恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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皆様お待たせしました!
本編話数50話記念の番外編です!
お話はキメツ学園のお話です!
今回はなんとついに楓子の推し、錆兎が登場です。
原作では錆兎と真菰は身体年齢で学生となっていますが、こっちでは成長した状態の設定になっています。
錆兎は義勇と同じくキメツ学園の体育教師、という設定になっていますので先にご了承ください。
そんなわけで番外編です!





本編話数50話記念「キメツ学園のもう一人の体育教師」

 キメツ学園高等部、体育教師の鱗滝錆兎はとある目的地へ向けて廊下を歩いていた。

 時折通りかかる生徒達とあいさつを交わしながら歩く錆兎は目的地が近づくにつれ少しずつその足取りは心なしか重くなる。

 しかし、当人の気持ちとは裏腹に、錆兎は目的地――保健室に到着する。

 

「…………はぁぁぁぁ」

 

 扉の上に掲げられた『保健室』の文字に大きくため息をついた錆兎は意を決してドアをノックする。

 

『どうぞ~』

 

 ドアの向こうから聞こえた間延びした返事を聞いて、錆兎はドアに手をかけゆっくりと開ける。と――

 

「キャァッ!錆兎先生のエッチスケッチワンタッチィ!」

 

 そこでは下着姿で顔を赤らめて慌てて自身の裸体を隠す大好楓子の姿があった。

 しなやかに鍛え上げられ、しかし、決して筋肉質すぎるわけではないバランスの良い肉体。そして、彼女と同年代の平均よりも頭一つ抜きんでた凹凸の取れたプロポーション。目にすれば男女問わず大なり小なり感じるもののあるその裸体を見て、錆兎は――

 

「………はんッ」

 

 恐ろしく冷たい視線と冷ややかな笑みと共に鼻で笑った。

 

「ちょっと!なんですかその反応!!こういうハプニングエロが起きた時は多少なりとも恥じらって顔を赤らめるもんじゃないですかッ!?」

 

「ハプニング?この状況はお前が作った必然だろうが。入る前に俺はちゃんとノックしたし、お前の返事も確認してからドアを開けた。つまりこの状況はお前が意図的にそうしたんだろうが」

 

「……いやまぁそうなんですけどねぇ……」

 

 錆兎の冷静な言葉に苦笑いで頷いた楓子は

 

「と言うかこうして話してる最中も一切意識してもらえないと流石に凹みますね」

 

 言いながら大きくため息をつく。

 

「いや、待てよ?美少女の下着姿の裸体を見て一切の劣情を催さないとは……もしや錆兎先生、ED?」

 

「不名誉な勘違いをするな」

 

 ハッとする楓子に錆兎はギロッと睨む。

 

「だいたい『エッチスケッチワンタッチ』なんて叫ぶやつが何を言っている。美少女どころか中身はおっさんじゃないか」

 

「失敬!失敬ですよ!」

 

 錆兎が鼻で笑って言う言葉に楓子は叫ぶ。

 

「と言うか、毎度毎度俺が保健室に訪ねてくるたびにラッキースケベ演じて、馬鹿なのか?」

 

「真面目に錆兎先生を悩殺しようとしてます」

 

「そうか、馬鹿なんだな」

 

 言いながら錆兎は大きくため息をつき

 

「と言うか、毎度毎度俺だからいいものの、他の奴だったらどうするんだ?」

 

「え?それって『お前の裸は俺以外に見せるな』ってことですか?もぉ錆兎先生ったら~♡なんだかんだ言って独占欲強いんですから~♡」

 

「相変わらずお前の耳は人の言葉を都合よく解釈して……」

 

 錆兎は頬を赤く染めてイヤンイヤン♡と体をくねらせる楓子を地と目で睨む。

 

「まったく、こんなこと続けて、いつか痛い目を見ても知らんからな」

 

「錆兎先生が私のアプローチに靡いてくれればこんなことしなくても済むんですけどねぇ」

 

「じゃあ一生無理だな」

 

「ちぇ~……」

 

 錆兎の言葉に口を尖らせながらため息をついた楓子は

 

