恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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どうも皆さんお待たせしました!
今回より本格的に遊郭編です!
原作とは違う道を歩む楓子ちゃん達の活躍にご期待ください!





恋58 恋柱の継子と愛憎渦巻く夜の街

 ――吉原遊郭

 

 それは江戸時代に幕府公認で開かれていた遊郭の集まり、色町――現代で言うところの風俗街とでもいえる場所、厳密には現代の風俗とはまた違うだろうが大雑把には間違っていないだろう。

 原作を知っている人には説明の必要はないだろうが、この街には上弦の鬼・堕姫と妓夫太郎がいる。

 そして、原作通り宇髄様と三人の奥さん達はここに鬼が潜んでいると睨み調査を進めていた。無論原作知識のあった私はそれに乗っかり協力を申し出て共同調査を始めた。

 うまく情報を精査し誘導することで原作より早い段階で候補を「京極屋」「荻本屋」「ときと屋」に絞ることに成功した。

 そんなこんなで私の動かせる戦力『梁』と炭治郎君達かまぼこ隊の三人や玄弥君、カナヲちゃん達など原作以上に戦力を用意し本格的に堕姫達の打倒に乗り出して吉原入りしたのが一週間前になる。現在私達は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと薬屋さん、こっちもお願い」

 

「はい、ただいま!」

 

 遊女さんの呼びかけに笑顔で答えた炭治郎君がいそいそと向かう。

 

「この間貰った薬、よかったわ。同じのをちょうだい」

 

「頭痛薬ですね!少々お待ちを!」

 

 言いながら割烹着姿の炭治郎君は人当りのいい笑顔で微笑みながら木箱から薬を取り出し渡す。

 そんな炭治郎君を尻目に私は目の前の遊女さんを診察しながら

 

「ふむ、軽い貧血ですね。鮭や鰯、しじみとかあさりなんかの魚介類、あとはほうれん草なんかを取るようにして下さい。とりいそぎはこちらの薬を――カナヲちゃん、四番の引き出しの薬を」

 

「はい」

 

 私の言葉に頷いた同じく割烹着姿のカナヲちゃんが頷き木箱の中の対応する引き出しの薬を取り出し手渡してくれる。

 

「これを朝晩食後に一粒服用してください。三日分出しておくので飲み切っても症状があるようならまたお声がけください」

 

「ええ、ありがとう」

 

「お大事に」

 

 礼を言う遊女さんに微笑みながら私は頷く。

 

 

 

 

 

 現在、この「ときと屋」で私・炭治郎君・カナヲちゃんは薬売りとして一週間通っている。

 『梁』が本格的に発足した直後、私はお館様に進言し研究し開発した薬の一部を製薬会社を発足し販売し始めた。

 常々思っていたが産屋敷の権力と財力がどれほどの物でもそれは無限につづくものではない。『鬼殺隊』が政府非公認である以上運営資金は出て行くばかりで入ってくるものはほとんどないだろう。少しでも改善すべく言い出したことだが、私達が開発した薬はなかなか好評なようで売り上げはいい。

 そして、その製薬会社のヒットは今回の潜入にも有用で、お館様からの紹介で遊郭にも薬売りとして潜入することが出来た。

 現在は「ときと屋」には私達三人が、他にも「京極屋」にはマコちゃん・玄弥君・善逸君の三人、「荻本屋」には村田さん・アオイちゃん・伊之助君の三人がそれぞれが同じく薬剤師として通っている。

 ちなみに宇髄様は客として、奥さん三人は原作通り「ときと屋」に須磨さん、「京極屋」に雛鶴さん、「荻本屋」にまきをさんが遊女として潜入している。

 

 

 

 

 

 

「この間頂いた薬もよく効いたわ。ありがとう。一緒にいただいたお香も焚いてから眠るとぐっすり眠れたわ。また頂ける?」

 

「それはようございました。どうぞどうぞ」

 

 言いながら私は割烹着のポケットから紙で包んだお香を渡す。

 そんな感じで遊女さんや従業員の人達の診察をしていると――

 

「失礼します、大好さん」

 

 そっと禿の少女がやって来る。

 

「須磨花魁が診察をお願いしたいとのことで」

 

「あぁ、お客さんが帰られたんですね。わかりました」

 

 禿の少女の言葉に頷いた私は

 

「二人共、ここは任せてもいいかな?教えた通りに対応すればいいから」

 

「はい!任せてください!」

 

「(コクリ)」

 

 頷いた二人に微笑みながら私は禿の少女の案内で歩き出し

 

