更新期間があき、番外編を二つ挟んでしまいましたので久しぶりの本編となります。
お待たせしてしまいすみません!
そんなわけで最新話です!
楓子達の担当する「ときと屋」での調査と並行し「荻本屋」の村田・アオイ・伊之助達、「京極屋」の真菰・玄弥・善逸達もまた、それぞれ調査を進めていた。
「少し胃腸の働きが落ちていますね。恐らく疲労や栄養の偏りが原因でしょう。栄養剤を処方しますのでそれで様子を見ましょう」
「ありがとう。助かるわ~」
言いながら引き出しの並ぶ木箱から薬包紙を取り出したアオイに遊女は微笑んで受け取る。
遊女が去って行くのを見送ったアオイに
「こっちは終わったぞ」
村田が声を掛ける。
「お疲れ様です」
「今日の所はとりあえずひと段落だな」
「そうですね。あとはいつも通り」
「調査だな……と言っても今日まで成果はねぇけどな」
「そうですね……」
村田の言葉にアオイも頷き大きくため息をつく。
「うちもだが、真菰や楓子達の方も今のところ進展はあまりないようだし」
「ですが、楓子さんの所では炭治郎さんが頑張っているそうですが……」
「そこで何か進展があればいいけど……」
「とりあえず私達は私達にできることを――」
しましょう、と言おうとしたアオイの言葉はスパーンと開けられた障子の音に遮られる。
「「ッ!?」」
その音に驚き慌てて視線を向ければそこには
「あぁ?んだよ呆けた顔しやがって」
伊之助が怪訝そうに言う。
「はぁ……もう少し静かに開けてください」
「別にいいだろうがよぉ!それよりも報告書とか言うの貰ってきたぜ!」
呆れた様子で言うアオイに伊之助は言いながら紙の束を差し出す。
「貰ってくるだけのわりにずいぶん時間かかったな。どこか寄り道でもしてたんじゃないのか?」
報告書を受け取るアオイの脇で村田は訝しむ様子で言う。
「ここのババアが余りもんだって飯くれた」
「ちきしょう俺には一度もそんなことしてくれなかったぞ!?」
伊之助の返答に村田は悔しそうに膝をつく。
「ま、まあ伊之助さんは楓子さんから店と揉めない様に基本喋らない様にって言われてるので……」
「コイツ喋らなけりゃ女と見間違うくらい整った顔してるしなぁ……ちきしょうやっぱ世の中顔かよ……」
打ちひしがれる村田を尻目にアオイは話題を変えようと少し考え
「そ、それで?何を頂いてきたんですか?」
とりあえず思い付きで聞いてみた。
「おう!天ぷら食わしてくれたぜ!」
「そうですか、よかったですね。美味しかったですか?」
「まあまあだな」
「まあまあって…この店遊郭でもかなりいい店なんだから出る料理もいいもん使ってんじゃないのか?」
伊之助の答えに村田がしゃがみ込みながら呆れた様子で言う。
「別に不味かったわけじゃねぇよ。十分うまかったけどよぉ……」
言いながら伊之助はアオイを指さし
「こいつの作った天ぷらの方がうめぇんだよ」
「……えッ私ッ!?」
伊之助の思わぬ言葉に一瞬呆けたアオイは素っ頓狂な声を上げる。
「そ、そんなわけないじゃないですかッ!な、何を馬鹿なことをッ!」
「そう思ったんだからしょうがねぇだろうがッ!」
「で、でも……」
「まあまあ、いいじゃないか。一応褒めてるんだろうからありがたく褒められておけよ」
言い淀むアオイに村田が苦笑いで言う。
「……なんか話してたら食いたくなった。藤の花の家戻ったら作ってくれ!」
「自由かッ!?というかさっき食ってきたんだろうがッ!」
「足りなかったんだよ!余りもん貰ったって言っただろうがッ!」
「知るかッ!こっちはお前と違って何も食ってねぇんだよ!!」
言い争う伊之助と村田にアオイはため息をつき
「……もう、わかりましたよ。褒めてもらったと思っておきます。それと下準備も何もしてないので凝ったものはできませんからね」
「構わねぇよ。なんでもうまいからよぉ」
「…………」
ニッコリ微笑んで言う伊之助の言葉にアオイは頬を掻きながら、少し微笑む。
そんな二人を見ながら
「結局今日もあまり成果無し、か……」