「で?今日はどういう用件でここに?」

 

 錆兎に問いかける。

 

「お前わかってて訊いてるだろ?お前の為に今日の授業の分の課題を持って来てやったんだよ」

 

「わざわざありがとうございます」

 

 錆兎が脇に持っていたプリントの束を楓子に差し出す。

 楓子はそれを受け取りながら微笑み

 

「じゃ、いつも通り一緒にお昼食べましょう。コーヒーでいいですね?」

 

「ああ」

 

 錆兎の返事に楓子は微笑んで頷き備え付けのミニキッチンに向かい

 

「いや、その前に服を着ろ」

 

 そんな楓子に錆兎が睨むように言う。

 

「あ、これは失礼しました」

 

 錆兎の言葉に自身の身体を見下ろし頷いた楓子は椅子に掛けていた白衣を羽織り

 

「いやだから、服を着ろ!」

 

「着たじゃないですか」

 

「白衣を羽織っただけじゃ前が全く隠れてないだろうが!」

 

 頭が痛そうにこめかみを抑えながら言う錆兎の様子を見ながら楓子は改めて自身の姿を見下ろし

 

「あぁ~…これだと確かに、事後にテキトーにその辺にあったもの羽織った、って感じで余計エロいですね」

 

「わかったならさっさと服を――」

 

「でも、錆兎先生は私の身体じゃ劣情をもよおさないんですもんね?」

 

「うぐッ……」

 

 ニヤリと笑って言う楓子に錆兎は顔を顰める。

 

「なら、私がどんな格好でいても、錆兎先生的には全く問題ないですよね?」

 

「そ、それは……だ、だが、そんな格好でいたらお前だって恥ずかしいだろ?」

 

「失礼な!私自分の体形維持には全力で取り組んでるんで見られて恥ずかしい身体してません!」

 

「いやそういう意味じゃない」

 

「というかむしろ錆兎先生ならもっと隅々まで見て欲しいです!というか見て!!」

 

「見るわけないだろうが!!」

 

 グヘヘッと鼻息荒く言う楓子に錆兎は頭が痛そうに叫ぶ。

 

「あ、もちろんお触りも可」

 

「見せなくていいし触るつもりもない」

 

「え~……まあいいです。見せるのも触るのもまた今度にします」

 

「その今度は来ることは無いけどな」

 

 など、言いながらも楓子は手際よく準備し

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

 錆兎の前にコーヒーを出す。

 

「それじゃ、私も」

 

 言いながら楓子は自分のカバンから巾着袋を二つ取り出し錆兎の対面に座り、持っている巾着の大きい方を錆兎の前に置く。

 そんな楓子を見ながら、「いやそろそろ服着ろよ」と思ったが、さっきと同じやり取りをすることになるのは目に見えているので錆兎はその言葉を飲み込む。

 ため息をつきつつ楓子の出した巾着を開き中から弁当箱を取り出す。

 

「いただきます!」

 

「いただきます」

 

 言いながら楓子はニコニコと笑みを浮かべ、錆兎は少し疲れた表情を浮かべ、対照的な表情の二人は食べ始める。

 

「どうですか?美味しいですか?」

 

「……ああ、旨い」

 

「もう、お嫁さんにしたい、なんて♡」

 

「言ってない言ってない」

 

「え?だって『旨い』ってことはイコール『毎日食べたい』ってことでつまりは『お嫁さんにしたい』ってことでは?」

 

「飛躍しすぎだ」

 

 言いながら錆兎は本日何度目かのため息をつきながら箸を動かす。

 

「なんだかんだ言いながらちゃんと食べてくれますよね」

 

「……まあせっかく作ってくれたしな。旨いのは事実だし」

 

「その筑前煮とか自信作ですよ。昨日の晩御飯の残りなんですが、一晩経っているので味がさらに染みてますから」

 

「そう言えばお前晩御飯も作ってるんだったな」

 

「ええ。両親共働きなんで、母が仕事で遅くなる時は私が作ってます。煮物とかは次の日のお弁当の具にもできるんで多めに作るんですよ」

 

