恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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更新が遅くなってしまい申し訳ありません!
仕事が立て込んでしまってやっと一息つきましたので更新です!
そんなわけで最新話です!





恋57 恋柱の継子と受け継ぐ炎

 

「「「「…………」」」」

 

 萌柱邸の道場にて四人の少年――炭治郎・善逸・伊之助・玄弥が座禅を組んで呼吸をする。

 

「そうだ、その調子だ」

 

 そんな四人へ煉獄杏寿郎が言う。

 

「集中だ。呼吸を深め、おのれの内へ意識を向けるんだ」

 

 四人は杏寿郎の言葉を意識しさらに深く呼吸する。

 

「取り込んだ空気、それを体中に運ぶ血管を巡る血液の流れ、血管の細部までを意識するんだ」

 

 杏寿郎は四人の様子をじっと見つめ

 

「よし、そこまで!」

 

 声を掛ける。

 

「「「「ぷはぁッ!」」」」

 

 杏寿郎の呼びかけに四人は大きく息を吐く。

 

「つ、疲れた……ッ!」

 

「ゼェ…ゼェ…へ、へんッ!な、なんてことねぇなッ!」

 

「い、息切れてんぞ猪頭……」

 

「ここまでキツイとは……」

 

 四人はそれぞれ荒い息を吐きながら言う。

 

「ハハハッ!慣れないうちはそうだろう!だが、集中し呼吸の精度を上げることで全集中の呼吸によってできることは増える!」

 

 四人の様子に杏寿郎は朗らかに笑い

 

「不死川少年は少し呼吸法は苦手なようだが、この修業方法は有用な点が多い。君も励むといい」

 

「……うっす」

 

 杏寿郎の言葉に玄弥は頷く。

 

「君も楓子君が見込んだ相手だ。きっと今よりもっと強くなれるはずだ」

 

「……ありがとうございます」

 

 玄弥は頷く。そんな二人を見ながら伊之助は

 

「その楓子のやつだけどよぉ……隅で何やってんだアレ?」

 

 言いながら視線を向ける。

 伊之助の言葉に釣られて四人は視線を向ける。

 道場の隅では椅子を二つ間を開けて並べて置き、その上で180度開脚したまま目を瞑って黙想する楓子の姿があった。

 

「あいつ俺らがお前の修業受ける前からずっとああしてんぞ」

 

「凄い集中力だ……」

 

「というかなんて体勢なんだ…人間の足ってあそこまで開くもんなのか……」

 

「楓子さんの師匠の甘露寺さんはもっと開いてたよ」

 

「うむ!甘露寺の関節の柔らかさは天性のものだな!」

 

「マジかよ……」

 

 炭治郎と杏寿郎の言葉に玄弥が唖然とする。

 

「と言うか、あれホントに黙想してるんですか?寝てるんじゃないですか?」

 

 善逸が疑わしそうに見る。

 

「いや、起きている。むしろ凄い集中力だ。恐らく彼女は今あの体勢でも五感を冴え渡らせている。仮に今、突然斬りかかられたとしても彼女は難なく対応してしまうだろうな」

 

 感心した様子で言いながら杏寿郎は頷き

 

「だが――少し気になるところもある」

 

 ポツリと呟くように言う。

 

「今の楓子君はいつもの彼女らしからぬ、なんと言うか、切羽詰まっているような必死さのような物を感じる……俺の考えすぎだといいがな」

 

「「ッ!」」

 

「「…………」」

 

 杏寿郎の言葉に善逸と玄弥は息を飲み、炭治郎と伊之助は首を傾げる。そんな四人の反応を見ながら杏寿郎は頷き

 

「……さて、少し休憩しよう」

 

 ニッコリと微笑んで言う。

 炭治郎と伊之助は頷き道場の隅に置いている手拭いと水を取りに行く。そんな二人を見送った杏寿郎は

 

「ん?どうかしたかね、我妻少年、不死川少年?」

 

 炭治郎達とは行かずに立っている二人に視線を向ける。

 

「あの……」

 

「楓子さんのことで……」

 

「うむ?」

 

 二人は杏寿郎に意を決した様子で口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこで間違ってしまったのか、何度自問しても答えは出ない。

 

 ――彼女一人に行かせてしまったせいだろうか?

