ここのところ立て込んでしまい投稿が間が空いてしまい申し訳ありません!
そんなこんなで最新話です。
本編を始める前に訂正と謝罪を。
前回のあとがきにてファンアートをご紹介しましたが、お名前を間違って記載しておりました。
正しくは『月宮塚帖』さんでした。
当該部分は修正しております。
月宮塚帖さん、この度は誤表記してしまい申し訳ありませんでした。
そんなわけで改めまして最新話です。
「と、言うわけで…紹介するね炭治郎君。こちら杏寿郎さん達の実父の煉獄愼寿郎さん」
「は、初めまして!竈門炭治郎です!煉獄さん――杏寿郎さんや楓子さんにはとてもお世話になっています!」
楓子の言葉に深々と頭を下げる炭治郎。そんな彼に二人の対面に座った愼寿郎は――
「……ああ」
素っ気なく頷いただけだった。
「……え?それだけですか?もっとこう…ないんですか?」
「何がだ?」
「何がって……ハァ、もういいです」
楓子は愼寿郎へため息をつく。
「おい待て何だその顔は?」
「その顔って?」
「あぁこの人には何を言っても無駄なんだろうなぁ~、とでも言いたげな顔をやめろ!」
「愼寿郎さん心読めたんですかッ!?」
「ぶっ飛ばすぞお前!!」
楓子が心底驚いた顔で言うのを愼寿郎は机を叩きながら叫ぶ。
「お前は前々から思っていたんだが、お前は俺への尊敬の念が薄いんじゃないかッ!?」
「そうですか?」
「そうなんだよ!!明らかに杏寿郎と俺で扱いの差がある!!」
「それは……まあ私一応愼寿郎さんのことはちゃんと尊敬してますよ。ただ――」
「ただ?」
「愼寿郎さんは普段の言動でその尊敬を相殺してしまってるんですよねぇ……」
「はぁ!?俺のどこが悪いって言うんだ!?」
「昼間っから酒飲んで飲んだくれてる」
「うッ……」
楓子の言葉に顔を顰めていた愼寿郎は痛いところを突かれたという様子で苦悶の声を漏らす。
「あと幼かった千寿郎君の育児放棄」
「うッ……」
「鬼殺隊の任務にもお酒飲んで酔った状態で就くという職務怠慢」
「そ、それは……」
「そりゃ奥さんが亡くなってそれを悼むなとは言いませんよ。だからってねぇ?」
「い、いやしかし……」
「煉獄家の内での問題ならまだしも、それでお館様や他の隊員に迷惑かけてちゃ駄目でしょ?」
「…………」
愼寿郎は楓子の言葉にぐぅの音も出ない様子でガックリと俯く。
「尊敬した扱いしてほしかったらもう少し生活態度正してください。せめてお酒をもう少し控えるとか」
「し、しかしだな……」
「別に飲むなって言ってません。お酒だって適量なら娯楽の一種です。ただ愼寿郎さんの場合は適量を超えてます。お酒は適量を超えれば毒と変わらないんです。内臓があっちっこっちダメになりますよ!特に肝臓!!」
楓子の勢いに愼寿郎は押し黙る。
「とにかくお酒はもう少し控えめに!でないと早死にしますよ!」
「そ、それは……」
「この話何度目かもうわかりませんけどね、もっと覚えやすく言いましょう!」
言いながらギロリと愼寿郎を睨みつけ
「いいですか?お酒を飲みすぎると――肝臓にい
「「「…………」」」
楓子の真剣な表情での突然のダジャレに愼寿郎と千寿郎、炭治郎がポカーンと呆ける中――
「プッ!ハハハハハハッ!!か、肝臓に…いかんぞう……!!い、いかんぞうとは…!!こいつは上手いこと言うッ!!」
杏寿郎の笑い声が響くのだった。
〇
それから改めて気を取り直して歴代炎柱の手記を分担して目を通した楓子達。それから数十分。
「ふむ、だいたい分かった」
言いながら楓子は持っていた炎柱の手記をパタンと閉じる。
「何か始まりの呼吸についての有用な記述が見つかったのか?」
「ええ。なかなかに興味深いことが分かりましたよ」
杏寿郎の言葉に楓子は頷く。
「まず大前提として、始まりの呼吸と呼ばれる『日の呼吸』の使い手――継国縁壱と言う剣士は21代目の炎柱の代で登場します」
