思いついたのは偶然でたまたま出かけた先で見た桜の木によってなもので、季節感のネタだったので今のうちに投稿しないとタイミングを逃してしまいそうだったもので……。
あとは、今日は待ちに待ったアニメの刀鍛冶の里編放送開始日だったのもあり、蜜璃の登場が見れる!という期待も相まって……。
というわけで今回の番外編の題材は「桜」です。
そして、最近出番の減っていた蜜璃と伊黒も登場します。
最近おばみつを書けて居なくておばみつ成分が不足していたので書いてて楽しかったです!
というわけで番外編!
お楽しみください!
「――そうだ、花見をしましょう」
「……急にどうした?」
とある日の午前中、恋柱邸でのこと。居間で楓子の言葉に小芭内が不審な顔で言う。
「もう一度言うぞ、急にどうした?」
「ですから、花見ですよ!見てください外を!」
小芭内の言葉に楓子は外を指さす。
今から見える外は暖かな陽気と晴れ渡る青空が見えていて
「こんなにいい天気!家に籠ってのんびりするのもいいですが、せっかくですから花見に行きましょう!せっかく三人の休みが重なったんですよ!これを逃すと桜の見ごろ逃しますよ!」
「いや、言わんとすることはわかるが……」
楓子の言葉にしかし、小芭内はまだ気分が乗らない様子で言い淀む。と、そんな中で
「お待たせ~。お茶淹れて来たわよ~」
蜜璃がお盆に三人分の湯飲みとお茶菓子を持ってやってくる。
「二人でなんの話してたの?」
楓子と小芭内の前に湯呑を置きながら訊く蜜璃に楓子はズイッと顔を寄せる。
「蜜璃さん!」
「う、うん……」
楓子の圧に一瞬押されながらも蜜璃が頷く。そんな彼女に楓子は
「花見をしましょう!」
「いいわね!」
小芭内に対してと同じ台詞を言い、対する蜜璃はと言えば小芭内とは真逆に乗気で目を輝かせて言う。
「ほら伊黒様!蜜璃さんも乗気なんですから一緒に――」
蜜璃の二つ返事に楓子は小芭内に視線を向け
「おい、何してる。さっさと準備するぞ大好!」
「伊黒様のそう言うわかりやすいとこ好きっすよ」
素早く立ち上がり言う小芭内に楓子は生暖かい視線を向ける。
「あ、でも花見に行くならお弁当があった方がいいじゃない?」
「それもそうか……行く途中で買っていくか?」
蜜璃の言葉に小芭内は考える素振りを見せ
「あ、大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと――」
言いながら楓子は
「この様にお弁当を用意してきましたから」
ドンッと風呂敷に包まれた目測で五段ほどの大きなお重の弁当を取り出す。
「流石ふうちゃん!」
「お前今思いついたふりして完全に確信犯だろ」
そんな楓子に蜜璃は喜び、小芭内は呆れた様子で言う。
「なんでもいいじゃないですか!それよりも!必要なものは揃ってるので早速行きましょう!善は急げです!」
「うん!」
「ああ」
楽しそうに言った楓子に蜜璃はノリノリで、小芭内もそんな蜜璃に釣られてか少し楽しそうに頷いた。
〇
「――と、言うわけで近くの桜の名所に来たわけですが……」
言いながら楓子はあたりを見渡し
「……混んでますね」
「まあ奇しくも今日は世間的にも休日だからな」
楓子の言葉に小芭内が答える。
「凄いわね!座れるとこあるかしら?」
蜜璃は微笑みながら辺りを見渡す。
「とりあえず見て回りましょうか」
「そうね!」
楓子の提案に蜜璃と小芭内が頷き桜の木の並ぶ道を歩き出す。
「いやはや、綺麗ですねぇ!」
「そうね!今日は天気がいいからみんなが集まるのも仕方ないわね!」
「ああ。しかし、なかなかいい時に来たかもしれんな」
「どうして?」
「いくつか花が散って葉が目立っている木がある。風が強い日が続けばもう二、三日でほとんど散ってしまうかもしれん」
「そう言えば確かに……」
「つまり提案した私のお陰ですね!」
「お前はよくそれを自賛できるな……はぁ」
胸を張る楓子に小芭内は呆れた様子で言い、ため息をついて
「しかし、人が多いな」
小芭内は周りを見渡す。
「そうね、歩いてる人も多いしぶつからない様に気を付けないと――」
小芭内の言葉に頷きながら言いかけた蜜璃だったが――
「おっと」
「きゃッ」
言いかけた通り側を歩いていた人物とぶつかってしまう。
「失礼」
「い、いえ、私もよく見てなくて――ッ!?」
謝りながらぶつかった相手に視線を向けた蜜璃は息を飲む。
対する人物――丸い眼鏡に七三分けの男性も蜜璃の顔を見て
「おや、あなたは……」