 

 ――それとも、調査など言わず私が初めから向かえばよかったのだろうか?

 

 いくら考えても答えは出ない。

 伊藤美子、優しく正義感の強い子だった。

 原作には登場しないけど、確かにそこにいた私の友人。

 

 ――彼女との出会いは蝶屋敷、負傷した彼女をしのぶさんやカナエさんの手伝いで治療したことが始まりだった。

 

 彼女のケガの具合はかなり重症だったが私の現代の医学知識による治療で元気に回復した。回復してからは同年代と言うこともあり仲良くなり、時々会って一緒に甘味処に行ったりマコちゃんと三人で遊びに行ったこともあった。

 彼女の性格を思えば炭治郎君と会えばきっと意気投合したのではないかと思う。でも彼女は原作には登場していない。

 彼女と出会った時、あの重症だったあの時は、まだ原作の始まる前だった。

 本来であれば彼女はあの日死んでいたのだろう。

 マコちゃんやカナエさんと同じ、私が介入したことで助かった人物。私のもたらした現代知識の医療技術は彼女の様に本来なら死ぬ運命から救えた命はあると自負している。

 

――でも、彼女は死んだ。

 

 それも、鬼との戦いの中でも考えうる中で最悪の死に方、守ろうとした人達に裏切られて死ぬというもの。

 正義感の強い優しい彼女にとって、どれほど残酷な最期だろうか。

 そして、彼女の死によって、私は一つの可能性を考えてしまう。

 

 ――私の救った命は残酷な死の運命から逃れられたわけではないのかもしれない、と。

 

 マコちゃんもカナエさんも、他にも私の医学によって助かった人達も、私は助けられたわけじゃない。むしろ、徒に死の運命を先延ばしにしただけで、もっと恐ろしい運命に導いてしまったのではないか。

 だとしたら、私のしていることはなんと残酷な事だろう。

 本来味わわなくていい辛く悲しい思いを、鬼との戦いを強いてしまっているのではないか、そう思わずにはいられない。

でも、だからと言って、今更私は命を救うことを、人を治すことを辞められるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――精が出るな!」

 

「ッ!?」

 

 優しく言われた言葉に私はハッと瞑っていた瞼を開ける。

 そこには優しく微笑む杏寿郎さんの顔があった。

 

「頑張ることはいいことだ。だが、根を詰めすぎるな。適度に休憩を挟まないと逆に効率が悪くなる、君が教えてくれたことだろう?」

 

「杏寿郎さん……」

 

 言いながら杏寿郎さんが差し出す湯飲みを受け取り座り直す。

 

「……我妻少年達から聞いたよ、友を亡くしたそうだな」

 

「ッ!?」

 

 湯飲みのお茶を飲んだ私にそっと杏寿郎さんが言う。

 

「……はい」

 

 杏寿郎さんの言葉に私はゆっくりと頷く。

 

「彼女にあの村を調査するように頼んだのは、私です。もっとやりようがあったのではないかと思わずにはいられません」

 

「…………」

 

「もっと言えば、彼女は以前にも重傷を負い蝶屋敷に運ばれてきました。私はそれを治し、また戦いの日々に送り出してしまった。私が助けたから彼女はより苦しい死に方をすることになったんじゃないかって思えて……」

 

「それは違うぞ!」

 

 私の言葉に杏寿郎さんが言う。

 

「友人のことを悼む気持ちはわかる!だが、背負わなくてもいい責任まで今君は背負い込もうとしている!それは違う、それでは君の友人が悲しむ!」

 

「杏寿郎さん……」

 

「例えどんな理由があっても、君が人を救うことを、人を治すことを否定をしてはいけない!君が自分の行いを否定してしまったら、君に救われた人はどうなる?」

 