楓子は閉じた手記の該当ページを開く。
「彼の使う技術――呼吸法を既存の剣技と合わせたことで生まれたのが炎・水・岩・風・雷の五つの全集中の呼吸です。他にも二・三の特殊な技術がありますが、ここでは一旦脇に置いておきます」
「ああ、しかし、それだけ凄い人物がいたこと、俺も初めて知った。恐らく他の柱たちも同様だろう」
「でしょうね。事実産屋敷家に保管されている記録にもほとんど名前も登場しません。なぜこれほどの功績を遺した剣士が鬼殺隊の歴史から抹消されたのか……その答えもこの手記の中にありました」
言いながら楓子は手記を示す。
「『日の呼吸』の剣士の名前が消されたのは、彼が三つの事象の責任を取って鬼殺隊から除名されたせいだったんです」
「なんと!?それほど功績を持った剣士が除名されるとは!?いったいどんな事件だったんだ!?」
杏寿郎の問いに頷いた楓子は手記のページを捲り
「まず一つ目の事象は、継国縁壱氏が鬼舞辻無惨と遭遇し、あと一歩のところまで追いつめたが、取り逃がしてしまったこと」
「なッ!?」
「鬼舞辻無惨を追い詰めたッ!?」
楓子の言葉に千寿郎と杏寿郎が驚愕の声を上げる。
「ええ。この手記によれば本当にあと一歩のところまで追いつめたようですが、追い詰められた無惨は自身の肉体を無数の肉片にして飛び散らせて逃げおおせたようです。その際も継国氏はその無数の肉片の大半を斬って落としたみたいだけど、流石に不意打ちで全部斬り落とすことは無理だったようですね」
「ふむ……」
「でもそれは……」
「ええ、はっきり言って同じ状況で彼よりも上手に立ち回れることなんて私には到底無理ですね。でも、その当時の鬼殺隊の面々はそれを彼の失態として責任を追及したようです」
楓子は言いながら頷き
「そして、二つ目の事象。それは無惨に仕え側にいた鬼を見逃したことです。その逃亡方法は無惨にとってもかなり破れかぶれだったようで、それによって側近の鬼は呪縛から解放された。その鬼も無惨に不満があったようで継国氏にいろいろと情報をもたらし、彼の無惨を倒す協力をするという申し出に応じることを約束したので、彼はその鬼を見逃したそうです」
「鬼舞辻無惨を追い詰めたことは功績だが鬼を見逃したのは間違いだったな」
楓子の言葉に愼寿郎は憮然と頷く。
「そうでしょうか?ちゃんと約束したなら信じても……」
「鬼は平気で嘘をつく。逃がした鬼が人を襲えばそれは逃がした者の責任だ」
「それは…そうですが……」
愼寿郎の言葉に炭治郎は言い淀む。
「当時もそう言うことで問題になったようですね」
楓子は頷き
「でも、彼が除名される要因は三つ目の事象が大部分のようです」
そこで言葉を区切った楓子は
「一番の除名の原因は、同じく鬼殺隊に所属していた彼の兄が当時のお館様を暗殺し鬼となったことです」
「「「なッ!?」」」
楓子の言葉に炭治郎達三人は唖然とし、内容を知っていた愼寿郎は顔を伏せる。
「縁壱氏の兄もまたかなり優秀な剣士で、『日の呼吸』には及ばないまでも強力な、今では失われてしまったらしい『月の呼吸』の使い手だったそうですが、無惨にそそのかされ鬼となり当時のお館様の首を土産に鬼舞辻無惨の軍門に下ったようです。縁壱氏はそんな兄の責任を追及されて除名されたようです。中には自刃しろ、って意見もあったようですが、六つで当主になったばかりのお館様がそれを反対したようです。――これが継国縁壱の名前が鬼殺隊の歴史から消えたことの顛末です」
「そんなことが……」
楓子の言葉に杏寿郎達は重く頷く。
「……でも、わからないことがあります」
そんな中炭治郎が口を開く。
「継国縁壱と言う名前、俺は聞き覚えありません。何故うちの家系に『日の呼吸』が……?」
