恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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本当は先週更新するはずだったんですが、いろいろ予定が入って時間が取れませんでしたので遅れてしましました!
お待たせしました!
そんなわけで小ネタ集です!
今回のお品書きは

〇柱就任祝いin恋柱邸
〇かまぼこ隊のご褒美
〇新設!鬼殺隊特別部署『梁』
〇産屋敷輝利哉は贈りたい
〇一方その頃の珠世と愈史郎は……

の五本立て!
え?一本増えたって?
……ぶっちゃけ最近珠世さん達の出番がなかったんで強引にねじ込みました!
そんなわけで小ネタ集です!





恋46.5 恋柱の継子と小ネタ集④

〇柱就任祝いin恋柱邸

 

 

 

 

「と、いうわけで!改めまして、ふーちゃん柱就任おめでと~!!」

 

「お、おめでとう」

 

 蜜璃の興奮した様子の満面の笑みでの言葉に続いて掲げたグラスに小芭内もおずおずとあげる。そんな二人に机を挟んで対面に座る楓子は

 

「お二人共ありがとうございます!」

 

 二人の掲げるグラスにコツンと自身のグラスを当てる。

 カキンッと小気味いい音を鳴らし三人はそれぞれのグラスに口を付ける。

 

「「ぷはぁぁぁッ!」」

 

声を揃えてグラスの中身を飲み干す蜜璃と楓子の様子を眺めながら小芭内は微笑む。

 

「煉獄さんが柱を引退するって聞いたときはどうなるかと思ったけど!ふーちゃんがその後を継いで柱になるなんてね!師匠として鼻が高いわ!」

 

 嬉しそうに微笑みながら言った蜜璃は

 

「これからは師弟として、そして、同じ柱として、頑張りましょうね!」

 

「はい!未熟者ですがこれからもご指導よろしくお願いします!」

 

「ええ、もちろんよ!わからないことがあったら柱の先輩として私達に何でも聞いてね!ね、伊黒さん!?」

 

「ああ」

 

 ニコニコと言う蜜璃に同意しながら小芭内が頷く。

 

「まあなんだ、お前も自分で言っていたようにお前はまだまだ柱としては未熟だ。これから精々励め」

 

「はい、頑張ります!」

 

 小芭内の憎まれ口での言葉にも楓子は微笑みながら頷く。

 そんな楓子の様子を見ながら小芭内は訊く。

 

「……しかし、お前大丈夫か?」

 

「何がですか?」

 

 小芭内の問いに楓子は首を傾げる。

 

「お前、柱の仕事に加えて新しい部署の『梁』の仕事もあるんだろ?」

 

「確かに……大丈夫?大変だったらいつでも相談してね!」

 

「ご心配ありがとうございます、伊黒様、蜜璃さん。でも、私もそこは流石に柱の仕事に加えて『梁』まで、となると過労死するし、考えたくありませんが私に万が一があった時に機能しなくなると困るので、責任者は私のまま私の補佐の人員を用意するように相談しました。選別は私に任せるそうです」

 

「そうなの!?よかった~!そうだよね!いくらふーちゃんが優秀でも流石に大変よね!」

 

 楓子の言葉に蜜璃はホッと胸をなでおろす。

 

「それで?その人員の選別はもう済んでいるのか?」

 

「まああらかたは。あとはお館様に相談して問題なさそうならお館様から当人に通達されます」

 

 言いながら楓子はそこでハッとし

 

「ここで伊黒様を私の補佐に任命すれば大手を振って伊黒様を顎で使える!?」

 

「おい」

 

「や、やだな~、冗談っすよ~!」

 

 ギロッと睨まれた楓子は慌てて苦笑いを浮かべてワタワタと手を振って言う。

 

「お前ならやりかねん」

 

 そんな楓子を小芭内はジト目で睨みつけながらため息をつく。

 

「で?いつから動き始めるんだ?」

 

「そうですねぇ……本格的に動くための拠点になる予定の私の屋敷――萌柱邸がまだ諸々の手続きの為に準備中なんでもう少しかかるらしいですけど」

 

「そうなんだ……」

 

 楓子の言葉に頷いた蜜璃は

 

「じゃあもう少し一緒に暮らせるのね!」

 

「はい、短い間ですけどもう少しお世話になります。まあちょくちょく遊びには来ますよ。なんてったって私は蜜璃さんの継子で妹ですから。それは私が柱になっても変わりません」

 

「そうね!もちろんよ!いつでも遊びに来てちょうだい!」

 

「はい!」

 

 蜜璃の言葉に楓子は微笑んで頷き

 

「あ、でも、ひとつ心配事があって……」

 

「心配事?」

 

「いったい何が気にかかってる?」

 

 困ったような歯の字眉毛にして苦笑いを浮かべる楓子に二人は訊く。

 

「その…私がこの家を出ると、蜜璃さんと伊黒様二人きりになることが多くなると思うんですよ……そうなると、その……」

 

 楓子が言い淀むのを蜜璃はハッと何か気付いた様子で頷き

 

「大丈夫よ、ふーちゃん!伊黒さんは紳士的だから私に乱暴なことなんてしないわよ!ねッ!?」

 

「あ、ああ……」

 

 ニッコリ微笑んで言う蜜璃の言葉に同意を求められた小芭内が頷く。そんな二人に楓子は

 

「あ、そう言うことじゃないです。むしろ逆です」

 

「「逆?」」

 

 楓子が顔の前で手を振って否定するのを二人は首を傾げる。

 そんな二人の疑問に楓子は頷き

 

「いえ、私としてはむしろ手を出してもらって蜜璃さんが成人するのを待ってとか生ぬるいこと言わずにさっさと冨岡夫婦の如く結婚まで至ってほしいんです。何ならデキちゃった結婚とかも可」