「それは……」

 

「俺は君に助けられたおかげでまた父に、千寿郎に会うことが出来た。また会おうと約束した相手とも、約束を破らずにすんだ。竈門少年達後進の育成にも携われる!君のお陰だ、感謝してもしきれない!それを間違っていたなんて思わないでくれ!」

 

「…………ッ」

 

 杏寿郎さんの言葉に私は目頭が熱くなる。

 

「例え誰がなんと言おうと、救われた俺達が君のことを肯定する!君が救った命はこうしてここにある!君が背負うべきはたくさんの人を救ったというその功績だ!」

 

「杏寿郎さんッ!」

 

 眼を見開く私に杏寿郎さんは優しく微笑む。

 

「忘れないでくれ、君は一人じゃない!君は常に君が救ってきた人達の想いと共にある!」

 

「……はい…はい!」

 

 私は涙ぐみながら何度も頷く。

 

「もしも、また君が心が折れそうになったらこれを見て思い出してほしい、君には俺達がついているということを!」

 

「これは……?」

 

 言いながら風呂敷に包まれた何かを差し出す杏寿郎さんを見ると杏寿郎さんはニッコリ微笑み

 

「本当は別の考えで用意していたんだが、少しでも君の支えになってもらえればと思ってな!」

 

 杏寿郎さんの言葉を聞きながら受け取り包みを開く。

 中から出てきたのは――

 

「これ襟巻きですか?」

 

「ああ!」

 

 白く長い襟巻き(マフラー)だった。しかもそれは広げて見ればただの白一色ではなく両端が燃え盛る炎の模様になっている、まるで煉獄家の羽織のようだった。

 

「あの無限列車の時、君は首元に怪我をしたのか、あれ以来首に服で隠れるようにしながら包帯を巻いて隠してるだろう?」

 

「ッ!?気付いてたんですかッ?」

 

 驚き眼を見開く私に杏寿郎さんは頷き

 

「君も女の子だし身体の傷は気になって隠しているんじゃないかと思ってな。『柱』になったお祝いも渡していなかったしそれも兼ねて知り合いに相談して選んでみた」

 

「………気付かれていたとは思いませんでした」

 

 言いながらニッコリ笑い

 

「ありがたく使わせていただきます!ありがとうございます!」

 

「うむ!」

 

 私の返事に嬉しそうに大きく頷き

 

「本当はうちの羽織を仕立て直して襟巻にしてもらおうと思ったんだが父上に全力で反対されてしまってな!代わりに羽織の補修を頼んでいる呉服問屋に頼んで同じ柄の物を作ってもらったんだ!」

 

「そりゃ反対されるでしょ何やろうとしてるんですかッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の知識で救えた命がある。

 しかし、救われたはずの命は別の場所でもっと残酷な死に方をしているのかもしれない。

 

――でも、だからと言って、今更私は命を救うことを、人を治すことを辞められるのだろうか?

 

 友人の、井上美子の死から何度も自問自答し続けた。

 思考は堂々巡りを続け、答えは出ないままだった。

 でも、杏寿郎さんの言葉のお陰で答えを出せた。

 

――答えは、『否』だ。

 

――たとえ、私の行いではすべての命を救えないのだとしても、それでも、私は人を治すだろう。私が、そして、私の大切な人達が生きるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――へぇ、いい襟巻きじゃねぇか。しかもどっかで見たことある模様だな」

 

 藤の花の家紋の家の廊下を歩いていると角を曲がったところで壁に背中を預けて立つ大男――宇髄天元様がいて私を見下ろしながら言う。

 

「杏寿郎さんからいただきました。『柱』になったお祝いだそうです」

 

「へぇ、あいつ、女に贈り物するなんてことできたのか。派手に意外だ」

 

 首に巻いた襟巻きを撫でながら答えると宇髄様は茶化したように言う。

 

「ぶっちゃけお前と杏寿郎ってどうなんだ?」

 

「どう、とは?」

 

