恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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皆様、新年あけましておめでとうございます!
去年はたくさんのご愛読ありがとうございました!
今年も皆さんに楽しんでいただけるように頑張りますので、よろしくお願いします!

そんなわけで新年一発目の投稿は幕間です!
本当は年明ける前に投稿したかったのですが思ったより執筆に時間が取れず、気付けば年が明けていました(;^ω^)
新年一発目なの内容が年越し前の話になっていますがご容赦を……
そんなわけでどうぞ!





幕間3 恋柱の継子と来年の話

 

「………これで、ひとまずは大丈夫でしょう」

 

「あぁ…ありがとう……ずいぶん楽になったよ……」

 

 私は目の前に横たわる人物に言うと、その人物――お館様は弱い声音で、しかし、変わらない優しい笑みを浮かべてしっかりと言う。

 

「ですが、これはあくまでも応急処置です。あまり無理なされないように……」

 

「ああ、わかってるよ……」

 

 私の言葉にお館様はゆっくりと頷き

 

「すまないね、年末の忙しい時期にわざわざ来てもらって……」

 

「いえ、お館様の容体に変化があったとあっては何よりも優先します。幸いタマちゃんやカナエさん、アオイちゃんがいれば私抜きでも研究はできます。年越しの用意も今うちには炭治郎君達がいますから男手は揃っていますからね」

 

「そうか…それを聞いて安心したよ……しかし、もうすっかり日も暮れてしまったんじゃないかな……?」

 

 お館様の言葉に開いた障子の向こう――外に視線を向けると、確かに来た時に明るかった外の景色は真っ暗な帳の中だった。

 

「そうですね、もうすっかり真っ暗ですね」

 

 私は苦笑いしながら頷く。

 

「本当に申し訳ないね…こんなに遅くまで……」

 

「いえいえ、本当にお気になさらず」

 

「いや、気にするよ……せっかく来てもらったし、今日はうちに泊まるといいよ……大したことはできないがもてなそう……」

 

「いえいえ!滅相もないですよ!」

 

 お館様の申し出に私は慌てて辞退する。

 

「だが、こんな遅い時間に女の子を一人で返すのは忍びない……君に何かあっては……」

 

「私、末席を汚しているとはいえ〝柱〟の一人なんですが……」

 

「だとしても、君を気遣わない理由にはならないよ……私の為に骨を折ってくれた君をどうか労わせてほしい……」

 

「……じゃあ…わかりました、お世話になります」

 

「そう言ってくれて嬉しいよ」

 

 そう言ってにっこり微笑むお館様にバレない様に私はこっそりとため息をつく。

 あんな言い方をするのはズルい。

 

「あまねさんには伝えてあるから、すぐに準備してもらおう……」

 

 私の嘆息に気付いてか、はたまた気付かないのか、お館様はいい笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 そして、私は目が飛び出るような御馳走を振舞われ、伸び伸びと一人きりで豪勢なお風呂で手足を伸ばした。

 そして――

 

 

 

 

「あ、楓子さん」

 

 私を呼ぶ声に顔を上げれば、そこには輝利哉君が少し驚いた顔で立っていた。

 私は現在風呂上がりで火照った身体を冬の澄んだ空気で冷ましているところだった。

 

「大丈夫ですか?先程お風呂に入られていたと聞きましたが、こんなに寒い中こんなところにいると湯冷めをされてしまいますよ?」

 

 私を心配し駆け寄ってきて顔を寄せてくる輝利哉君に微笑みかけ

 

「少し湯冷ましを。大丈夫ですよ、風邪をひく前に布団に入りますから」

 

「それならいいのですが……」

 

「ええ、ご心配ありがとうございます」

 

「い、いえ!当然です!楓子さんはお客様なんですから!」

 

 微笑みかける私に少し慌てた様子でワタワタとしながら輝利哉君が早口で言う。月明かりしかない縁側ではわかりづらいが心なしか頬が赤くなっている気がする。

 

「大丈夫ですか?輝利哉君こそ顔が赤いような……」

 

「い、いえ!気のせいですよ!」

 

 バッと距離を取りながら言う輝利哉君に笑いかけながら私は再び空を見上げる。

 空は生憎雲が広がり星は見えないが雲の切れ間から覗く月の灯りで問題なく明るい。

 輝利哉君はそのまま私の隣に腰掛ける。少しの間黙って同じように空を見上げ

 

「その……今日はすみません、父の為に足を運んでいただいて」

 

「大丈夫ですよ。医療従事者の端くれとして当然です」

 

 輝利哉君の言葉に微笑みながら私は答える。

 

「それに…私が出来たことなんて、本当に些細なことですから……」

 

「そんなこと――」

 

「あるんです」

 

 輝利哉君の言葉を遮って私は言う。

 