 

「いや、お前が良くても俺達が良くないんだが!?」

 

「と、このように当の伊黒様はこんな調子なので、私がいなくても手を出さないってことに関しては圧倒的に想像しがたくないです。なんせ私が炭治郎君達に同行してる長い不在の期間に一切進展しなかったんですから……むしろなんで指一本触れずにいられたんですか?絶好の機会、最高の据え膳じゃないですか」

 

「やかましいわ!」

 

 『うわっ…私の師匠の婚約者ヘタレすぎ…?』とでも言いたげな表情で見つめる楓子に小芭内が怒鳴る。しかし、楓子はそんな小芭内の声も気にせず

 

「まあそんなわけで、私の心配事はただ一つ。私がいなくなってお二人の仲は大丈夫かなぁ?ちゃんと愛を育んでいけるのかなぁ?っていうことです」

 

「大きなお世話だ!」

 

 楓子のため息混じりの言葉に小芭内は再び怒鳴る。

 

「ね!?蜜璃さんだってもっとがっついて欲しいでしょ!?この際不満があれば言ってしまいましょ!」

 

「えッ!?」

 

 楓子に急に振られた蜜璃は驚いた様子で慌てるが少しアワアワともたついたものの

 

「そ、その…私は、伊黒さんに大事にされてるなぁって気がして今の交際に不満は無いの」

 

 モジモジと顔を赤らめて言う。そして――

 

「そ、それに……ふーちゃんがいなかった間に…ゆ、指一本も触れなかったわけじゃないのよ?」

 

「か、甘露寺ッ!?」

 

 思わず口をついて飛び出した蜜璃の言葉に小芭内が慌てるが

 

「え?何ですかそれ私聞いてないんですけど!?その話詳しく!!」

 

 当然楓子がそれを聞き逃すわけもなく、興味津々な様子で蜜璃に顔を寄せる。

 

「あ、あのね……あれは私がふーちゃんに会えなくて寂しくなってる時にね……」

 

「やめろ甘露寺ッ!!それ以上言う――」

 

「そぉいッ!!」

 

「もがッ!?」

 

 止めに入ろうとした小芭内の顔におしぼりを投げつけ仰け反ったところを足を掴んで体勢を入れ替え逆エビ固めを極めた楓子は

 

「ぐえぇぇぇぇッ!?」

 

「さぁ続きを!」

 

 楓子の尻に(物理的に)敷かれて苦悶の声を漏らす小芭内を気にせず蜜璃に先程の話の続きを促す。

 

「それで、ふーちゃんがいなくて私寂しくて、そんな私を伊黒さんが優しく慰めてくれてね」

 

 そんな光景にも蜜璃は「二人は相変わらず仲が良いなぁ~」くらいの微笑まし気な表情で眺めながら続きを話し始める。

 

「私もそんな伊黒さんの優しさに甘えてひとつお願いごとをしたの」

 

「ほう!?お願いごと!?」

 

 蜜璃の言葉に楓子が元炎柱並の声量で促す。

 

「その、私どうしても寂しくって、だから伊黒さんにその日は泊まってもらって……」

 

「ふ、二人きりで!!お泊り!!そ、それで!?」

 

「そ、それでね……その……」

 

 楓子が鼻息荒く先を促す言葉に頷きながら蜜璃は頬を赤く染め

 

「一緒にお話しして、それぞれお風呂に入ったら、同じ部屋で布団を並べてね……?」

 

「ゴクリンコ!」

 

 恥じらいながら言う蜜璃の言葉に楓子は生唾を飲みこみ

 

「そ、それから、手を繋いで一緒に寝たの!/////」

 

 キャー!と真っ赤に染まった顔を両手で覆いながら恥ずかしそうに顔を振る蜜璃。そんな彼女を見ながら数秒黙った楓子は

 

「………え?それだけ?」

 

「うん、そうよ!」

 

 キョトンと首を傾げて訊くが、蜜璃はコクコクと恥ずかしそうに顔を赤らめたまま頷く。そんな蜜璃の言葉に楓子は

 

「テメェコラヘタレ柱この野郎ぉぉぉぉッ!!!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 尻に敷いていた小芭内へさらに体重をかけ、掴んでいた足を引っ張る。

 極められた関節をさらに締め上げられた小芭内は絶叫する。しかし、楓子は構わず締め続ける。

 

「これ以上ないって程の据え膳を前にして手をつけんとはどういう了見だぁぁぁぁぁッ!!」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

「ちょ、ふーちゃん!?それ以上は伊黒さんの身が危ないと思うんだけど!?」

 

 そんな二人の様子に流石に危ないと思ったらしい蜜璃が止めに入る。が――

 

「大丈夫です蜜璃さん!これは身体の疲労を回復させる施術法『マッサージ』の一種です!ほら、蝶屋敷でも機能回復訓練で似たようなことしてるの見たことあるでしょう!あれです!」

 

「あ、なぁんだ。それなら大丈夫ね」

 

 楓子の説明にホッと胸を撫で下ろす蜜璃。そんな彼女へ

 

「ま、待て甘露寺……!騙されるなッ!これは決して疲労回復の施術法などでは――ぐあぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 小芭内が言うのだが、楓子による逆エビ固めによって遮られるのだった。

 こうして楓子の柱就任祝いは更けていくのだった。

 

 

 

 ――そして、一週間後楓子の萌柱邸の準備が整ったとの知らせで、楓子は4年間を過ごした恋柱邸より巣立ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇かまぼこ隊のご褒美

 

 

 

 

「はぁ~……明日には退院かぁ~」

 

 ある日の夕方、日がもう数十分で沈もうという頃、蝶屋敷の一室の宛がわれた部屋のベッドの上で善逸はため息をつく。

 