「お、お久しぶりです……」
見知った様子で言い、そんな男性に蜜璃が余所余所しくお辞儀する。
「蜜璃さん?」
「知り合いか?」
「えっと……」
そんな蜜璃の様子に不審げに楓子と小芭内が訊き、蜜璃は言い淀む。と――
「甘露寺さんのお知り合いですか。初めまして、和田啓介と言います」
眼鏡の男性――和田は言い
「彼女とは、以前にお見合いで会ったことがありまして。その時は残念ながらご縁がありませんでいたが……」
「ッ!」
「………」
「むッ……」
和田の言葉に蜜璃は顔を強張らせ、そんな蜜璃の様子などから何かに気付いたらしい楓子が視線を細め、小芭内は少し不機嫌そうに眉を顰める。
そんな楓子と小芭内の反応に蜜璃は慌てて
「あ、えっと、和田さん、こっちは……えっと同僚?というか同じ仕事で部下…というか妹分というか…の大好楓子ちゃんと――」
「……どーも」
蜜璃に紹介され楓子が少し素っ気なくお辞儀する。
「そ、それと、こちらは――」
「伊黒小芭内。甘露寺の婚約者だ」
「ッ!?伊黒さんッ!?」
「ほう?」
『婚約者』の部分を強調しながら言う小芭内に蜜璃は驚きで眼を見開き、和田は興味深そうに小芭内を見る。
「……そうですか、甘露寺さんも良縁に恵まれたようでよかったですね」
小芭内のことをジロジロと見た和田は蜜璃に視線を移し言う。
「私もあなたとのお見合いの後に別の方とご縁があり、結婚したんですよ」
「そ、そうなんですね……お、おめでとうございます……」
和田の言葉に蜜璃は言うが、その声にはどこか覇気がなかった。
「……しかし」
和田は言いながら再び小芭内に視線を向け
「あなたも奇特な方ですね」
「……どういう意味ですか?」
和田の言葉に小芭内は目を細め訊く。
「婚約されているならあなたも御存じでしょう、彼女の体質のことは」
小芭内の視線を受けても和田は気にする様子もなく続ける。
「女性とは思えない力に、このおかしな髪色。子どもにも遺伝したらと思うとゾッとします」
「ッ!」
「………」
和田の言葉に蜜璃は息を飲み、小芭内はそんな蜜璃をチラリと見て視線を和田に戻す。
「……まあ、そう言うあなたも――」
言いながら和田は小芭内の口に巻かれた包帯や左右で色の違う瞳をジロジロと視線を向けて
「どうやらお似合いな様子ですね」
フッと微笑みながら言う。
その瞬間楓子が和田に向けて鋭い視線を向けながら一歩踏み出――
「ッ!?」
――そうとするのを小芭内が腕を伸ばして制する。
そんな二人の様子に気付いていない和田は
「まあお互い良縁に恵まれてよかったですね」
「え、ええ……」
「では、私はこの辺で。家内を待たせていますので」
頷いた蜜璃に和田は踵を返し――
「お似合い、か。なるほど、確かに貴様では甘露寺には不釣り合いだろうな」
小芭内はフンッと鼻で笑う。
「……どういう意味でしょうか?」
小芭内の言葉に和田は振り返る。
「他人の魅力にも目を向けず、粗ばかり探すような奴には彼女は不釣り合いだと思っただけだ」
「伊黒さん……」
「…………」
小芭内の言葉に蜜璃は少し微笑み、和田は不機嫌そうに眉を顰め
「……甘露寺さん、あなたの婚約者は随分といい性格をしていらっしゃるようですね」
「…………」
蜜璃へと皮肉を込めて言う。
和田の言葉に蜜璃は少し目を伏せ、しかし、すぐに顔を上げ
「……そうですね、伊黒さんは私のことをとっても大切にしてくれる、私には勿体ないくらい素敵な方です」
「ッ!」
満面の笑みで答えた蜜璃に和田は虚を突かれ息を飲む。
そんな和田に蜜璃は
「和田さんも奥さんの事、大切にしてあげてくださいね」
そう言って微笑み
「伊黒さん、ふうちゃん、行きましょう」
二人に視線を向けて歩き出す。
小芭内と楓子はチラリと和田に視線を向け、しかし、すぐに蜜璃を追って歩き出す。
後には一人ぽつんと取り残される和田の姿があったのだった。
「二人とも、ごめんなさい……」
一本の桜の木の前で楓子の用意した大きなシートの上に座った蜜璃は対面の小芭内と楓子に申し訳なさそうに頭を下げる。
「甘露寺が謝ることなんて何もないだろう」
「そうですよ。悪いのはあの性悪七三眼鏡ですよ」
小芭内はそんな蜜璃の謝罪に憮然と答え、楓子は笑顔で言う。
「……でも、私がぶつからなかったらあんな風に話をすることも無かったし、それに――」
言いながら蜜璃は顔を上に上げる。
蜜璃の視線の先、桜の木には桜が咲いているが、その枝の三分の一ほどは緑の葉が茂っていた。