「まあ考えられるのは除名された後の縁壱氏と何らかの形で竈門家の祖先がかかわりを持ち、そこで教わったって言うのが一番ありえそうだけど…この手記じゃ彼が除名されて以降のことは何もわからないから想像するしかないね」
「そう…ですか……」
楓子の言葉に炭治郎は残念そうに俯く。
「ただ一つ、『日の呼吸』の幻の十三個の型の記述があったよ」
「えッ!?」
楓子の言葉に炭治郎は驚きの声をあげる。
「で、でも俺の家に伝わってる『ヒノカミ神楽』の型は十二個しかありません」
「この手記によれば鬼舞辻無惨と対面した縁壱氏はその場で『日の呼吸』を完成させたそうだよ。それが十三個目の型でしょう」
「いや待て!」
楓子の言葉に愼寿郎が叫ぶ。
「確かに俺もその手記は何度も読み返した!そして確かにその記述もあった!だが、それ以上のことは無かった!」
「はい、ありませんでしたよ」
「なら!」
「でも、十三個目の型があるということでいろいろ考えて少し予想がついたんですよね」
「何ッ!?」
楓子の言葉に愼寿郎が眉を顰める。
「『日の呼吸』、『ヒノカミ神楽』の未知の十三個目の型の謎を解く鍵は二つ。一つ目は炭治郎君のお父さんが一晩中休みなく絶え間なく『ヒノカミ神楽』を舞い続けていたこと」
「一晩中ッ!?」
「うむ!そう言えば無限列車でもそんなことを言っていたなッ!」
「二人の驚きも当然です。いくら全集中・常中ができるとはいえ、すべての型を一晩中やり続けろと言うのはなかなかに至難の業です」
驚く千寿郎と杏寿郎に楓子が言う。
「それと気になるのが、一晩中、絶え間なく舞っていたということです」
「「「「???」」」」
楓子の言葉に四人は首を傾げる。
「確かに全集中の型を何も知らない人が見れば剣舞に見えるかもしれません。でも……」
言いながら立ち上がり、楓子は一歩下がり日輪刀を抜いて机の上に置き、鞘を握って構える。
「見ててください――炎の呼吸・壱の型!『不知火』!!」
素早く楓子は鞘を刀に見立てて振るう。
そして、すぐさま構え直し
「弐の型!『昇り炎天』!!」
大きく斬り上げるように鞘を振るう。
そのまま楓子は型を順に行い――
「そして、奥義・玖の型!『煉獄』!!」
楓子は最後の型を放つ。
そして、ゆっくりと姿勢を戻し刀を鞘に納めて座り
「――ね?」
四人に視線を向ける。
視線を受けた四人は
「えっと……」
「うむ!洗礼された美しい動きだった!素晴らしい精度で習得している!絶えず鍛錬を続けている証拠だな!」
炭治郎は意図が分からず首を傾げ、杏寿郎は誇らしげに頷き
「いえ…あの…恐らくそう言うことではないかと……」
千寿郎は見当違いな兄の言葉に苦笑いを浮かべ
「……なるほど、そう言うことか」
唯一、愼寿郎だけが何かに気付いた様子で頷く。
「ようは、普通の呼吸の型では絶え間なく舞っているようには見えない、と言いたいんだな?」
「愼寿郎さん正解です!10大好ポイント進呈です!」
愼寿郎の言葉に楓子は大きく頷く。
「……なんだその大好ぽいんと?とかいうやつは?」
「私が作った得点です」
「それを集めるとどうなる?」
「この得点を50ポイント集める毎になんとこちらの……『金の楓子ちゃん』を進呈します!」
「いらん」
楓子はわきのカバンから手のひらサイズの二頭身の自身を象った人形を取り出す。が、愼寿郎は冷めた目で言う。
「しかもこちらの金の楓子ちゃん人形を5個集めるとなんと……『クリスタルな楓子ちゃん』を進呈します!」
「すこぶるいらん」
再び楓子はカバンから先程と同じ形の今度は透明な人形を取り出す。が、愼寿郎は冷めた目で言う。
「しかもこちらのクリスタルな楓子ちゃんを5個集めるとこちらの……『金の脳』を進呈します」
「ものすごくいらん」
今度は両掌に収まるほどの金色の脳を象った置物を取り出す。が、愼寿郎は冷めた目で言う。
「しかもこちらの『金の脳』……おにぎり入れになっています」