「どうした善逸?」

 

 そんな友人の姿に炭治郎は首を傾げて問いかける。

 

「今回は俺達それほど怪我の具合も悪くなかったし、そんなに長い入院にはならなかった。機能回復訓練も必要なかっただろ?何がそんなに憂鬱なんだ?」

 

「確かにしんどい機能回復訓練が無しで済んだのはよかったさ。でも、でもさ……」

 

 炭治郎の言葉に同意するように頷き

 

「機能回復訓練が無いってことは……女の子との触れ合いが無いってことなんだよぉぉぉぉぉッ!!」

 

 しかし、涙と鼻水を流しながら汚い声で絶叫する善逸。そんな彼に対して炭治郎は

 

「……いや…何言ってるんだ?」

 

「冷静に返すなぁぁぁぁぁッ!!」

 

 心底訳が分からないという顔で首を傾げる炭治郎。

 

「いいよなぁお前らは!!お前にはカナヲちゃんがッ!!伊之助の馬鹿にもアオイちゃんがいるしなぁッ!!なのに……なのに俺はぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 そんな炭治郎に善逸は泣き叫ぶ。

 

「いや、ごめん。本当に何言ってるかわからない。カナヲはただの友達で――」

 

「うるせぇぇぇぇぇッ!!無自覚天然野郎は黙ってろやッ!!」

 

 首を傾げる炭治郎の襟を掴んだ善逸はガクガクと振りながら叫ぶ。そして一転

 

「あぁ……俺にだってもっとこう何かあってもいいじゃんよぉ~……必死こいて全集中・常中だって習得したのに、楓子さんからのご褒美もねぇしよぉ~……」

 

「お、落ち着けよ善逸。ほらお茶でも飲んで――」

 

「はいど~ぞ」

 

「あ、どうも。ほら、善逸も――」

 

「ああ……てぇ!!」

 

「「楓子さん!?」」

 

「トゥットゥル~♪楓子だよ~♪」

 

 横合いから差し出された湯飲みを受け取った炭治郎と善逸は、さも最初からその場にいて会話に参加していたかのように自然にヌルリと現れた楓子の存在に驚きの声を上げる。

 

「な、なん、なんで……!?」

 

「あ、ごめんごめん。お茶だけじゃなくてちゃんとお茶請けも用意してるよ。知り合いがお土産にって雷おこしをくれてね」

 

「あ、これはどうも……じゃなくて!」

 

 言いながら自身が差し出した皿から手に取ってバリボリと雷おこしを齧る楓子に礼を言いながら慌てて首を振る善逸。

 

「なんで!?いつから!?」

 

「ん?ついさっきよ?」

 

「どのへんから!?」

 

「えっと……」

 

 楓子は善逸の問いにコホンと咳ばらいをし――

 

「『はぁ~……明日には退院かぁ~』って善逸くんが黄昏てたあたり?」

 

「最初っからじゃねぇかぁぁぁぁぁッ!!」

 

 自身の高クオリティの声帯模写よりも先に善逸はツッコミを入れる。

 

「いや、居たんなら出てきてくださいよ!」

 

 炭治郎も思わずツッコミを入れる。

 

「いやぁ~なんか出ずに聞いてる方が面白いかなぁって。あと単純に善逸くんが気持ち悪かった」

 

「気持ち悪くないねぇぇぇッ!!こんくらい普通だわぁぁぁッ!!」

 

 楓子の言葉に善逸が叫ぶ。

 

「じゃ、じゃあなんで最後まで隠れていないで出てきたんですか?」

 

「ん?まあちょっと善逸くんの言葉に気になることがあってね」

 

「気になること?」

 

 頬を掻く楓子の言葉に炭治郎が訊き返す。そんな炭治郎の問いに楓子は頷き

 

「全集中・常中を習得したのに私からご褒美貰えなかったって」

 

「あぁ~……」

 

「い、いや!別に楓子さんのことをあぁだこぉだ言いたかったわけじゃッ――」

 

「あ、別に責めるつもりはないよ。むしろ当然の言い分だよ」

 

 納得したように頷く炭治郎とアタフタと慌てふためく善逸に、しかし楓子は申し訳なさそうの苦笑いを浮かべて首を振る。

 

「私もねぇ、確かにあれはちょっと思うところあってねぇ。あれは流石に私も大人げなかった。努力には正当な見返りがあってしかるべきだったんだよ」

 

 言いながら楓子はニッコリ微笑み

 

「なのでおっぱいを揉ませてあげられないけど、代わりになりそうなご褒美を用意しました」

 

「代わりのご褒美ッ!?」

 

 楓子の言葉にバッと顔を上げる善逸。

 そんな彼に楓子は不敵に笑みを浮かべ

 

「おっと、だいぶ日が隠れてるけどまだ日差しが差し込んでるね。カーテンを全部閉じてくれる?」

 

「え?」

 

「は、はい」

 

 楓子の言葉に首を傾げながらも指示に従ってカーテンを閉める。

 沈みかけていた太陽からの日差しがカーテンによって遮られ、薄暗くなった部屋を楓子の灯したロウソクの光が照らす。そして――

 

「入ってきていいよ~」

 

 楓子は部屋の入口に呼びかける。と、そこから

 

「ムー?」

 

 ゆっくりとした歩みで禰豆子が顔を出した。

 

「ほら、早く入っておいで」

 

「ムー!」

 

 手招きする楓子の言葉に禰豆子が頷きピョコンと姿を現す。

 

「カァッ!!?」

 

 その姿に善逸はあんぐりと口を開け、まるで稲妻にでも打たれたかのように短い悲鳴を上げて固まる。

 

「禰豆子、その服は!」

 

