恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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恋7 恋柱の継子の嫌いな奴

 突然だが、皆さんは「鬼滅の刃」の作品の中に登場するキャラクターで嫌いな奴はいるだろうか?

 古今東西いろんな漫画やアニメがあるが、人気の高いキャラも逆にファンから反感を買うキャラもいる。

 しかし、これは持論だが、嫌なキャラや嫌われ者のキャラがいる作品と言うのは得てして名作が多いと思う。主人公たちが魅力的であればこそ、同じように嫌われ者のキャラクターたちの存在が主人公たちの魅力を引き立て、物語に深みを与える。嫌われ者のキャラクターとはそんな物語を面白くする上でなくてはならない存在なのだ。

 彼ら彼女らは嫌われるのと同じくらいに実は人気を集めるキャラにもなり得たりするから不思議だ。

 

 ――では、それを踏まえて冒頭の質問に戻ろう。

 

 皆さんには「鬼滅の刃」の作品の中に登場するキャラクターで嫌いなキャラはいるだろうか?

 私にはいる。

 できる事なら絶対に会いたくなくて、でも、私の掲げる推したちの幸せを守るという目的のためには遭遇は避けては通れない相手、それこそが私の嫌いなキャラだ。

 

 何故こんなことを急に言い出したかと言うと――

 

「わぁ、新しい女の子だね。若くて美味しそうだなあ!」

 

 今現在私の目の前にいるからだ。

 夜の闇の中で月の光に照らし出されたそいつは、若い整った顔立ちの男性でその顔にはニコニコと一見爽やかな笑みが張り付いている。そして何より目を引くのは丸で頭から血を被ったようなその髪だろう。見た目だけで言えば美青年、と言った雰囲気だろうか。

 両手に構えた鉄扇の片方を肩にかけてもう片方で私を指しながらそいつは――

 

「やあやあ初めまして、俺の名前は童磨。いい夜だねぇ!」

 

 それぞれ「上弦」「弐」の文字の浮かぶ両目を細めて笑いかけて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――何故私がこのサイコパスと遭遇したのか、それを語るためには話を少し前に戻そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はその日蜜璃さんのお使いで蝶屋敷を訪ねていたのだが、残念ながら胡蝶姉妹は任務で留守にしていた。

 なので、お使いをすませた後にアオイちゃんと世間話をしていたのだが――

 

「そう言えば、今日はカナエさんとしのぶさんはどんな任務に?」

 

「ああ、なんでもとある街で女性が次々に姿を消すという事件が起きているそうで」

 

「女性だけが?」

 

「はい。しかも姿を消した女性宅の周辺で季節的にあり得ない氷結や霜が目撃されているので、それもこの件に関わっている鬼の能力ではないかと――」

 

「ッ!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間私は脇に置いていた刀を引っ掴み立ち上がった。

 

「ごめんアオイちゃん!急用ができた!!」

 

「え?あ、はい」

 

 頷くアオイちゃんを尻目に私は慌てて駆け出した。

 先ほどのアオイちゃんの言葉、姿を消す女性たちとその周辺で目撃される氷結や霜、その鬼の対処へ動くカナエさんとしのぶさん。これらから導き出されるのは、私の大嫌いなあいつ――上弦の弐・童磨との接触だ。

 

「ついに来た!カナエさんと童磨の戦闘……!」

 

 正直ずっと警戒していた。しのぶさんのあの結末を回避するためにはカナエさんの生存は不可避。できる事なら童磨の討伐までできればいいが、戦力が揃わなければそれは贅沢の言い過ぎだろう。

 カナエさんと童磨の接触する年代には大体あたりをつけていたが詳しい日付まではわからなかった。なのでここ最近はカナエさん達の任務にはかなり気を配っていた。

 そしてついに今日、その日が来てしまった。

 

「蜜璃さん!」

 

急ぎ戻った私は蜜璃さんの屋敷に飛び込む。

 

「ふーちゃん、どうしたの?蝶屋敷へのお使いお願いしたからゆっくりしてから帰って来るかと思ってたけど……」

 

「蜜璃さん!詳しい話は後で!すぐに準備してください!」

 

「え?え?え?」

 