「心底いらん」
楓子は言いながら脳の前頭葉部分を右脳と左脳でパカッと開く。そこにはドンとおにぎりが鎮座している。が、愼寿郎は冷めた目で言う。
「ちぇ~……せっかく刀鍛冶の里の職人さんに協力してもらって作ったのに……」
「職人の技術力を無駄遣いするな!!」
楓子の言葉に愼寿郎が叫ぶ。
「でも鉄珍さんがノリノリで協力してくれましたよ」
「刀鍛冶の里の長になんてもの作らせてるんだ貴様!!」
楓子の言葉にため息をつきながら愼寿郎は頭が痛そうに目頭を押さえて叫ぶ。
「なんですかもう…お館様と輝利哉君は喜んでくれたのに……」
「おい待て今なんて言った?その何の役にも立たないガラクタをお館様たちに送ったのか!?」
「まあ話が逸れたので戻しますが――」
「戻すな!まずこんなゴミをお館様達に送った件を」
「シィッ!愼寿郎さん、今大事な話してるんで無駄話は後にしてください!」
「す、すまん………ん?待て!もとはと言えばお前がわけのわからん得点の話を始めたからで――」
口の前で人差し指を立てて「静かに」のジェスチャーをしながら叫ぶ楓子の勢いに思わず謝った愼寿郎だったが、すぐにおかしいことに気付き言うが、楓子は素知らぬ顔で話を戻す。
「まあつまり、愼寿郎さんの言う通り、要はただ普通に呼吸の型を連続でやっても型と型の間に構え直すための間ができて絶え間なく舞っているようには見えないんです」
そんな楓子の言葉に愼寿郎は無駄だと理解した様子で大きくため息をつく。
「これはどれほど熟練の剣士でもその間の部分をなくすことは難しいでしょう。それでは絶え間なく舞っているとは言い難い……それを踏まえて改めて『日の呼吸』十二の型の名前を見ると、あることに気付きます」
「あること?」
頷いた楓子はわきに置いていたカバンから数枚の紙と鉛筆を取り出し
「『円舞』…『碧羅の天』…『烈日紅鏡』…」
楓子は言いながら紙一枚一枚に声に出して型の名称を書き記していく。
「『灼骨炎陽』…『陽華突』…『日暈の龍・頭舞い』…『斜陽転身』…『飛輪陽炎』…『輝輝恩光』…『火車』…『幻日虹』そして『炎舞』……」
十二の型全てを書き記した楓子はそれを順に並べ
「何か気付くことはありませんか?」
「………?」
「気付くこと……?」
「……何が…?」
楓子の言葉に首を傾げていた面々の中で最初に気付いたのは
「あッ!!」
千寿郎だった。
「これ!『円舞』と『炎舞』で同音異義語です!」
「正解!千寿郎君には20楓子ポイント進呈!」
「あ、ありがとうございます!」
楓子が言うと、千寿郎は少し照れたように、しかし、嬉しそうに微笑む。
「むう…悔しいな!俺も父上や千寿郎に負けていられないな!」
「おい、張り合うな。あの得点を集めても貰えるのはあのガラクタだぞ」
本気で悔しがっているらしい杏寿郎の言葉に愼寿郎は呆れた様子で言う。
「千寿郎君の言う通り、最初の『円舞』と最後の『炎舞』で同じ音です。これこそが恐らく謎の十三個目の型を見つけ出す最後の鍵です」
言いながら楓子は机に並べた型の名称の書かれた紙を集め
「『一晩中絶え間なく舞っていた炭治郎君のお父さん』、『二つの「えんぶ」』この二つが示すのは……」
楓子は机に再び型の名称の書かれた紙を並べていく。しかし、それは先程のような一列に並べたものではなく
「『日の呼吸』十三個目の型、それは二つの『えんぶ』で円環する十二個の型全てを連続で行うことです」
二つの「えんぶ」を隣り合わせにして円を描いて並べられていた。
〇
私の謎解きから数時間後、太陽はとっくに沈み、辺りは月明かりのみの夜の闇で満たされていた。
そんな夜の道を私と炭治郎君は歩いていた。
「どう、お腹いっぱい食べた?」
「は、はい!どれも美味しかったです!ご馳走様でした!」
「うむうむ。そう言ってくれたら作った甲斐があるってものだよ!」
