恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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皆様2か月以上間が空いてしまい申し訳ありません。
スランプ気味で他の作品書いたり、仕事が立て込んだり、引っ越したらWi-Fiが使えなくなったり、といろいろが重なって気付けば投稿が遅くなってしまいました。
遊郭編にはいる前に久しぶりになるのでお詫び代わりに番外編を挟みます。
スランプ中に思いついたので(;^ω^)
と言うわけで番外編です!





お詫びの番外編「恋柱の継子と危険生物」

 睡眠とは人間が生きる上でかなり重要だ。

 重要だとわかっているが、前世の頃からの悪癖で、私はちょくちょく完徹をすることがある。それがイベントへの新刊の締め切り修羅場ともなれば連日になったこともあった。

 まあ結局何が言いたいかと言うと、今回私は珠世さんとの研究で新たな糸口を見つけて興が乗った結果、気付けば完徹三日目に突入していた。

 後半朦朧として記憶も曖昧になりながら最後に実験用の動物に何か薬を投与したような気がするが、そこを最後に私の記憶はまるでテレビの電源を切ったようにぶっつりと途切れていた。

 急に何の話かと思うかもしれないが、要は今回の一件の原因はこの私の悪癖が招いたことである、と言うことなのだ。

 

 

 

 

 

 

「――lalala~♪lala~♪」

 

「――んにッ?」

 

 深い水中から浮上するような感覚と共に耳に届いた歌?のようなものに徐々に意識が覚醒し始める。

 

「lala~♪lalala~la~♪」

 

 どこか動物の鳴き声のような歌のようなその音色に、半ば寝惚けていた私は

 

「んに~…あと五分……」

 

 定番の台詞と共にあるわけのない目覚まし時計を止めるべく右手を上げ

 

「ピギッ!」

 

「……ん?」

 

 私の手は何かモジャモジャと毛深い感触のモノを掴んでいた。しかもそれはただ毛深いだけでなく生物的な温かさと気のせいか掴んだ瞬間鳴き声のようなものも聞こえた気がする。

 徹夜明けでまだボンヤリとする思考のまま私はのっそりと顔を上げる。と、そこには――

 

「ピィ~……」

 

「…………」

 

 私に頭を掴まれた謎の生物が怯えた瞳で私を見ていた。

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

「――で、眠気で朦朧としながらなんだかよくわからない薬品類をよくわからない分量で混ぜて、何だったか覚えていないけど何か実験動物に投与した、と……」

 

「ような気がするんですけど、半分寝てたようなものなんで夢現なんですけどね……」

 

「でも、実際こうしてこの子がいるわけだから、現実だったってことだよね」

 

 しのぶさんの確認する言葉に私は曖昧に頷きながら首を捻ると、マコちゃんは言いながら目の前のちゃぶ台の上で与えた野菜を美味しそうに食べている先程の謎生物がいる。

 

「これ…いったい何なのよ?」

 

「猿っぽい気もしますけど…違う気もしますし……」

 

 謎生物を見ながらしのぶさんとマコちゃんが首を傾げる。

 その生物は大きさで言えば人間の新生児ほどで、白地に茶色い模様の体毛が生え、大きな耳と口・鼻・目の周りと手の指、足だけは毛が無く肌色の地肌が見えている。

 知性はあるようで与えた野菜もがっつかず丁寧に食べているし、私が起きた時や先程から何度も明確に歌として歌っているらしい様子も見られた。

 見た目だけならぬいぐるみのようで愛らしいが如何せん正体がわからないので得体が知れない。

 

「どう、炭治郎?善逸君?何か感じる?」

 

 と、マコちゃんはちゃぶ台を挟んで反対側に座り謎生物を観察していた炭治郎君・善逸君・伊之助君・そして禰豆子ちゃんに視線を向ける。

 マコちゃんの問いに善逸君と炭治郎君は顔を上げ

 

「とりあえず音は落ち着いていて、大人しい性格みたいです。急に暴れたりって言うのも恐らくないと思います」

 

 と、善逸君が言い

 

「俺も、臭いの感じではだいたい同じ意見なんですが……ただ気になることがあるんですが……」

 

 と、善逸君の言葉に頷きながら炭治郎君が言い淀み

 