「失礼します」

 

 一室に入る。そこでは

 

「待ってもらってごめんなさい、薬売りさん」

 

 にっこりと微笑む花魁――須磨花魁がいた。

 

「あなたも呼んできてくれてありがとう。これ、よかったら食べてね」

 

「ありがとうございます、須磨花魁」

 

 ニッコリ優しく微笑みながら包みを渡す須磨花魁から受け取った禿の少女はお辞儀し去って行く。

 

「さて――」

 

 それを見送った須磨花魁は

 

「ふ~!やっと一息つける~!」

 

 幾分か雰囲気がほんわかと緩ませる。

 先程までの須磨花魁の雰囲気からよく知る須磨さんに戻ったイメージだ。

 

「あはは、お疲れ様です」

 

「うぅ~、ホント疲れたよ~」

 

 私の言葉に不満そうに口を尖らせ

 

「任務だから仕方ないけど、天元様にもなかなか会えないし!天元様ももっと会いに来てくれればいいのに!」

 

 と、駄々をこねる子どもの様にぶつくさ文句を言う須磨さん。

 恐らく花魁として他の人がいるときにはそれらしく振舞っているのだろうが、今は気を抜いているらしい。

 

「まあまあ、そう言わずに。調査が進めば宇髄様も褒めてくれるんじゃないですか?」

 

「そうなんだけどぉ…そうなんだけどぉ!」

 

 須磨さんは不満げに眉を顰め

 

「調べても調べても鬼のしっぽが全然掴めないの!」

 

「でも、全くってわけじゃないでしょう?」

 

「うん…でも前にも言った通り、何の前触れもなく急に足抜けする子がたびたび出てるし、その子達が恐らく鬼の被害に遭ってるんだと思うんだけど…夜の間に忽然と、何の痕跡も残さずに消えて、あとには置手紙だけ残ってる……わかってるのはそれだけなのよね」

 

「ただの足抜けなら何かしら痕跡やら何やらが残りそうですから、何も無いって言うところがなんとも…鬼の正体にはおおよそ見当は付きましたが、複数の店の間を行き来する経路や手段を暴かないと逃げられる可能性もありますしちゃんと暴いておきたいんですが、これ以上被害を出したくないのも事実で……」

 

 言いながら私は腕を組んで考える。

 

 

 

 遊郭に来てすぐには会えなかったが、五日経った頃、やっと善逸君達が「蕨姫花魁」に接触を果たした。

原作とは違う鬼がいる可能性もあるが、人が消える状況などは原作通りだし、何より「京極屋」には「蕨姫」という花魁がいることは調べがついているので十中八九いるのは堕姫達がいるのは疑いようもなかった。接触したマコちゃん達の話や音で確信した善逸君の話で確定だ。

 問題は、原作通りに堕姫が使っている抜け道の穴の捜索が上手くいっていないこと。

 店の人間として潜入していない分、店の中を自由に調べられない。

 本来なら私やマコちゃんも宇髄様の奥さんの様に遊女として潜入するつもりだったが、何故かお館様から待ったを掛けられた。まあ私はともかく嫁入り前のマコちゃんに客を取らせるのは私もどうかと思っていたので止めてもらえてちょっとホッとしていたのだが……。

それはともかく、薬売りとして店の中を歩き回り捜査は進めている物の、やはりそうそうしっかりと見て回ることはできない。あまりおかしな行動を取れば店の人に不審がられるだろう。はてさてどうしたものか。

 

 

 

 と、考えていたところで――

 

「し、失礼します!」

 

 聞こえた声に思考を中断する。

 

「どうぞ」

 

 須磨さんが居住まいを正して座り直して返事する。

 一拍置いて襖が開けられる。そこには先ほどとは別の禿の少女が慌てた様子で立っていた。

 

「あ、あの診察中にすみません!」

 

「大丈夫、診察はだいたい終わって少し雑談に付き合ってもらってたところだから」

 

 と、須磨さんがニッコリと微笑む。

 

「それで?どうかしたの?」

 

「は、はい!それが…その……」

 

 言い淀んだ禿の少女は

 

「薬売りさんのお連れ様が、その、お客様ともめておられて!」

 

「……え!?」

 

 その言葉に私はあんぐりと口を開く。

 連れって炭治郎君とカナヲちゃん!?なんで!?百歩譲って伊之助君とかならわかるけど、そうならないためにブレーキ役としてアオイちゃんを着けたんだし!温厚な炭治郎君達がもめるっていったい何が!?