 炭治郎も驚いたように息を飲む。

 二人の驚く視線の先に立つ禰豆子はいつもの麻の葉模様の着物ではなく、洋装――スカート姿だった。口元にいつもの竹筒の口枷はあるもののそれ以外は一新されていた。

 

「どう?なかなかいい見立てでしょう?」

 

 そんな二人に楓子は誇らしげに胸を張る。

 

「サイズは前に採寸しといたから、後は私の裁縫の腕が火を噴いたわけよ」

 

「えッ!?これ楓子さんが作ったんですか!?てっきり既製品かと思いました」

 

「フフ、私の特技の一つだよ。どうかな?気に入った?」

 

「はい!こんないいものをいただいてしまって、ありがとうございます!」

 

 楓子の問いに炭治郎が嬉しそうに微笑んで頷く。

 炭治郎の言葉に楓子も微笑む。と――

 

「うッ…うぅ……」

 

 善逸は号泣していた。

 

「ど、どうした善逸!?ど、どこか痛むのか!?」

 

 そんな善逸の様子に炭治郎が心配した様子で問いかけるが

 

「あぁ……なんてこった……俺は知らず知らずの間に死んじまってたんだな……」

 

「善逸ッ!?落ち着けお前は生きてるぞ!?」

 

「そんなわけねぇ……だってこんな天使が目の前にいるんだぞ?俺を迎えに来たんにきまってる!」

 

「落ち着きたまえよ善逸くん」

 

 興奮した様子で言う善逸に楓子が優しく諭す。

 

「彼女は天使ではない。限りなく天使の様に見えるが、君と同じく地に足のついた人間だよ。古今東西、天使や天女と人間の恋は悲愛の物語が多い。しかし、君と彼女は同じ人間同士ならそんなものは関係ない」

 

 言いながら楓子はそっと風呂敷に包まれたものを差し出す。

 

「こ、これは?」

 

 楓子の差し出すそれを受け取りながら善逸は訊く。

 

「おいおい、この私が禰豆子ちゃんの分しか服を用意しないとでも思ってるのかい?」

 

「それって……!」

 

 楓子の言葉に善逸が風呂敷を解いてみれば、そこには禰豆子が身に着けているものと似た男物の洋装が畳まれて入っていた。

 

「君の分だよ」

 

「俺の?」

 

「好きな子とのお揃い、控えめに言って最高でしょ?」

 

「ふ、楓子さん!!」

 

 楓子の言葉に善逸が目を輝かせる。

 

「今日は満月の日だから一緒にお出かけしておいで。ね、炭治郎君、いいよね?」

 

「え?あ、はい!」

 

「ほら、お兄ちゃんの許可も得たし、ね」

 

「はい!!」

 

 嬉しそうに大きく頷いた善逸は早速着替えようと準備し始め

 

「ちょい待ち」

 

 それを楓子が待ったをかける。

 

「今日は無限列車で頑張ったみんなへのご褒美としてご馳走を用意したから、それを食べてから行こうか。あ、もちろん炭治郎くん達の分もあるよ」

 

「あぁ、道理でさっきからいい匂いがすると思ったら、そう言うわけだったんですね!ありがとうございます!」

 

「まあ私は食材用意してアオイちゃん達も手伝ってくれたしね。伊之助君なんかはどこから感じ取ったのかいつの間にか調理場に来てアオイちゃんが用意した間を持たせる用の軽食パクついてたよ」

 

「あ、さっきからいないと思ったら!」

 

 楓子の言葉に善逸が納得した様子で言う。

 

「さ、もうすぐできるからみんなで食べに行こうぜ!」

 

「「はい!」」

 

「ムー!」

 

 元気に頷いた二人と禰豆子を引き連れて楓子は居間へ向かった。

 

「あ、禰豆子ちゃんは食べちゃダメだからね?身体壊すからね?」

 

「ムー……」

 

「人間に戻ったら食べられなかった分も存分に私がご馳走してあげるからね!」

 

「ムー!」

 

 楓子の言葉に気落ちしたようにしゅんとしたものの、すぐに楓子の言った言葉に嬉しそうに微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇新設!鬼殺隊特別部署『梁』

 

 

 

 

「はい、と言うわけで今日から皆さん『梁』の記念すべき最初のメンバーです!今日から頑張っていきましょ~!お~!!」

 

「「お~!」」

 

「「「「「お、お~……」」」」」

 

 数日前に準備も終わり引っ越しの済んだ萌柱邸にて、楓子が拳を突き上げる中、集った面々のうち二人はノリノリで拳を上げ、五人は恐る恐る拳を上げる。

 

「……いや、ちょっと待ってくれ」

 

 と、そこで集った顔ぶれの一人――村田が挙手して口を開く。

 

「俺はお前が柱に就任して屋敷貰って日頃世話になっている礼がしたいから招待したいってお前に呼ばれたから来たのに……」

 

「え?あなたも?実は私も…同じ女性隊員として仲良くしたいからって……」

 

「俺も……」

 

「私も……」

 

 村田の言葉に那田蜘蛛山で鬼に操られていた女性隊員――尾崎、それに『隠』である後藤と東城が村田に同じく挙手する。

 

「はい、皆さんにはそう言って集まってもらいました!日頃お世話になってる皆さんには、是非今後とも同じ『梁』の一員としてお世話になります!」

 

「「「「……えぇぇぇぇッ!!?」」」」

 

 楓子の言葉に四人が揃って驚きの声を上げる。

 

「いやいやいや!待ってくれ!なんで俺なんだ!?」

 

「そ、そうよ!私こんな責任重大な役に任命してもらえるような人間じゃない!」

 

「俺らだってただの『隠』の人間だし!」

 

「そうそう!」

 