「あの人と話してなかったらもっと他にいい場所に座れたかもしれないのに……」
「そんなこと……」
「この人の多さなら、きっと俺達が来た時にはもうすでに他の場所は埋まっていたさ」
申し訳なさそうに言う蜜璃に楓子と小芭内は言う。
「それに、俺はこの桜の木、好きだ」
「え……?」
小芭内の言葉に蜜璃は小芭内を見る。
「この桜の木、桜の花の桃色と葉の緑色が君の髪の色に似ている」
蜜璃の視線を受けながら小芭内は優しく微笑む。
「あの男はおかしな色だと言ったが、俺はその髪の色は優しく明るい君によく似合うとても素敵な色だと思っている。だから、この桜もまるで君のようで俺は好きだ」
「伊黒さんッ……」
小芭内の言葉に蜜璃は感極まった様子で口を押え
「伊黒さん…ありッ…ありがとぉッ……!」
ワッと泣き出す。
「私ッ!私、伊黒さんとお付き合いできてよかったぁ~ッ!」
「…………」
ワンワン泣く蜜璃に小芭内はそっと隣に移動し蜜璃の手を優しく握る。
そんな光景を見ながら楓子はこっそりと立ち上がりその場を離れようとし――
「おい、待て大好どこへ行く?」
小芭内に呼び止められ楓子は微笑み
「ちょっと桜餅買ってきます。蜜璃さんのこと少しの間お願いしますね」
「……ああ」
楓子の言葉に小芭内は頷く。
楓子は歩き出し少し進んだところで振り返る。
そこには寄り添って座り、桜を見上げる蜜璃と小芭内の背中がある。
「フフッ」
そんな二人を嬉しそうに数秒見つめた後
「大好楓子はクールに去るぜ」
冗談めかして呟いた楓子は嬉しそうに歩き出す。
そして数十分後、大量の桜餅を買って戻った楓子は二人と合流し、改めてお花見を始めたのだった。
というわけでおばみつメインの番外編でした!
いやぁ~、久しぶりに二人の話を書けて楽しかったです!
前書きにも書きましたが、この番外編を思いついたのは偶然出先で見かけた桜の木が原因でした。
先日雨が降り昨日も風が強かったので花が少し散ってしまったようで半分くらい葉の混じってる桜の木を見ると「あぁ蜜璃の髪みたいだなぁ」なんて思ったところで、「伊黒絶対この桜見たら同じ感想持ちそうだなぁ」と連鎖的に思い浮かんだところで「あ、これ絶対番外編で書こう!」と思ってしまいまして……書いてみたらこれは桜が咲いてるうちに投稿せねば!と思ってしまい、予定を変更し番外編が続きますが投稿してしまいました!
前回「次回は本編を更新!」と言っていたのに有言不実行となってしまいすみません!
次回!次回こそはちゃんと本編更新しますのでお待ちください!!
というわけで今回の質問コーナーです!
今回は小説七つ球さんからいただきました!
――大正時代に生まれ変わって平成、令和時代と比べて不便だなと思ったことは?
楓子「いろいろありますよ。テレビとかないので娯楽が圧倒的に少ないですし、交通機関も整備されてない、汽車や車なんかの乗り物もまだまだ珍しい。そう言うのを大雑把にまとめてしまうと、令和での常識がこっちでは非常識なことですね。全員が学校に通っている、通っていた人ばかりじゃないですし。学校で教えている内容のレベルとかも令和と大正では段違いなので私が小中学校で習ったことを知らないって人がいるのが普通だったり。そう言うところで令和と大正のギャップに驚かされますね」
ということでした!
そんなわけで今回はこの辺で!
次回こそは本編を更新しますのでお楽しみに!
~大正コソコソ噂話~
「もし仮に俺が止めてなかったらお前あの男のことをどうしてた?」
「え?そうですね……とりあえずまずは全部の関節を普通曲がらない方向に曲げるじゃないですか」
「いろいろツッコミたいところだが、〝まず〟って言ったかお前?」
「当り前じゃないですか。あの野郎蜜璃さんのこと化物見るみたいに……チッ!あとは爪の間に針刺してその針を火であぶったり……あ、そう言えば海外には足の裏に塩を塗ってひたすらヤギに舐めさせるって拷問があるらしいですね。なんでもヤギは慢性的に塩分不足で好んで舐めるそうです。ヤギの舌ってヤスリみたいにざらざらしてるんで、そんな舌に舐められ続けると皮膚は裂けて血が出て、またその血の塩味でヤギはさらに舐め続け、足の肉が削げて骨が見えても舐め続けるそうですよ」
「………」
「あとは――」
延々とありとあらゆる拷問方法をつらつらと言い続ける楓子の様子に小芭内は、ああこの継子は闇が深いなぁ、とあの時止めておいて正解だったと思いつつ、同時に、あの甘露寺への態度にはそのくらいしてもよかったかもなぁ、と思ったのでした。