炭治郎君の言葉に頷く。
「あの…俺はともかく、楓子さんはよかったんですか?」
「ん?何が?」
炭治郎君が恐る恐る訊く問いの意図が分からず私は首を傾げる。
「だって…煉獄さんの家は楓子さんも全集中の呼吸を習っていた場所なんですよね?千寿郎君や愼寿郎さん、杏寿郎さんとも積もる話もあったんじゃ……?」
「あぁ~……」
炭治郎君の言葉に納得して頷き
「まあ、話が無いわけじゃないけど、今日は家族水入らずの方がいいんじゃないかなぁってね」
「でも、愼寿郎さんは…その……」
「杏寿郎さん達に当たりが強いし、口も悪かったね……でも――」
心配そうな炭治郎君の言葉に、しかし、私は微笑みながら帰り際の愼寿郎さんとのやり取りを思い出す。
「それじゃあ、私達はここらへんでお暇しますね」
「うむ…遠慮することは無いんだぞ!すぐに客間も用意できるが!」
「いえ、ご厚意は嬉しいですが、お借りした歴代炎柱の手記を元にすぐに有用そうな情報の洗い出しをしたいので、今晩はここで失礼します」
「そうか!うむ!仕事熱心なのはいいことだ!そう言われてはあまりしつこく誘うのは憚られるな!」
「いえ、また近いうちにお邪魔することにしますので……今度はちゃんと愼寿郎さんにも訪問の旨はお知らせしますよ」
「ああ、是非そうしてくれ」
私の言葉に愼寿郎さんはため息交じりに頷く。
「それではまた。あ、そうそう、今晩の煮物はまだ残りが鍋の中にあるので明日の朝ごはんにでも」
「明日の朝食の分まですみません」
「なんのなんの」
礼を言う千寿郎君にニコニコと微笑む。
「それではみなさん、また今度、次はもう少しゆっくりしに来ますので」
「はい」
「うむ!待っているぞ!」
「…………」
三者三様の反応を見せた煉獄家の面々にお辞儀し
「すみません、急にお邪魔して!ありがとうございました!」
「竈門少年もまた是非来てくれ!」
「はい!」
私の横で頭を下げた炭治郎君とともに再度、今度は軽く会釈をして私達は踵を返し煉獄の屋敷を後にする。
が――
「待て」
門を出たところで背後から呼び止められ、私達は振り返る。
「愼寿郎さん、どうかしましたか?」
そこにはさっき見送ってくれた愼寿郎さんが立っていた。
「……その…なんだ……」
私の問いに愼寿郎さんは言い淀みチラリと炭治郎君を見る。
「……炭治郎君、ちょっと先に行っててくれる?」
「え?でも?」
「いいから。すぐに追いつくからさ」
「……わかりました」
頷き、先に歩いて行く炭治郎君の背中を見送り、愼寿郎さんに視線を戻す。
「それで?何かありましたか?」
「…………」
私の問いに少し目線を下げた愼寿郎さんは
「その……まだ、礼を言っていなかったと思ってな……」
「礼?」
バツが悪そうに頬を掻きながら愼寿郎さんが言う。
「お前のお陰で杏寿郎の奴は命を拾った。だから…な」
「…………」
「な、なんだその顔は?」
「愼寿郎さんが、杏寿郎さんのことで私に礼を言うなんて……明日は雪が降るんですかね?」
「お前は俺のことを何だと思ってるんだ?――いや、やっぱり言わなくていい」
「酔っぱらいのネグレクト野郎、ですかね?」
「言わなくていいと言っただろう!!」
私の言葉に愼寿郎さんは大きくため息をつき
「まあとにかくだ!その…うちの愚息を助けてくれて…感謝する」
「…………」
「それだけだ!」
そう言って顔を顰める愼寿郎さんの顔がどこか照れ隠しのように見えて私は思わず微笑む。
「私も鬼殺隊の一員ですから、同じ隊の、それも師匠である杏寿郎さんを助けるのは当然ですよ。でも、そのお礼は謹んで受け取っておきますね」
「……ああ」
「それと、お酒ばっかり飲んでないでそう言う素直なところはもっと息子さん二人にも見せた方がいいですよ」
「お、大きなお世話だ!」
私の言葉にギロリと睨んでくる愼寿郎さん。