 楓子の言葉に錆兎は筑前煮に箸を伸ばし

 

「なるほど、確かに旨いな」

 

「でしょう!」

 

 錆兎の言葉に楓子は嬉しそうに微笑み

 

「私と結婚したら毎日食べられますよ」

 

「…………」

 

 ニコニコと言う楓子に錆兎はジッと見つめる。

 

「……な、なんですか?」

 

 てっきり否定されると思ったのに黙って見つめられ、困惑した様子で楓子は訊く。

 

「前から疑問だったんだが」

 

「……はい」

 

 錆兎は言いながら箸をおき、そんな錆兎の様子に楓子も同じように箸を置く。

 

「お前はこの学園に俺が赴任してきた時、初対面の時から俺に好きだ好きだと言い続けて、俺の何がそんなに琴線に触れたんだ?」

 

「そんなに気になります?別にどうでもよくないですか?」

 

 ふぅっと息をついた楓子は

 

「そうですね、私が錆兎先生を好きになった理由……」

 

 少し考える素振りを見せ

 

「ビビッと来たんですよ」

 

「ああ……あぁ?」

 

 端的に言われた言葉に錆兎は首を傾げる。

 

「それだけか?もっと無いのか?」

 

「そう言われても…まあフィーリング?」

 

「つまり一目惚れ、と?」

 

「まあ…そうなりますかね?」

 

「……えぇ~」

 

 楓子の返事に錆兎は声を漏らす。

 

「お前、一目惚れであそこまでアプローチしてきてるのか?」

 

「何か問題でも?」

 

「いや……」

 

 首を傾げる楓子に錆兎は納得いかないようで

 

「いや、別に否定はしないが、結婚まで言うんだから何か相当な理由があるのかと身構えていたから……」

 

 頭を掻きながら言う。

 

「ん~……」

 

 楓子はそんな錆兎の言葉に考える素振りを見せ

 

「わけなんていります?」

 

「え?」

 

「人が人を嫌いになる理由ならいろいろあるでしょうけど…人が人を好きになる理由に…論理的な思考は存在しないでしょ?」

 

「…………」

 

 楓子の言葉に錆兎は眼を見開き

 

「……いや、どこの高校生探偵だよ」

 

「あ、元ネタ知ってましたか」

 

 錆兎のジト目のツッコミに楓子は微笑む。

 

「まったく……結局じゃあお前は一目惚れってことでいいのか?」

 

「ん~……」

 

 錆兎はため息をつきながら言うと、楓子は少し言い淀み。

 

「まあ本当はちゃんと理由はあるんですよ」

 

「なんだ、あるのか?で?それは?」

 

「それは~……」

 

 錆兎の問いに楓子は頷き

 

「ひ・み・つ♡」

 

 ニコニコと笑いながら身を乗り出して錆兎の鼻をツンと突き

 

「ふんッ!」

 

「ギャァァァァァッ!!?」

 

 イラッとした錆兎は楓子の顔面を右手で掴みアイアンクローをする。

 

「もったいぶってないで言え!」

 

「痛い痛い痛い!!食い込んでる!!食い込んでる!!指が食い込んでます!!」

 

 グイグイと万力のように画面を握ってくる錆兎に楓子は手をバタバタと振って抵抗するが

 

「あ…でも…今私、錆兎先生の混じりけのない強い感情をぶつけられてる♡そして同時に感じる痛みが…おぉう…これはこれで……なんか癖になりそう♡」

 

「チッ!変態には無意味だったな」

 

「あんッ♡」

 

 徐々に恍惚とした表情で艶っぽい吐息を漏らしだした楓子に汚物を見るような目で錆兎はポイと放り捨てるように開放する。

 

「たく……」

 

 錆兎はため息をつき

 

「で?本当の所どうなんだ?」

 

「いやまぁ…本当にちゃんと錆兎先生のことを好きな理由はありますけど、今は秘密で」

 

「…………」

 

「睨んでもダメです。こればっかりはおいそれと言えないですね」

 

 鋭い視線で睨む錆兎の視線にも楓子は微笑み

 