「あの…このよくわからない動物から、微かに鬼の臭いがする気がして……」

 

「「鬼ッ!?」」

 

「嘘ッ!?これ鬼なのッ!?」

 

 炭治郎君の言葉にしのぶさんとマコちゃんが眼を見開き、善逸君は驚き飛び退く。

 

「いや、鬼って言う感じでもなくて……」

 

「……あ、一つ思い出した」

 

 首を傾げる炭治郎君に私はふと思い出す。

 

「そう言えば投与した薬の材料として鬼の血を混ぜてたわ」

 

「なんてもん混ぜてんですか!!」

 

 私の言葉に善逸君が叫ぶ。

 

「それで鬼になって大暴れしてたらとんでもないことになってましたよ!!」

 

「……まったくもって正論すぎて言い返せません、ごめんなさい」

 

 私は善逸君の怒声に素直に謝る。

 

「で、でも過程はどうあれ、特に暴れたり危険性はなさそうだし大丈夫じゃないかな?」

 

「まあ…見る限りでは愛玩動物って感じだし大丈夫かな……」

 

 マコちゃんとしのぶさんの言葉に頷きながら私は改めて謎生物を見る。

 

「そう言えばこの子を地下室から連れて出た時に日の光を嫌がって避けてたのは、投与した鬼の血の影響だったのかな?」

 

「てことは、やっぱり日の光を浴びるのはよくないのかな?」

 

「かもしれないね。ここまで知性があると実験として日の光に当てるのも可哀そうだし、投与した薬の分量もわからないから同じモノができるとは限らないし……」

 

「姉さん達は知らないの?」

 

「一応確認してみたけどカナエさん達も知らないらしいです」

 

「……ところで姉さんは?」

 

「タマちゃんと一緒にまだ研究してます」

 

「……ちなみにそれは何徹目?」

 

「……2徹目くらい?」

 

「すぐ布団に押し込んでくるわ」

 

「あ、待って待って!待ってください!いまいいところらしくて止めないであげてください!」

 

「それでこれ以上のとんでもないものが出来上がったらどうするのよ!?」

 

「だ、大丈夫ですよ!だってカナエさんとタマちゃんですよ!?私より自己管理と危機管理できてるに決まってるじゃないですか!!」

 

「むぅ…それは…まあ…そうね……」

 

「……なんだろう、納得されるとそれはそれでなんかモヤモヤする」

 

 しのぶさんの言葉に私は首を傾げる。

 

「まあとにかく!今はこの謎生物の処遇ですよ!」

 

 言いながら私は咳ばらいをし

 

「とりあえず、今のところは危険性はなさそうですし様子見ってことでいいですかね?」

 

「……そうね、でも何か問題が起きないように当分は十分に監視してないと」

 

「それは生み出した者として私が責任を持って行います」

 

 頷きながら改めて謎生物の方に視線を向ける。

 いま件の謎生物は満腹になったらしく食事を終え、ちゃぶ台の上でしげしげと興味深そうに周りを見ている。

 ……と言うかずっと気になってたけど、何だろう?私あの生物知ってる気がする。

 

「??? どうしたの?」

 

「あ、いや…なんていうのか、私あの生物を――」

 

 黙り込んだ私にマコちゃんが訊くので答えかけたところで、ふと一番騒ぎそうな伊之助君がずっと黙っていることに気付く。

 

「……伊之助君?」

 

「…………」

 

 私の問いかけにも答えず謎生物を見つめ続ける伊之助君に、私は――

 

「……ハハ~ン?さては伊之助君、この子食えるかどうか真剣に考えてるなぁ?」

 

「ッ!?よくわかったな!!」

 

 私の指摘に伊之助君が驚いた様子で言う。

 

「あのね、伊之助君……もちろん食べちゃダメだからね?」

 

「はぁッ!?なんでだよ!?」

 

「いや、なんでも何も、投与した私も何投与したか覚えてないのにそんなの食べたらどうなるかわからないからね?と言うか君スゴいな!よくこのかわいらしい見た目の生き物を食べようって発想に至れるな!?」

 

「お前とりあえず食欲に直結するのよくねぇぞ」

 

「う、うるせぇなぁ!!寄ってたかってあーだこーだ言うんじゃねぇよ!!わかってんだよ!!」

 