 四人は慌てた様子で言うが

 

「後藤さんと東城さんは情報戦略部からの続投兼今後『隠』との連携を取るときの橋渡し役。尾崎さんはただでさえ少ない女性隊員の中で私が繋がりのある人だから頼みやすかったから。村田さんは……まあ村田さんなら無茶ぶりしてもいいかなぁって」

 

「おいぃぃぃぃぃッ!!?なんだその理由ッ!!」

 

「冗談です、村田さんって義勇さんと同期なんで隊員歴は長いじゃないですか。安定と信頼の実績ってやつですよ」

 

「…………」

 

 本当かよ…、とでも言いたげな視線で自身へジト目を向ける村田にニコニコと微笑みながら楓子は

 

「まあ『梁』っていう新しい部署が立ち上がって私がその責任者に任命されたわけですが、ぶっちゃけ私一人で回すんじゃ何かあった時にいろいろ面倒が多そうなんで、私は責任者として、皆さんには情報・医療・そしてそれらを『隠』と連携を取る、って感じでそれぞれ役割分担して一緒に運営してもらおうかと」

 

「でも私達に医療のことなんて……」

 

「はい、なので医療関係は蝶屋敷で専門的にしていた元柱のカナエさんとアオイちゃんにお願いします」

 

「は~い、お願いされま~す!」

 

「び、微力ながらお手伝いさせていただきます!」

 

 ノリノリで微笑みながら言うカナエと緊張した面持ちのアオイが言う。

 

「で、村田さんと尾崎さんはまこちゃんと一緒に情報面で活躍していただければと」

 

「はい、まこちゃんこと鱗滝真菰です。よろしくお願いします」

 

「「よ、よろしく……」」

 

 にっこりと微笑む真菰に村田と尾崎も頷く。

 

「ま、かたっ苦しく考えず各々の無理ない範囲で頑張っていただければ大丈夫ですんで、よろしくお願いします!」

 

「よろしく~!」

 

「よろしくお願いします!」

 

「「「「「よ、よろしくお願いします……」」」」」

 

 楓子がペコリとお辞儀するのに合わせてカナエと真菰は笑顔で、村田・尾崎・後藤・東城・アオイの五人はまだ緊張した様子でお辞儀する。

 

「さ、顔合わせも済んだことですし、親睦を深めるためにもご飯にしましょう!」

 

 ポンと手を打って微笑んだ楓子は立ち上がろうとして

 

「あ、その前にこれだけ聞かせてほしいんだけど」

 

「はい?」

 

 カナエに呼び止められ、中途半端にお尻を上げた状態で楓子は首を傾げる。

 

「『梁』の今後の方向性とか目的って何か考えているの?」

 

「そうですね~……」

 

 カナエの質問に楓子は少し考え、お尻をすとんと元通り戻す。

 

「とりあえず、まずは産屋敷の家に保管されているこれまでの鬼殺隊の記録から情報を整理する…まあこれは四年前に情報戦略部が発足してから私がある程度進めたので皆さんにはそれに目を通していただければ問題ないです」

 

 楓子の言葉に面々は頷く。

 

「カナエさんとアオイちゃんには引き続き新薬や医療技術の研究を進めていただき、まこちゃんと村田さんと尾崎さん、後藤さんと東城さんには整理した情報から気になるところがあればどんどん洗い出していただければと思います。ちなみに目下私が気になっているのは『吉原遊郭』と『刀鍛冶の里の警備状態』、この二つですね」

 

 言いながら楓子は真剣な表情になる。

 

「ただ一つ、どうしても急務な事案が一つあります」

 

 言いながら楓子は七人の顔をぐるりと見渡し

 

「『青い彼岸花』、これについてやそれに類する噂話・民間伝承なんでもいいです。どんな些細な話でもいいので、『青い彼岸花』に関する話をできるだけ集めてください」

 

「青い……」

 

「彼岸花……?」

 

「それがなんで必要なんだ?」

 

 楓子の言葉に後藤・尾崎・村田が訊く。他の面々も疑問符を浮かべている様子だった。

 

「物が実際に手に入らないと何とも言えませんが、恐らくそれがあれば」

 

 そこで言葉を区切った楓子は真剣な面持ちで

 

「それがあれば、鬼舞辻無惨を倒す決定打になるかもしれません」

 

『ッ!?』

 

 楓子の言葉に七人が息を飲む。

 

「お前…それ本当なのか……?」

 

「はい、確かな情報筋に裏取ってます」

 

「確かな情報筋って……?」

 

 楓子の言葉にカナエが訊く。

 

「詳しくはまだ言えません。皆さんを信頼してないわけではありませんが、相手方もかなり慎重な方たちなので……ただ、言えるのは相手は鬼の身体に精通している外部の医学者の方です。信頼もできます。私の首を掛けてもいいです」

 

『…………』

 

 楓子の言葉に七人は顔を見合わせ

 

「わかったわ、それ以上は訊かないわ」

 

「カナエ様!?」

 

 カナエの言葉にアオイが驚きに眼を見開く。

 

「楓子ちゃんが自分の首を掛けるほど信頼してる相手だもの、言えないのだってきっと理由があるのよ。私は楓子ちゃんを信じるわ」

 

「カナエさん……」

 

 楓子はニッコリ微笑むカナエに嬉しそうに目を細める。

 

「私ももちろん信じるよ!」

 

「まこちゃん……」

 

「まあ俺もお前ならちゃんと危ないこととそうじゃないことの見極めはできるだろうからな……」

 

「そうだな、まあ本気で危なくなる前にちゃんと相談してくれよ」

 

「村田さん…後藤さん……」

 

「わ、私も信じます!」

 

「わ、私も!」

 

「東城さん…尾崎さんも……」

 