「まあ結婚したら教えてあげるんでもうあと数年待ってくださいよ」

 

「じゃあ一生教えてはもらえんな。残念だ」

 

 ウィンクしながら言う楓子に錆兎は特に残念がっていない様子で言う。

 

「えぇ~……」

 

 そんな錆兎に楓子は不満げに口を尖らせ

 

「と言うか、私も訊きたいんですけど」

 

「なんだ?」

 

「錆兎先生は私のアプローチに一切答えてくれませんけど、実際どうなんですか?私ってそんなに魅力ないですか?錆兎先生とお付き合いできる可能性って全くないんですか?」

 

「…………」

 

 楓子の問いに錆兎は言い淀み

 

「……当たり前だろう。お前の好意は素直に嬉しいが、俺にとってはお前は生徒の一人だ。恋愛の対象としては見れん」

 

「それは本当に見れないんですか?見ないようにしてるんじゃなくて?」

 

「…………」

 

 楓子の再びの問いに錆兎の返答は沈黙だった。

 

「……そうですか」

 

 そんな錆兎の返答に楓子は頷き

 

「ホント錆兎先生は真面目ですね。そういうところが好きなんですけど……」

 

 楓子は寂しげに微笑む。

 

「私もね、そりゃわかってるんですよ。教師と生徒じゃ世間体とかいろいろ問題はあるって……でも、でもやっぱり好きなんですよ、どうしようもなく」

 

「大好……」

 

 楓子の言葉に錆兎は楓子を見つめる。

 

「この気持ちを、『はい、これでおしまい!』とは急には切り替えられないんです。だから……」

 

 そんな錆兎の視線に楓子は押し殺したように恐る恐ると言った様子で見つめ返し

 

「だから、あの……先生。一個だけ……お願いがあります」

 

「ああ」

 

 楓子の様子に錆兎は努めて優しく頷く。

 

「あの、一回、一回だけでいいから……」

 

 そこで一度楓子は言葉を区切り、しかし、意を決した様子で言葉を絞り出すように

 

「一回だけで、いいから……私と――」

 

 そこで大きく息を吸い込み

 

「エッチしてください!」

 

 大声で叫んだ。

 

「…………ん、んッ?」

 

 その楓子の言葉の意味が一瞬解らず呆ける錆兎だったが、そんな錆兎に楓子はダメ押しとさらに続ける。

 

「抱いてください!」

 

「…………」

 

「処女もらってください!」

 

「お前……なに言ってるんだ?」

 

「エロいことしてください!」

 

「お前前から怪しいと思っていたが……やっぱりヤバい薬使ってるんじゃ……」

 

「いやそんなことないから!正気だから!本気で言ってるから!」

 

「えぇぇぇ……」

 

 そんな楓子に錆兎はドン引きした様子で声を漏らす。

 

「わかる。わかりますよ?頭おかしいこと言ってるって!」

 

 そんな錆兎に楓子はうんうん頷きながら言う。

 

「でもね、しゃーないんす!本心なんすもん!私、先生とそういうことしたいですもん!ずっと思ってましたもん!」

 

「いやお前……いやいやお前……思っててもあそこまでストレートに言うのはどうかと思うぞ……?」

 

「私も思うけども!どうかと思いますけどもッ!しゃーないんす、ホント!もうしゃーないんす!」

 

 言いながら楓子はバンバンと机を叩く。

 

「だってさ、ちょっと考えて、考えてみましょ」

 

「なんだよ、なにをだよ」

 

「私がさ!今ここでさ!そうですよね……生徒と教師ですもんね……先生のことは諦めます……。とか言ったらさ!丸くは収まるけどさ!今後さッ、先生への気持ちをごまかして、なんかよくわからん、テキトーなチャラいクラスメイトと付き合っちゃうわけですよ!まぁいっかって!」

 

「なんだ、そんなやつがいるのか」

 

「いや仮定だからッ、聞いて、最後まで聞いてください」

 

「はい」

 

 楓子の勢いに錆兎は思わず素直に頷く。

 