 私の言葉に困惑する蜜璃さんに

 

「詳しい話は後で!とにかく急がないとカナエさん達が危険なんです!」

 

「ッ!?よく分からないけどわかったわ!すぐに準備する!」

 

「お願いします!」

 

 応じた蜜璃さんにお礼を言いながら自分の部屋に飛び込む。

 この日のためにあれこれ準備していたものを押し入れから引っ張り出す。

 

「準備できたわよふーちゃん!」

 

「はい!すみませんがこれを運ぶの手伝ってください!」

 

「わかったわ!」

 

 私の部屋に刀を携えてやって来た蜜璃さんにその押し入れから引っ張り出したリュックを背負いながら言う。私の言葉に頷いた蜜璃さんは私が背負った荷物の倍はありそうなリュックを背負う。

 

「行きましょう!」

 

「ええ!」

 

 頷いた蜜璃さんとともに屋敷を飛び出す。

 

「ふーちゃん、それでどこに?」

 

「待ってください、カナエさんたちのところに行く前にあと一人助っ人を――」

 

 言いながら私は商店街に向かう。

 確か今日は〝あの人〟は非番の日だと聞いているから、休日の行動パターンならきっとここにいるはず……。

 

「ッ!!いたぁぁぁッ!!」

 

「………?」

 

 目当ての人物を見つけた私は叫ぶ。私に指差された人物――冨岡様が首を傾げながら振り返る。よかった、この人の事だから大丈夫だと思ったが、案の定この人休日でも帯刀してる。

 

「冨岡様!ちょっと一緒に来てください!」

 

「……何故だ?」

 

「詳しく話してる暇はないんで道すがら説明しますけど、とにかくカナエさん達が危ないんですよ!」

 

「ッ!?」

 

 私の言葉に冨岡様が眉を動かす。

 

「なので今すぐ一緒に――」

 

「どこに行けばいい?」

 

「ッ!着いて来て下さい!」

 

「ああ!」

 

 言い終わる前に冨岡様が頷く。

 冨岡様と蜜璃さんを連れて走る。

 

「とりあえず走りながら説明しますね!」

 

 後ろを走る二人に向けて言いながら私も走る。

 

「現在カナエさんとしのぶさんはとある街で鬼の調査を行っています」

 

「どんな鬼なの?」

 

「いまのところ判明しているのは、被害者は皆女性、ここ最近女性ばかりが姿を消しているそうです。それに加えて被害にあったらしき人達の家の周辺に季節外れの凍結や霜が目撃されていたそうです」

 

「それがいったいどうして危険だと?」

 

 私の説明に冨岡様が訊く。

 

「恐らく、その鬼は――上弦の鬼です」

 

「「ッ!?」」

 

 私の神妙に言った言葉に二人は息を飲む。

 

「何故そう確信した?」

 

 冨岡様が訊く。

 

「私、いま鬼殺隊で使える医療技術なんかの提案でお館様とお屋敷で打ち合わせをするんですが、その時に昔の鬼殺隊士の残した手記や活動記録を見せていただいたんです」

 

「それが……?」

 

「何度か登場するんです、百年以上前の記録に、今カナエさん達が追ってる鬼と酷似した状況を作り出す鬼が。そして、その討伐任務に就いた隊士達はみな帰ってきていません」

 

 これは実は事実だったりする。当初もしも童磨と戦うことになったとき、いかに他の人に協力を仰ぐための決め手とするかに頭を悩まされたが、これらの情報のお陰で根拠としやすかった。

 

「もしそれが同一の鬼なら百年以上前から暴れている上に、何人もの鬼殺隊士を屠っている鬼ですよ?最悪上弦である可能性があります」

 

「確かに……」

 

「上弦の鬼……」

 

 私の言葉に二人はゴクリとつばを飲み込んでいる。

 

「一応昔の記録からできる限り対策は練っています」

 

「じゃあこれって……」

 

「対・上弦の鬼(仮)用の備品たちです」

 

 蜜璃さんが自身の背負うリュックに視線を向けて言うので私は頷く。

 

「これで違ったらタダの笑い話で済むかもしれません。でも、もしも私の想像が正しかったら、後々後悔してもしきれません!だから急ぎましょう!」

 