 

「す、すみませんが須磨花魁、話の途中でしたが私はここで!」

 

「え、ええ!すぐに行ってあげて!」

 

 須磨さんの言葉に頷いて私は慌てて向かう。

 

 

 

 

 

「いったいアンタの所ではどういう教育してるんだい!?」

 

 禿の少女に連れられて行った先で怒り心頭の女将さんの言葉に

 

「申し訳ありません!」

 

 私は慌てて頭を下げる。

 

「私が須磨花魁の診察に対応している間にあったようで、私も詳細を知らないのですが、いったい何があったのでしょうか?」

 

「どうもこうもないよ!この子はあろうことかうちのお客様に頭突きして掴みかかったのよ!」

 

「えぇッ!?」

 

 女将さんの言葉に驚きながら炭治郎君を見れば

 

「す、すみません!」

 

 炭治郎君が土下座して謝る。

 そんな炭治郎君を見ながらカナヲちゃんがオロオロワタワタとしている。

 

「うちのお客様に暴力振るって!これでうちの悪評が広まったらどうしてくれるのさ!」

 

「す、すみません!」

 

 女将さんの剣幕に私は再び頭を下げ

 

「で、ですが彼は何の理由もなく暴力を振るうような子じゃ――」

 

「言い訳は聞きたくないよ!」

 

 炭治郎君を擁護しようと口を開くが女将さんは聞き入れてくれない。

 このままの剣幕では追い出され出禁にでもされかねない勢いだ。そうなれば調査が進まなくなる。どうにか女将さんの機嫌を取らないと、と思案していた私だったが

 

「女将さん、ちょっと待っていただけないかしら?」

 

 一人の女性が割って入る。

 

「あんた、鯉夏?いったい何の用だい?」

 

 その人物に女将さんが怪訝そうに眉を顰める。

 

「そこの彼はお客さんともめたのには訳があるの」

 

 そう言って鯉夏花魁は話し始めた――要約するとこうだ

 

 

 

 私が須磨さんのところに行った後、炭治郎君達は私の言いつけ通り他の遊女さんや従業員の人達を回り薬を渡していったらしいのだが、そのさなかに一人の客に遭遇したらしい。

 その客というのがかなり酔っぱらっていたらしく、炭治郎君達をここの従業員と間違ってあれやこれやと言いつけたらしく、炭治郎君も人がいいので最初のうちはその注文に従っていたらしいようだ。しかしその酔っぱらいがカナヲちゃんに目を付け、遊女として連れて行こうとしたらしい。そこでさすがに炭治郎君も止めに入ったのだが、完全に出来上がっていたその客には炭治郎の言葉は通じず支離滅裂わめき散らしたそうだ。

 そこまでは炭治郎君も耐えていたのだが、その酔っぱらいが

 

「金で売られたガキが客に逆らってんじゃねぇ!」

 

 要約すればそんな感じの悪態をついたところで、炭治郎君もプッツンしてしまったらしい。

 その客に頭突きをかまし

 

「カナヲに!この店の人達に謝れ!」

 

 と掴みかかってしまったらしく、そこで騒ぎを聞きつけたお店の人が止めに入ったそうだ。

 

 

 

 

「そんなことがあったのかい……」

 

 鯉夏花魁の話を聞き女将さんも先程までの怒りが収まったらしく落ち着いた様子で頷く。

 

「あのお客さんは前々から悪い酔い方をして他の子や禿の子達にも乱暴な言い方をしていたし、本来なら私達が注意しなきゃいけなかった。それをこの子が私達の代わりに怒ってくれたんだ。どうか今回は許してもらえないだろうか?この通り」

 

「鯉夏花魁……」

 

 頭を下げる鯉夏花魁の姿に炭治郎は感激した様子で目を細めている。

 

「……そうだねぇ、経緯を聞けば、彼のしたことにも理由があったと分かったわけだし…」

 

 言いながら女将さんは炭治郎君に視線を向け

 

「竈門さんと言ったわね、今回はうちのお客さんが迷惑をかけて、あまつさえよく理由も聞かず責め立ててしまって申し訳なかったね」

 

「い、いえ!その、俺が手を上げたのは事実だったわけですし……」

 

 女将さんが頭を下げたのを見て炭治郎君が慌てて言う。

 

「女将さん顔を上げてください」

 

 そんな炭治郎君を見ながら私は口を開く。

 

「今回の一件、彼の行動に理由があり、女将さんもそれをご理解いただけて幸いです。ただし、それでもお客に手を上げてしまったのは当方の落ち度です。今回はお互いにここいらで手打ちにさせていただき、遺恨を残さず今後ともご贔屓にしていただく、ということでいかがでしょうか?」