村田はため息をつくのだった。
――ところ変わって『京極屋』では
「はぁ……」
玄弥はゲッソリと疲れた顔でため息をついていた。
というのも、薬売りとして店に来る以上店の裏、従業員側に出入りするわけなので遊女たちもお客には見せない気を抜いた姿や準備中の姿を見せている。つまり、全体的に服装がだらけていたりするわけで……
「いろいろ目のやり場に困る……」
絶賛思春期真っ只中の玄弥にとってはこの女性だらけの状態はいろいろと目に毒だった。
「と言うか気付けば俺一人だし……真菰さんは遊女の人達のところ回ってるんだろうけど、我妻のやつはどこ行きやがった?」
玄弥は一人呟きながら探しに廊下に出る。
廊下に面した部屋の襖からはあちこちから話し声が聞こえる。
廊下を少し進むと話し声の中に真菰の声が聞こえる。
「あ、いた。鱗滝さ~ん!」
『あッ!げ、玄弥君ッ!?』
玄弥の呼びかけに襖の向こうから真菰の心なしか慌てた様子の声が聞こえる。
「あの、どうかしました?」
『う、ううん、大丈夫だから!すぐ行くから!』
『あら、いいじゃない。入ってもらえば』
玄弥の問いに答えた真菰だったが、他の声が聞こえる。その声はどことなく知り合いに似ていて
(あれ?大好さんに似てる……けど、あの人は『ときと屋』にいるはずだし……)
『い、いや、でも……!』
『何を恥ずかしがってるの?廊下の君、いいわよ入っても』
「え…あぁ……はい、失礼します」
『あッ!ま、待って――』
玄弥は一瞬考え、言われた通り襖を開ける。その直前真菰が止めようと言いかけていたが間に合わなかった。
玄弥が襖を開けた先では化粧台の前に座る二人の女性がいた。
一人は上等な着物でめかしこんだ花魁。そして、もう一人は――
「ま、鱗滝さん……?」
「も、もう…待ってって言ったのに……」
驚く玄弥に真菰が口を尖らせて不満げに言う。そんな真菰の顔は明らかにこの店に来た時と違っていた。
もともと整った顔をしている真菰の顔にはしっかりと化粧をされていた。
別に普段はすっぴんだというわけではない。だが、休日のよほどの用事の時以外では最低限しかしていない真菰。そんな彼女しか知らない玄弥にはその変化は大きく――
「…………」
「ほ、ほら!玄弥君ビックリしてるじゃないですか!」
「フフ、せっかくちゃんとお化粧したんだから誰かに見てもらってもいいじゃない」
「で、でも、私は雛鶴さんと違って遊女として潜入してるわけじゃないんですから着飾る必要は無いですし……」
「あら、いいじゃない。女性が理由なく着飾っては駄目、なんて法律は無いでしょう?」
「で、ですが……」
花魁――天元の嫁の一人である雛鶴の言葉に真菰は言い淀む。そんな彼女を尻目に雛鶴は玄弥に視線を向け
「いつも報告は彼女にしてたからこうして会うのは初めてね。ここ、『京極屋』に潜入してる雛鶴よ。よろしくね」
「は、はい。不死川玄弥です」
「不死川……風柱の方と同じ苗字ね」
「あ、えっと……」
雛鶴の疑問に玄弥が言い淀む中
「と、とにかく、雛鶴さんからの報告はいただきましたので、私達は他の遊女の方を訪ねながら調査に戻りますから!」
そう言って真菰は玄弥に視線を向け
「ごめんね、玄弥君。そう言うわけだから少し待ってね。今化粧落とすから」
「え、落としちゃうんですか?」
「え?」
「あ!い、いや……」
キョトンとする真菰に、玄弥も自身が思わず言ってしまった言葉に慌てて言い淀み、照れた様子で顔を逸らしながら頬を掻き
「その……似合ってるのに勿体ないなぁって思ったので……」
「ッ!?も、もう!お世辞言って!」
「い、いや…お世辞じゃないっす……」
「ッ!」
「その……鱗滝さん、すげぇ似合ってます……」
「玄弥君……あ、ありがとう」
「ッ!い、いえ……」
ともに照れた様子でモジモジする二人を見ながら雛鶴はニッコリ微笑み
「ほら、せっかく彼も褒めてくれたんだし落とすなんて勿体ないでしょ?それに落とすのにも時間がかかるんだから」
「そ、それは……」
雛鶴の言葉に納得してしまった真菰は一瞬考え