 言いながら誤魔化すように怒声を上げながらちゃぶ台を拳で叩く。

 

「キュゥッ!?」

 

 その勢いに謎生物は驚きながら衝撃でバランスを崩した様子でたたらを踏み側にあった湯飲みにぶつかり中のお茶を被る。その瞬間――

 

「キュゥゥゥゥゥッ!!!?」

 

 つんざく様な鳴き声を上げて謎生物が絶叫する。

 

「えぇッ!?」

 

「な、何ッ!?」

 

 突然のことに全員唖然とする視線の先で謎生物は絶叫しながら身体を震わせる。心なしかお茶を被った背中が湯気を上げているような気がする。

 そして――

 

 ポコンッ ポコンッ ポコンッ ポコンッ ポコンッ

 

 湯気を上げた背中から何かがポコポコ跳び出す。

 

「うわッ!?」

 

「な、なんだッ!?」

 

「な、何事ぉぉッ!?」

 

 唖然とみんなが叫ぶ中、私は頭の中でカチリと記憶の歯車がかみ合っていくのを感じた。

 この見た目の既視感に加え、太陽の光を嫌がる様子、お茶…と言うか水分を浴びてのこの反応と飛び出してきた何か、これらの特徴があう生き物が一ついた。

 

「――あぁぁぁぁぁッ!!」

 

「うわッ、何よ急に!?」

 

 思わず叫んだ私にしのぶさんが叫ぶが気にしていられない。

 私は慌てて跳び出した何かを追って視線を向ければ、そこにはこの謎生物と同じような毛色の拳大の毛玉のようなものが転がっていた。

 

「うわぁぁくそやっぱりかぁぁッ!!」

 

「何々!?どうしたの!?何がやっぱりなの!?」

 

「何かわかったの!?」

 

 頭を抱える私にしのぶさんとマコちゃんが訊くがそれどころじゃない。

 

「みんないそいであの毛玉を確保!!」

 

「えッ?えッ?えッ?」

 

「毛玉ってさっきコイツから飛び出したアレですか――ってなんかあれ大きくなって言ってませんッ!?」

 

「いいからはやく!!私は入れ物取って来るから!!」

 

私の言葉に困惑する炭治郎君と善逸君を促しながら私は部屋を飛び出しテキトーな木箱を持ってくる。そして、炭治郎君達が回収した毛玉を木箱に放り込む。

 と、ものの数秒で謎生物と同じくらいの大きさになった計四つの毛玉がモコモコと動き

 

「うそ……」

 

「増えた……?」

 

 箱の中の毛玉四つが謎生物となって意志を持って動き始める。

 新たに増えた謎生物四匹は最初の子と似た見た目をしているが体毛の模様が違ったり頭にトサカの様なタテガミがあったりとそれぞれ個性があるが、心なしか最初の子よりも顔つきが悪い気がする。

 

「あ、危なかった……」

 

 私はホッと一息ついて額の汗をぬぐう。

 

「いったいどういうことなんですか?」

 

「ふうちゃんはこの生物がなんなのか分かったの?」

 

「わかったと言うか…似た存在を知っているというか……」

 

 炭治郎君とマコちゃんの問いに私はどう説明したものかと考え

 

「この謎生物、たぶんだけど海外の妖怪?の一種の『モグワイ』なんだと思う」

 

『もぐわい?』

 

「まあ厳密、『モグワイ』に特徴が酷似した別の存在、ではあるんだろうとは思いますが……」

 

 首を傾げるみんなにいったん断っておきながら頷き

 

「『モグワイ』って言うのは知性が高くて簡単な内容なら意思の疎通も可能、基本的に大人しく温厚な生き物です」

 

 私は説明を始める。

 

「基本的に危険はありませんが、『モグワイ』と関わる上で三つのことを注意しないといけません」

 

 言いながら私は右手を上げ、人差し指を伸ばす。

 

「まず一つ目、光に当てないこと。『モグワイ』は光が苦手なのでできるだけ暗いところでないといけません。特に太陽光に弱くて長い間当たると死んでしまいます」

 

 言葉を区切り中指を立て

 

「二つ目に、水を掛けたり濡らしてはいけない」

 

「それって……」

 

「増えるから、ですか?」

 

「そう、こんなふうにね」

 