「それじゃ、また来ますね。それまで、もう少しお酒の量は減らしておいてくださいね」
そう言って微笑みながら手を振って踵を返し
「あ、ちょっと待て」
そんな私を愼寿郎さんが呼び止める。
「もう一つ訊きたいんだが」
振り返った私に愼寿郎さんは
「ねぐぅ…れくと?…とはなんだ?」
首を傾げながら訊くのだった。
そんな帰り際の一幕を思い出しながら
「でも、あの家族はきっと大丈夫だよ」
「そう…ですか……」
私が微笑んで言う言葉に炭治郎君は頷く。
「それに、ダメだったらまた私が拳で話をつけるから大丈夫!」
「は、はあ……いや、拳はダメではッ!?」
私の言葉に頷きかけた炭治郎君は慌てて言う。
「大丈夫大丈夫!何度か愼寿郎さんとは格闘訓練と称して戦ったことあるから!その延長だから!」
「……愼寿郎さんって元炎柱ですよね?」
「そうだよ?」
「で、当時楓子さんは鬼殺隊に入隊前の……」
「当時は11歳かそこらかな?」
「……勝てたんですか?」
「まあね。私、まだ日本じゃ無名な海外の格闘術の知識があるから。ちなみに一番得意なのは『バリツ』だよ。アチョー!!」
「…………」
冗談めかして構える私に炭治郎君は唖然とする。
「まあ私と煉獄家の方々とのことはまた別の機会にして、今は今後の話をしようじゃないか」
「今後、ですか?」
首を傾げる炭治郎君に私は頷く。
「そう。今回のことでたどり着いた仮説の実証の為にも君には一度『ヒノカミ神楽』を見せてもらいたいんだ。本当に十二の型を絶え間なく連続で行うことができるのかどうか、ね」
「な、なるほど……」
炭治郎君は頷き
「あ、でも……」
炭治郎君は少し言い淀み
「俺、まだ『ヒノカミ神楽』を連続で続けられるかわからなくて……正直『ヒノカミ神楽』は水の呼吸を使うよりもものすごく疲れるんです」
「ふぅむ…そっかぁ……」
炭治郎君の言葉に少し考えた私は
「……炭治郎君、君って今どこか一つの拠点を設けて任務に就いてる?」
「え?いえ……特に当てもないので今のところ蝶屋敷でお世話になっていますが……」
「そっか……よし!決めた!炭治郎君!君、これから『梁』においで!」
「へ?はッ!?」
「うん!いい考えだ!これからうちの屋敷で住み込みで修行しながら任務に就けばいいんだ!そうすれば私も手が空いてる時に修業つけられるし、他の柱の方にも来てもらいやすい!もちろん当たり前だけど禰豆子ちゃんも一緒に!」
「え、いや…でも……」
「なんなら善逸君と伊之助君もうちに呼ぼう!前々から複数人を一組として任務に就くチーム制を試験的に導入しようと思ってたんだ!君ら三人なら何度も組んでる実績があるんだからちょうどいい!」
「ち、ちいむ?」
私の言葉に炭治郎君は茫然と首を傾げる。
「うん!そうしよう!どうだい?炭治郎君が嫌なら無理強いはしないけど?」
「え?」
私の問いに炭治郎君は一瞬考える素振りを見せ
「お世話になってもいいんですか?」
恐る恐ると言った様子で訊く。
「もちろん!こっちから申し出たことだからね!部屋も心配ない!新居で一人で使うには大きすぎる家貰っちゃって持て余してたからね!『梁』で使う分を差し引いてもまだ空き部屋はたくさんあるから!」
「…………」
「きっと君の、君たち三人の糧になるはずさ。どうかな?」
炭治郎君は考え込み
「その、ご迷惑でないのなら、お世話になりたいです!」
そう力強く言った炭治郎君の言葉に私はニッコリ微笑み
「よし!決まったら即行動!戻ったらすぐに引っ越しの準備だ!善逸君達にも言わなきゃだ!」
「は、はい!」
私の言葉に大きく頷き
「あ、でも、いいんですか?」
「何が?」
「だって楓子さんの一人暮らしの家に男三人が住むなんて……」
「まあ一人暮らしとはいえ『梁』の人が何人か頻繁に出入りしてるし、君らが来なくても近々二人ほど人を呼ぶつもりだったから――」