 次々に頷く面々、そして――

 

「……わかりました、私も信じます!」

 

「アオイちゃん…ありがとう!」

 

 最後にアオイも頷いたのを見て楓子は満面の笑みを浮かべる。

 

「いつか、必ず皆さんにもお話します。全部話しますので……」

 

「うん、待ってる」

 

 楓子の言葉にカナエが言い、他の面々も頷く。

 

「とりあえず、『青い彼岸花』の件、俺達も気にしておくように他の『隠』の奴にも伝えとくよ」

 

「俺も知り合いの隊員に頼んでおくよ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 後藤と村田の言葉に楓子は深々と頭を下げる。

 

「遮ってごめんね。さ、気を取り直してご飯だったわね!手伝うわよ!」

 

「あ、私も!」

 

 カナエがパンと手を打って空気を切り替えて言うとアオイを筆頭に女性陣が腰を上げる。

 

「あぁ……すまん、俺これまで料理なんてしてきたことなくて……」

 

「お、俺も……皿を運ぶくらいなら手伝えるから!」

 

「あぁ、大丈夫ですよ。男性お二方は座ってお待ちください。美女六人が腕を振るうんで楽しみに待っててくださいね!」

 

「「お、おう……」」

 

 頷いた二人を居間において、女性陣六人は調理場へ去って行った。

 

 

「あぁ……後藤さん、だっけ?」

 

「ああ。そういうそっちは村田さんだったよな」

 

 言いながら残された二人は数秒黙ったまま顔を見合わせ

 

「今更だけど、俺ら以外女子だな……」

 

「ああ、八人中六人が女子。まあ責任者が女子な時点で仕方ねぇか……」

 

「肩身狭いかも知れないけど頑張ろうな」

 

「ああ、お互いにな」

 

 そう言って二人は固く握手を交わした。ここに新たな友情が生まれたのであった。

 その後、楓子が下拵えをすませていたのもあってすぐに運ばれてきた料理を囲み、新設された『梁』の面々は和やかに食事をし、親睦を深めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇産屋敷輝利哉は贈りたい

 

 

 

 産屋敷邸、その一室にて耀哉とあまねの子ども達五人が揃っていた。

 

「それで輝利哉、楓子さんへのお祝いの品は用意できたの?」

 

「ま、まあ……」

 

「随分気弱な返事ね。本当に大丈夫なの?」

 

「い、一応楓子さんの欲しがっている物は本人にそれとなぁく聞き出して、お父様のツテでどうにか手に入れましたが……」

 

 姉二人――ひなきとにちかの言葉に、輝利哉は自信無さそうに頷く。

 

「大丈夫ですお兄様、贈り物…それも本人が欲しがっている物であればきっと上手くいきますわ!」

 

「そうですね、それにお祝いしてくれたという好意はきっと楓子さんのことですから素直に喜んでいただけることでしょうね」

 

 かなたとくいなはそんな自信のなさそうな兄へ言う。

 

「そう言えば聞いていませんでしたが、結局楓子さんへの贈り物は何にしたんですか?」

 

「あぁ、なんでも『英吉利(えげれす)』で30年ほど前出版された物語があるそうで、続編も多数出版され今もなお親しまれていて、楓子さんもその愛読家らしいのですが、どうやらその第一作目の初版本が欲しかったそうで」

 

「えげれすの……でも、その初版本と言うことは日本語に訳されてないのでは?」

 

「ほら、楓子さんって複数の外国語に精通されてらっしゃるから」

 

「はい、日本語に訳された物もお持ちらしいのですが、曰く『愛好家としては最初の原本を手に入れることは至高の喜び』だそうで……」

 

「そんなに欲しがっているなら、十分に喜んでいただけるのでは?」

 

「だ、だとよいのですが……」

 

 姉妹達が頷くのを、しかし、輝利哉はまだ自信なさそうに俯く。

 

「もう、お兄様!しゃきっとしてください!あなたは将来的には父上の後を継いで鬼殺隊を率いていく人間なんですよ!そんな弱気でそうするんですか!」

 

「そうですよ。他の面ではしっかりしてるのに、どうしてこと恋愛に関してはこんなにもヘタレなのか……」

 

「し、仕方ないではないですか!楓子さんは私のことを異性として見ていない節はひしひしと感じていますし!そんな状況でどうやっても『子どもが背伸びしてるなぁ』くらいにしか思われていませんし!」

 

 くいなとひなきの言葉に輝利哉は呟くように言う。

 

「そ、それにその…今回の贈り物はあくまでも楓子さんの『柱』就任をお祝いするのが目的であって、それで何か見返りが来るなんて下心なんって決して……」

 

「はいはい、わかってますよ」

 

 輝利哉のもにょもにょと紡がれる言い訳ににちかはため息混じりに頷き

 

「とにかく、一番大事なのは『おめでとう』って気持ちじゃないですか?」

 

「そ、そうですよね!『おめでとう』って言われて嫌な気持ちになる人はいないですよね!楓子さんもきっと少しは喜んでくれますよね!」

 

 にちかの言葉に輝利哉は目を輝かせる。

 

「よ、よし、とりあえずもうすぐ楓子さんが『梁』の正式な活動開始の報告に来ます!そこで渡しましょう!」

 

「ええ、頑張ってくださいね」

 

 ひなきが頷くのを見て輝利哉は

 

「……あの、その場にはぜひみんなにも同席を願いたいのですが……」

 

『…………』

 

 その言葉に四人の姉妹達はそっと顔を見合わせ

 

「はぁ…仕方ありませんね」

 

「お兄様だけでは何かと不安が残りますしね……」

 

 ひなきとくいなが言い他二人も頷く。

 