「本当に、私がお館様にできたことなんて、微々たるものなんです……麻酔で痛みを一時的に忘れさせ、解熱剤やその他の薬でごまかしているだけ……お館様の〝呪い〟に対して何の対処にもなっていません……私の知識は、技術は、無力です」

 

 膝の上で拳を握り締める私。

 

「神様、なんてものが本当にいるのなら、なんとも残酷です」

 

「楓子さん……」

 

 自嘲するように笑う私に輝利哉君は言い淀み

 

「すみません、年上のクセにカッコ悪くて……」

 

 私はフッと息を吐いて苦笑いを浮かべる。

 

「今の私には無理でも、医学は日々進歩しています。いつの日かこの〝呪い〟を解明できる日が来るでしょう。まあ、残念ながらそれが私の生きている間にできるかは、かなり望み薄なので、私にできるのは医学の針を少しでも早めることですね」

 

 なんと言ったものか言葉に迷っている輝利哉君に私はお道化て言う。

 

「私の知識は現在進行形でアオイちゃん達に伝えてますから、例え明日にでも私の身に何かあっても、きっと私の残した知識で上手くやってくれるでしょう」

 

「っ!」

 

 私の言葉に輝利哉君は息を飲み眼を見開く。

 

「特定の誰かがいないと回らない組織なんて下の下ですからね。私、結構用意周到なんです。自分の抜けた穴はいつでも埋められるように準備は――」

 

 私の言葉を遮って意を決したように私の手を掴む。

 

「輝利哉君……?」

 

「その…楓子さんのお陰で救われた人はたくさんいます。楓子さんは無力だとおっしゃいますが、それは変えようもない事実です。僕は、そんな楓子さんのことを心から尊敬しています」

 

 驚く私に輝利哉君は両手で私の右手を包むように握りながらしっかりと私の瞳を見据えて言う。

 

「何より、僕は楓子さんがいないと嫌です!楓子さんの代わりなんていません!」

 

「ッ!」

 

 輝利哉君の真っ正面からの言葉に私の心臓がドクンと痛いほど高鳴る。

 

「例え組織が回っても、楓子さんがいなくなったら僕だけじゃなくたくさんの人が悲しみます!だから、楓子さんがいなくなってもいい、なんてことは絶対にありません!楓子さんにはこれからも生きていてほしいです!」

 

「輝利哉君……」

 

 真剣な瞳で見つめる輝利哉君の視線に私は見つめ返し

 

「楓子さん!僕は――ッ!?」

 

 何かを言いかけた輝利哉君を有無を言わせず抱きしめた。

 

「なぁッ!?ふ、楓子さんッ!?」

 

「はぁ……ホント、つくづく私は輝利哉君にはカッコ悪いところを見せてばかりで、慰めてもらってばかりですね……」

 

 腕の中で困惑する輝利哉君に私はため息交じりで独り言のように呟く。

 

「すみません、お館様の〝呪い〟に何の対処もできず、曲がりなりにも医者を名乗る身としては結構打ちのめされてたんですよ……そのせいでつい弱音を吐いちゃって……」

 

「そ、それは…別にお気になさらず……」

 

 私の腕の中で輝利哉君がモゴモゴと呟く。そんな輝利哉君に微笑み

 

「輝利哉君、人はいつ死ぬと思いますか?」

 

「え……?」

 

 問いかけた言葉に、輝利哉君は茫然と、意味が分からず私に視線を向ける。

 

「鬼に喰い殺された時?――違う。

毒キノコの汁物を食べた時?――違う。

不治の病に侵された時?――違う」

 

 私の問いの意味が分からず困惑している輝利哉君に私は続ける。

 

「私の尊敬するとある医者が言っていました。人が本当に死ぬのは――他人から忘れられた時、だそうです」

 

「ッ!」

 

 輝利哉君は息を飲む。

 

「私は、私の知識をいろんな人に託したことで、たくさんの記憶の中に残った。蜜璃さん、伊黒様、杏寿郎さん、柱の皆さん、炭治郎君達にカナエさん達蝶屋敷の人達、それに輝利哉君やお館様、産屋敷の皆さん……もっともっと、挙げだしたらキリがないくらいに……そんなたくさんの人の中で私は生きる……でも、今の輝利哉君の言葉でちょっと考えを変えました」

 

「考えを…変えた?」

 

「はい」

 

 訊き返す輝利哉君に私は微笑む。

 

「私、結構欲深で、今よりもっともっと、みんなに覚えていてほしいと思いました。みんなの中で生きる私を、もっともっと強く濃い存在になるように」

 

 だから、と区切って私は輝利哉君を見つめる。

 

「輝利哉君もこれからの私のこと見ていてください。たくさん見て、私のことをたくさん覚えていてください」

 

「楓子さん……」

 

「私、よく考えたらやりたいことたくさんあるんですよ。食べたいものも、見たい風景も挙げだしたらキリがないほどにあります。これから未来にたくさん挑戦したい」

 