「ええ!」

 

「ああ!」

 

 私の言葉に頷いた蜜璃さんと冨岡様とともに私たちは先を急いだ。

 

 

 ○

 

 

 

「では、作戦は先の打ち合わせ通りに!遭遇したらお渡ししている例の物で知らせてください!」

 

「わかったわ!」

 

「ああ!」

 

 向かっているうちに夜を迎えてから着いた街で、頷き合った私たちはそれぞれ手分けして別々の方向へと駆け出す。

 

「カナエさん……!」

 

 私は間に合うことを祈って駆ける。

 彼女は原作通りならば今日死ぬだろう。そして、そのことを背負ってしまったしのぶさんが自身に毒を付与し続け、その身をもって童磨を討たんと戦いを挑みその命を散らす。

 しのぶさんの死の運命を回避するためにはここでカナエさんを殺させないことは急務だ。でも、それは最初の頃の考えだ。私はこの世界で二度目の人生を送り、物語の登場人物ではなく、人と人として関わったことで、私はただ一人の人間としてカナエさんに生きていてほしいのだ。

 

「ッ!」

 

 その時、風上から血の匂いを感じた。

 私はそちらへと足を向ける。

 

「ッ!いたッ!」

 

 少し先に地面に倒れるカナエさんとそれを見降ろしニコニコと笑みを浮かべるイケメンの姿が見えた瞬間

 

「ッ!」

 

 大きく息を吸い込み、刀の柄を握り

 

「全集中・炎の呼吸――」

 

 グッと足元に力を込めて

 

「一の型『不知火』!」

 

「ッ!?」

 

 鞘から抜き去った日輪刀を炎の煌めきを発しながら振るう。

 しかし、それはバックステップで飛び退いた童磨には届かなかった。

 そして――冒頭に戻ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の名前は?」

 

「秋物純子」

 

「へぇ~いい名前だね!」

 

 私の返答に童磨はニコニコと笑みを浮かべ

 

「で?本当の名前は?」

 

「チッ!気付いたか」

 

「ふう…こちゃん……?なんで……?」

 

「へぇ?ふうこちゃんって言うんだね!」

 

「テメェの声で私の名前を呼ぶんじゃねぇよクソサイコパス野郎」

 

「さいこぱす?」

 

「お前みたいなクズ野郎のことでゲスよ」

 

 私は日輪刀を構えたまま言う。

 童磨に向ける日輪刀が月光を受けてそのマゼンタ色の刀身が煌めいている。

 

「もう、酷いなぁ。初対面なのにそんな言い方しないでよ。俺悲しいなぁ~」

 

「嘘くせぇ泣き真似してんじゃねぇよ」

 

 ヨヨヨッと顔を覆う童磨に私は冷めた目で見る。

 

「お前と話してるとイライラするんで早々に逃げることにします」

 

「つれないこと言わないでよ。もっとお話しよ~」

 

「普通に嫌です。では――」

 

 言いながら私は懐に手を入れ

 

「セイッ!」

 

 取り出したものを地面に叩きつけた。

 瞬間私の地面に叩きつけた球体がカッと発光して周囲が昼間のように明るくなる。

 

「なッ!?」

 

「キャッ!?」

 

 急な発光に童磨とカナエさんが驚きの声を上げる。

 

「あばよ~!」

 

 その隙に私は目を擦るカナエさんを抱えて走り出す。

 

「楓子ちゃん今のは……?」

 

「自家製の発光弾です!内容は省きますけど球の中に薬品が入っていてそれが割れて空気と混ざり、中身同士が混ざることで発光するんです!」

 

「なんで楓子ちゃんは平気なの……?」

 

「これのお陰です!」

 

 少し視界が戻ってきたらしいカナエさんに私は掛けていた眼鏡を見せる。発光弾を地面に叩きつける瞬間に同時に掛けたものだ。

 

「これ…色付き眼鏡……?」

 

「これ掛けてたから光も平気だったんです!そんなことよりカナエさん平気ですか!?怪我は!?」

 

「何とかね……ただ、肺をやられたわ……全集中の呼吸をしようとすると――ゴホッゴホッ!」

 

「カナエさん!」

 