 炭治郎君の言葉に頷きながら私は木箱の中を覗き込む。みんなも同じように覗き込む。箱の中では四匹の『モグワイ』がモゾモゾと身を寄せ合ってキイキイと会話をしているように見える。

 最初の『モグワイ』は四匹の入った木箱を避けるようにちゃぶ台の下に隠れている。

 

「増えた『モグワイ』は基本は最初の『モグワイ』と同じですが、最初の温厚なやつとは真逆で悪戯好きの意地悪な性格をしてます」

 

「確かに最初の子より人相?が悪い気がする……」

 

 私の説明にしのぶさんが眉を顰める。そんなしのぶさんの反応に対してなのか『モグワイ』の一匹、トサカのようなタテガミの一匹がニタニタと笑う。

 

「で、これが一番重要なんですが――」

 

 言いながら私は薬指を立て

 

「三つ目に、真夜中に食べ物を与えてはいけない」

 

「あ、与えるとどうなるの?」

 

 マコちゃんが恐る恐る訊く。そんな問いに私は頷き

 

「基本増えた『モグワイ』は悪戯好きで意地悪とはいえ、精々ちょっとした悪戯する程度なんですが、この三つ目の約束を破ると、『モグワイ』はさらに質の悪い怪物、『グレムリン』に変身します」

 

「その…ぐれむりん?になるとどうなるの?」

 

「凶暴化します。悪戯の範疇を越えて、人間を襲う様になります」

 

『ッ!?』

 

 私の説明に全員が息を飲む。

 

「私ももっと早く思い出せればよかったけど……まあ増えてしまったものはしょうがない、最初の子はさておき、この四匹は可哀想だけど早めに手を打ってしまわないと……」

 

「手を打つって……?」

 

 マコちゃんの言葉に私は少し間を開け

 

「……まあ、端的に言ってしまえば、殺処分…かな」

 

「それは……」

 

「でも……」

 

 私の言葉にみんな一様に微妙な反応をする。

 

「うん、みんなの気持ちもわかるけど、この子達が『グレムリン』になる前にどうにかしないと、こんな箱じゃこの子達はすぐ脱走するだろうし、何処かで何かを食べるだろうしこの子達は小さいから家の軒下とかで変身されたら打つ手なし……『グレムリン』になってからも水があればこの子達は無限に増殖していくから冗談抜きで一晩でこの町が崩壊するかも……」

 

「何それ怖いッ!!鬼より厄介じゃん!!」

 

「で、でも、ホントにそうなるかどうか……」

 

「……それは、そうだけど」

 

 炭治郎君の言葉に私は頭を掻き

 

「……はぁ、分かった。じゃあ夜中に実験しよう」

 

「実験、ですか?」

 

 炭治郎君の問いに頷く。

 

「真夜中にこの子達の前に食べ物を置いておく。食べて変身するようならそのまま処分する。変身しなければ…まあ私がまとめて面倒見るわ」

 

「楓子さん……ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、時計が真夜中の12時を指し示した頃、最初の子を含め五匹の『モグワイ』の前に食べ物を置き様子を見たのだが、私の知るように最初の子は食べ物に見向きもせずにいた。しかし、増殖した四匹はこれ幸いと食べ物に飛びつき、私の知る通り蛹のような状態になった。

 ただ、ここで誤算があった。

 私の知る『モグワイ』は『グレムリン』になるまでに数時間を要した。が、この『モグワイ』は私の知る『モグワイ』ではない。結論から言うと、ものの数分で変身を遂げた。

 私の知っている通りの見た目になった四匹の『グレムリン』は暴れ始めた。

 慌てて処分するために動いた私達だったが、そこで更なる不運が起こった。

 四匹中三匹は仕留めたが、一匹が攻撃を掻い潜り逃亡した。そして、逃亡した先、屋敷の庭には――小さな池があった。

 逃亡した『グレムリン』は池に飛び込んだ。そして、そこからは悪夢のような光景だった。

 池が膨れ上がり無数の『グレムリン』飛び出してきた。

 

「ぎやぁぁぁぁぁッ!!!キモい~!!!」

 

「キリがねぇぞ!!」

 

「ごめんなさい、俺のせいで!!!」

 

「謝るのは後!!」

 