「まあ手助けはしますが、頑張るのはあなたですからね、輝利哉」

 

「お兄様、頑張ってください!」

 

 姉妹達の言葉に輝利哉は頷き

 

「楓子さんに喜んでいただけるように精一杯気持ちを伝えるようにする!」

 

 輝利哉は意気揚々と頷く。

 

 

 

 ――そして、楓子が耀哉への報告をすませた後、

 

 

 

 

「うぇぇぇぇぇぇッ!!!?うそぉぉぉぉぉぉんッ!!!?これマッ!!!?」

 

 輝利哉の差し出したその贈り物に楓子がびっくり仰天し

 

「全愛好家の夢が!!!今ここに!!!!」

 

 楓子は叫びながら頬を抓り

 

ひはい(いたい)ッ!!!夢じゃない!!!夢だけど!!!夢じゃなかった!!!」

 

「あ、あの楓子さん…どうし――」

 

 楓子の異様なテンションに恐る恐る声を掛けた輝利哉だったが興奮した楓子はガバッと目の前に顔を寄せる。

 

「ホントに!!?ホントのホントにこれ貰っちゃっていいの!!?」

 

「は、はい。楓子さんが以前に欲しいとおっしゃっていたので、これまでのいろいろなお礼もかねてお祝いに、と――」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?マジでぇぇぇぇぇぇッ!!!?」

 

 興奮した様子でクルクル回った楓子は

 

「輝利哉くぅぅぅぅん!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 そのまま輝利哉に抱き着いた。

 

【挿絵表示】

 

 

「ありがとぉぉぉぉぉぉぉッ!!!輝利哉君マジ感謝ぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 抱きしめられ自身の顔に楓子の胸が押し付けられて顔を赤面させる輝利哉だがそんなこと気にせずさらに強く抱きしめる楓子。

 

「うわぁぁぁぁぁぁんッ!!!夢が叶ったよぉぉぉぉぉッ!!!」

 

「ちょ、楓子さんッ!!楓子さんッ!!?」

 

 強く抱きしめたままグイグイと自身に胸を押し付けてくる楓子に輝利哉は慌てて叫ぶ。

 

「あ、あの、楓子さんッ!!い、一旦落ち着いてください!!!胸ッ!!!胸が当たってます!!!」

 

「んなことどうでもいいぜぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

「うえぇぇぇぇぇッ!!?」

 

 笑って言う楓子に輝利哉は驚愕に眼を見開く。

 

「輝利哉君の贈り物に対してならこのくらい安いもの!!むしろもっとサービスしちゃうぞぉ!!♡」

 

「んにゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?」

 

 さらにグイグイと押し付けられる感触に輝利哉は歓喜とも困惑ともとれる叫びをあげる。

 

「ほれほれぇッ!!何なら揉んでもいいんだぞぉ!!」

 

「そ、そんなッ!!?」

 

 興奮した楓子の言葉に輝利哉は唖然としながらなんとか顔を動かして脇で見守る姉妹達に視線を向け

 

「た、助けて!!ふ、楓子さんを落ち着かせてッ!!」

 

 助けを求める。が――

 

「本人が良しと言っているんですから揉ませてもらったらいいんじゃないですか?」

 

「んなッ!?くいなッ!?」

 

「よかったわね、輝利哉。役得、と言うやつね」

 

「ちょ、ひなき姉様!?」

 

「この勢いなら接吻くらいなら許されるんじゃないかしら?」

 

「にちか姉様も!?」

 

「よ、よかったですね、お兄様!」

 

「かなたまでッ!?」

 

 姉妹揃って自身を助ける気が一切ない様子に輝利哉は愕然とする。

 

「あ、接吻?いいっすよ」

 

「軽いッ!!?」

 

「流石に唇は将来の伴侶の方にとっておいた方がいいでしょうから頬に――」

 

「いやいやいや!!接吻はいいですから、ねッ!!?」

 

「そうですか?まあ私の接吻なんてもらっても別に嬉しいもんでもないか……」

 

「あ、いえそう言うことではなく、むしろそんなに簡単にいたしては――!!」

 

「じゃあその分ギュ~ッと!!」

 

「んにゃぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 楓子の言葉に慌てて否定しようとするも、楓子のハグの感触に再び絶叫する。

 それから輝利哉に救いだされたのは実に五分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇一方その頃の珠世と愈史郎は……

 

 

 

 

「珠世様、大好と竈門から血液が送られてきました」

 

「ありがとう愈史郎」

 

 とある隠れ家にて茶々丸を引き連れた愈史郎が珠世に茶々丸が運んできたものをお茶とともに渡す。

 

「それで、彼らがとってきた血液と言うのはいったい?」

 

 言いながら珠世は愈史郎が置いた湯飲みに口を付け――

 

「はい、竈門からは鬼舞辻が新たに作った複数の鬼を合成した特殊な鬼の物を、大好からは上弦の弐の血液を――」

 

「じょ、上弦の弐ッ!?」

 

 思わず口に含んだお茶を噴きだしそうになり、寸前で何とか踏み止まる。

 

「ま、まさかいきなりそれほど上位の、鬼舞辻無惨の側近の血液が手に入るとは……」

 

「ええ、幾分か大好のことを見くびっていたかもしれません」

 

 驚く珠世に頷き愈史郎。

 

「とりあえず一緒に手紙が同封されていました。詳しいことはこれに書かれているのかもしれません」

 

「わかりました、さっそく読んでみましょう」

 

 愈史郎の差し出した手紙を受け取りながら珠世は言い、そっと封筒を開き中の便箋に目を通す。

 

「なんて書いてありますか?」

 

「少々待ってください……なるほど、大筋はわかりました」

 

 そう言って珠世は手紙に書かれた経緯について愈史郎に説明する。

 