「わ、わかりました。雛鶴さん、ありがとうございました」
「いえいえ。対していい報告が出来なくてごめんなさい」
真菰の言葉に微笑み、申し訳なさそうに言った雛鶴だった。
――その頃、善逸はというと
「はぁ、とりあえず遊女さん達には粗方薬を渡して、一緒に見て回ったけど……やっぱり成果無しかぁ……」
大きくため息をつきながら廊下を歩いていた。
「もしかしたら現れるかもって楓子さんから渡されてた似顔絵の男もここに来てからそれとなく探してるけど全然見かけないし……はぁ」
独り言をで呟きながら持っていた紙を畳み雑にポケットに押し込む。
「お店の人の話に聞き耳立てても特に情報ないし……」
言いながら何気なく聞こえる声に意識を集中した善逸は
「――一大事だ。女の子が泣いている」
その聴力で誰かが泣いている声を聞きつける。
聞こえた泣き声を追って廊下を進んだ善逸は――
「ちょッ、滅茶苦茶なんだけどこの部屋!?」
「ッ!?」
着いた部屋の惨状に思わず大声を上げる。
その声に部屋の中にいた一人の少女は驚いた様子でビクリと体を震わせ振り返る。その顔は叩かれたように赤く頬は腫れ口の端に血が滲んでいた。
「えッちょッ大丈夫!?血が出てるよ!?」
その顔に驚いた善逸は慌てて駆け寄り、持っていた薬箱から手拭いと水筒を出し湿らせる。
「ごめんね、ちょっと触るよ。痛かったらごめんね」
「ッ!」
善逸は湿らせた手拭いで少女の口の端の血を優しく拭う。
「ひどいな。誰がこんな事――」
言いかけた善逸は
「ッ!?」
背後で感じた気配に言葉を詰まらせる。
「アンタ、人の部屋で何してんの?」
直後、背筋が凍るような冷たい声と、その人物から聞こえる音に善逸は唾を飲む。
彼の背後に立つ人物から発せられる音は間違いなく鬼の音で、同時にそれは以前に遠目から確認したこの店の花魁のモノだった。
これまでに彼が出会った鬼とは音の様子が違う。背後に立たれるまで気付かないほど静かで、しかし、静かだからこそ恐ろしくなるその音に、彼はこの音の主は上弦並では無いかと感じ取っていた。
「オイ、耳が聞こえないのかい?」
恐怖し言葉を失っている善逸にその人物――鬼はイラついた様子で言う。
「わ、蕨姫花魁、こ、この人は最近この店にお薬を届けてくれている薬売りさんで…だから……」
「はぁ?だったら何だって言うんだい?」
「ッ!?」
部屋にいた少女が慌てて善逸を庇おうとするが蕨姫花魁と呼ばれたその鬼は少女を睨みつける。
「か、勝手に入ってすみません!」
善逸は怯える少女を見て慌てて振り返って言う。
「そ、その部屋が滅茶苦茶で…この子が泣いていたので……」
「だから?店の人間でもないのにでしゃばるんじゃないよ」
「ッ!」
恐ろしいまでの冷たい視線に善逸は息を飲む。そんな善逸を尻目に蕨姫花魁は
「……でも、確かに部屋は滅茶苦茶なままだね。片付けておくように言ってたんだけどねぇ。どういうことだい?」
「ヒッ!?ご、ごめんなさい!すぐに片付けますから!」
「チッ!泣くんじゃないよ五月蠅いねぇ!」
蕨姫花魁に睨まれ泣きながら頭を下げる少女にイラついた様子で少女に手を伸ばし
「ま、待ってください!」
少女を庇う様に善逸が割って入る。
「彼女謝ってるじゃないですか!暴力は――」
「はぁ?」
善逸の言葉を数段重く怒気を孕んだ声が遮る。
「アンタ、何様だい?この私に意見して……さっきも言ったけど、店の人間でもない奴がしゃしゃり出て来るんじゃないよ」
「で、でも……」
「これは躾なの。部外者は――」
「ッ!?」
言いながら蕨姫花魁は右手を振り被り
「すっこんでなさい!」
「ガッ!?」
殴られた善逸は畳の上を転がる。
「まったく……」
侮蔑を込めた視線で善逸を睨んだ蕨姫花魁は視線を少女に戻し
「ん…?」
足元に先程までなかった紙が落ちていることに気付く。畳まれた端が開いて中に描かれたものが一部見えるそれに
「ッ!?」
その中身に蕨姫花魁はそれを拾い上げ慌てて開く。それは、善逸が持っていた楓子から貰っていた似顔絵で