「こいつら鬼同様に藤の花の毒が効くみたいだから池の水に毒を放り込んだわ!!これ以上は増えないはず!!」

 

「あとはこいつらを屋敷の外に出さないように食い止める!!」

 

 と、まあそんなこんなで何とか屋敷の外に出ないように食い止めながらちまちま倒していった結果、気付けば朝になっていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…な、何とかなった……」

 

「太陽が出たおかげで助かったね……」

 

「さ、流石の俺様も疲れたぜ……」

 

「す、すいません、俺があの四匹を助けようって言ったから……」

 

「炭治郎君は悪くないよ。私だってまだ何もしてない子を殺処分にするのはためらわれたし」

 

 申し訳なさそうに言う炭治郎君に私は微笑みながら言い

 

「結局残ったのは最初の子一匹だけだし、あの子は『グレムリン』になる気ないみたいだしこのまま地下室で飼うということで、ひとまずこれにて一件落着!!めでたしめでたし!!」

 

 笑いながら立ち上がる。

 

「さ、皆疲れてるだろうしご飯でも食べてゆっくり――」

 

「何一つめでたくないわよ」

 

 屋敷に戻ろうとした私の肩をガシッと掴まれた。

 恐る恐る振り返ると、そこには絶対零度の笑みを浮かべるしのぶさんがいて

 

「も・と・は・と・言・え・ば!!全部あなたのせいでしょ、楓子!!!」

 

「い、いや…そ、それは……」

 

 しのぶさんの気迫にアワアワとしながら言い淀んでいると、ズイッと顔を寄せ睨まれ

 

「いい?これから、連日徹夜で作業するのは禁止だから!姉さんたちにもそう言っておいて!」

 

「え~っと……で、できうる限り努力させてただきま――」

 

「努力するだけじゃなく実行しなさい!」

 

「…………」

 

「い・い・わ・ねッ!?」

 

「………はい」

 

 しのぶさんの殺意マシマシの視線に私は力なく頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――と、言うわけで、しのぶさんから連日の徹夜での作業禁止令を言い渡されたので、今後はタマちゃんもカナエさんもそのつもりでお願いします」

 

 楓子の言葉に

 

「私は鬼なので人間のような睡眠は必要ありませんが、確かに連続での作業は集中力も低下しますし、私もそれで問題ありませんよ」

 

 珠世は頷き、カナエは

 

「…………」

 

 笑顔のまま固まっていた。

 

「……カナエさん?」

 

「…………」

 

「………まさか」

 

「(サッ)」

 

「あ、今目を逸らした!!」

 

 笑顔のまま素早く顔を逸らしたカナエに楓子は追及する。

 

「ま、まさかカナエさん何かやらかしたんじゃ……」

 

「………い、いや、違うの」

 

 引き攣った笑顔でカナエが恐る恐る口を開く。

 

「わ、私もね、楓子ちゃんみたいにちょ~っと徹夜が続いて曖昧になっててあれこれ分量とか考えずに薬調合して、よくわかんないまま投与しちゃって……」

 

「ま、まさかそれが私の『モグワイ』みたいになったんじゃ!?」

 

「だ、大丈夫!一大事にはなってないの!一応生きてはいそうなんだけど…意思があるのかもよくわからなくて……」

 

「「???」」

 

 しどろもどろに要領を得ない説明をするカナエさに楓子と珠世は首を傾げる。

 

「………見せた方がはやそうね」

 

 観念したらしいカナエは立ち上がり奥の部屋からゴソゴソと何かを持ってくる。

 それは大き目の金魚鉢のような水槽で、中には一匹の謎の生き物が入っていた。

 

「これは…タコ?いえ、イカでしょうか?でもこれコウモリの羽にも見えますね……あら、でもこれは鱗でしょうか?これはいったい元の動物は何だったんですか?」

 

「それが、私も半分寝惚けてたみたいでよく覚えてなくて……」

 

「そうですか……ふうちゃんはどう思いま――」

 

 二人で首を傾げながら、珠世が楓子に問いかけようと視線を向けたが

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

「「……え?」」

 

 楓子からの返答は要領を得ない物だった。

 不審に思った二人が楓子を見れば、楓子は恐怖に引き攣った顔で固まっていた。

 