 咳き込むカナエさんに私は呼びかける。

 

「だ、大丈夫よ……それよりも、楓子ちゃんどうして……?」

 

「話すと長くなるんで今はあのクズから逃げるのが先――」

 

「もう、酷いなぁ~。まだちょっと目がチカチカしてるよ~」

 

「「ッ!?」」

 

 背後から聞こえた声に私はとっさに横に飛び退く。

 私の一瞬前にいた場所に鉄扇が叩きつけられる。

 

「わぁ!今の避けるなんて君すごいね!」

 

「よく言いますね!今のあきらかに手加減してたでしょ!」

 

「あ、バレた?」

 

 私の言葉に童磨はなんてことはない様子で応える。

 

「チッ!もういっちょ喰らってろ!」

 

 言いながら再び私は懐から取り出した球を投げる。が――

 

「おっと!させないよ!」

 

「ッ!それ切っちゃダメ!」

 

「やだよ~」

 

 私の言葉に笑いながら鉄扇を振るう童磨。

 

「がはッ!?」

 

 と、童磨が苦しそうに苦悶の声を上げる。

 

「か、からッ!?ていうか痛い!?」

 

「ダカラ切ッチャダメダッテ言ッタイジャナイデスカ~」

 

 悶絶する童磨を尻目に私は鼻に洗濯ばさみを付けたまま話す。ちなみにカナエさんにも装着済み。

 今のは私特製のタバスコ弾だ。まあタバスコとは言ってもその他辛いと有名なブートジョロキアなどのあれやこれやの粉末が仕込んであったものだ。

 

「クゥ…!この程度で――」

 

「モウ1パァァッツ!」

 

 顔を上げた童磨にさらに新たな球を投げつける。

 

「フッ!切ったらまずいなら今度は触らないでいれば――」

 

 言いかけた童磨は

 

 ドガァァンッ!

 

 爆発した。

 

「今度ハ単純ニ爆弾ニシテミマシタ」

 

「……ボヘッ」

 

 爆発を受けた童磨は口から煙を吐き出す。

 

「クゥ!まだまだ――」

 

「ナラバモウ一丁!!」

 

 言いながら先ほどまでのものの倍はある大きさの球を投げつける。

 

「ハハッ!どこ投げてるのさ!そんなの当たるわけ――」

 

 私の投げた球は童磨の頭の上あたりを飛んで行き、童磨の言葉の途中で勝手に割れた。

 球の中からボトリと童磨の顔に落ちる。

 

「何これ布?いったい何が――ってクッサァ!!?」

 

 布を手に取った童磨が仰け反って悶絶する。

 

「名付ケテ臭爆弾!中身ハ入念ニクサイ臭イヲ付ケタ雑巾ダヨォ~ン!」

 

 ちなみに作り方は雑巾に牛乳をぶっ掛けて納豆とくさやで混ぜ合わせて常温で八日間熟成した後に丹念にドブにつけます。そうすると――

 

「ハァァァァンッ!!?く、くせぇぇぇぇッ!!?あ、あぁぁぁぁッ!!オエッ!!」

 

 どんなイケメンも涙と鼻水で顔をドロドロにしてグズグズに顔を歪めて悶絶する臭いの完成だ。

 

「クッ!ホント君って酷い!なんでこんなことするのさ!?」

 

「テメェが大嫌いだからだよ!」

 

 グズグズの顔で泣きながら叫ぶ童磨に私は鼻から洗濯ばさみを外しながら叫び返す。

 

「ていうか逃げてていいの?逃げるばっかりじゃ俺のこと倒せないし、すぐに追いついちゃうよ~?」

 

私の特殊弾の影響から回復し始めたらしい童磨がニヤニヤと言う。

 

「まあだからこそ――蜜璃さん!!」

 

「任せてふーちゃん!」

 

 立ち並ぶ長屋の屋根から蜜璃さんが私たちに気を取られていた童磨に飛びかかる。

 

「だ、ダメよ蜜璃ちゃん!そいつのそばで呼吸を使ったら肺をやられ――ゴホッ!」

 

 慌てて叫ぶカナエさんだったが言葉の途中で咳き込む。

 

「大丈夫ですよ、カナエさん」

 