「でさッ、どうせ先生とは結ばれないし……って、そのチャラ男に処女を捧げるわけっすよ。どうっすか?これどうっすか?」

 

「なんだよ……どうって」

 

「私がそういう刹那的な感情で粗末に処女を散らしていいんすかって話ですよ!百人斬り目標ッスわ、とか言ってるチャラ男に!私はすっっっっごい嫌!それが初めての思い出とかほんっっっっっっっと嫌!先生はどうですか!?」

 

「……」

 

「ぁッ、嫌そうな顔してる!ですよね!嫌ですよねッ!生徒がそういう風になるのやですよねッ!」

 

「まぁ……う~ん……。もっと……いい恋愛をして欲しいとは、思うな」

 

 楓子の言葉に錆兎は顔を顰めながら言う。

 

「でもできないんです!今のままじゃ!私先生のこと好きすぎるから!一途に一筋に大好きだからッ!このままじゃ私テキトーに処女散らして、テキトーに別れたり付き合ったりして、てきと~~に生きる未来が見えるんです!見えちゃうんです!だからねッ、先生!」

 

「お、おう」

 

「せめて処女だけでも奪ってくれませんか!?」

 

「う、う~ん」

 

楓子の勢いに押されながら錆兎は顔を顰めて何と答えたものかと首を捻る。

 

「頼みますよぅ、センセェェェ!付き合ってとか面倒なことは言わないからさぁ!一回だけヤリ捨ててくれよぉう!私のためにぃ!」

 

「ヤリ捨てって……お前今とんでもないことをテンションに任せて言ってるだろ……?」

 

「こんなことシリアスな空気で頼めないでしょうが!テンション振り切らないと頼めないでしょうが!」

 

「ちょ、ちょっといったん落ち着け!」

 

「落ち着いたらしてくれるんですかッ!?」

 

「いやそれはしないが」

 

「なんだよもう!これだけ言ってもまだ駄目なんですか!?なんなんですか!?常日頃『漢たるもの』って言ってるのは先生でしょう!?女にここまで言わせたら漢としては抱くのが筋ってもんじゃないんですか!?『据え膳食わぬは男の恥』って言うじゃないですか!恰好の据え膳でしょう!?」

 

「い、いやだがそれは……」

 

「もう!そんなに世間体が気になりますかッ!?もっと本能に素直になってくださいよ!」

 

「いやお前は素直すぎるだろ……」

 

「いいじゃないですか、冨岡先生みたいに決断すればッ!」

 

「いや、だから――って、ん?義勇が何だって?」

 

「だから!冨岡先生としのぶ先輩みたいに……あ」

 

 勢いのまま言った楓子はそこでハッといかにも「ヤベッ」とでも言いたげな顔で固まり

 

「ナ、ナンデモナイデスヨ~?」

 

 顔に脂汗を滴らせ盛大に泳いでいる視線を逸らしながら声を上ずらせて言う。そんな楓子に錆兎は――

 

「……おい」

 

 鋭く眼を細めながら低く口を開く。

 

「義勇と胡蝶の妹がなんだって?」

 

「な、なんでもないですなんでも!」

 

 錆兎の問いに楓子は慌てて首を振って否定し

 

「おっとぉッ!!コーヒーがもうないやぁッ!!おかわりいれよぉっと!!」

 

 慌ててグイッとカップに残っていたコーヒーを飲み干しガバッと立ち上がった楓子はミニキッチンでお湯を沸かそうと足を踏み出し――

 

「待て」

 

 バンッ!と耳元で大きな音が響き、身体に軽い衝撃を感じると同時に錆兎の顔が至近距離で視界に飛び込んでくる。よくよく見れば自身は壁際に追いやられ顔の左横に錆兎の腕が突き付けられていた。――俗に言う『壁ドン』だった。

 

「ヒンッ!?♡」

 

「おい、正直に答えろ。義勇と胡蝶の妹がなんだって?」

 

 顔をクシャッと顰める楓子に対して錆兎は鋭く見つめる。

 

「い、いや…そ、それは……すいませんそれだけは言えません!!」

 

「…………」

 