【挿絵表示】

 

 

「ふ、楓子ちゃん?」

 

「いったいどうしたんですか?これに何か見覚えが?」

 

 楓子の異様な雰囲気に二人は恐る恐る問いかける。と――

 

「……ふ」

 

「「ふ?」」

 

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん」

 

「ふ、楓子ちゃん!?」

 

「し、しっかりしてください!」

 

 慌てて二人は楓子を揺すって呼びかける。

 虚ろな目で譫言の様にわけのわからない言葉を繰り返す楓子に

 

「ふうちゃん!!」

 

「しっかり!!」

 

より強く揺する二人。

数秒ガクガクと揺さぶられた楓子は

 

「ハッ!!」

 

 虚ろな目から一転していつもの正気の光の灯った瞳に戻った楓子が頭を振る。

 

「あ、あぶなッ!危うくSAN値直葬するところだった!!」

 

「さ、産地直送?」

 

「どういうことですか?」

 

「あ、いえ、こっちの話です」

 

 二人の問いに楓子はコホンと咳払いをして

 

「で…これをどうするかなんですが……」

 

「とりあえず特に動かないしこのまま様子見するのがいいのでは?」

 

「で、でも楓子ちゃんの『モグワイ』のようにとんでもないことになるかもしれないし、ここは今のうちに処分をした方が……」

 

「…………」

 

 二人の話を聞きながら楓子は考え込み

 

このまま手元に置いておくのははなぁ…今はまだ小さいから見た人全員がSAN値がピンチなわけじゃないけど…でもそのうちどうなるか……かと言ってここで処分してしまったら…いやでもこれが私の知ってるアレなわけない…とも言いきれないしなぁ……(ブツブツブツ)

 

 悩みに悩んだ末――

 

「よし!こうなったら!!」

 

「こうなったら?」

 

「どうするの?」

 

 顔を上げた楓子に二人が問いかける。そんな二人に楓子は真剣な顔を向け

 

「見なかったことにして海にでも返しましょう!!」

 

 完全にやけくそ気味に思考放棄したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって――

 

「それで、半天狗よ。私に見せたいものと言うのは……」

 

「は、はい!こ、こちらにございます!」

 

 鬼の首領、鬼舞辻無惨は自身のアジトである無限城にて上弦の鬼、半天狗からの報告を受けていた。

 対する半天狗は怯えた様子ながらそっと懐に手を入れ、一匹の生き物を取り出した。

 それは黒と白のストライプ柄の体毛をした『モグワイ』だった。

 

「ふむ…なるほど、確かに私の血を微かだが感じる。だが、私はこんなものを作った覚えはない」

 

 無惨は『モグワイ』を興味深そうに目を細める。

 

「考えられるのは…人間ども、産屋敷の部下達か」

 

 少し考えた無惨は

 

「面白い、少し様子を見るとしよう。半天狗よ、お前にこれの世話を任せる」

 

「は、はいぃッ!仰せのままに!!」

 

 無惨の言葉に深々と半天狗は頭を下げる。頭を下げた半天狗を尻目に踵を返した無惨は

 

 ベンッ

 

 琵琶の音と共に現れた障子を潜り消えていた。

 

「……ほぅ」

 

 無惨が去ったことで緊張に身体を強張らせていた半天狗は息を吐く。

 

「で、では仰せの通りにこれの世話をせねば……とりあえずまずは餌か……」

 

 言いながら半天狗は考え

 

「鬼の血が入っているなら人間の血肉でいいだろう……」

 

 半天狗の言葉を理解した様子でストライプ模様の『モグワイ』はニヤニヤと笑う。

 時刻は丑三つ時と呼ばれる時刻――この後、無限城が阿鼻叫喚になるのだが、それはまた別の話。

 

 

 




と言うわけで睡眠は大事、と言う話でした!(違う)
ちなみに『モグワイ』のネタを知らない方は古い映画ですが「グレムリン」と言う映画に出てくるのでそちらを見ていただければ!
カナエさんが作っちゃった謎生物は某有名な邪神様ですね!
まあこれはあくまでも番外編なので本編とは関係ないマルチバースだと思っていただければと思いますので、次回からの本編には一切関係ありません!
そんなわけで次回から本編に戻りますのでお楽しみに!!


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