

 

「それはさておき」

 

 と、楓子がコホンと咳ばらいをし

 

「今後は機会があれば師匠達にも教鞭をとってもらうことはあると思うからね」

 

「はい!!」

 

「おうよ!!」

 

「は、はい」

 

 楓子の言葉に炭治郎と伊之助が力強く頷き、小芭内に解放された善逸は怯えながらも頷く。

 

「うむ!俺も早速明日にでも教えに来たいところだが、お館様から新たな任務を受けてな!」

 

「新たな任務、と言うと、例の無限列車ですね」

 

「うむ!」

 

 楓子の問いに杏寿郎が頷く。

 

「無限列車って?」

 

 そんな二人に蜜璃が訊く。

 

「無限列車と言う列車で鬼の被害が拡大している!調査の為に数名の隊士を送ったが連絡が途絶えたらしい!」

 

「杏寿郎が行く、と言うことは……」

 

「ああ、恐らくは十二鬼月の可能性が高い!もしかすると上弦の可能性もある!」

 

「上弦の鬼……」

 

 小芭内の問いに頷いた杏寿郎の言葉に蜜璃と小芭内が息を飲み、炭治郎達も事の大きさにゴクリと唾をのむ。

 

「杏寿郎さん、くれぐれもお気を付けて」

 

 そんな中で楓子が真剣な眼差しで言う。

 

「杏寿郎さんの実力は重々承知しています。あなたが油断などしない人だということも。それでも此度のこの無限列車、幾分引っかかることが多いです」

 

 楓子の真剣な表情での言葉に杏寿郎も真剣に見つめ返して耳を傾ける。

 

「無限列車は国の運営するものです。そんな列車で鬼が動けるということはこの件はかなり大掛かりなものだと思われます。場合によっては鬼舞辻無惨自身が深くかかわる様な。もしそうなら、恐らくこれは何かしら目的をもって行われていること。考えられるのは柱など強力な鬼殺隊士を誘き出し殺すことです。私の推察が正しいなら、逆に言えば向こうは柱を屠れるだけの戦力があるということだと思います」

 

 言いながら楓子は一拍開け

 

「このことはお館様にもすでにお話しています。追加戦力をこちらも送れるように調整していますので、くれぐれもお気を付けて」

 

「…………」

 

 楓子の言葉に杏寿郎は少し黙り

 

「聡明な君の助言だ。心に留めておこう」

 

「ありがとうございます」

 

 頷いた杏寿郎に楓子は頭を下げ、顔を上げた時には先ほどまでの真剣な表情を柔らかく微笑みに変え

 

「今日は杏寿郎さんの好物のさつま芋のお味噌汁とさつま芋ご飯もご用意していますのでそれを食べて任務頑張ってください!」

 

「そうか、それは嬉しいな!たくさん食べて頑張らないとな!!」

 

 そう言って杏寿郎は嬉しそうに笑う。

 

「蜜璃さんと伊黒様も、義勇さん達と話しててまだ料理食べてないですよね?たくさん用意してるのでたくさん食べてください!」

 

「うん!もちろんよ!」

 

「ああ」

 

「よし!甘露寺!伊黒!一緒に来い!全料理制覇するぞ!」

 

「いや、お前や甘露寺程俺は食えんからな?」

 

 力強い杏寿郎の言葉に「おー!」とこぶしを掲げる蜜璃の横で小芭内は言いながらも二人とともに歩き出す。

 

「ではな、竈門少年!それに猪頭少年に我妻少年!」

 

「はい!お気を付けて!」

 

 言いながら去って行く杏寿郎の後姿にお辞儀をする炭治郎。

 善逸も会釈し、伊之助も手を止めて見送る。

 

「なんか、凄い人達だったな……」

 

 杏寿郎達が他の柱と合流し、料理の並ぶ机へ向かうのを見ながら善逸が呟くように言う。

 

「三人とも鬼殺隊に九人しかいない柱の位を冠する人達だからね」

 

 そんな善逸の呟きに楓子がにっこりと微笑んで言う。

 

「君達とあの人達の間にはまだまだ大きな開きがあるけど、君達ならあの人達と肩を並べられるだけの実力を持ってると思うから、これからももっともっと頑張ろうね」

 

「「は、はい!!」」

 

「おうよ!!」

 

 楓子の言葉に三人は力強く頷き、そんな三人に楓子は優しく微笑んだのだった。

 

 




と言うわけで義勇さんとしのぶさんの結婚披露宴でした!
ついについに二人も晴れて夫婦ですねぇ~。
まさか交際0日で結婚するとは、どこぞのヘタレ柱達にも見習ってほしいものです!

そして、かまぼこ隊と楓子ちゃんの師匠達が初めてちゃんと顔合わせです。
今後楓子ちゃんと行動を共にする機会も多いであろう彼らは原作以上に関わることの多くなる人達ですね。
今後の彼らの絡みもお楽しみに!

そしてついに杏寿郎さんが無限列車へ!
アニメ版の円盤発売前には無限列車編に入れそうですね!
楓子ちゃんの介入で無限列車編がどう変化するのか、お楽しみに!



そんなわけで今日の質問コーナーです!
今日の質問はGジェネラーさんから頂きました!

――写真撮影が趣味との事ですが、これだけは絶対後世に残したいと言うような写真はありますか?

楓子「残したい写真はたくさんあるけど、とりあえずそれらの写真は共通して〝殺伐としていない鬼殺隊の日常〟って感じですかね。前回錆兎さんに見せたようなものや、他の人達の何気ない非番の時の様子だったりと、戦いだけじゃない安らぎの瞬間見たいものもです。後から見返した時に戦いのことだけ思い出すんじゃ悲しいじゃないですか。だから、そう言う当たり前だけど大切な瞬間の写真は残したいですね」

――『蜜璃ちゃん人形を愛でる伊黒さん』みたいに、他の柱や隊士にとって恥ずかしい、または黒歴史と言えるような写真ってありますか?

楓子「そうですねぇ~…『猫に顔を埋めて猫吸いしてる悲鳴嶼様』『カナエさんに手を引かれて嫌がりつつもまんざらでもない様子の不死川様』『義勇くん人形でキスの練習をするしのぶさん』辺りは面白いんで永久保存版ですね」

と言うことです!
そんなわけで今回はこの辺で!
GWはちょっと予定もあって執筆の時間が取れないかもしれませんがもしかしたらこのGW中にもう一本書ければ更新したいと思いますので、期待せずにお待ち下さい!
それではこの辺で!また次回もお楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
前回託った錆兎からのお祝いの言葉を義勇にだけ匿名でこっそりと伝えた楓子。
楓子の言葉に一瞬で誰からのお祝いの言葉なのか理解したらしい義勇はその経緯などは深く追求せずにゆっくりとその言葉を噛みしめ

「そうか…じゃあ、あいつに殴られない様に胸を張って生きないとな」

と、嬉しそうに微笑んだそうですよ。


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