「なるほど、そんなことが……」

 

 珠世の説明に愈史郎は少し驚きに目を開いて言う。

 

「しかし、それほどの活躍をしてしまったら、奴も鬼舞辻無惨の標的にされ、動きずらくなるのでは?奴の言っていた『青い彼岸花』の情報収集の件も……」

 

「あ、その件は大丈夫、むしろ、より動きやすくなったようです」

 

「??? どういうことですか?」

 

 首を傾げる愈史郎に珠世は楓子からの手紙を差し出す。

 

「拝見します」

 

 手紙を受け取った愈史郎は便箋に目を向け

 

「最後の部分、追伸のところです」

 

「本当に最後の部分ですね。えっと、何々?『追伸、この度上弦の弐討伐の功績で「柱」及び新設された諜報部門「梁」の責任者に任命されたので「青い彼岸花」の情報収集はこれまで以上に捗るもよう』……ってぇ!!『柱』!?」

 

 その一文に愈史郎が柄にもなく眼をむく。

 

「あ、あの女が鬼殺隊最高戦力『柱』ッ!?産屋敷の現当主は正気ですかッ!?」

 

「まあふうちゃんは優秀なようですから。上弦の弐を屠ってみせる力量や他にも医療面、情報面での活躍、産屋敷の当主もそのあたりを評価してのことなのでしょう」

 

「しかし、あの女はそれを打ち消して余りある性格の難がありますが……?」

 

「そうですか?とても気さくな良い方だと私は思ったのですが……」

 

「…………」

 

 首を傾げる珠世に、愈史郎は何とも言えない微妙な表情を浮かべる。

 

「と、とりあえず俺の懸念は問題ないようでひとまずは安心ですね」

 

「ええ、良い報告が聞ける日も近いかも知れませんね」

 

 ため息混じりに言う愈史郎を他所に珠世は嬉しそうに微笑むのだった。

 

 




あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!
「私はオネショタの挿絵を描いたと思ったら出来上がったのはオネロリにしか見えないモノだった」
な…何を言っているのかわからねーと思うが、私も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

そんなわけで小ネタ集でした。
いろんなところでいろいろと動いております。
果たしてこの先の物語の変化やいかに!?



そんなわけで今回の質問コーナーです!
今回はyu−suzuさんからいただきました!

――ズバリ、楓子ちゃんと真菰ちゃんの出会いと手がらみ鬼との共闘戦。その時はどんな感じだったのですか?(例えば、手がらみ鬼についてもめてたり、親友同士になった瞬間とか炎の呼吸と水の呼吸の共闘の感想、どんなきっかけで親友になったのか)

楓子「とりあえず話すと長くなるので端的に話すと、最初私は藤襲山の最終選別に参加した時、その二日目の夜にまこちゃんが単騎で手鬼と対峙してるところに遭遇してね。鱗滝さんや歴代の弟子を喰らってきた話を聞かされたからなのか、激昂して冷静さを欠いていたまこちゃんを私が無理矢理間に入って止めて抵抗するまこちゃんを引き摺るみたいに手鬼と引き離してその日は終わり。日が昇って落ち着いたまこちゃんを諭して共闘を申し出て、綿密に作戦を立てて、三日目の夜ついに手鬼と対峙。炎と水、なんて名前的に相性悪いかと思ったけど攻撃力特化の炎に攻守バランスのいい水がフォローしてもらって意外と相性良くてね。最終私が手鬼の頸を落として終了。その後なんだかんだ最終日までコンビで行動して四日間苦楽を共にして、隊員になってからも何かと連絡とり合ったり、同期だからなのかかまぼこ隊の三人みたいに任務一緒になること多くて、そうしてるうちにいつの間にか親友になってた……って感じかな?」

と、言うことです。
ただ、これだとよくわからないと思うんでそのうち番外編って形でその模様は描きたいと思います。
とりあえず私のイメージでは二人の仲はこのくらい仲良しです↓

【挿絵表示】




さてさて、今回は一つお知らせです。
この度白岩@さんから楓子ちゃんの原作風イラストを描いていただきました!
この場を借りてご紹介です!

【挿絵表示】




白岩@さん、素敵なイラストをありがとうございました!
これで作者のモチベーションアップです!

と言うわけで今回はこの辺で!
また次回をお楽しみに!



~大正コソコソ噂話①~
恋柱邸を出て自身の屋敷を持った楓子ですが、なんだかんだと理由をつけて未だに恋柱邸には入り浸っており、少なくとも週に一泊は恋柱邸に寝泊まりしています。蜜璃もそんな楓子を歓迎し喜んでいます。

~大正コソコソ噂話②~
楓子の言葉通り満月だったその夜、ペアルックの禰豆子と善逸はいつもの花畑に二人で散歩に行ったそうですよ。

~大正コソコソ噂話③~
その後の親睦を深める食事会での席のこと――

「ねぇ、東城さん?あなた何だか他人とは思えないんだけど……」

「あら、尾崎さんもですか?実は私もなんだか親近感を覚えてしまって……」

と、尾崎と東城が謎のシンパシーを感じ、それから意気投合していくのですが、それはまた別のお話。

~大正コソコソ噂話④~
楓子の貰った英国が誇る人気小説シリーズの初版本ですが、その作品の名前はお詳しい読者の方はすぐお気づきですね?そう、あの世界一の私立探偵の物語です。一応挿絵の中でも輝利哉が手に持っています。

~大正コソコソ噂話⑤~
合成鬼の血液は研究したところ複数の鬼を混ぜ合わせる際に繋ぎとして鬼舞辻無惨の血液が追加されていたようで、一緒に送られた上弦の弐・猗窩座と同等の量が投与されていたようですよ。


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