「まさか…なんで……!?」
その描かれた人物に蕨姫花魁は息を飲み
「……オイ、気色悪い金髪のお前」
「ッ!?」
受け身をとったものの痛みに顔を顰めていた善逸に視線を向ける。
「コレ、アンタのだろう?どこで手に入れた?」
「そ、それは……」
蕨姫花魁の睨みに息を飲みながら善逸は楓子の言葉を思い出し、その通りに答える。
「お、俺の上司で似顔絵が上手い人が描いたもので、もし興味があれば似顔絵描きますよって言う見本です」
「……この絵の人は?」
「い、以前たまたま見かけた人を描いたって……」
「ふ~ん……」
「………ッ」
善逸の言葉に蕨姫花魁は思案する様子を見せる。
そんな蕨姫花魁に善逸は固唾を飲んで次の言葉を待つ。
緊張する善逸に対して蕨姫花魁は
「フッ」
笑みを見せ
「気が変わったよ。アンタが私の言うことを聞いてくれるならこの子が部屋を片付けるのを待ってあげてもいいわ」
「え?」
思わぬ言葉に善逸は呆ける。
「一つは、この似顔絵、私に寄越しなさい」
「え、それは……」
一瞬考えた善逸は
「それは構いません。も、もともと見本ですし……」
「そうかい」
善逸の返事に気をよくした様子で蕨姫花魁は大事そうにそれの似顔絵を懐に仕舞い
「そしてもう一つ」
再び善逸に視線を向け恐ろしいまでの冷たい笑みを浮かべる。
「この似顔絵を描いた奴を、私の所に来させなさい」
――一方その頃、『ときと屋』では
「ッ!?……あ、あった」
雑巾で床を掃除しながら調査していた炭治郎がついに見つけていた。
お店の奥、その壁に細工がされており、開いた先に床下、そこにぽっかりと開いた穴を。
というわけで状況が動き始めました!
蕨姫花魁――堕姫達との対決は近いですよ!
因みに、原作と違い堕姫に投げ飛ばされて善逸が気絶していないのは彼自身の力量が上がっているのもですが、堕姫が店の人間じゃない相手ということで多少加減したのもあります。
さてさて、原作とは流れの変わり始めている遊郭編、その決戦はどうなるのか!?
お楽しみに!
そんなわけで今回の質問コーナーです!
今回は大筒木朱菜さんからいただきました!
――割と純粋な疑問なんですが、大正初期の女性下着って、腰巻(ほぼほぼノーパンに近い下着)が基本で百貨店の大火事か何かで腰巻が原因で女性が逃げられず、大勢の犠牲者が出たことから、西洋下着のズロースやニッカース、半股引が一気に流行りだしたと記憶してるんですが、楓子さんはイラストで現代の女性下着を読者とキリヤ君に惜し気もなく見せつけてますよね。
あの女性下着って、楓子さんの自作ですか?それともゲスメガネとの合作ですか?
あと、鬼殺隊の女性隊士は全員が楓子さんと同じ現代風女性下着を身に付けているのでしょうか?
それとも楓子さん以外は短めの腰巻、もしくは大正当時の女性下着を手に入れて身に付けているのでしょうか?
楓子「あれはお館様に相談して『隠』の衣服担当(主にゲスメガネさん)との共同開発です。元々は私が現代の感覚に慣れてるのでノーパンで駆けまわる感覚がどうにも肌に合わなくて、あれこれ理由をつけて作りました。女性隊士には配っているので穿いてる人は多いと思いますが、私とは逆に穿いてる感覚に慣れてなくてノーパンな人もいると思いますよ。カナヲちゃんやしのぶさん、マコちゃんが穿いてるかは……ご想像にお任せします。あのスカートやズボンの下にはパンツとノーパンが同時に可能性として存在し、観測するまではどちらもありえるというわけです。これぞ『シュレディンガーのパンツ』ですね」
ということでした!
というわけで今回はこの辺で!
次回もお楽しみに!
~大正コソコソ噂話~
「ところで真菰さん、あの雛鶴さんの声って、なんか大好さんに似てますよね」
「だよね!私も初めて会った時ふうちゃんが変装してるのかと思ったよ!」
「いや、流石に大好さんでも全くの他人に変装なんて……」
否定しかけた玄弥だったが、あの人ならそのくらいやってのけそうだと思ってしまったのでした。