「でも!」

 

「呼吸は使わないので」

 

 カナエさんの心配をよそに、童磨の目の前に降り立った蜜璃さんは

 

「はぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 気合の声とともに童磨を蹴り飛ばした。

 

「グハッ!?」

 

 蜜璃さんに蹴り飛ばされた童磨はそのまま側の長屋の一つに扉を破壊しながら転がり込む。

 

「なに君は?何その強さ、すごいねぇ……」

 

 家の中で感心したように童磨は笑顔を崩さずに言う。

 そんな童磨に――

 

「そぉい!」

 

 ふとことから取り出した特殊弾その5を足元に投げつける。

 

「何これ!?」

 

「トリモチ」

 

「なんかこれ足が動かないんだけど!?」

 

「トリモチだっつってんだろ」

 

 足と床がトリモチで身動き取れなくなった童磨。しかし、それも多分すぐに逃げられる。だから――

 

「いまです!蜜璃さん例のものを!!」

 

「任せて!!」

 

 蜜璃さんは背負っていた大荷物をそのまま投げつける。

 

「ッ!?」

 

 自分へ迫る大荷物を切り裂こうと、しかし、先程までの特殊弾への対処にことごとく失敗した経験から童磨の手に一瞬逡巡が見られ――

 

「(ニヤリ)」

 

「ッ!?」

 

 私はその様子に不敵に笑みを浮かべ、その様子に童磨がハッと気付き

 

「そうか!こうして俺に躊躇わせるのが狙い!つまり今度は切ってしまうのが正解!!」

 

 言いながら童磨が鉄扇を振るってリュックを切り裂く。そして――

 

「ワプッ!?」

 

 リュックから大量の白い粉が舞い上がる。

 

「これは一体――」

 

「小麦粉だよ」

 

 困惑する童磨に私は応える。

 私は抱えていたカナエさんを蜜璃さんに預けて童磨のいる家の前に立つ。

 

「今お前のいるその家の中は大量の小麦粉が充満している。そこに火を放ったらどうなるか…知ってる?」

 

「何を言って……?」

 

「えいっ」

 

 首を傾げる童磨へ火のついたマッチを放り込み

 

「蜜璃さん走って!!」

 

「ええ!!」

 

 そのまま私はそのままで、蜜璃さんはカナエさんを抱えたまま走り

 

 ドガァァァァンッ!!

 

 背後で大爆発が起こりその爆風で吹き飛ばされる。

 

「いつぅ……大丈夫ですかお二人とも?」

 

「な、なんとかねぇ~」

 

「何今の……?」

 

 半ば目をまわしながら私の問いに答える蜜璃さんと、カナエさんは爆発の正体がわからないようで困惑している。

 

「粉塵爆発。ある一定の濃度で可燃性の粉塵が大気中に浮遊した状態で火がつくとそこから引火して広がって行って大爆発するんですよ」

 

「粉塵…爆発……」

 

 私の答えにカナエさんはもうもうと煙の上がる家を見ながら呟く。

 

「でも、あの爆発ならあの鬼でも流石に……」

 

「いえ、無理ですね」

 

「「え?」」

 

 カナエさんの言葉を遮って言った私の言葉に二人が困惑した声を漏らす。

 そんな二人に示すために私は先の家を指差す。そこには――

 

「ケホッ、コホッ!あぁ死ぬかと思った!」

 

 全身丸焦げの最早誰か見てもわからない姿のまま瓦礫の中から立ち上がった童磨の姿があった。

 

「そんな……あの爆発でもダメだなんて……」

 

「まだ回復しきっていない今のうちに頸を――」

 

「大丈夫ですよ」

 

 焦るカナエさんと蜜璃さんの二人に、しかし、私は刀に手をかけた蜜璃さんを手で制しながら言う。

 

「ですよね、冨岡様?」

 

「……ああ」

 

 と、どこからか私の問いかけに答えた声の主は

 

「全集中・水の呼吸――」

 

 側の家の屋根から飛び降りた冨岡様が刀を構え

 

「壱ノ型『水面斬り』」

 

「ッ!?」

 

 冨岡様の振るった日輪刀が童磨の首を斬り落とした。

 

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