「ヒンッ!顔がいい!!」

 

 叫んだ楓子だったが追求するように鋭く睨む錆兎の顔に決心が鈍る。

 

「…………」

 

「~~~~/////」

 

 じっと睨むように見つめ続ける錆兎とそんな錆兎の視線から逃れるように固く目を瞑って見ないようにしている楓子。

 二人の攻防はそのまま数分続き――

 

「失礼します。楓子ちゃん、ちょっと訊きたいことが――」

 

 背後で扉の開く音と共に開いた扉の向こうからひょこッとカナエが顔を覗かせ

 

「あ……」

 

「「え……?」」

 

 二人と目が合う。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 そのまま三人の間に数秒の沈黙が流れ

 

「あ、お邪魔しました~」

 

 カナエはニコニコと微笑みながら顔を引っ込めゆっくりとドアを閉める。

 そこで錆兎も一瞬跳んでいた思考を引き戻し、改めて冷静に現状を顧みた。

 今のこの状態を第三者視点で言葉にするならば『下着姿の上から白衣を着た女子高生を壁ドンで壁に追いやって迫る男性教師』だろう。

 そこまで考え至った錆兎は――

 

「ッ!?こ、胡蝶!待て!違うぞッ!!?」

 

 慌てて追いかけてドアを開けて廊下を見るが、もうすでにその姿は廊下のどこにもなかった。

 

「くッ……俺としたことが……はぁ」

 

 錆兎は親友の思わぬ話に我を忘れた自分の迂闊さに大きくため息をついてがっくりと項垂れる。

 

「錆兎先生……」

 

 そんな錆兎のそばに歩み寄り、肩にポンと手を置き

 

「ま、人生いろいろありますよ。そう気を落とさないで」

 

「(ブチッ)」

 

 にっこりと微笑む楓子の笑顔に、錆兎は堪忍袋の緒が切れ素早く転ばせ四の字固めをきめる。

 

「もとはと言えば全部お前のせいだろうがぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「にゃぁぁぁぁぁッ!?足の関節はそっちの方向には曲がらないんですよぉぉぉぉぉッ!!?」

 

 楓子の絶叫が響き渡ったのだった。

 




と言うわけで本編話数50話記念の番外編でした!
楓子ちゃんの想いは本編でもキメツ学園世界でも変わらずぶっ飛んでました!
本編でもキメツ学園の世界でも、楓子の恋の行方やいかに!?
今後も楽しんでいただけるように頑張りますのでよろしくお願いいたします!



というわけで今回の質問コーナーです!
今回はサイガ02さんからいただきました!

――もし鬼になったとしてどんな血鬼術を使いたいですか?また、誰を最初に狙いますか?

楓子「そうですねぇ~、私が前世から見たアニメや漫画で登場した武器類を投影する『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』的なのとか使いたいですね。それで童磨を串刺しにしたいですね」

――別の作品に転生するとしたらどの世界に行きたいですか?

楓子「そうですね~…いろいろありますけど、名探偵コナンのコナン君の協力者になって赤井さんと恋愛フラグ建てたい。あとは戦姫絶唱シンフォギアの世界で奏者になって他のメンバー…特にクリスちゃんと百合百合したいですかねぇ」

――もし転生時男になっていたとして誰と結婚したいですか?(蜜璃さんは除く)

楓子「蜜璃さんを除外された……ならそうですねぇ……やっぱりマコちゃんかなぁ~。あの子はいい奥さんになるからねぇ。でもやっぱり一番は錆兎さんと自分で理想のBLな関係を作り上げることですかね!」

と言うことでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
また次回もお楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
その後、二人の関係については

「大丈夫大丈夫!わかってるから!教師と生徒だもんね!いろいろあるよね!私応援してるよ!……でも、鱗滝君もなんだかんだ憎まれ口叩きつつも楓子ちゃんのこと好きなんだねぇ~」

 と言うカナエの微笑みに終始誤解は解けることは無かったが、噂が広まることもありませんでした。。
 ちなみに義勇としのぶの関係は錆兎が直接本人達に問い質しました。
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