「お前、今は甘露寺に師事してるが、元はと言えばあいつの弟子でもあるんだろ?しかも一年ほど住み込みで世話になってたって話じゃねぇか」

 

「あぁ~…そう言うアレですか」

 

「そう言うアレだ。端的に言って男女のアレコレがあんじゃねぇのか?」

 

「杏寿郎さんのことは尊敬していますよ。でも、残念ながらそう言う宇髄様が期待するようなことはありませんよ」

 

「かぁ~!つまんねぇな!」

 

 心底期待外れと言う様子で額に手を当てる宇髄様に苦笑いを浮かべながら

 

「あ、でも――」

 

 ふと思い出して言う。

 

「杏寿郎さん、最近文通している人がいるみたいですよ。しかもどうやら女性です」

 

「何ッ!?それ派手に本当かッ!?」

 

「ええ。と言ってもごく最近知り合ったみたいですけどね。この間炭治郎君達の特訓の時にうちに来てチラッと言ってました」

 

 そう言えばあの時は無限列車で杏寿郎さんが食べていたものと同じ牛鍋弁当をお土産に持って来てくれた。映画でも登場して食べてみたいと思っていたので食べられて人知れず感激したものだ。

 

「ほぉ~ん、そいつは是非ともあいつの口から真相を聞き出さねぇとなァ!楽しみが出来たぜ!」

 

「ふふ、それはこの任務さっさとケリをつけないとですね」

 

「おうよ!派手に気合が入ったぜ!」

 

 楽しそうに笑う宇髄様を見ながら私は頷き

 

「では、炭治郎君達が待っていることですし行きましょうか」

 

「おうよ!」

 

 炭治郎君達の待つ部屋へ向かって歩き出したのだった。

 

 




と言うわけで最新話でした!
前回シリアスで重い話だったのでもう少しギャグとか入れる予定だったんですが、書いてるうちに前回のシリアスに少し引っ張られてこんな感じに(;^ω^)
次回から遊郭編にはいるのでまた話がひと段落したらギャグマシマシな話も書きますのでご容赦のほどを。

そして今回は煉獄さんとの会話が中心で楓子ちゃんも新たな一歩を踏み出しましたね。
煉獄さんから貰った襟巻き(マフラー)を着けた楓子ちゃんのイメージ描いてみたので参考までに良ければ!

【挿絵表示】




そんなわけで今回の質問コーナーです!
今回はムッシーさんからいただきました!

――結婚前提でお付き合いするのなら、豪放磊落な年上男性(見た目:シンフォギアの風鳴弦十郎辺り)か線の細い年下美少年(敢えて言うまい)、どちらがいいですか?

楓子「何ですかその極端な選択肢は?まあそのどちらかで選ぶなら線の細い年下美少年ですかね?」

――真剣に交際を申し込まれたら女性とも付き合う事ができますか?

楓子「これは正直相手によるんじゃないですか?相手のことが好きなら多分私性別関係なく付き合えますよ……あ、私実はバイセクシャルだったのかッ!?」

――百合に対して忌憚のない意見をお願いします。

楓子「そうですね…とりあえず一番思うのは、女の子同士の絡みでしか得られない栄養ってあると思うんですよ。良質な百合から摂取した栄養で寿命が延びる。今はまだガンに効かないけど多分そのうち効くようになりますよ、絶対。女の子同士だからこその反発でやきもきしたり女の子同士だからこそ分かり合えたり、そう言う百合ならではの尊み、愛でていたいですね。異性恋愛は根底に子孫繁栄があるけど、百合しかり、BLしかり、同性愛ってそういう言う部分が介入しない分、ある意味では究極の愛だと思うんですよ。だから、百合に挟まろうとするやつは惨たらしく絶命してください」

と言うことでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
次回から遊郭編に本格的に突入です!
お楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
炭治郎は前回の一件を知りません。炭治郎の性格を考えて楓子が口止めをしています。同様の理由とうっかり漏れてしまわないように伊之助にも知らされていません。

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