言いかけたところで私はその言葉で一つのことに気付く。
「あ、そうか……」
「何かあったんですか?」
炭治郎君の問いに私は頷き
「『日の呼吸』十三個目の型が私の仮説通りか答え合わせする方法思いついたんだ」
「え!?そうなんですか!?どうやって!?」
「簡単だよ。知ってる人に訊けばいいんだ」
「……え?でもそれは……だって『日の呼吸』の剣士の方が生きていたのってもう何百年も昔で…だからその当時のことを知ってる人なんて、それこそ鬼舞辻無惨くらいなんじゃ……」
「もう一人いるじゃない」
「もう一人……あ!縁壱さんが見逃した鬼!――でも、その人がどこにいるかわからないし……」
「それも大丈夫」
心配そうな炭治郎君に私は胸を張って頷き
「あの場では君が反応しそうだったからあえて名前を出さなかったけど、あの炎柱の手記には見逃された鬼の名前も載ってたんだ。君もよく知る名前がね」
「俺もよく知る?」
首を傾げる炭治郎君に私は頷き
「その鬼、『珠世』さんって言うんだって」
「たま…よ……珠世さんッ!?」
炭治郎君は私の言葉に驚愕し叫ぶ。
「え、でも…そんな!嘘でしょ!?」
困惑している炭治郎君を見ながら私は頷き
「そうだよ。本当は探し物が見つかってからにするつもりだったけど、私の屋敷があるんだからいくらでもタマちゃんとユシくんを匿える!よく出入りするカナエさん達には説明しておく必要はあるけど、鬼との対話を願うカナエさんならきっと受け入れてくれるはずだし!」
「た、タマちゃん!?ユシくん!?」
私の言葉に炭治郎君が再び驚愕の声を上げる。
「ちょちょちょ…ちょっと待ってください!え?楓子さんは珠世さん達と面識があったんですか!?」
「え?そうだけど……あれ?言ってなかったけ?」
困惑した様子で訊く炭治郎君の様子で私は首を傾げる。
そんな私に炭治郎君は
「……えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!?」
驚愕に絶叫を響かせたのだった。
と言うわけで原作よりも先にヒノカミ神楽最後の型が判明しました。
これで打倒鬼舞辻無惨に一歩近づきましたね!
そして、萌柱邸に住みこむことになったかまぼこ隊の運命やいかに!?
そんなわけで今回の質問コーナーです!
今回はウルトラオタクさんからいただきました!
――楓子さんの好きなウルトラマンの魅力を教えて欲しいです!
それと、ウルトラマンの剣術で頑張れば真似できそうな奴ってありますか?
楓子「とりあえず私の推しトラマンはいくつかいるけど、なんていうのかウルトラマンって『夢』だよね。男も女もあこがれる夢。宇宙って言う無限の可能性。浪漫だよね。あと、子供向けって思われがちだけどなんていうかストーリーもメッセージ性が強くて、大人も考えさせられるテーマを孕んでいるのがウルトラマンの魅力だと思うな。
あと、ウルトラマンの剣術は、正直私ニュージェネレーション達はちゃんと見てなくてタイガから復帰した勢だけど、剣術って言えばナイト(ウルトラマンヒカリ)のイメージだからそっちの技なら再現できそうな気がしなくもないかな」
とのことでした!
さてさて、ここで長く間を開けてしまったお詫びと言っては何ですが、少し前にTwitterとかではやっていたネタを楓子ちゃんにも乗っかってもらってみました。
本当は本編で出そうかと思ったんですが、上手く絡められなかったのと、タイミングが遅くなりそうなので出るころには廃れてそうなので早めに供養もかねてここで上げちゃいます。
題して!「転んだ拍子に例のポーズになったけど自分がかなりきわどい体勢になっていることに気付いていない楓子ちゃんとその場にたまたま居合わせてしまった輝利哉君」です!
【挿絵表示】
そんなわけで今回はこの辺で!
また次回もお楽しみに!