 

「ええ、むしろ必要以上に責めてしまった分こちらの方がそう言ってもらえてありがたいくらいだよ」

 

 私の提案に頷いた女将さんへ私は微笑み

 

「では、今回の一件はここでおしまいとして、また改めて薬の販売でお邪魔するかと思いますのでよろしくお願いします」

 

 そう言って頭を下げる。炭治郎君やカナヲちゃんもそれに習い一拍遅れて頭を下げたところで、なんとか話は丸く収まったのだった。

 

 

 〇

 

 

 

「鯉夏花魁、今回は助け舟を出していただき本当にありがとうございました」

 

「ありがとうございました!」

 

 女将さんとの話の後、改めて三人で鯉夏花魁の元を訪れお礼を言う私達に、当の鯉夏花魁は優しく微笑み

 

「いいのよ。むしろ、さっきも言ったけどそこの彼は私達の分まで怒ってくれたわけだし、お礼を言いたいのはこっちの方なんだよ」

 

 言いながら鯉夏花魁は炭治郎君へ視線を向ける。

 

「竈門さんと言ったかしら、今回は私達の代わりにあのお客さんの言葉に怒ってくれてありがとう」

 

「い、いえ、そんな!俺は何も特別な事なんか!」

 

「そんなことないよ。あの場でああして声を荒げてくれるって言うのは、存外難しいもんだ。間違っていることを間違っているってちゃんと言ってくれて嬉しかったよ」

 

 言いながら鯉夏花魁は着物の袖に手を入れ

 

「これ、大したものじゃないけどお菓子、よかったらお礼に貰ってくれないだろうか?」

 

「い、いいんですか?」

 

「ええ。遠慮せず受け取ってちょうだい」

 

「で、では……」

 

 鯉夏花魁の差し出す包みをおずおずと受け取る炭治郎君。そんな彼を微笑ましそうに見つめながら

 

「そっちの彼女を守るためにちゃんと言い返してる姿、とってもカッコよかったわよ」

 

「ッ!?あ、ありがとうございます……/////」

 

 鯉夏花魁に褒められ、赤面する炭治郎君はそそくさと後退って元の位置に戻ってくる。

 

「でも、本当に庇っていただきありがとうございました。女将さんの御許しも頂けたので今後とも薬を売りにお邪魔いたしますのでその折にはまた今後ともご贔屓に」

 

「ええ、また次も是非お薬いただくわ」

 

 そう言って微笑む鯉夏花魁に改めてお礼を言い、私達は「ときと屋」を後にしたのだった。

 

 

 

 一時はどうなるかと思ったが、無事七日目の潜入調査も終了。しかし、堕姫達の仕業と思われる行方不明事件はいまだに続いている。

そろそろ本腰を入れて抜け道の調査を進めなければいけない、と私は人知れず決意したのだった。

 

 

 




というわけで調査段階での様子でした!
原作とは違う潜入の仕方をしているのでまだ堕姫達との対決は先になりそうです!
果たして楓子ちゃんはどう戦うのか!?
お楽しみ!



そんなわけで、今回の質問コーナーです!
今回はティファールは邪道さんからいただきました!

――恋柱と蛇柱、蟲柱と水柱が婚約しましたが、ふうちゃんの書いている妖滅の刃ではどうなるのですか?

楓子「蜜璃さんと伊黒様をモデルにしてる天寺と真白は作中で婚約しましたよ。ただ冨岡さん達の方は、私の小説で富山(冨岡様)と伏川(不死川様)とのBLが読者に人気なので現実と違いまだ小説でのしのぶさん達は婚約には至っていません」

――鬼滅のBLは誰と誰が至高だと思いますか?ちなみに私としては、称実と義勇、無一郎と悲鳴嶋さんが至高だと思ってます

楓子「そうですね、鬼滅のBLはそこかしこにカップリング要素があっていいですよね。実弥×義勇とか私も好きです。あとは錆兎×義勇とかも好きです。あの義勇の中で錆兎の死が傷として残ってる感じが個人的にはギュンッときますね」

ということでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
また次回もお楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
騒動の時のカナヲは炭治郎がお客さんに「カナヲに!この店の人達に謝れ!」と激怒した辺りで「私の為に怒ってくれてる(キュンッ )」とハートキャッチされ、その後も騒動解決後お店を出るまで心ここにあらずで終始いつも以上に無言でした。


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