 言いながら私は笑う。

 

「来年のことを言うと鬼が笑う、なんて言いますが、笑いたい奴は好きなだけ笑わせておきます」

 

ただし、鬼舞辻無惨、てめぇはダメだ。という言葉を胸中で付け足しつつ私は微笑む。

 

「とりあえず今一番したいことは……蜜璃さんの白無垢姿を見ることですね。これだけはやらずに死ねないです」

 

 その光景を想像して思わずニヤける。

 

「あとは、お酒を飲みたいですね。知ってます?春は夜桜、夏には星、秋は満月、冬には雪、それだけで十分に酒は美味いらしいですよ?」

 

「そう…なんですか……?」

 

「はい、受け売りですけど……でも、そう言われたら試してみたいじゃないですか」

 

「それは…そうですね」

 

 私の言葉に輝利哉君が微笑みながら頷き

 

「な、なら僕も一緒にお酒飲んでみたいです!」

 

「輝利哉君と?」

 

 輝利哉君の言葉に私は一瞬キョトンと呆け

 

「フフ、そうですね!それも楽しそうですね!」

 

 笑って頷く。

 

「なら、約束ですね。輝利哉君がお酒が飲める年齢になったら、一緒にお酒飲みましょうね」

 

「は、はい!そ、その時には僕はちゃんと楓子さんに……」

 

「え?すみません、よく聞こえなかったです。なんですって?」

 

「い、いえ!何でもないです!」

 

 ボソボソと呟かれた言葉を聞き返すが、何故か暗がりでもわかるほど赤面した輝利哉君がブンブンと首を振って言う。

 

「そ、それより!ぼ、僕はいつまで抱っこされてるんでしょうか!?」

 

「え?あぁ~……」

 

 赤面したまま訊く輝利哉君の言葉に、赤面する理由の意味を知った私は少し考え

 

「可愛いのでもう少しこのままで」

 

「えぇッ!?」

 

「いやぁ、輝利哉君温かいので、少し肌寒いのですごく心地よくて……」

 

「な、ならもう布団に入られたらいいのではッ!?」

 

「お?それは一緒に寝ようというお誘いですか?」

 

「ち、違ッ!?」

 

「え……違うんですか……?」

 

「ッ!?いや!ちが…う…わけじゃ…ないですけど……」

 

「私…もう少し、輝利哉君とお話ししていたいですけど……輝利哉君は違いますか……?」

 

「そ、そんなことないです!ぼ、僕も、もう少し楓子さんとお話ししたい、です!!」

 

 輝利哉君が力強く言ったのを見て私は笑顔で頷き

 

「じゃ、風邪ひいちゃう前にお部屋行きましょうか」

 

「は、はい!」

 

 どこか興奮気味に頷く輝利哉君を連れて、私は宛がわれた客間に向かい――

 

「さぁてこんなもんですかねぇ~!じゃあ私こっち~!」

 

 二組の布団を並べて敷いた私は向かって右側の布団に飛び込む。

 

「ほら、輝利哉君も突っ立ってないでほらほら!並んで寝てお話の続きしましょう!」

 

 布団から顔を出した私は隣の布団を叩きながら部屋の入り口近くに立つ輝利哉君に呼びかける。

 

「…………」

 

「……輝利哉君?」

 

「ッ!――は、はい!なんでもないです!」

 

 心なしかがっかりしたようなどこか安堵したような様子の輝利哉君の様子に首を傾げる私に、輝利哉君は慌てて私の隣の布団に潜り込む。

 そんな輝利哉君に私はニッコリ微笑みかけ

 

「さぁ、まだまだ夜は始まったばかりですよ!鬼達が笑い死ぬほどたくさん未来の話をしましょう!」

 

「は、はい!」

 

 私の言葉に頷いた輝利哉君に微笑みながら私は口を開く。

 そこから私達はたくさん言葉を交わした。もしも本当にことわざの通り来年のことを言うと鬼が笑うのだとしたら、きっと笑い死ぬんじゃないかと言うほどたくさんの約束をした。

 そして――

 

「スゥ……スゥ……スゥ……」

 

 いつの間に隣から返事がなく小さく吐息の聞こえてくるようになる。

 閉じられた瞼と柔らかな寝顔を見つめながら私は微笑み

 

「おやすみなさい、輝利哉君……」

 

 呟くと私はゆっくりと瞼を閉じた。

 縁側で空を眺めていた時と打って変わって、私の胸は心地よい温かさを感じながら、私は微睡みの中に落ちて行った。

 

 




改めまして新年あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!

新年と言うことで楓子ちゃんからも御挨拶を!


【挿絵表示】



そんなわけで今年も皆さんに楽しんでいただけるように頑張りますので、よろしくお願いします!


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